永遠のアセリア&雑魚スピ分補充スレッド 26

1 :名無しさん@初回限定 :2007/05/12(土) 01:49:10 ID:8fBbxJXD0

「や…やめてください…」
「へへへ……立ち絵はもうびりびりだぜ、あとは目無しだけだ」
「いやぁ! だめ、目無しを取らないで…!」
「ひゃっはあ! なんて嫌らしい顔グラだ!」
「おいおい、ファンディスクが2つもあるぜぇ、こいつ誘ってんじゃねえのか?」
「そ、そんなんじゃありません…!」
「『ルート直前でセーブしてください』だぁ? まちきれねえ、今すぐ補完してやるぜ!」
「や、やめてー! ま、まだフラグも立ってないのに…!」
「うはぁ、すっげえ、冴えてるイベント絵とやかくでグチャグチャだぜ…たまんねえ!」
「そーれ、お次はネタだ! 中にたっぷり仕込んでやる!」
「あああ! ぬ、ぬるい…! ……て、れてえ!」
「聞こえねえなあ、はっきりいえよオラッ!」
「キ、キャラまで! きちんとキャラ立てまで入れてくださいぃいぃ!!」
「残念だったなあ、俺は次に振りやすくする派なんだよぉ! ははは!」
「は、早く個別 (省略されました。はぁと)

そんなこんなでアセリア&雑魚スピ分補充スレッド26


前スレ:永遠のアセリア&雑魚スピ分補充スレッド 25
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/erog/1169396370/
発売元:Xuse【本醸造】公式サイト
http://www.xuse.co.jp/
外部板:雑魚スピスレ保管庫
http://etranger.s66.xrea.com/
外部板:雑魚スピスレ避難所@MiscSpirits
http://www.miscspirits.net/Aselia/refuge/

2 :名無しさん@初回限定 :2007/05/12(土) 01:50:43 ID:8fBbxJXD0

____      ________               _______
|書き込む| 名前:|            | E-mail(省略可): |sage       |
 ̄ ̄ ̄ ̄       ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄                ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                                        ,ィ
                         ,べV       //
ネリーみたいなくーるな女には       / 〃  ̄ ヾ;  / ./
    sage進行がぴったりよね〜    ! i ミ(ノハソ / /./
                           !ik(i|゚ ヮ゚ハ<///
                            リ⊂}!廿i つベ/
                               く/Цレ'
                             し'ノ

3 :名無しさん@初回限定 :2007/05/12(土) 01:53:08 ID:8fBbxJXD0

あてんしょん

 | ̄ ヽ
 |」」 L.
 |゚ -゚ノ| ……えっとこのスレに投稿したネタ(名前欄に題名を記入したもの)はね……
 |とl)
    ,べV      
   / 〃  ̄ ヾ; 
   ! i ミ(ノハソ
   !ik(i|゚ ヮ゚ハ   。・゚・⌒) 作者の意向が無い限り、
   リ⊂! |T|!つ━ヽニニフ))   問答無用で>>1の保管庫に収録されちゃうんだよ〜
     く/|_|〉 
     (フフ

4 :名無しさん@初回限定 :2007/05/12(土) 01:55:24 ID:8fBbxJXD0

Q: 雑魚スピって何ですか?
A: サブスピです。

Q: 具体的に教えて下さい。
A: シアー・セリア・ナナルゥ・ニムントール・ネリー・ハリオン・
   ヒミカ・ファーレーン・ヘリオン、以上9名の総称です。

Q: これまでに投稿されたSSはどこで読めますか?
A: ここで読めます。→ http://etranger.s66.xrea.com/

Q: 俺あんまりサブスピに興味ないんだけど。
A: 雑魚スピです。>>1の関連スレリンク集で行き先を探してみましょう。

5 :名無しさん@初回限定 :2007/05/12(土) 01:58:31 ID:8fBbxJXD0

   " タイムアクセラレイト
     ´∴   #   __        ゜ヾ´      ″´∴
             「,'´r==ミ、―≡ ̄`:∵∧_∧´∴∵゛'
          __くi イノノハ))≡―=',(((      )≡―=‥、 ∵゛、゜¨
        , ≡ )| l|| ゚ヮ゚ノl|r⌒)  _/ / ̄ =―≡―   _
      ´∴'≡く / ∧   | y'⌒  ⌒ ヽ イノノハ))(  ≡―=‥、,、
     ″″    \/〈(((ノ从|  /    | | ゚ヮ゚ノ`=―≡―∞
     "        ||( ゚ヮ゚ー' |   |ヾノ   //
             =―≡ ̄`:, | ,  | ( ̄=―≒‥,,
  "       ,゛"=―≡―=',/  ノ )∵`=≡―=
            ″( ゚ヮ゚∴/´/ / |  | , ゚ヮ゚ノ'ゞ    ∵゛、 ゜  ¨
  ヾ       =―≡ ̄`:゛/ / \|  |≡―=‥、,、   ヾ
      ,゛"=―≡―='(  |  (  |=―≡―∞=@   , 、∴
               /  |  |  |\ \  ´ ∴  ヾ             .
  ・            / / |  |   | ヽ/⌒〉
     .... .  ............ . .(_  「 _) (_〈_/....... .  .. .  .... . . .

6 :名無しさん@初回限定 :2007/05/12(土) 02:02:34 ID:8fBbxJXD0

さ〜って今スレの点呼ネタは!

    「言わせてみたい台詞」

俺「け、結婚しよう」
セ「……(うんって言って欲しいんだろうけどそれじゃ私の負けになるじゃない)……いや」

7 :名無しさん@初回限定 :2007/05/12(土) 06:32:12 ID:gju+gI2x0

>>1乙ァーレーン

ナナルゥ  「ほっと」
ファーレーン 「ブラックで」

8 :名無しさん@初回限定 :2007/05/12(土) 06:40:24 ID:gju+gI2x0

うを、いきなり点呼忘れたorz

つ <2>

9 :名無しさん@初回限定 :2007/05/12(土) 09:12:12 ID:F75XL2+z0

>>1
<3>
ヒミカ「印刷所止めて!!」

10 :名無しさん@初回限定 :2007/05/12(土) 09:44:00 ID:Jr4zM8F0O

>>1
乙〜

ヘ「私に斬れないモノはあまりない!」&「どんなステッカーでも切り抜いて見せます!」

単車にアセリア関係のステッカーをもっと貼りたい<4>

11 :名無しさん@初回限定 :2007/05/12(土) 11:36:55 ID:b3ig42C00

>>1
乙ぺリア

エス
「日々精進すねwwwww」
「新たなスキルを覚えましたwwwまたフレンジーすかwwwww」
「ユート様www拠点奪われちゃいましたwwwサーセンwwwww」
「フヒヒwwテラユートwwwww」

<5>

12 :名無しさん@初回限定 :2007/05/12(土) 17:10:04 ID:9OtaiqRe0

>>1乙シアー

シアー
「ねー、これ食べたいんだけど、一緒に買いに行こうよ〜…ダメ?」
「これ…この本にのってるの、ユート様が作ってくれたのが食べたい…ダメ?」

<6>

13 :名無しさん@初回限定 :2007/05/12(土) 19:47:10 ID:rwuJU52w0

>>1
イオ「・・・まったく、仕方ないですね」(微笑
<7>

14 :名無しさん@初回限定 :2007/05/12(土) 20:52:45 ID:uEziikxq0

>>1
ウルカ「手前の背中を預けられるのは、貴公しか居りませぬ」
<8>

15 :名無しさん@初回限定 :2007/05/12(土) 23:01:24 ID:Ridc7O3w0

>>1
生まれたばかりのユーフィーに満面の笑みを浮かべながら
「オルファお姉ちゃんだよ♪ よろしくね」
<9>

16 :名無しさん@初回限定 :2007/05/13(日) 15:56:00 ID:6zRtMtQ00

わたくしの新規グラビアが発表されたのにここは静かですね。
皆さま声一つでずに魅入られていてくださっているのでしょうか?

17 :名無しさん@初回限定 :2007/05/13(日) 18:20:48 ID:+X0zlDYZ0

言わぬが花だよ、エス姉さんw

18 :名無しさん@初回限定 :2007/05/13(日) 19:36:46 ID:A29+2WyM0


あてんしょん

このSSは、ほぼ基本的に年少組の補完です。
時期も舞台もケムセラウト〜法皇の壁、全5回の投稿で完結します。今回は第3回目です。
ただし恋愛要素は全く含まれていませんので、そういうのが嫌いな方は遠慮なくスルーお願い致します。

19 :相生 Lemma T :2007/05/13(日) 19:38:24 ID:A29+2WyM0


暗い部屋。きいきいと耳障りな音を立て、軋む椅子。体の芯まで沁み込んで来るような薄ら寒い空気。
男は不愉快そうな表情を浮かべ、ただじっと目の前に佇む少女を睨みつけている。椅子の上で組んだ足を、無造作に揺らしながら。

  ―――― こつ

沈黙が続く中、肘掛に置いた指先だけが、神経質そうに固い木目を叩き続ける。
少女にとって、それは拷問ともいえる時間。幻惑するように聞こえてくる単調な響きが神経を苛む。
いつものことだが、対面すると必ず平衡感覚が削り取られ、少しづつ足元が覚束無くなってゆく。
「……それで。尻尾を巻いて逃げ帰ってきた、という訳ですか」
「! は、はいっ! 申し訳ありません、ですが、部隊の被害をこれ以上増やす訳には」
「部隊の被害? 誰が、そんなものを気にしろと命じました?」
「す、すみませんっ!」
からからに乾いた喉から搾り出すように、そして半ば反射的に叫び、頭を下げる。
くの字に折れ曲がった体には先程の戦闘で負った傷がまだ残っており、それだけの挙措でも身体全体が悲鳴を上げ、
俯いた少女は思わずくぐもった呻きを漏らしたが、拍子にぱらりと落ちてきた後ろ髪はその表情を隠してしまう。
しかしこの場合、自分の苦痛がこの相手に伝わるのは必ずしも良い結果を生み出すとは限らない。むしろ隠された事が幸運とも言える。
「そもそも貴女が言い出したことなのですよ。精鋭でもない妖精達の何を庇おうとしているのか、私には想像も出来ませんがね…クク」
「……」
「しかし貴女は仮にも『妖精部隊』の一員。判りますか? 無様な退却が、その名にどれ程の泥を塗る行為なのかを」
「〜〜ッ」
「私は恥ずかしいですよ、ええ。今回は貴女の意気込みに免じて作戦を許可しましたが……結果を皇帝陛下に奏上するのは私なのでね」

20 :相生 Lemma T :2007/05/13(日) 19:39:58 ID:A29+2WyM0


 ―――― こつ

耐え難い時間がゆっくりと過ぎ行く。
男はいつの間にか立ち上がり、不自由な右足を庇うように杖を手に取り、
粛然と押し黙ったままの少女の様子をただ無言のまま眺め続けていた。
しかし怯えきって小刻みに震え続ける細い肩にやや気分を持ち直したのか、
丁度狂人のそれに似た下卑た思念を含む次の口調は意外にも穏かなものへと変わっている。
「……まぁ良いでしょう。しかし、次があるとは思わないことです」
「は……はっ!」
少女はもう一度勢い良く頭を下げ、そして逃げるように部屋を出て行く。
古びた扉が錆び付いた音で閉じられるのを、男は冷ややかな目付きで観察するように見送り、そして再び椅子に座りなおした。
重みに耐えられなくなった椅子が、ぎしっと一際高い嫌な悲鳴を響かせる。
「ふむ、表情がありすぎる。……しかたがありません。ここはやはり、躾が必要ですかねぇ」
やれやれと溜息をつき、大仰に首を振る。しかし、その口元には既に抑えきれなくなった下世話な笑いが深々と湛えられている。
少女は、恐らく覚ってはいなかっただろう。部屋を出る時、その美しい背中はくまなく、爬虫類のような視線によって蹂躙されていた事を。

21 :相生 Nerium indicum Mill X :2007/05/13(日) 19:42:04 ID:A29+2WyM0


早朝の朝靄が嘘のように澄み切った、よく晴れたケムセラウトの古びた城壁。
所々黒く焦げ付いた跡が生々しい半分崩れかかった瓦礫の一隅、その中でも一際大きな塊の上で。
ニムントールは膝を畳み、その上に顎を乗せ、両腕で太腿を抱え込んだ窮屈な姿勢のまま、じっと法皇の壁の方角を睨んでいた。
ケムセラウトは戦略的に小高い丘を選び造られ、ぐるりと分厚い石の壁に取り囲まれた城塞都市なだけに、見通しはかなり良い。
正面には広大な森、やや右手にはそれを貫く一本の街道、そして更に先には水平線を覆い尽くすようにどこまでも続く灰色の壁。
壁は細長い帯のようにも見え、その両端はそれぞれ龍の爪痕に聳える山並、そしてダスカトロン大砂漠の蜃気楼の中へと吸い込まれていく。

「よ、こんな所に居たのかい?」
「……なんだコウインか。あっちいけ」
ダーツィ大公国との戦いに、ニムントールは参加してはいない。だが傷跡もまだ生々しいいわば新戦場で、感慨に耽る位の戦歴はある。
なんにせよここは一年前敵味方が入り混じり、死線を潜り抜けた仲間達が将来帝国への足掛かりともなるべき拠点を遂に勝ち得た場所。
イースペリアからサルドバルト、マロリガン、そしてサーギオス。
転々と大陸中を巡った争乱は今またここへと舞い戻り、そしてその中にニムントールは参加している。

