SS投稿スレッド@エロネギ板 #12

1 :名無しさん@初回限定 :2007/02/04(日) 00:43:38 ID:zQfGjkNp0

エロゲー全般のSS投稿スレです。あなたの作品をお待ちしています。
エロエロ、ギャグ、シリアス、マターリ萌え話から鬼畜陵辱まで、ジャンルは問いません。

そこの「SS書いたけど内容がエロエロだからなぁ」とお悩みのSS書きの人!
名無しさんなら安心して発表できますよ!!

  【投稿ガイドライン】
1.テキストエディタ等でSSを書く。
2.書いたSSを30行程度で何分割かしてひとつずつsageで書き込む。
 名前の欄にタイトルを入れておくとスマート。
 なお、一回の投稿の最大行数は32行、最大バイト数2048バイトです
3.SSの書き込みが終わったら、名前の欄に作者名を書きタイトルを記入して、
 自分がアップしたところをリダイレクトする。>>1-3みたいな感じ。
4.基本的にsage進行でお願いします。また、長文uzeeeeeeと言われる
 恐れがあるため、ageる場合はなるべく長文を回した後お願いします。
5.スレッド容量が470KBを超えた時点で、
 ただちに書き込みを中止し、次スレに移行して下さい。

保管サイトはこちら
http://yellow.ribbon.to/~savess/

過去スレ >>2-4辺り

510 :はじめてのおつかい 1/6 ◆JNuLlpoq6U :2007/10/12(金) 20:36:53 ID:Rxyaaw2p0

「ねえ、綾佳」
 夢美の声に、綾佳は伝説の蟲の触手をちょうちょ結びする手を止め、顔
を上げた。
 綾佳の関心がそれた隙に蟲が逃げようとしたが、両手に抱きかかえて阻
止する。ひんやりとした感触が手に伝わった。
「なんだ、おやつの時間か? 今日は久しぶりにカステラが食べたいぞ」
「違うわよ。あのね、あなたもそろそろここでの生活にも慣れてきたでしょ?」
 この問いは、単に新しい住処に慣れたかというだけでなく、これまでの蟲
使いとしての生活とは全く違う環境に慣れたかを訊ねたものだった。
 本当のところ、蟲が周りにほとんどいないという環境に、綾佳はまだ戸惑
いもある。物心ついたときから蟲と共に在った彼女にとって、己の一部が欠
けているような気がするのだ。
 それをまぎらわせるため、実は誰にも内緒で郊外にある森で、何匹かの
蟲を育てている。
 しかしそんなことを言えば夢美が心配するのは分かりきっているので、綾
佳はことさら尊大に答えを返した。
「まあな。あたしにかかれば、怠惰にただ日々を過ごすだけの夢美のような
一般人の行動を会得するなぞ、赤子の手をひねるより容易いことよ」
 腰に手を当て、ふんぞり返りながら言う。少女から開放された蟲が、床を
這って必死に離れていく。
 義理の娘の言葉に、夢美の眉がぴくんとはねる。
 子供の言葉に怒るのは大人気ないと思ったのか、目に見える反応はそれ
だけだったが、出てきた言葉は彼女の感情を反映して、少しだけ低い声に
なっていた。
「――そう。だったら、一人でお買い物してこれるわよね? 急な用事がで
きちゃって、ひょっとしたら帰りが遅くなっちゃうかもしれないから」
「ぬ。……それはもしや、『はじめてのおつかい』というやつか!?」
 綾佳は保護者の様子になど頓着せずに、衝撃的な発言の方に興奮して
聞き返した。