22 :相生 Nerium indicum Mill X :2007/05/13(日) 19:44:33 ID:A29+2WyM0


「はは、相変わらずだな。……よっ、と」
「……」
人一人分のスペースという微妙な距離で手頃な大きさの岩を見つけそれに座り込む光陰に対し、ニムントールは完璧に無視だけで押し通す。
普段なら、拒絶反応から一蹴してしまう位置。しかし今のニムントールにはその気も無い。ちらっと一瞥しただけで視線を元に戻してしまう。
「おー、いい天気だ。空は青いし空気も美味い」
光陰も、そんな彼女を特別気にした風も無く巨大な『因果』を無造作に放り出し、生あくびを噛み殺している。
ファンタズマゴリアに来てからは伸ばしっぱなしの顎鬚をそよ風に嬲らせるまま空を見上げると、透明な空が目に眩しい。
「目の前には大自然が広がり、そして隣には可愛い女の子。こりゃ、絶好のハイキング日和だなぁ」
「……」
「あ、ハイキングっていうのはだな、気の合う仲間同士で弁当とかを作って森や高原に遊びに行く娯楽の一種だ。楽しいもんだぞ」
「聞いてない」
「お、聞いててくれたのか?」
「……」
ニムントールはちっ、と小さく聞こえない程度の舌打ちをする。どうして接近を許してしまったのか、自分でも理解出来ない。
ただ漠然と感じる憂鬱さ――もし知っていれば感傷とでも表現出来た気分を――――もう少し味わっていたかっただけに過ぎない。
今更ながら微かに後悔を感じ、左手に『曙光』を握り直す。光陰からは死角になっているので見つかる心配はない。

23 :相生 Delphinium chinensis X :2007/05/13(日) 19:47:53 ID:A29+2WyM0


ひっそりとした街並みの中を、シアーは当ても無くふらふらと歩いていた。
丁度一年程前まではダーツィ大公国という亡びた国の版図に組み込まれていたこの小都市は、
今はサーギオス帝国への唯一の足掛かりとしてラキオスの軍部により占拠されてしまっている。
レスティーナ女王の指示により住民の疎開措置も既に完了しているので、人気というものがまるでない。
ダーツィの時代から帝国との接点だったせいかその産業も農耕や畜産といった地に根付いたものでは無く、
貿易に加え、それを生業としている者達への慰撫、すなわち宿場を中心とした観光業が主だったせいか、
主人に見放されてしかたなく野生に帰った家畜などの類も一切姿を見せないという状況が今は歪な光景を生み出していた。
おおよそ人の手により創り出された建造物は考えられる限りのものが揃っているのに、生命の息吹だけは全く感じ取れない。

そんな無機質な街のはずれに、僅かに憩いの場所として設置されていたのか小さな公園がある。
そしてそこだけには慰め程度に緑が映え、貧弱ながらも数本残った木の枝からは野鳥の囀りも聞こえてくる。
シアーはこの、唯一マナらしいマナを感じられる場所の、柔らかい芝生が繁る一角に尻餅をつくように腰を下ろすと、
普段は感じない重さを手放そうとするかのようにどさっと『孤独』を投げ出し、すぐに深い溜息を漏らす。
「はぁ〜。……どうしてなのかなぁ」
今まで散々絞られてしまったセリアの小言に対してではない。
少なからずダメージはあるが、抜かれてしまったおやつへの恨み言でもなかった。
それよりもっとずっと重く圧し掛かるものが、シアーの声を一層憂鬱なものに変えてしまっている。
俯き、ふと視線を落とすと、明るい日差しをまんべんなく受けた『孤独』の刀身が白銀に輝いていて眩しい。
浴びている陽光は同じなのに、時折陰を作り出す小枝の影響でくるくると微妙に色が変わる。
シアーは暫くの間、見るとも無しに『孤独』が生み出す色彩の鮮やかさをぼんやりと眺め続けた。

24 :相生 Delphinium chinensis X :2007/05/13(日) 19:51:42 ID:A29+2WyM0


「……どうかしましたか? そんな所にうずくまって」
「……」
そんな訳で、シアーは最初、その声が自分にかけられたものだとは気づかなかった。
声色に覚えが無い上、一応耳には届いてはいるものの、頭の殆どは別の思考で一杯になってしまっている。
生来の反応の鈍さも相まって、気配を感じてもどこかうわの空な感覚で彷徨っていたというのが正直な所。
「ええっと……あの、おじゃまでしたか?」
「……え? あ」
ふいに目の前が翳り、それがどうやら正面に立った人影のせいだと気づいた時、シアーは初めて顔を上げた。
すると、ラキオスでは見慣れない不思議な衣装を身に纏った女性が覗き込むように屈んでいる。
緩く纏め上げた髪から顔の両脇へと自然に垂らした前髪が特徴的で、美しい。
屈んだ体勢のせいか、皮のライトアーマーに包まれた胸の膨らみがやや強調されて見える。
膝に当てた両腕も同じく皮製の籠手に包まれ、その先で細く伸びる指先は膝の上で綺麗に揃えられていた。
髪の色と同じ緑の瞳にはややきつそうな線が浮かぶものの、包み込むような柔らかい微笑みがかえって知性を際立たせ、
スピリットの証ともいえるハイロゥリングの穏かな輝きが慎ましい大人の女性の落ち着いた雰囲気を醸し出している。
「あ、えっと……ううん。そんなことないよ?」
「そう、よかった。あの、初めまして、ですよね?」
女性は一度姿勢を正し、空いた両手で大きくスリットの入ったスカートの裾を庇うように膝を折り畳み、
シアーとの目線の高さを合わせてその場にゆっくりと正座をする。全ての挙措が折り目正しく、優雅に躾けられた動きだった。
座る時に脇に置いた鎌のような巨大な神剣とハイロゥリングが無ければ、上層階級の人間と錯覚してしまうかもしれない。
「ん……ふふ、気持ちいい。……あ、私はクォーリンと申します。よろしくね」
そうして軽く首を傾げる元マロリガン稲妻部隊副隊長はいかにもグリーンスピリットらしい立ち居振る舞いで、
年下であるシアーに向かっても何の衒いも無く優しく微笑みかけていた。

25 :相生 Delphinium chinensis X :2007/05/13(日) 19:56:00 ID:A29+2WyM0


ヘリオンは広い屋内の片隅で膝を組んで壁に寄りかかり、抱え込んだ『失望』を器用に揺らしながら、
膝の上に立てた両手で頬杖をつきつつ目の前で繰り広げられている激しい戦いを熱心に見つめている。
「破壊となりて彼の者どもを――――クゥッ」
「ほら、まだ詠唱が間に合いませんぞ!」
充分距離を取りつつイグニッションを唱えようと『消沈』をかざしかけたナナルゥの動きは決して遅いものではない。
むしろレッドスピリットの特徴でもある赤く流れる前髪を巻き込むように発生したスフィアハイロゥが炎へと変わるのに、瞬き一つも間に合わない。
しかしそれでもたちまち間合いを詰めたウルカに『冥加』の剣先を鋭く突きつけられ、発動寸前でマナの流れ自体が寸断される。
そして遅れてやってきた旋風が二人の戦闘服を乱す暇もなく互いの影はたちまちすれ違い、きんという甲高い音と共に対角線上へと駆け抜ける。
再び向き合ったウルカの頬には軽い擦過傷、ナナルゥの戦闘服の肩口には鋭く切り裂かれた跡。
「凄い……これだけ真剣にぶつかってるのに」
住人が疎開した後無人になっていた大きな屋敷を接収して造られた臨時の訓練施設には他に人影が無い。
ヘリオンはごくりと喉を鳴らし、身を乗り出す。『失望』の鞘を握った手に思わず力が入るのが自覚出来る。
「これ、……強さって」
見とれている間にも戦いは加速していく。ウルカの踏み込みはおろか、姿を追うことも既に難しい。
時折煌く白刃の眩しさと間を置いて届く風切り音だけが、ヘリオンの首を左右に気忙しく動かしている。
そして驚嘆するべきは、その速度に当たり前のように合わせ、朱色の残像を残して距離を取ろうというナナルゥの動き。

26 :相生 Bidens atrosanguineus X :2007/05/13(日) 19:58:51 ID:A29+2WyM0


「レッドスピリットなのに。……それ、なのに」
深い紫水晶のような瞳が次第に大きく揺れていく。ヘリオンは、少しづつ自分が小さく縮んでいくように感じていた。
元々小柄な身体をぎゅうっと両腕で抱え込むと、慰めるかのように『失望』が明滅して応える。
「私ってば、馬鹿です。ちょっと強くなった気でいて、それを試したいだなんて思って。……ごめんね『失望』。怖かった……ですよね」
今朝の戦闘で置き去りにした事を改めて謝り、鞘越しにそっと刀身を優しく撫でる。
しかし『失望』は大人しくヘリオンの腕の中に収まったまま、何も文句を返してきたりはしない。ただ黙って明滅を繰り返す。
「ふぅ……おや? いかがなされた、ヘリオン殿」
「え? あ……ウルカさん。ううん、なんでもありません」
「ふむ、そうですか。ですが手前には」
いつの間にか、手合わせは終了していたらしい。
ウルカは篭った熱を逃がそうと、髪を払う。銀色の合間に飛び散る水滴がきらきらと輝き、美しい。
褐色の肌に浮かんだ汗を手早くタオルで拭う姿が、先程までの訓練の激しさを思わせる。
「何か、迷われている。そう見受けられました」
「……あ、あの、ウルカさん」
「はい、なんでしょうか。手前に答えられる事でしたら」
「あ、その……えと、どうしたら……一体どうしたら、ウルカさんみたいに強くなれるんでしょうかっ」
「……ふむ、強くなりたいと。ではヘリオン殿、強さとは、一体なんなのでしょう?」
「ふぇっ?」
「己の未熟さというものはそれを自覚する所から始まる、そう思えます」
「……?」
「自覚して、そこから無に転ずる。心を捨て……いえ、剣に、心を乗せるのです」
「乗せる……心を?」
思い切って訊ねたものの、きびきびとした仕草にぼーっと見とれていたヘリオンは、一瞬何を言われたのか判らなくなり首を傾げる。
しかし頬の傷に濡れタオルを当てていたウルカは揺れたお下げを一度だけきょとんと見つめ、そして小さくふふっと微笑んでいた。
ヘリオンの目を覗き込みながら小さな肩に手を置く。それは、まるで壊れ物を扱うように慎重な、慈しむような手つきだった。

27 :相生 Bidens atrosanguineus X :2007/05/13(日) 20:01:44 ID:A29+2WyM0


「申し訳ありませぬ、不覚にも、ヘリオン殿があの子等のように思えてしまいました故」
「え、え、あのそんな謝らないで下さい! 聞いてなかった私が悪いんですから!」
「また人の話を聞いてなかったのですか」
「わっ! ナナナナナルゥさんいつの間にっ!」
「? 先程からいましたが。何か問題でも?」
「……無いです、無いですけど」
急に背後から声をかけられ、飛び上がりつつ振り返ると同じく汗を拭っていたナナルゥと目が合う。
気のせいか口元に何か達成感でも得たかのような喜びが仄見えて、ヘリオンはがっくりと肩を落とした。
「はぁ、もういいです……あれ? あの子等って一体……ウルカさん?」
「ウルカなら、先程遠い目をしながら去りましたが」
「遠い目って……あのぅ、そういう表現は」
言いながら目で追いかけると、ウルカの背中は既に小さく、すぐに反対側の出口に見えなくなってしまう。
「……何だか、寂しそうです」
「何か言いましたか、ヘリオン」
「いいいえ! さ、ナナルゥさん、今度は私と訓練して下さい!」
「構いませんが」
慌ててナナルゥの背中を押しながら、ヘリオンは思い当たる。あの子等とは――――恐らく昔の仲間達の事なのだと。

屋外に出たウルカは眩しい日差しに目を細めながら手を翳し、空を仰ぐ。
静かに流れる雲を眺めていると、元気にはしゃぎ、懐いてくれていた翠の瞳、同じ色の長い髪が思い出され、自嘲気味な溜息が漏れた。
「すまぬ、みんな。今の手前はラキオスのスピリット……漆黒の名は捨てたのだから」
腰に下げた『冥加』に問いかける。剣が、『拘束』から『冥加』に変わった時。あの広い背中を全身で感じた時。
「剣の声。それが聞こえたのだから。手前はあの方の剣になる。そう、決めたのだから。……憎んでくれても構わない」
太陽が雲に隠れ、辺りは少し暗くなる。翳した手を下ろし、重くなった気分で前に振り向く。
「よ、ウルカ。どうした、何だか元気がないな」
「ユート殿……ふふ、何でもありませぬ」
再び歩き出したウルカの足取りは、少しだけ軽い物へと変わっていた。

28 :相生 Anthurium scherzerianum X :2007/05/13(日) 20:04:57 ID:A29+2WyM0


修羅場から早々に退散を決め込んだオルファリルは表に飛び出すと、草に足を取られない程度の駆け足でとある目的地へと向かっていた。
『理念』をくるくると気楽に回しているのは警備に当たっている人間の兵士達に対して軽い舌打ちの対象にもなったが、気にも留めない。
今朝小規模な戦闘が行われたばかりに張り詰めた空気がそこら中に満ちていたとしても、オルファリルにとってはどうでもいい事だった。
崩れている民家の壁をひょいと飛び越え、ラキオスよりはやや冷たい異郷の空気を思いっきり吸い込むと、懐の中を何やらごそごそと漁りだす。
「ん〜〜……あ、あった。これこそソナエアレバウレイナシ、だよねぇ」
悪戯っぽい呟きと共に取り出したのは、この土地でしか取れないという柑橘系の果物。
やや酸っぱいがその中に僅かなすっきりとした甘味があり、厚い皮が剥きにくいという難点を除いても、初めて食べた時からのお気に入り。
普段から厨房でエスペリアの手伝いなどをよくしているので、こういう食材をこっそり掠めても誰にも不審がられない。
既に昼にほど近い時刻。
先ほどハリオンに言付けられた「お使い」がなければ一度戻って用意されている筈の昼食を食べればいいだけの話なのだが、
ずっと正座しっぱなしだったため無駄に余っている落ち着きの無い元気が外で身体を動かす事を強要する。しかし反面、お腹は空いている。
そんな訳で、オルファリルは積み上げられたまま朽ちようとしている資材の山を乗り越えながら、役得の"へそくり"を頬張る。
口中一杯に広がっていく良い匂いと甘さが清々しい。

29 :名無しさん@初回限定 :2007/05/13(日) 20:07:09 ID:+X0zlDYZ0

支援

30 :相生 Anthurium scherzerianum X :2007/05/13(日) 20:08:21 ID:A29+2WyM0


最短距離を突っ切ると、そこには物々しい装置が見えてくる。
エーテルジャンプ施設。
戦場で、いかにも突貫工事で建造された代物にふさわしく見た目はまるで重視されておらず、外壁は所々剥げ、割けた生木の白さが目立つ。
脆い造りはこの時代の一般的な建築平均をも下回り、もしも敵に襲われでもしたらたちまち崩壊しかねない。
だが内部はかなり精巧で、巨大なマナ結晶体が放つ透明な青さが室内を満たし、一種荘厳な感じさえ醸し出しているなどとオルファリルは聞いている。
しかし実際に訪れるのは今回が初めてだったので、「お使い」も二言返事で快く承知していた。もしかしたら見学出来るかも、そんな淡い期待感がある。
「よ、オルファか、遅かったな。聞いたぞ、今朝は大変だったんだって?」
だが、待ち合わせの当人は既に到着し、施設の前の土が剥き出しのまま整備も放置されている空き地のような場所で、
何やらにやにやと笑みを浮かべながら、オルファリルに向かって手を振っていた。
身長にそぐわないややだぶついた白衣。その中に乱暴に着込んだシャツと紺のパンツ。
ぼさぼさに伸び放題の黒い髪の毛をがしがしと掻き、鼻の上に乗せた小さな眼鏡をくい、と癖のように持ち上げる。
その容姿は紛れも無くラキオスが招聘した大陸一の――自称――天才科学者、ヨーティア・リカリオンその人。
見学出来るかもという目論見が外れたオルファリルは少しだけ落胆の表情を見せたが、すぐに思い直すと満面の笑顔で両手を振り、駆け寄る。
「ヨーティアお姉ちゃん、お久しぶり! えっと、どうやって来たの? ……まさか、だよねぇ」
言いながら、ヨーティアが丁度背後に背負っている巨大な建造物を見上げてみる。太陽の光を反射して輝く屋根が眩しい。
「いや、さすがのあたしもこれには乗れないよ。ちゃんと馬車さ。途中遅れそうになったから、新発明の装置でエクゥにちょいと発破はかけたがね」
「あ、あはは〜」
それで陸路にしてはやたらと時間に正確だった訳が解かりはしたが、それ以上は聞けないし、聞かない。
一体どれだけの無茶をしたのだろうと、ただ大粒の汗だけが困ったような笑顔に加算されてしまうオルファリルである。

31 :相生 Anthurium scherzerianum X :2007/05/13(日) 20:10:31 ID:A29+2WyM0


「えっとそれで、今日はどうしたの? お城でレスティーナお姉ちゃんのお手伝いが大変なんじゃ?」
取り合えず、用向きを訊ねる。
スピリットと違い、エーテルジャンプ施設を使えないヨーティアが遠路はるばる駆けつけたのだから、何か重大な使命があるに違いない。
その伝言を承るべくオルファリルはここまで「お使い」に来ている。しかしヨーティアはそんなオルファリルに対し、意外すぎる受け答えを返す。
「ああ、それだ。あー、本当はイオが先行している筈なんだが……知らないか?」
「イオお姉ちゃん? イオお姉ちゃんも来てるの? うーんでもオルファ、ずっとセリアお姉ちゃんのお説教聞いてたから」
「あっははは、そうかいそうかい。ま、いいさ、用があるのはオルファ、お前さんにだよ。あたしはその為にラキオスからはるばる、ここまで来たんだ」
「――――はい?」
オルファリルが首を傾げると、お下げを纏めた黄色い髪留めもくるくると揺れる。
唐突に現れた天才(自称)科学者の唐突な一言に、思考は一旦完全に停止していた。
既に、エーテルジャンプ施設を見学したかったなどという欲求はすっかり抜け落ちてしまっている。

32 :相生 Delphinium×belladonna X :2007/05/13(日) 20:13:29 ID:A29+2WyM0


事の顛末が明らかになるにつれ、最初は五人並んでいた仲間が一人また一人と釈放されていく中、
おやつどころか昼食を挟むのですら忘れたかのようなセリアのお説教は、恐るべき事に太陽が沈みかけるまで続いた。
「いい、だから――――」
「もういいじゃんセリアぁ、結果的には勝ったんだしぃ」
「結 果 的 に 助 け ら れ た の間違いよ、ネリー。考えなさい、貴女達の熟慮に欠けた行動がどれだけ部隊に迷惑を」
「はうぅ……お腹空いたぁ」
「引いてはユート様にまで――――何か言った?」
「わっ! な、なんでもない、ませんっ」
「そう。だからいい? 人と違って、私達スピリットに負けは許されないのよ。百戦百勝しようとも、一敗地に塗れれば――――」
「……あうう」
最終的に首謀者と認識され、たった一人残されたのが丁度お昼すぎ。
ぐったりしつつネリーなりにタイミングを見計らい半端な抵抗を示しても、一蹴されて敢え無く玉砕。
もうその時点で精神的にもお腹的にもほぼグロッキー状態だったのだが、セリアの執拗さは尋常ではない。
自らも空腹だろうに一向に手、いや口を緩めようとはせず、目を瞑り人差し指を立て、延々と、且つ淡々と、且つ時折激昂しては語り続ける。
しかも朝から聞かされ続けて頭がぼーっとしているネリーにはただでさえ何を言っているのか解らなくなっているのに、
それに輪をかけてセリアの語る内容はにはどこで覚えたのかハイペリアの言い回しまで含まれ、難易度を増すばかり。
おまけに『熱病』が傍らで光りっぱなしなので居眠りすら許されない。新手の精神攻撃かと疑いたくもなってくる。
お説教などには慣れたものだったが、今回は今まででもダントツの長丁場だった。
しかしそれが『静寂』の勢力が増しているのを危惧しての事だなどとは、その間の記憶を失っているネリーには知る由も無い。

33 :相生 Delphinium×belladonna X :2007/05/13(日) 20:18:08 ID:A29+2WyM0


結局ネリーが解放されたのは、セリアが喉を涸らして咳き込み、そこでようやく空腹感に気がついた夕暮れ時になってからだった。
「はぁぁ、酷い目に会ったぁ〜……」
朝の戦闘で所々泥が付き、雨に濡れたまま正座をさせられ、そのまま乾いたせいで皺になってしまった戦闘服のファスナーを下ろす。
「オルファやニムは真っ先にネリーのせいにして逃げ出すし、ヘリオンやシアーまで簡単に降参しちゃうし。……みんな、酷いよね」
細い紐を何本も束ねて編んだハリオンお手製の黄色い髪留めを解くと、肩口から腰の辺りまで散らばっていく綺麗なストレートヘアー。
その内の一部が肩から前へかかってきたので払うついでに、普段は頓着した事などない毛先をなんとなく指で摘みあげてみる。
「……ありゃ?」

 ―――― 鮮やかな蒼色の筈のそれはどういう訳か、いつもより所々少し黒味がかってきていた。

「泥? じゃないよね。なんだろコレ」
ぶつぶつと呟きながら浴場への扉を開くと、もわっとした湯気で視界が一瞬乳白色に変わってしまう。しかし、ネリーは気づかない。
しきりに一房の髪を弄っている。湯船に浸かってからも、首を捻ったまま。こすっても落ちないその"汚れ"が気になってしょうがない。
スラリと伸びた健康的な肢でぱしゃぱしゃと波立たせた湯面に、下ろしたままの髪が浮かび、流れている。
「敵の攻撃……じゃないよね。やだなぁ。ねぇシアー? ってそっか、居ないんだっけ」
ネリーは丸い肩を軽く竦め、ほぅ、と寂しそうな吐息で湯気を追いながら二の腕をさすり、お湯を馴染ませる。
別に、肌の手入れとかを意識している訳ではない。ただ、密かに憧れているセリアの癖を真似ているだけの仕草。
しかしその効果なのか、僅かに日焼けした腕を含むネリーの全身はつるつると滑らかさを保ち続けている。
「うーん……シアーが危なかったから飛び込んで……あ、あれぇ?」
気がつくと、アセリアとセリアがいた。それから怒られた。その間の記憶が無い。確か強い相手とも戦っていたような。
指を折りながら今朝の一件を思い出そうと頑張っているうちに、顔が真っ赤に染まっていく。慣れない思考作業に、弊害として起こる知恵熱。
「うーんううーん……ぶくぶくぶくぶく―――――」
既に小一時間は湯船に浸り続けていた。

34 :相生 Delphinium chinensis Y :2007/05/13(日) 20:20:25 ID:A29+2WyM0


「そう……大変だったのね」
シアーの話を全て聞き終えた後でもクォーリンは優しい笑顔を崩さずに、仕草だけで心からの同情を伝える。
スピリットである以上、神剣との関係は切り離せない。それは無意識になのか、いとおしげに自分の神剣に触れている指先からも判る。
「あ、でも……うん。どうすればいいのかなぁ。判らないよ」
シアーはいつの間にか初対面の相手に引き込まれるように、夢中になって一人で喋っている事が不思議だった。
いつもは勝手気儘に振舞うネリーの影に隠れ、言いたい事も上手く言えない自分の気性が嫌になってくるのに、
何故か思いもよらなかった本音のようなものが次々と浮かび、そしてすらすらと口から溢れてくる。
「んー……少し、歩きませんか?」
クォーリンは膝元に視線を落とし、静かに立ち上がるとのびをするように軽く身を逸らした。
細身の身体がしなやかに撓み、胸当ての奥で波打つ双丘が陽の光を微妙に屈折させ、
濃い茶色のワンピースの縁に控えめに施されたエメラルドグリーンの刺繍模様をきらきらと反射させる。
そこから伸びている女性らしい柔らかい曲線を辿ると大きなスリットから惜しげもなく晒している太腿は意外にも日焼けなどが一切無い。
驚くほどしっとりと白く、むしろ透き通るような肢は脛の所できゅっと締まり、そして服と同じ色の皮製のブーツへと吸い込まれていく。
肌色もだが、肌理の細やかさまで保たれているのがシアーにはとても羨ましく見えた。
「……ね?」
そうしてぼーっと見上げていると、ついさっきと同じような構図でクォーリンは屈み、そっと手を差しのべてくる。
「……うん」
逆光になって翳った彼女の微笑みに釣りこまれ、シアーはその手を掴んでいた。

35 :相生 Delphinium chinensis Y :2007/05/13(日) 20:22:52 ID:A29+2WyM0


マロリガンの敗戦の後、光陰達と一緒に投降したクォーリンは、そのままラキオス軍の編成に組み込まれた。
ただ、エトランジェとは違いただのスピリットである彼女に対し、いきなり実戦部隊に配属する程軍令部というものは甘くは無い。
光陰と悠人の友誼をレスティーナ女王が知っているせいか待遇自体は決して悪くはないのだが、それでも彼女が任命されたのは後方輜重支援補佐。
元参謀、それも稲妻部隊の代名詞としてその名を轟かせた程の戦闘力を持ちながら、あてがわれたのは曖昧な階級が示す通りの閑職だった。
一緒に投降した仲間達もそれぞれ今までにラキオスが占領した「地方」の治安維持という名目でばらばらに振り分けられ、
煩雑な書類手続きが必要な外出はおろか、日常に於ける唯一の連絡手段である書簡の往復も厳しく制限されている。
唯一の救いといえばここケムセラウトに配置されたという事だが、話しかけられる相手である光陰と今日子はたまにしか帰ってはこない。
同じく一度剣を交わした事のあるウルカにも何度か声をかけようかとも思ったが、その都度何故か引け目を感じ、ためらっていた。
他のラキオスのスピリットとは面識が殆ど無く、また、彼女達も戦いに忙しない毎日を送っているのでどうしても遠慮してしまう。
敗残のスピリットとして当然の事と半ば言い聞かせるように諦めながらも、非常に孤独な日々の中、黙々と任務を果たすだけの日常。
クォーリンは、次第に磨り減っていく自分の中に初めて芽生えた"孤独"という感情をどう扱っていいのか判らず戸惑っていた。
ふと思い立ち、気分転換にと出かけてみた郊外で木陰に蹲るラキオスのスピリットを見かけた時に思わず声をかけてしまったのは、
或るいは初めて"自分の声"というものを聞き、素直に従った瞬間だったのかも知れないが、当の本人は全く自覚してはいない。
彼女にしてみれば、ただ寂しそうに丸める背中に今の自分を重ね、放って置けなかっただけだった。