511 :はじめてのおつかい 2/6 ◆JNuLlpoq6U :2007/10/12(金) 20:38:14 ID:Rxyaaw2p0

「ええ。ていうか、あなたやっぱりそういう経験ないの?」
「うむ。蟲使いの里においては『店』や『金』など、現実ではなく概念上の存
在に過ぎんからな。将来仕事をするときのために、いちおう仕組みを教えら
れはするが、実際に利用するのは蟲使いの試練に受かってからだ」
「はぁ。やっぱり蟲使いって非常識ねぇ。あなたを初めて買い物に連れて行
ったときに、やたらきょろきょろしてたのはそういうこともあったからなのね」
 一人納得している夢美だが、綾佳のほうはもうこれ以上待っていられな
かった。
 握りこぶしを作りながら立ち上がり、勢いよくまくしたてる。
「ええいっ、夢美! 焦らしプレイをするなっ。あたしは一刻も早く『おつかい
』をしたいんだ。さっさと金を寄こせ!」
「……はいはい。すぐ持ってくるから、ちょっと待ってよ」
 あきれたように言い、夢美がお金を取りにその場から離れる。
 彼女の後ろ姿が別の部屋に消えると、綾佳はこらえきれずに笑みを浮か
べた。
「にひひ。いよいよあたしも商店街デビューか。あたしの凶悪なかわいさと優
雅で賢い振る舞いを見れば、注目されずにはいられまいて。まずはご近所の
アイドルとなって、大衆どもが自らお菓子をの寄進を申し出るように仕向ける
か」
 綾佳が様々なお菓子を食べる妄想に浸っている間に、夢美が千円札を
二枚持って、戻ってきた。
「はい、これ。失くさないでよ」
 差し出されたお金を受け取りながら、綾佳は笑顔で返答した。
「心配するな! それより料理を失敗して、あたしが買ってきた材料を無駄
にしたりするなよ」

 元気に外へ駆け出していく少女を見遣りながら、夢美はため息をついた。
「はぁ、元気なのはいいけど、だんだん生意気になってる気がする……。そ
れに、ほんとに一人で大丈夫かしら。でも隠れてついて行きたいのは山々
だけど、急いで来てくれって言われてるし……」
 ――ピト
「ん?」

512 :はじめてのおつかい 3/6 ◆JNuLlpoq6U :2007/10/12(金) 20:39:12 ID:Rxyaaw2p0

 夢美は足に何か触れてくるものを感じ、足元を見下ろした。
 そこには、いくつかの結び目を作られた触手をゆらしながら、蟲がこちらを
見上げていた。
 こころなしか困った表情をしているように感じた。
「ったく、あの子ったら……。分かってるってば。そんなに体押しつけないでも、
今ほどいてあげるわ」
 綾佳の行為に呆れた夢美は、我が子を助けてから出掛けることにした。

 マンションを出た綾佳は、しばらく浮かれながら道を歩いていたが、ふと大事
なことを思い出した。
「おお、そうだ。そういえば、まだ何を買うのか見てなかったぞ」

・にんじん
・ぴーまん
・きゃべつ
・せろり
・れたす
・きゅうり
・ブロッコリー
・ハム

「……」
 野菜ばかり書き連ねられたメモ用紙を最後まで読むと、綾佳はそれまでの
ご機嫌顔から一転、無表情になった。
 無言で紙を丸めて、道路に停まっていたトラックの荷台に向かい、力いっぱ
い投げる。
「おっとしまった。手が滑ってしまった。これでは何を買ってくればいいのか
分からんではないか」
 限りなく平坦な声で言うと、高い位置から太陽が照らす昼空を見上げて続
ける。

513 :はじめてのおつかい 4/6 ◆JNuLlpoq6U :2007/10/12(金) 20:43:42 ID:Rxyaaw2p0

「しかし、夢美はどこかに出かけると言っていたからな。困ったな、これでは
何を買ってくればいいのかわからないではないか。う〜む、こうなったらしか
たない。どうやらあたしが自分で食材を選ぶしかないようだ」
 まったく困ってなさそうな嬉々とした表情で言い、止めてしまっていた歩み
を再開した。
 ほどなく、よく利用するスーパーの前までたどりついた。夢美と二人で、あ
るいは夢美の恋人である優斗も含めて三人で来たことは何度もあったが、
一人で入るのは初めてだ。少しだけ緊張する。
「よし、行くぞ!」
 一瞬の躊躇の後、気合を入れて一歩を踏み出した。自動ドアが開く。
「おおっ」
 見慣れた光景のはずなのに、どこか新鮮な感じがした。それを自覚しな
がら、綾佳は気合を入れる。
「よし、あたしが至高の食材を買ってきてやるぞ。腕を磨いて待っておれよ、
夢美」