36 :名無しさん@初回限定 :2007/05/13(日) 20:24:21 ID:+X0zlDYZ0

四円

37 :相生 Delphinium chinensis Y :2007/05/13(日) 20:26:06 ID:A29+2WyM0


「この辺も、平時はきっと賑やかだったのでしょうね」
静まり返った街並みを眺めながら、のんびりと呟く。後ろからちょこちょこと付いてくるシアーとの歩幅の違いに気をつけながら。
シアーは何故か、並んで歩こうと速度を落とすと同じ距離を保とうとして後退する。そのくせそれ以上は離れようとはしない。
まだ警戒を解いてはいないのか、小猫のように慎重な視線を背中に感じながら、クォーリンはそれでも独り言のように話し続ける。
「戦えば、それだけ失われていく。それはきっと、人もスピリットもそれ程変わらないのかもしれません」
「……」
「家族、仲間、財産、居るべき場所。それに私達にはよく判りませんけど、恋人、友達……」
「……」
「でも私達は人と違い、逃げる訳にはいかない。戦うのが、スピリットだから。……だけどきっと、それだけじゃありませんよね?」
「……え?」
「人の命令だけじゃない。理屈じゃなく、守りたいものがあるから。守りたい人がいるから。だから戦う。それは、いけないこと?」

38 :相生 Delphinium chinensis Y :2007/05/13(日) 20:28:33 ID:A29+2WyM0


「え、え?」
少しづつ反応を示すようになってきたシアーと急に振り返ったクォーリンの、紺碧とエメラルドの視線がぶつかる。
クォーリンは少し照れたような表情で軽く舌を出しながら、恥ずかしそうに神剣を両手で持ち直していた。
「あ、えっとあの、コ、コウイン様の受け売りなのですけれど。助けたいのなら、力ではなく、心を強く鍛えなくてはと」
「?……心、なの?」
急にたどたどしく幼い口調になってしまったクォーリンに不自然さを感じながらもシアーは訊き返す。
今まで、そんな話をしてくれた人はいなかった。
だが世間話のようだった今の会話の中に、どこか自分にとって大切な何かが隠されているような。
そんな漠然とした予感がいつの間にかクォーリンの服の裾をぎゅっと握り締める行為にまで及ばせている。
向かい合うと、明らかにクォーリンの方が背は高い。それでも見上げるシアーの表情に、もう怯えるような色は無くなっている。
「鍛える……心を?……そうすれば、ネリーを守れる? シアーにも守れる…かなぁ?」
縋りつくような口調。細い路地を吹き抜けてきた風が二人の間に心地良い緑の匂いを運んでくる。
クォーリンは頬に貼りついた細長い前髪を軽く掻き分け、そしてしっかりと頷いた。自分の神剣を、軽く『孤独』に合わせてみせる。
「良かったら、お友達になりませんか? 一緒に、強くなりましょう?」
「……うん!」
訪れた時には灰色にしか感じられなかった光景が、ささやかな彩りを添えつつあった。シアーにも、そしてクォーリンにも。

39 :相生 Nerium indicum Mill Y :2007/05/13(日) 20:30:52 ID:A29+2WyM0


光陰は、尚も視線を合わせず飄々と話し続けている。
警戒しつつそれでも耳を欹てているニムントールの気配を背中に感じながら。
「それでだな、美味い空気を吸いながら旨い弁当を食べる。鳥の囀り、草の匂い。生きとし生けるもの、これまた自然に還るべし」
「……」
「年中ギスギスと凝り固まった頭から生まれてくる思考なんざ、ろくなものが無いぜ。時には癒しも必要なんだ」
「……」
「まぁでもグリーンスピリットであるニムントールちゃんには今更というか釈迦に説法なんだけどな」
「……ちゃんとか言うな」
「でもな、いるんだよ。俺達の世界でも、わざわざそういうのを壊したがる奴は、さ」
「……」
「中途半端に切り倒した生木の棘で怪我をした馬鹿もいたっけか。徒(いたずら)に傷つけて、奴らは一体何を求めてるんだろうな?」
「……」
「せっかくありのままで気持ちよくハイキングも出来る恵まれた状況を捨ててまで、さ」
「……」
ニムントールは、聡い。
光陰がわざと混ぜて使うハイペリアの喩えなどはさっぱり解らないが、それが自分の何かを揶揄しているのだとは既に悟ってしまっている。
しかしその遠回しさ加減が理解の速い彼女にしてみれば逆に面白くない。
いつでも『曙光』を使えるように腕を折り畳んでから吐き捨てるように問い返す。
「……それで?」

40 :相生 Nerium indicum Mill Y :2007/05/13(日) 20:33:03 ID:A29+2WyM0


「ん?」
「だか――――ぁ」
光陰は、傍らに咲いていた白く小さな花の群れから一房だけを摘み取り、茎を指で転がしながら眺め、話している。
どこか遠く、何か見えないものに語りかけているような優しい目で。それでいて、ちゃんと心の中で温められた言葉を使って。
つい睨みつけてしまったが、その表情が酷く寂しそうに見えてしまったのに驚き、肩透かしを食らったような気分にされてしまう。
「〜〜だから、ニムはそう見えるってことなんでしょ? いけない? 戦うのがスピリッ」
「ニムントールちゃんはあれだな、いわゆる天才肌ってやつなんだ」
「……え?」
「何でもこなしちまうもんだから、かえってつまらない訓練じゃ熱くなれないんだろ?」
「あ、ちょ、ちょっと」
光陰はいきなりにっと笑い、綺麗に刈り揃えられていた緑柚色の髪をがしがしと撫でてくる。いきなりのことで、ニムントールは抵抗が出来ない。
目を白黒させながら、折角用心にと引きつけておいた『曙光』を振るう事も忘れ、ただされるがままになってしまう。
「がむしゃらなのは、嫌いじゃないぜ。自信を持つのも悪くない。たださ、俺達はニムントールちゃんが大好きなんだってのは忘れないでくれよ」
「う、あぅ」
いつもの憎まれ口も上手く出てこない。ニムントールの頬は、いつの間にか真っ赤に染まってしまっている。
しかしそれが憤りからではなく照れからなのは、くすぐったさを誤魔化した困ったような表情からも見て取れる。
「何かを守りたいって奴は、えてして自分の背中には無頓着なものだけどな。たまには振り返ってみるのも一興だとは思わないか?」
「あう、あうぅ〜……」
ふきぬけていく清々しい風が、押し殺した唸り声ですらも運んで行ってしまう。

41 :名無しさん@初回限定 :2007/05/13(日) 20:33:40 ID:BU6MVk1n0

支援〜

42 :相生 Nerium indicum Mill Y :2007/05/13(日) 20:36:11 ID:A29+2WyM0


やがて光陰は手を離し、ゆっくりと立ち上がる。
よっ、と軽く『因果』を肩に乗せた時には踵を返しているので座ったままのニムントールからは丁度見上げるような形になった。
「ファーレーンだけじゃないぜ。ま、俺に言えるのはこんなとこだ。良かったら、ちょっとは考えてみてくれよ」
「……うん」
ぼーっとした緑柚色の瞳が立ち去ろうとする背中を追いかける。ゆっくりと揺れ、小さくなっていく肩。
「……あ」
ふと、我に返ったニムントールは不思議な行動を取った。
『曙光』も放り出したまま、ぴょんと身軽に瓦礫から飛び降り駆け寄ると、光陰の服の裾を遠慮がちに掴む。
いきなりくいっと引っ張られて振り向いた光陰の表情は、流石に驚きの色を完全には隠しきれていない。
「ん? どした?」
「あの、さ」
「ん?」
「あのさ、ニム……どうしたら、いい?」
「……ああ、良い子だ。……そうだな。とりあえずは俺達にも守らせてくれると助かるかな。ファーレーンと一緒に、さ」
「……うん。わかった」
地面を見つめたまま蚊の鳴くような声で囁くニムントールの髪を、光陰はもう一度優しく撫でてやる。
さらさらと気持ちよく流れる髪の下で、必死に服の裾を握ってきている小さな白い指が緊張で震えているのが見えた。

43 :相生 Anthurium scherzerianum Y :2007/05/13(日) 20:39:57 ID:A29+2WyM0


オルファリルとヨーティアの二人は施設を離れ、街の外周をぐるりと取り囲む城壁に沿うように歩いている。
「なるほどねぇ、こうして耐久性を向上させた訳か。弾性は減るんだがな……ふん、それなりに工夫が施されてるじゃないか。凡人にしちゃよくやってるよ」
「……お姉ちゃん、壁に向かって何ぶつぶつ言ってるの?」
「うん、いい質問だ。オルファ、天才は常に凡人を撫育しなければならないという重大な歴史的役割を担っているものなのさ」
「? ブイク……? レキシテキ?」
「ああ、そうだな。解かり易く言えば、オルファはいつもエスペリアを手伝って皆の食事を用意しているだろう?」
「え、あ、うん。オルファ、お料理好きだよ。パパに美味しいって言われるとすっごく嬉しいんだっ」
「そこで、だ。もしもエスペリアもオルファも忙しくて料理が出来ないとしたら、どうだ?」
「う〜ん……みんなお腹空いちゃう。そんなの可哀相だよ」
「そうだろう? つまり、エスペリアやオルファは食事作りをさぼっちゃいけないんだ。でもそれは、強制されたものなのかい?」
「え、う、ううん、ううん! オルファ、好きだからやってるだけだよ?」
「つまり、そういうことさ。あたしは好きで凡人の撫育をしているんだ。こうして創造物をチェックしてね」
「う〜ん……やっぱり難しすぎて、オルファにはよく解かんないよ」
街の城壁とはいえ、その規模はかなり大きい。二人はもう半刻程は話し込んでいるが、まだ外周の1/4にも到ってはいない。
ヨーティアは先ほどオルファリルに分けて貰った果物をあっという間に平らげてしまっていたが、味ついての感想などは一言も無かった。
ただそれは勿論、彼女が元々サーギオスの出身だった為にその種の果物は別に珍しくも無かったというだけの話で、他意は無い。

44 :相生 Anthurium scherzerianum Y :2007/05/13(日) 20:42:26 ID:A29+2WyM0


「どうだいオルファ、戦場は。怖くはないか?」
「ふぇ? ううん、楽しいよ?」
相変わらず壁を熱心に見つめながら、時々そんな質問をヨーティアはしてくる。
そしてオルファリルは、そんな彼女の白衣の背中を追いながら適当に答えていく。
「ほう、そうか。それで、どんな風に楽しいんだい?」
「そうだね……ん〜例えばね、みんなで敵さん殺して遊ぶんだ」
「――――っ」
短く息を吸い込んだヨーティアが歩みを止めた事に、頭の後ろに手を組みながら空を見上げていたオルファリルは一瞬気がつかなかった。

「――――いいかいオルファ、よくお聞き」
ヨーティアは慎重に、そして優しく細身の肩へと手を添える。
人間の、同年代の少女となんら変わる事の無い、年頃の娘らしい華奢な丸みと高めの体温。
そこから伝わる温もりはいかにも脆く感じ、服越しにでも確かめられる滑らかさはほんの少し力を篭めれば儚く砕けてしまうようにも錯覚させる。
しかしこの細い2本の腕が一たび覚醒し――もしもこの仮説が正しいならばと戦慄を禁じえない想像が走る――咆哮してしまえば、
並みのスピリットなどでは比類にならない程の破壊と再生をこの大地にもたらしてしまう。この、無邪気に見上げてくる愛くるしいPeigon's Bloodの瞳によって。
「戦いは、遊びじゃない。遊びじゃないんだよ。……オルファは、誰も死なないように頑張っているんだろ?」
「う、……うん」
懼れているのは世界の崩壊か、それとも為したその後、自責の念に押し潰されるのが目に見えている幼い心か。
どちらにせよヨーティアにしてみれば、科学者としての矜持としても、ここで言葉を選び損ねる訳にはいかない。
そして彼女自身の人生において、二度目の過ちを繰り返さない為にも。