「もう。『緊急事態よ。すぐ会いたいから急いできて!』なんて、切羽詰った
声で言うから、何事かと思ったら……。お金を貸して欲しかっただけなんて。
アゲハにも困ったものね」
 用事を済ませての帰り道。
 夢美はさっきまで一緒にいた友達に対して、ぶつぶつ文句を言いながら
歩いていた。
 そのとき、前方から聞きなれた声で名前を呼ばれ、顔を上げる。
「夢美ちゃん」
「あ、杏子さん」
 夢美が働いている喫茶店の店長、杏子が目の前に立っていた。どうも
周囲への注意が散漫になっていて、気づくのが遅れたようだ。
「偶然ね、こんなところで会うなんて」
「ほんとですね。杏子さんはどうしたんですか」
「私は友達のところへ行った帰りよ。……ところで、夢美ちゃん。あなた、
今日トラックに紙を投げ捨てたでしょう?」

514 :はじめてのおつかい 5/6 ◆JNuLlpoq6U :2007/10/12(金) 20:46:02 ID:Rxyaaw2p0

「え?」
 突然全く身に覚えのないことを言われて、夢美は目を丸くした。杏子は彼女
の気持ちに構わずに話を続けた。
「今日お店に野菜を配達に来たトラックの荷台にね、丸めた紙があったのよ。
困ったことする人もいるんだなと思って、何となく広げてみたら見覚えのある
筆跡の字が書いてあるじゃない。だめよ、ごみを投げ捨てたりしたら」
「……」
「なんか野菜の名前が書いてあったけど、あれって買い物用のメモかしら」
「その紙って、丸められてたんですか?」
「ええ。力いっぱい握り締めたみたいに、ぎゅうぎゅうにされていたわよ。だか
ら絶対わざと投げ入れたんだって、思ったんだから」
「……そうですね。今度からはそういうことがないようにさせます」
「させます? あ、もしかして、綾佳ちゃんの仕業だったの?」
「ええ、まあ」
「あら、そうだったの。ごめんなさい、夢美ちゃんを疑っちゃって」
「いえ、私が預かったからには、彼女をちゃんと躾けられていなかった私の
責任です。今日帰ったら、さっそく叱りつけますよ」
「や、やりすぎないようにね。じゃ、夢美ちゃん、私はそろそろ帰るわね」
 夢美の表情を見た杏子は、顔を引きつらせながら言うと、そそくさと立ち
去った。

 無事に自分で選んだ食材を買ってきた綾佳は、勢いよく自宅のドアを開
けた。
「夢美〜♪ 今夜はハンバーグだぞっ」
 ドアを開けると同時に、綾佳は大声で夕食のメニューを料理人へ伝えた。
 しかし返ってきたのは、少女の期待していた了承の言葉ではなかった。
「――ねぇ、綾佳。私は、あなたに、お肉を買ってきてくれなんて言ったかし
ら?」
「いや、メモをうっかり落としてしまってな。」
 このくらいの展開は予想していたので、綾佳は何食わぬ顔で答えること
ができた。

515 :はじめてのおつかい 6/6 ◆JNuLlpoq6U :2007/10/12(金) 20:47:10 ID:Rxyaaw2p0

 しかし夢美の追求はなおもしつこく続き、綾佳はだんだんと追い込まれて
いく。
「へぇ? ついうっかり落としただけで、トラックの荷台に乗るんだ?」
「あ、ああ。おそらく、風に飛ばされたんじゃないか?」
「それじゃ、紙が丸められていたのはなんでかしらね」
「それはだな、…………ちょっとまて、夢美。どうして袖をまくっておるのだ?
 蟲も触手を揺らしながら近づいてくるのをやめんか。こ、こらっ! 話せば
わk――ぎにゃあぁぁーーーーーーーー!」

 その日の櫻井家は、夜通し子供の叫び声が響いたという……。

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