45 :相生 Anthurium scherzerianum Y :2007/05/13(日) 20:44:50 ID:A29+2WyM0


「ああ、それは正解だ。だけどな、少しでいいんだ。少しだけその気持ちを、敵にも向けてはあげられないか?」
「敵さん? なんで? 敵さんやっつけなくちゃ、オルファ達が殺されちゃうんじゃないの?」
「そりゃそうだ。うん、そうだな、オルファは正しい。それが正論ってもんだ。でも、そうさね……オルファの剣は、『理念』だろ?」
「へ? うん、そうだよ」
「意味は解かるか? 『理念』っていうのは、つまり簡単にいうと、ここだ」
ヨーティアはゆっくりと、朱色の戦闘服を指でなぞっていく。
辿り着いたのは、紫の刀身を両手で握り締めているオルファリルの身体の中心。
「――――心臓?」
「そう、心臓だ。オルファにも、あたしにも大事なもの。人もスピリットも、ここを潰されれば死ぬ。急所ってやつだ。だけど大切なのは、他にも理由がある」
「理由……他にも?」
「そうだ。オルファは、大事な仲間のここを守る為に頑張ってる。それは何故か。これは、1人に1個しか無いものだからだ。失われれば、それでおしまい」
「……うん」
「だから、必死になって守る。それは敵も味方も同じだ。大事にしない奴から死んでいく。あたしはな、オルファ。お前さんに、そんな風になって貰いたくないんだよ」
「……」
「……」
「オルファ……大事にしてないの、かな?」
「ああ、違うよ。そんなことはないさ。オルファ、言ったろ、『理念』なんだよ。戦争をしているんだ、殺すな、とは言わないし、言えない。だけど」
急にしょぼくれたように俯いてしまったオルファリルを、ヨーティアは優しい瞳で見つめる。
心臓を指差していた掌は、今は自然に日差しに赤く映える小さな頭の上を静かに撫でながら。

46 :相生 Anthurium scherzerianum Y :2007/05/13(日) 20:48:21 ID:A29+2WyM0


「……そうだな、お前さんはスピリットだ。そうだろ?」
「う、うん」
「あたしなんてただの人間さね。こうして説教たれているだけでも、実は命がけだ。気に障ったなら、いつでも殺していいんだよ。お前さんにはそれが出来るんだから」
「っ! そ、そんな! 出来ないよっ! オルファ、ヨーティアお姉ちゃんに怒ってなんかないもんっ!」
「じゃあ、怒ったら殺すのかい?」
「殺さないよぅ!……ぁ」
「そう、それが正常な思考だ。普通、感情が『理念』を越えない限り、人は人を殺しはしない。あたしはスピリットもそうだと信じている。例えそれが、敵でもね」
「敵さん……ヨーティア、お姉ちゃん?」
「考えて欲しいんだ。軽々しく扱ってはいけない、という事をさ。奪えば、代償は必ず訪れる。経験則じゃないぞ。これは、真実だ」
「うん……解かったよ。ううん、本当は難しくてよく解かんないけど。でもね、オルファはヨーティアお姉ちゃん、好きだから」
「……いい子だな、オルファは」
「え、……えへへ」
言葉で、理屈で人が動くことは無い。
それは過去の経験からも、ヨーティア本人が一番良く知っている。しかしそれにもかかわらず、これ位の説得しか出来ない。
笑顔で手を振るオルファリルの影が小さくなっていくのを見送りながら、ヨーティアは寂しそうに呟く。
「撫育、とは我ながらよく言ったものさね。所詮科学者なんて、無力なものだよ。……なぁ?」
日光に反射した『理念』の紫が鮮やかに映え、懐かしい研究所の平和な一風景が目に飛び込んでくる。
それが幻だと理解するまでに、暫く時間が必要だった。

47 :相生 Lemma U :2007/05/13(日) 20:51:22 ID:A29+2WyM0


再び呼び出された夜。
不思議に独りしか居なかった居間で軽い夜食を摂った少女は、その違和感を微かに感じながらも男の部屋をノックする。
「……入りなさい」
「失礼しま……ヴッ」
ノブに手を当てたまま、開かれた扉の向こうから漂ってきた異臭に、少女は一瞬顔を顰める。
生臭い、何か血のような匂い。それに混じる、青臭い匂い。室内にはくまなく、それらが織り重なって充溢している。
部屋の中央で椅子に座り、平気でにやにやとこちらを見つめている男の嗅覚が信じられない。
「おや、どうかしましたか? ク、クク……」
「あ、い、いえ。なんでもありません」
少女は本能的な危険を感じ、それ以上は一歩も進めずその場で取り繕う。
しかし今は彼女達の指揮官であるこの男に対してそれ以上の抵抗は許されない。
泳いだ視線が部屋の隅に設置されているベッドの上で皺だらけになったままのシーツへと自然に向けられていく。
『ウ……アア……』
「?」
誰も、居ない、ハズ。霞んで霧がかかったかのような頭のどこかで鳴り響く警鐘。
盛り上がったシーツの中で、微かに波打つモノ。そこから目を離せなくなってしまう。脚が勝手に震えだすのをどうしても止められない。

48 :相生 Lemma U :2007/05/13(日) 20:54:21 ID:A29+2WyM0


「……ふむ、これが気になるのですか?」
視線に気づいた男が面白そうに立ち上がり、ベッドに近づく。
少女は無意識に頷きながら、その動きをまるでスローモーションのように追う。
「いいでしょう、自分の行く末を知る権利位は貴女達にもあるのでしょうから……ねっ!」
男は勢い良くシーツを捲る。ふわり、と意外と軽く舞い上がる白い布。その奥から見えてくる褐色の肌。
それは、見慣れた顔。つい半刻前、哨戒を交代した時に声を掛け合った、同じ部隊の仲間。
散り散りに乱れた黒髪と汗。むっとするような熱気。全裸。肢の付け根から滲み出ている鮮血。ときおりぴくっと反応する肩。
それら全てが一度に飛び込み、現実感を失わせしめる。いつの間にか蹲っていた。震える頬を抑える両手もまた震えている。
「怖がることは何もありません。貴女にもすぐに、悦びと強さを与えて差し上げます。……クッ、ククク……」
ベッドの上で、瞼が開く。しかしその虚ろな瞳は何も映し出してはいない。深く、沈んだ目尻から、つつーと一筋流れ落ちる涙。
こつ、こつ、こつ。杖を突く音が近づいてくる。最早隠しもしない男の笑い声が部屋中に甲高く響く。迫る、無骨な手。
戻らなきゃ。外で、交代を待っている仲間がいる。ここは、違う。こんなのは、私のいる場所じゃ。違う。違いますよね、隊長――――
「さて。始めましょうか」
「――――ッッッ!!」
未だべっとりと生臭い粘液に塗れたままの男の手が頬に触れてきた時。少女は、声にならない叫びを上げていた。

49 :相生 U :2007/05/13(日) 20:56:52 ID:A29+2WyM0


「結果的に敵の陣容は乱れ、防御線にも多大な影響を及ぼしています」
今後の作戦方針を決める会議の壇上で、エスペリアは指摘する。
「この機を逃がし、帝国に猶予を与えるのは得策ではありません。従って、早急な進撃作戦を提言致します」
「それはつまり、すぐにでも行動を起こした方がいい、って事かエスペリア」
戦略地図が広げられたテーブルを挟んで座っている悠人が訊ね返す。
「はい。……ですが」
「問題は、嬢ちゃん達だな。あの調子じゃ懲りてはいないだろ。連れていくのか?」
特に意味もなく窓の景色を眺めつつ目を細めていた光陰が口籠もるエスペリアを引き継ぐ。
「……打撃を受けたとはいえ、ここは帝国領土。補充は充分と見るべきでしょう。我が軍も、当然これ以上の戦力の削減は避けるべきかと」
「俺は反対だな。こんな事は言いたくないんだが、今の彼女達じゃ足手まといにしかならない」
「特にあの、ネリーだっけ。あの娘、このまま戦い続けたら――――」
「……」
「……」
今日子の発言が、部屋に沈痛な空気を垂れ込めさせる。
悠人が深く腰掛け直した木製の椅子が軋み、響かせたぎしっという音が問題の深刻さを物語っているようだった。
それまで光陰の隣で沈黙を保っていたクォーリンがエスペリアに問いかける。
「想定される戦場は、街道正面のみなのでしょうか。つまり、作戦上の遊撃や囮を今回は必要とされるのですか?」
「え? はい、あ、いいえ。そのプランはありません」
やや慌てたような仕草で地図の上に置いた駒のようなものを動かしながら、エスペリアは答えていく。
「我が軍は、多くても五部隊の編成。これを更に割くよりは集中して一点のみに重圧を与える方が有利と思われます」
「マロリガンで、俺達がやられた戦法だな。守る側は全ての進路を抑えておかなければならない。だが、攻める側は自由だ。あの時はまいったぜ」
「はい……あ、いえ申し訳ありません。……そこで今回は街道を進み、壁の手前で左手に広がる森へと侵攻を開始します」

50 :相生 U :2007/05/13(日) 21:01:20 ID:A29+2WyM0


「森? なんでまたそんな進み辛い進路を選ぶんだ?」
「おいおい悠人。まさか馬鹿正直に敵の主力が待ち構えていると予想される正面から殴りこむつもりじゃないだろう?」
「ほんっと考え無しなんだから、悠は。そんな事してたらかえって時間を無駄にするでしょうが」
「ゔ、なんだよ二人とも。俺はただ素直に疑問に思ったから」
「はいはい。バカ悠は大人しくエスペリアお姉ちゃんのお話を聞いていまちょうねぇ〜」
「誰がバカ悠だっ!」
「ふふ、それにエスペリアさんの考えでは、緑の加護の多い森の方が死傷者が出にくい……そう、お考えなのでしょう?」
立ち上がりかけた悠人の前で、それを制するようなタイミングを捉えたクォーリンがエスペリアに微笑みかける。
「え、ええ。それもありますが、他のマナの動きを抑える意味もあります。その、水、などの」
「ちょっと待った、それは後で考えるとして。その進路からで、法皇の壁に直接侵入は出来るのかしら?」
「お、今、今日子がいい事を言った。どうなんだエスペリア、その辺の調査は済んでいるのか?」
「はい、コウイン様。丁度というか、オルファ達のお陰でセリアとファーレーンが潜入出来ました。上空からの情報だけですけど」
地図の中央を一本貫かれた街道から、やや外れた向かって左側。一見何も記されていない壁の一部をエスペリアは指差す。
「ここに、壁の崩れた部分があります。恐らくは過去の戦闘で破損したまま復旧が間に合わずに残されたものかと」
「ん? 俺が留守の間に、そんな事までしてたのか?」
「ああ悪いな。お前の指示無しだが、勝手にやらせて貰った。このまま膠着していても埒が明かないからな」
レスティーナとヨーティアの要請により、止むを得ず悠人がケムセラウトを離れている間に、戦況は一変している。
光陰と今日子の奮戦により法皇の壁へと続く街道上にずらりと並べられていた敵の布陣は大方一掃され、
その最後の防御線も今朝の小競り合いで乱れ、効力を喪いつつある。
とすれば次の段階を考えるのは代行とはいえ指揮官としての義務。悠人はぽん、と光陰の肩を軽く叩いて頷く。

51 :相生 U :2007/05/13(日) 21:03:21 ID:A29+2WyM0


「いや、いいんだそれは。エスペリアにも相談済みなんだろ? 二人とも無事だし申し分無いよ。たださ」
言いかけて、悠人は黙り込む。上手く言えないが、とんとん拍子に進みすぎた状況が、却って部隊に負担を強いてはいないか。
そんな事がふと浮かんできてしまい、連想されるように今朝アセリアから聞いたネリーの変化をも思い出してしまう。
エスペリアから報告されたオルファリルの不安定さやウルカから聞いたヘリオンの慌てっぷり、
先程今日子から受けたニムントールの先走る性向やクォーリンの話すシアーの怯えや心配など、不安要素は尽きない。
「……俺はすぐにでも帝国を、そして瞬を攻めたい。佳織に会いたい。だけど、それだけじゃもう、意味は無いんだ」
「うん……そうね。よく言ったわ悠。成長したじゃない」
「ちゃかすなよ。悠人、それは五人を置いて行くという隊長としての最終意思決定と解釈してもいいんだな?」
「ああ。みんな無事で、帰る。絶対に。まずはそれからだ。佳織も、瞬も」

52 :相生 U :2007/05/13(日) 21:06:17 ID:A29+2WyM0


「エスペリアさん、早速作戦の修正を。微力ながら、お手伝いさせていただきます」
場の空気を機敏に掴んだクォーリンがすかさず身を乗り出し、光陰の口調もからかうようなものに変わる。
「お、流石は話が早いなクォーリン、任せたぜ。エスペリア、クォーリンがその気になれば百人力だ。元稲妻部隊隊長として保障する」
「コ、コウイン様、そんな」
「いやいや、これで名参謀なんだぜ。前の戦いでも、俺は指示を出していただけだしな」
「へえ。そうなのか? 光陰」
「ああ、大将がキレてからは殆どクォーリンが一人で部隊の指揮や作戦の遂行をしていた」
「はうぅ〜」
「腕もたいしたものよ。アタシはよく覚えていないけれど。……そうだ、今回、クォーリンも参加させられない? 悠」
「そうだな。っていうか、頼めるか? クォーリン」
「え、あ、でも」
「ふふ、それではクォーリン、お願いします。作戦の決行は明日ですから、急がなければ間に合いませんよ?」
自分が起草しようとしていた作戦は見事に否決されてしまった形のエスペリアだが、何故かその表情にはすっきりとした笑みが浮かんでいる。
「じゃ、俺はレスティーナに神剣通話で掛け合ってくる。後方輜重……なんだっけ? そんな部署のままじゃ話にならないだろ?」
「あ……は、はい! 宜しくお願いしますっ!」
笑いかける悠人に、クォーリンは勢い良く頭を下げていた。少し癖のある緑色の髪の上で、ハイロゥが活き活きと輝き始めている。

53 :名無しさん@初回限定 :2007/05/13(日) 21:09:34 ID:+X0zlDYZ0

   へC_Cへ
.  ( Z|・∀・|.  )
     |__|Z   <シエンマン参上!
      くく

54 :相生 Bidens atrosanguineus Y :2007/05/13(日) 21:09:45 ID:A29+2WyM0


「あ痛たたぁ……もうナナルゥさんってば、容赦が無いんですから」
未だに残る二の腕の痣をさすりながら、ヘリオンは呟く。
浴場に篭る湯気は疲れや筋肉痛を癒してはくれる。が、しかし柔肌に残る青い跡までは消してはくれない。
溜息をつきながら恐る恐る足の爪先だけを一度湯船に浸し、お湯の温度を確かめ、大丈夫だと判断してから慎重に浸かっていく。
脹脛までは痺れるような熱さを感じて飛び上がりそうだったが、我慢して身を沈めてみると腰の辺りから大分楽になってきて、
肩口を埋める頃には開放感とじんわりとした染み込んでくるような安心感に身を委ねることも容易になっていた。
「……ふあぁ……。ああ、気持ち良いなぁ〜」
目一杯に両腕両脚を伸ばし、頭の後ろだけを縁に預け、軽く浮かぶ。仮設とはいえ、浴場には充分の広さが設けられている。
それはスピリットという種族が元々人間よりも病気には弱いという体質を保有している為その環境には特別の配慮が施されているからで、
一方ではたまたまラキオスの建設技術者に凝り性の者が居たのが発端だとかという噂もあるが、どちらにせよ構わないとヘリオンは思う。
たとえそれが戦力としての厚遇だとしても、四肢をめいっぱいに広げてもまだ余りある湯船に浸って周囲を眺めてみれば、
瑞々しい香りを放つ木造の壁や天井や丁寧に繋ぎ合わされた木目の隙間、綺麗に磨かれた床等など致せり尽くせりで申し分ない。
ラキオス産の香草を使った白濁色の湯を両手で掬ってみると森の香りが更に広がり、気分を落ち着かせてくれる。
常に戦いと訓練の中にいるのにラキオスのスピリットが皆肌理細かい肌を持ち合わせているのは、一つにはこの環境のおかげでもあった。
「……ふぅ……んっ」
手を交差させたまま指先を絡め、ゆっくりと天井に向けて伸ばす。今は下ろしている黒髪が少し絡んでいるその隙間に見える青い痣。
湯気の向こうでぽちゃんと滴り落ちてくる水滴が丸い肩に冷たい。そうしてヘリオンはぼんやりと考え込む。

55 :相生 Bidens atrosanguineus Y :2007/05/13(日) 21:11:49 ID:A29+2WyM0


「私って弱いんだなぁ……まだまだ……」
唯一自信を持ちかけていた速さ。それがあっけなく打ち砕かれた今日の訓練もだが、特に思い知ったのは今朝の戦闘。
振り返ってみれば迷子になったり助けられたりしてばかりで、結果的に敵は退いたものの、それはこちらに強力な援軍が来たから。
神剣に支配されかけたネリーを止めることも出来ず、シアーがいなければ誤認した『静寂』に最悪殺されてしまっていただろう。
「ネリー、強かったなぁ……あんなんでも第八位ですし。『失望』は第九位……はうっ」
自分で言っておいて情けなくなり、しょんぼりと項垂れる。
そもそも最初から位だけで言えばケムセラウトに着ているスピリット隊の中で、『失望』より劣る位の神剣の持ち主などは一人も居ない。
しかしヘリオンは勝手に凹み、顔を半分湯船に沈め、ぶくぶくと泡立たせてしまう。窓から流れてくる風がゆっくりと湯気を払っていく。
「ユート様は位なんて関係ないって仰って下さいましたけど。でもでも、ネリーにも勝てないんじゃいつまでたってもお役に」
「ふにゃぁ〜ネリーがどうかしたぁ〜?」
「はい、ネリーに勝て……ってきゃああああっ! ネ、ネリー、いつからいたんですかぁっ?!」
ざばぁっ!
見通しが良くなったその奥に、湯当りを起こし、仰向けで目を回しているネリーの蒼い髪が水面に散らばっていた。
やや扁平になった胸まで赤く染まってしまっている。
「ふぇ〜いつからってヘリオンが入ってくる前かrごぼがぼげぼがぼ」
「うわわわわちょ、答えなくていいですからっ! 沈まないでくださいぃぃぃっっ!!!」
沈没していくネリーの細い腕をあやうく引っ張り上げながら、体型は一緒なのに、とヘリオンは別の意味でも切なくなってしまっていた。

56 :相生 Delphinium×belladonna Y :2007/05/13(日) 21:15:57 ID:A29+2WyM0


「はふぅ。びっくりしたぁ」
ヘリオンに介抱され、どうやら溺死からは免れたものの、まだ頭はぼーっとしたまま。
彼女と別れた後、ネリーはふらふらと蛇行しながら仮設詰所の廊下を歩き続けている。
傍らに携えた『静寂』の細身が窓から差し込む月の光を浴びて一層輝きを増し、きらきらと美しい。

   リィィィィィン――――

「ネリー」
「んぁ? あ、アセリア」
声をかけられ、夢見心地の感覚が途切れる。
その余韻を残したまま振り向くと、少し離れた先にアセリア立っていた。だが影になっているのか、その表情はよく見えない。
「少し、いいか?」
「へ? 何……うんっっっ?!」
キンッ!
覚束無く返事をする前に、アセリアは距離を一気に詰め、いきなり『存在』を振るってくる。ネリーは危うく『静寂』で受けた。
そして受けてから、いつの間にか自分が腰に吊るしていた筈の『静寂』を強く握り締めていた事に驚く。
更に続いて、甲高い金属音と共に頭に流れ込んでくる別の意識。侵食してくるそれがネリーの混乱に拍車をかける。
「あ、あれ、何で? え、う、うわあアァァっっ!!」
「ん。ちょっとだけ……我慢、する」
「アア、ア、ァ――――」
十字に交わり白く輝きを帯びる神剣の向こうで、アセリアの紫がかった瞳がじっと見つめてくる。
誘うようなその色に惹き込まれているのか、霧がかった頭の中、ネリーの意識はそこでぷっつりと途切れてしまった。

糸が切れたようにぐったりとなったネリーの身体を支えながら、アセリアは呟く。
「……ふぅ。もう、大丈夫」
「お疲れ、アセリア。これで暫くは"抑えられる"筈。……後は俺が運ぶよ」
「ん」
廊下の影で見守っていた悠人が現れ、ネリーの傍に膝をつく。
神剣同士の共鳴は本人にも強い負担を強いる。それは悠人にとっては嫌というほど知らされている事実。
苦しかったのだろう、額に浮かんだ汗と張り付いた前髪をそっと拭ってやり、それから悠人は小柄な身体を優しく抱き上げてやった。

57 :名無しさん@初回限定 :2007/05/13(日) 21:17:32 ID:+X0zlDYZ0


           ヽ  ゞγ´゚皿゚`ぐ
        , ´ ̄ 〉ヽ   k   @ ノ
 γ⌒ヽ  ixil ノノハ)))   `ー-‐'
 ( 宗 ) ノノi(リ ゚ヮ゚ノlヾ、 <ころしてでも支援しちゃうよ〜
  `ー‐'  ´ 〈_イ个(7っ `
  i二iニ二jR{G}Ri二ニi二l
         (_ノ ヽ)

58 :相生 Lemma V :2007/05/13(日) 21:18:25 ID:A29+2WyM0


ぎしっ、ぎしっ、と単調な音に軋む部屋のくすんだ天井。次第に収まっていくマナ灯の炎の揺らめき。
「はあっ……はあっ」
男は乱れ切ってしまった呼吸を何とか収めようと口元に垂れた涎とも血液ともつかない液体をぐいっと乱暴に拳で拭う。
目の前には、ようやく大人しくなった少女が、ずだずだになってしまった戦闘服の四肢をだらしなくベッドの上に投げ出し、
仰向けの姿勢で首だけをかくん、とこちらに向けている。
しかし切れた半開きの唇から滴る血や、目尻から涙を零したまま色を失った瞳は彼女が完全に気絶している事を物語っていた。
「く……中々、手こずらせてくれたものです」
男はそれらを確認してから、ようやく冷たい床に尻餅をついたままの重い腰をのろのろと持ち上げ始める。
そうしてベッドの上に散らばっている緑色の美しい髪を冷たく見下ろしている内に、次第に冷静な思考も蘇ってきた。
未だ激しく波打っている胸の動悸を抑える為に、今更疲労で強張ってきた腕を何とか持ち上げる。
部屋はもはや原型を留めない位に破壊されつくしていて、目も当てられない。惨況に、呆れた深い溜息が漏れる。
「ふぅー……全く、まさかこれ程の抵抗を受けるとは。これではますます嬲ぶり甲斐もあるというものですが……ふむ」
男は、不快だった。がらん、と手にした仕込み杖を乱暴に床へと投げつける。
妖精が人間に歯向かう、その一事だけでも我慢がならない。ましてや錯乱し、襲い掛かってくるなどは想定外の恐怖だった。
少女の前に躾けたブラックスピリットまでもがその時の衝撃の余波を受け、部屋の隅に吹き飛ばされ、金色に霞んでしまっている。
単独で組み伏せられたのは奇跡と言ってもいいだろう。一応武術の心得があったとはいえ、夢中で反撃した際に接触した指はまだ動かない。
少女の目を覚まさせないようベッドの端に慎重に腰を下ろし、美しいその横顔を眺める。

59 :相生 Lemma V :2007/05/13(日) 21:21:17 ID:A29+2WyM0


「このまま絶望と力を与えてしまうのは容易いのですが、しかしこれは……」
そっと髪を掬ってみると、滑らかなそれはすぐにさらさらと指の隙間から零れ落ちる。やはり幻などでは無いらしい。
男は黙ってそれを何度か繰り返し、それから視線をゆっくりと少女の神剣に戻す。
気絶しているにもかかわらず、少女はしっかりとそれを握ったままだった。焼ききれた神経がそうさせたのか、判らない。
ただ、今までに確認された事の無い現象なのは間違いない。この際これが偶然の産物だろうがそんな事は男にとってはどうでも良い。
もう一度立ち上がり、見下ろす。鮮やかなエメラルドグリーンに輝いていた槍型の神剣は、今は主の心に忠実に、静かに光芒を失いつつある。

    ―――― いつの間にか、細身の剣状へとその姿を変えて。

「ククク……宜しい。見せてもらうとしましょうか。妖精の分際で、どこまでその"心"とやらを保っていられるのかを、ね」
ふと脳裏に閃くのは、放逐した元・サーギオス最強の妖精。その漆黒の翼を思い出しながら、男は緩慢な動きで部屋の扉を開ける。
配下のグリーンスピリットを呼ぶつもりだった。取りあえず、この少女を回復させなければならない。
自分に恐怖を与えたという、その分不相応な行為の報いを受けて貰うために。
「思い出しなさい。自分が愚劣な、忌々しいただの道具に過ぎないと」
扉を閉める微妙な空気の流れに、争いの最中も灯り続けたマナの炎はあっけなく吹き消される。
後に残されるのは暗闇に沈んだ荒れ果てた部屋、その中で仄かに浮かぶ金色のマナ。
そしてぎしっ、ぎしっ、としつこく続く、歪んでしまった天井の悲鳴だけだった。

60 :相生 V :2007/05/13(日) 21:23:32 ID:A29+2WyM0


臨時の仮設会議所を後にした悠人は丁度入れ違いに入室してきたヒミカとすれ違いに軽く挨拶を交わし、
足早に廊下を横切ると屋外へ出る為ドアノブに手をかけた。
「……おっと」
すると手首に力を入れようとした所でその扉が外側からゆっくりと開き始め、咄嗟に衝突しかけた上半身を逸らし、2、3歩後ろに下がる。
扉の向こうには、女性が静かに佇んでいた。
珍しく驚いているのか特徴的な赤い瞳が微かに揺れ、紫檀の肩掛けから伸ばした手も動きが止まったまま引っ込めようともしていない。
「……あれ? イオ?」
「お久しぶりです、ユート様。相変わらず、ですね」
悠人が初めて彼女と出会った時には表情が乏しくただ冷たいばかりの印象を感じたものだったが、
サウナでの一件以来彼女なりに打ち解けようと努力をしているのか、最近では少しづつ感情の起伏も見せるようになってきている。
今も驚きが醒めると同時にホワイトスピリットの証でもあるプラチナの長い髪を軽く揺らしてぺこりと丁寧なお辞儀をしたかと思うと、
からかうような口調で目元に悪戯っぽい微笑みを浮かべながら顔を上げ、小首を傾げていた。
その拍子に柔らかく風に嬲られ傾ぐ帽子の動きは本当に僅かで、感情の変化もヨーティアと悠人以外にはまだ見極めがつかない。
しかし見上げてくる目線は意外と幼く、彼女一流の皮肉をどこか憎めないものに変えてしまい、つい悠人も頬が緩んでしまう。
「ああ、相変わらずだ。イオも元気そうでなにより」
「ありがとうございます。ところで、何かに慌てていらっしゃったご様子でしたが」
「あ、そうだ。まいったな、レスティーナに神剣通話で連絡が取りたかったんだけど」
「……そうなのですか。それは、申し訳ありません」
「ああいいんだ、そっちは他の手を考えるから。それより、どうしたんだ? イオも何か用事があったんだろ?」
「ええ。ですが、もうその用事もどうやら済んだようです。女王陛下の親書ならここに」
「え?」
「内容は、元稲妻部隊クォーリンの配属に関してです。恐らくは以前からコウイン様が活動されていた御奏上を受け入れられたものかと」
「……」
悠人は、無言でその封書を開く。その間も、親友の手回しの良さに呆れて物が言えない。

61 :相生 V :2007/05/13(日) 21:26:30 ID:A29+2WyM0


悠人に親書を渡すという使命を無事果たしたイオは夜も更けてから、何となく足を城の裏手へと向けている。
そのままラキオスへと帰還する為にエーテルジャンプ施設へ赴いても良いのだが、珍しく携帯している『理想』がそれを許さない。
それに、本来の意味では無いが、彼女にとっては“自分に対しての大切な任”もある。
「……そうですね。仲間を失う、それは、酷く悲しい事なのでしょう」
一人、呟きながら何事かを納得する。
記憶を封印されているイオには、遥かな昔それを恐れる余り多くの仲間を結果的には失ってしまったという彼女自身の経歴を思い出す術は無い。
しかし最近になってどういう訳か、普段は殆ど沈黙している『理想』の感情に揺り動かされ、心の奥でざわめくものがある。
「……なるほど。貴女、でしたか」
そうして導かれるまま辿り着いた、影が深く差し込むじめじめとした廃墟の奥で。
「uuuuuuu――――」
「ネリー……『静寂』の主」
イオは、見つけた。まるでさざ波が大きなうねりになる直前のように獰猛な気配を。
爛々と逆巻く蒼い瞳を灯らせたまま蹲っているブルースピリットを。
自己の内で本人の意志に関係なく暴れ回る衝動を、今にも溢れ返りそうになっている心細い堰を。
このような暗がりでたった一人、それこそいつも共にいる『孤独』の主にも迷惑がかける事を恐れ。
まだ残る何かに懸命にしがみつき、華奢な腕で必死に自身を支えている存在を。

62 :名無しさん@初回限定 :2007/05/13(日) 21:26:31 ID:+X0zlDYZ0

雲散支援の太刀っ!

63 :相生 V :2007/05/13(日) 21:29:36 ID:A29+2WyM0


「ここまでとは。宜しいですね、『理想』……覚悟を」
ひらりと、その場の重苦しい空気とはおおよそ不似合いな軽い音を立て、両肩の紫が翻る。
イオは重心をぐっと下げ、心持ち自分に引き付けるような形で『理想』を構えた。戦闘など、久しぶりである。ましてや相手は現在の仲間。
自分のスピリットとしての能力が制限されているとは、イオは知らない。しかし剣術の腕だけは何故か大陸の訓練士でも敵う者は少ない。
そうしてイオは今まで、ヨーティアの側にあってその命を何度も救ってきた。神剣の位や力ではなく、機略と技量をもって。
「ネリー、もう恐らく聞こえてはいないのでしょうけれど……」
「u、uu……i?……ォ?」
「っ……力をそのように振り回してばかりいると、いつか大切なものまで傷つけてしまいますよ」
「uuuuu! ゥ、ゥァアッ」
「……苦しいでしょう――――今、楽に」
短く言い放ち、イオは飛び出す。かぶりを振り続ける小さな存在に。
「u……アア、アアアアッ!」
四肢を地面に這い蹲らせたままのネリーは自家中毒を起こしかけているのか、
膨れ上がる『静寂』の渇望を割れる寸前の風船のように抱え込んだまま、硬直した筋肉を時折痙攣させながら草を掻き毟る程度の動きしか取れない。
しかし逆に言えばそれはまだ彼女本来の理性が残っている証拠だとも言える。周囲に撒き散らされている蒼のマナの量は尋常では無い。
無警戒に近づけばそれだけで精神力の弱いスピリットなら共鳴を受けてしまうだろう。しかし、今のネリーには反撃するだけの余力は無い。
イオはそう判断し、それと同時に『理想』を繰り出す。ゆっくりと、それでいてお互い避けられない距離で。
「ア、アアッ……ィ、ォ」
「?!ッッッッ!!」

64 :相生 V :2007/05/13(日) 21:32:39 ID:A29+2WyM0


 ――――キンッ!

「――――ぁ」
「……ふう」
「ぇ、ぁ、イオ? ネリー……ち、か、……ら?」
「……こんばんわネリー、もう大丈夫。……今は忘れて、ぐっすりお休みなさい」
「――――」
どさり、と糸の切れたような身体が倒れこんでくる。
イオは慎重にそれを受け止め、手元を確認し、交わった『理想』の刃から同調してくるその意識を少しづつ吸収し、揉み消していく。
未だネリーが離さない『静寂』。その細身からどんどん失われていく、先ほどまでの邪な輝き。
やがてそれはくすみ、そしてただ月の光を反射するだけの鈍い銀色へと変わる。
イオは見届け、そして長く吐息を漏らす。額からは汗が止め処も無く流れ落ちている。
殺す、つもりだった。手遅れならば。
しかしほんの少しだけ、刹那の瞬間。極僅か垣間見えた希望のようなものが、『理想』の剣先を鈍らせた。
結果、ここに来た“本来の”任務は果たせなかった。なのにどういう訳なのか、心をよぎるのはただ深い安堵感のみ。
「……私に出来るのはここまでです、ヨーティア様、そして……ユート様」
風が彼女の軽い衣装を白く波立たせ、その色をさらって行く。
紫檀のストライプと相まって、それは夜の海に溶け込む潮の流れのようにも見えた。

65 :相生 Lemma W :2007/05/13(日) 21:36:16 ID:A29+2WyM0


少女は指を当てられ、軽く上げさせられている自分の顎を知覚する。
暗く湿り、マナだけは豊富に感じられるこの空間には今、雨と呼ばれる水滴の自然落下運動が頻繁に行われている事も認識している。
指が、彼女の顎をゆっくりとさする。指は硬く、冷たい。冷たいのは雨のせいだろうかと、胡乱な頭で考える。硬いのは……
「……ふむ、そろそろ頃合、ですかね」
少女は今、森の入り口に立っている。
大量に水分を含んだ泥の中へ、踵で踏み潰した腐った落ち葉がずぶずぶと沈んでいくことでも分かる。
声に反応したこぶしは反射的に強く握り締められる。それで、自分が何かを保有していると知覚する。
「さあ、行きなさい」
命令口調と共に、ぽんと軽く肩を叩かれる。
そしてそれを合図に、どこか遠くの景色のように眺めていた自分と身体が急速に近づいていく。
曖昧になっていく境界線。さーっと視界から霧が晴れたように感じたのは現実なのか、それとも幻なのか。
しかしその設問は、当然ながら今の少女にとって如何程の意味も持たない。ただ、視界が広がった時、手にする神剣から迸ったマナ。
爆発的に放出されたその余熱が、刀身を細かく濡らす水滴を一気に水蒸気と化し、けぶる霧を吹き払った事だけは確実だった。
「……集ウ……誓イノ、モトヘ……」
自ら逃げ込んだ殻の中で、僅かに生じた亀裂の隙間から声を漏らす。しかしそれは煩わしい疼痛としてしか成立しない。
慎重に裂け目を塞ぎ、神剣の支配する閉じられたまどろみの中へと再び沈み込んでゆく。深く、そしてゆっくりと。
慌てることは無い。獲物は大量に、それも好き好んで自ら飛び込んでくる。我が剣(つるぎ)の空腹を満たす為に。
濁った瞳に飛び込んでくる雨粒を、少女は認識しない。勿論それを、戦闘への障害としては。
濁った瞳に飛び込んでくる雨粒を、少女は知覚しない。勿論それが、化身としての神剣の意思。

66 :名無しさん@初回限定 :2007/05/13(日) 21:36:57 ID:mEFriBH40

支援

67 :信頼の人 :2007/05/13(日) 21:39:31 ID:A29+2WyM0

しかし何故、自分はよくシアーにぼーっと回想させてしまうのだろう。
そんな疑問を抱きつつ、3回目の投稿となります。
戦闘シーンが殆ど無くてえらく退屈ですが、分割してみたらこうなってしまったという事でどうか御容赦を。
そして>>25で題名を間違えてしまった罠。
×:Delphinium chinensis X
○:Bidens atrosanguineus X  orz
支援、有難うございました。
誤字脱字ハリオンマジック等、御指摘があれば幸いです。

68 :名無しさん@初回限定 :2007/05/13(日) 22:05:23 ID:+X0zlDYZ0

>>乙です。
年長組の中でもシアーとネリーは特にマインドが下がりやすいんだよなぁ。
シアーによくぼーっと回想させやすいのは、そういうポジションが自然と合っているからかと。
しかし毎回、登場人物の心理描写や背景描写をよくぞここまで丁寧かつ緻密に描きこめるものだと思います。
次も期待しております。

69 :名無しさん@初回限定 :2007/05/14(月) 19:31:57 ID:lT1jya8m0


光陰は俺の嫁に何アプローチかけてんだYO!

70 :名無しさん@初回限定 :2007/05/15(火) 11:12:56 ID:ISqcY7/M0

なんか、異様に静かだな。ベテラン職人さんの長編SSが来たのに、普段に比べて反応がない。
それに、ザウスHPのスタッフ日記に人丸氏画のエス姉さんがあがってるのだが。

71 :名無しさん@初回限定 :2007/05/15(火) 12:04:39 ID:G6B0IKFn0

>信頼の人
乙です。やっと折り返しのようですね。次の展開を楽しみにしてます。
>>70
GW明けてから皆忙しいのでは?学生は課題提出に追われ、社会人は休みの分働いてるわけだし。

72 :名無しさん@初回限定 :2007/05/15(火) 17:42:34 ID:SVqssFXv0

>>67
GJです。
年少組の心の葛藤、新部署に飛ばされてくさくさしてるクォーリンw、そして緑っ娘とソーマ。
退屈だなんてとんでもない、今回も濃密スケジュールで見せ場たっぷりでしたよ。
特に緑っ娘とソーマは強烈でした。ラストで少しずつ人間性を失っていく描写は本当にお見事です。
それからニムと光陰。このコンビいいすね。これ悠人が今日子ルート入っても、クォーリンよりもニムのフラグが優先されるんじゃないでしょうか?w
クォーリンと言えばシアーとの組み合わせは意外でしたね。
ナナルゥとヘリオンの組み合わせも相当意外だったけど。
でも内気少女と優しい近所のお姉さんって感じでなんか好きです。

しかしこれだけやってまだ折り返しですか。
ホントどういう展開を迎えるのか全く予想できませんが楽しみにしています。

>>70
長文投下すると、中々手が付けられずに感想つけるタイミング逃すってのは割りとありがちw

エス姉さんの新規絵は>>16の自己アピールがスルーされてるのがある意味回答w

73 :名無しさん@初回限定 :2007/05/16(水) 07:11:51 ID:WiJIP4qv0

>>68さん
シアーは初期Md50なのが(フューリー
ネリーは手数が多くてついアタッカーで使いがちなのが(インパルス

>>69さん
うっ、すみませぬ、父性を出来るだけ全面に出してみたつもりだったのですが。
どうしてもアプローチに見えてしまうのが光陰クォリティーということで(ぇ

>>71さん
うぃ、折り返しました。次は……ソーマ?(←何故に疑問形

>>72さん
くさくさってw せめていじいじ>飛ばされたクォーリン
シアーのサルベージ役として結構初期に決めていたので気に入って頂けたのなら嬉しいです。
>ニムのフラグ
「し、しかたないから……アニキって呼んであげる」
「シクシクシクシク」

今回もお付き合いして下さった皆様、有難うございました。
そしてエスペリアさんが持っているのが首無し死体に見えてしまったのはきっとこのスレの影響だと思う次第(ソニック

74 :どりるあーむ ◆ncKvmqq0Bs :2007/05/16(水) 10:04:57 ID:qUE8jHUU0

信頼さんの直後で、物凄く恐縮なのですが当方の妄想シアールート長編SSの続きを投稿させていただきます。

いつか、二人の孤独を重ねて第十六章・「聖賢、星光と戦車、聖緑、そして赦しへと」 です。
厨全開のオリ神剣がこれでもかと出てきます、更には瞬が仲間になってるという有り得なさも大全開です。
信頼さんの台詞を借りますが、そこまでいくとさすがにダメという方はどうぞシカトなさってください。
途中で、さるさん規制くらったら大変に申し訳ありません。

75 :いつか、二人の孤独を重ねて1/18 :2007/05/16(水) 10:07:47 ID:qUE8jHUU0

          −時の迷宮入り口の広間−

それは、巨大な扉だった。
触れるだけで世界の全てから忘れられ、そして開かれた先には上位永遠神剣への試練が待つ。
試練に打ち勝てれば、永遠の戦いへ…試練に打ち勝てなければ永遠の牢獄へ。
どちらにしても永遠へと投獄される、とても明るい希望など感じられない、重すぎる扉だった。

瞬は迷う事なく、エスペリアはためらいつつ、そのまさしく己の運命を変える扉に触れた。
続いて悠人が、まず一つ深く深呼吸してから、まっすぐ扉に手を伸ばそうとする。
扉に触れようとする寸前、その腕が突然ぐいっとひっぱられて止める。
悠人が振り向くと、腕をひっぱって止めたのはシアーだった。
シアーが、凄く辛そうにうつむいて、悠人の服の袖を軽くひっぱっている。

「あの…ごめん、ね」

うつむいたまま、いつもにもまして消え入りそうな声でシアーが謝りながらそっと手を離す。
そのままシアーは後ろ手に手を組み、うつむいたまま悠人と視線をあわせないよう一歩後ろに下がる。
ネリーは、そんな二人から距離をおいたところでじっとシアーの様子を見守っている。

不意に、悠人は振り返って、シアーをぎゅっと抱きしめてやる。

「ランニネトハスモラ ントスカニリセンセモラノニノラナニ…
 テンス ナイハムート ハテス モアテ…ヨロ セィン ウハレ モゥート ワ セィン クフォウ…」

76 :いつか、二人の孤独を重ねて2/18 :2007/05/16(水) 10:09:28 ID:qUE8jHUU0

悠人が、聖ヨト語でシアーに歌っている。
 
「童謡、ですか。これは懐かしいですね」

先ほどから五人の様子を見守っていた時深が感心したように、そうつぶやく。

「小さい頃、他にも色々と佳織によく歌ってやってたんだ。
 聞いての通りヘタクソだけど、それでも俺なりに一生懸命覚えたもんさ。
 んーまぁ、ヘタクソなのに加えて即興の聖ヨト語版だから余計に効果あるか怪しいなぁ」

照れくさそうに悠人は笑いながら、そう返す。
胸に抱くシアーの背中を優しくぽんぽんと叩きながら、続けて歌う。
あの頃、親のいない寂しさに泣きじゃくる妹に歌っていたように、同じ気持ちで優しく歌う。

「ありがとう、ユート様…シアー、もう大丈夫だから…本当に、ごめんね」

やがて目に涙をためたまま、自分からそっと離れるシアーを離して悠人は再び扉へ振り向く。
もう一度、一つ深呼吸してから、改めて扉に触れる。
触れてから間をおいて後ろのシアーとネリーを見やり、脇へ下がって道をあける。

シアーが睨むように扉を見たあと一歩踏み込んだ時、左手がぎゅっと握られる。
ネリーが、シアーににっこりと力強く頷いてシアーと一緒に扉へと同時に歩み寄る。
二人ですうっと扉へ手を伸ばした時、唐突にネリーが場にそぐわない明るい声を上げる。

「それじゃ、いっくよ〜…せーえーのっ!」

「せ、せえの〜っ!」

ついいつもの癖で、ネリーに遅れまいと声と同時に、シアーもタイミングをあわせて扉に触れる。

77 :いつか、二人の孤独を重ねて3/18 :2007/05/16(水) 10:17:55 ID:qUE8jHUU0

「…何をやっているんだ」

瞬の呆れた声を大して意に介する風もなく、えっへんと無意味に胸をはるネリーと呆けるシアー。

「ふう、何処へ行っても変わりませんね、あなたたちは。…先が思いやられます」

こめかみをおさえてため息をつくエスペリアと、そんな皆の様子に苦笑する悠人と時深。

「…これで、本当に引き下がれなくなりました。みなさん、覚悟はよろしいですか?」

その声で全員が時深に注目し、それぞれ無言で頷く。

「上位永遠神剣への試練は、それぞれ一人ずつで挑んでもらいます。
 今までのように、側に誰かがいるという事はありません。
 …もちろん、シアーとネリーも別々に行動して挑んでもらいます」

改めて試練について説明する時深の表情は、今まででもかなり真剣な様子。

「時の迷宮には、悠人さんとエスペリアに挑んでもらいます。
 お二人には、上位永遠神剣でも格の高い、偉大なる十三本にまみえる資格がありますから。
 他の三人は、悠人さんたちとはまた別のルートで試練に挑んでもらいます。
 悠人さん、エスペリア…心してください、お二人の試練は特に決して易しいものではないはずです」

その言葉に、悠人はごくりと唾を飲み込み、エスペリアは【献身】をぎゅっと握り締める。

「シアー、ネリー、瞬さん。三人には、時の迷宮の、いわば保管庫に行ってもらいます。
 時の迷宮そのものは、先ほど申し上げた偉大なる十三本のためにあるものですが…。
 その他に我々カオスエターナル陣営が入手した永遠神剣を保管する保管庫も別に存在するのです」

時深の説明の間、ネリーとシアーは互いの手を強く握り締め、瞬はただ無表情で黙っていた。

78 :いつか、二人の孤独を重ねて4/18 :2007/05/16(水) 10:21:49 ID:qUE8jHUU0

「もう重々承知しているとは思いますが、試練に挑んだからって必ず神剣を得られるわけではありません。
 つまり、ずっとエターナルになれないまま時の迷宮を彷徨い続ける羽目になる可能性もあるのです。
 現実に、過去に試練に挑んだままもうずっと帰って来れていない者も少なくないのです…」

その言葉で、本格的に場の空気が沈んで重いものになる。

「では、悠人さんとエスペリアは、その扉から出発してください。
 二人を見届けた後、こちらも保管庫の扉を開いて試練におもむきます」

その時深の言葉で、悠人とエスペリアは時の迷宮の扉の前に移動する。
身体が完全に見えなくなるまで、二人は残りの三人に微笑みながら手を振り続けていた。

「必ず、必ず全員試練に合格して合流しような!」

その悠人の最後の言葉がいつまでもエコーとなって時の迷宮の回廊の空間に響いていた。

「さて、保管庫の扉を出現させますね」

時深がそういって、自分の真下の床を【時詠】で軽く叩く。
すると、空間に突如として悠人たちがくぐった扉よりやや小さい扉が出現した。

79 :いつか、二人の孤独を重ねて5/18 :2007/05/16(水) 10:26:38 ID:qUE8jHUU0

正面からは確かに存在感をはなってそこに在るように感じるのに、真横や後ろからは何も見えない。
ネリーやシアーが不思議そうにあちこちから見てみたり触ったりしている間、瞬はただ無言だった。

「…では、これから一人ずつ順番に扉をくぐってもらいます。まず、瞬さんからでよろし…」

時深の台詞が終わらないうちに、瞬は勝手に扉を開き、その向こうへと消えていった。
扉が、音も無く閉まったあとで時深はふぅ、と少し疲れたため息をつく。

「…本当に人の話を聞いてるのかどうか怪しい方ですね。
 さて、ネリー、シアー…そろそろ、あなたたちの番ですよ
 一応念を押しておきますが、別々に扉をくぐらなければならないのですからね?」

その言葉に頷いて、まずネリーが扉へ歩み寄った時。
シアーが、先ほどにもまして不安げな表情でネリーの手を掴んでいた。

「シアー…?」

ネリーの少し驚きのこもった不思議そうな声に、シアーは下唇を噛んでうつむく。

「…怖いの」

シアーは、わずかに肩をふるわせ、大粒の涙をぽろぽろと落としている。

80 :いつか、二人の孤独を重ねて6/18 :2007/05/16(水) 10:50:50 ID:qUE8jHUU0

「ユート様も…エスペリアもネリーも…怖くないの?
 私、怖い…もし誰かが帰って来れなくなったらと思うと怖い。
 もしも、自分だけ帰って来れなくなったらと思うと、もっと怖い…!」

ネリーは、泣きじゃくるシアーの手をそっとはがしながら、シアーの顔を自分の真正面に向けて。

ぱぁん。

頬を平手で打つ、乾いた音が音のない空間に響く。
しばらく、時深もシアーも何が起こったのかわからないでいた。
やがて、打たれた頬がじんじんと熱さと痛みをともなってくるとシアーはのろのろと頬に手を当てる。

「シアー」

シアーに平手打ちした体勢のまま、ネリーはいつもと違う強い口調でシアーに呼びかけてくる。

「シアーは、ユート様を信じてる?」

頷く。

「エスペリアを信じてる?」

深く頷く。

「ネリーを信じてる?」

強く頷く。

81 :いつか、二人の孤独を重ねて7/18 :2007/05/16(水) 10:52:27 ID:qUE8jHUU0

「じゃあ、自分の事も信じられるよね」

間をおいて、こくんと軽く頷く。

「ネリーも、ユート様やエスペリアやシアーの事を信じてるっ。
 …まあ、あの無愛想で感じ悪いサーギオスのエトランジェは微妙だけどっ」

もとの、いつもの調子で軽い口を叩く姉にシアーは少しだけ苦笑しながら頷く。

「じゃっ…いってくるね。必ずまた会おうね!」

言うが早いか、ネリーは駆け足で扉に突っ込んで消えていった。
…その頬に、ひとすじの涙があったのはシアーにも時深にも決して見える事はなかった。
呼びかける間もなく消えていった姉を飲み込んで閉まった扉にシアーは虚しく手を伸ばしていた。
けれども、気合いを入れるように首をぶんぶんと振って涙を拭って、自分も扉へ歩み寄っていく。
扉に手をかけたところで、時深の方を向く。

「…いってらっしゃい」

時深の優しい微笑みに見送られて、シアーは扉を開いてその向こうの闇へと歩いていった。

82 :いつか、二人の孤独を重ねて8/18 :2007/05/16(水) 10:53:31 ID:qUE8jHUU0

         −時の迷宮の保管庫・【誓い】のシュン−

まるで、西洋の古城の通路のような古めかしいところだった。
もう長いこと、入り組んだ石の壁と床の迷宮をずっと進んでいる。
石の壁と床というのは例えで、少なくとも自分が見知っているどんな材質でもない。
冷たくもなければ温かくもない、硬くも感じないが柔らかくも感じない。
加えて感覚的には数日が経過しているはずだが、眠くもならなければ空腹もない。
ただ、時々通貨する床だけで空間が無限に広がるところは道を外れでもしたら二度と戻れないだろう。
また、そのように空間が開けたところはエッシャーの騙し絵よろしく不可思議な光景も見られた。

「これが、時の迷宮ってやつか…フン、大層な保管庫もあったもんだな」

更に進んでいく。
やがて、いよいよ日数も本当にわからなくなった頃、やたらと古めかしい扉の前に辿り着いた。
瞬はただ無言で、その扉を開くと…そこでこの迷宮で初めて意志を持つ者に出会った。

狼。

まるで北欧神話のフェンリル狼がごとく、巨大な狼がそこにいた。
石の床に敷き詰められたわらの寝床の上で、その巨大な狼は瞬を珍しそうに眺める。

「ホゥ…運悪く俺のもとに導かれた奴か…まぁいい、暇つぶしに試練をふっかけてやるか」

瞬は、腰の【誓い】に手をやりつつ、狼の間近まで歩み寄る。

「…ここに来るまでにもう随分と時間を無駄に費やした…さっさと試練とやらをふっかけてこい」

そう言うなり、瞬は狼の鼻先に【誓い】の切っ先を突きつけてくる。

83 :いつか、二人の孤独を重ねて9/18 :2007/05/16(水) 11:17:02 ID:qUE8jHUU0

「フン…気の短い若造だな。いいだろう、俺の試練はかなりキツイがシンプルだぜ。
 …本当にエターナルになりたいなら、俺の口ン中に手ぇ突っ込みな。
 マナごと身体の一部を取り込めば、お前の事もよくわかるし試練の合否もすぐわかる」

その狼の言葉に、瞬は突きつけていた【誓い】を、すっ…と下げる。

「要するに、お前に僕の腕を食わせろ、と言う事か。
 確かにきつそうだがシンプルだな…いいだろう、お前の言葉に乗ってやる」

かはぁっ、と開かれた狼の口に、瞬は右腕をゆっくりめり込ませていく。
やがて、肩まで飲み込まれた時、牙が腕に食い込み、食いちぎられようとする。

ぶぢぃっ、と音をたてて血しぶきと共に瞬の右腕が食いちぎられる。

「ぐっっっっッ…あぁぁぐッ…がっ、あっ…、ぐぬあうぅぅぅぅッ!」

一気に食いちぎられた勢いで床に転がり、そしてまた激痛で転がりまわる血塗れの瞬。
狼は、そんな瞬を見下ろしながら、じっくりと今食べた瞬の腕を咀嚼している。
やがて、ごくんと飲み込むと、瞬に対する眼差しが不意に物憂げな視線になった。

「ぐっ…あっ…うっ…う! …おい、試練の合否はどうなんだ…!」

汗と血に塗れ無様に転がりながらなんとかオーラフォトンで癒そうとするが、傷は塞がらない。

84 :いつか、二人の孤独を重ねて10/18 :2007/05/16(水) 11:18:07 ID:qUE8jHUU0

「…小僧。残念なことに、お前は俺の持ち主として合格だ。
 詳しくは語らんし、語るつもりもないが…お前と俺は似た者同士なんだよ」

そう言うと、狼はゆっくり立ち上がり、瞬の側によりそうと身体が金色のマナと散り始める。

「俺は、永遠神剣第三位…【薫り】だ。…が、わけあって別の名を名乗る事にしている。
 あるロウエターナルと、ちょいと因縁があってな…それで、こう名乗る事にしている。
 よく覚えておけ、小僧…俺がこれから名乗る名は…」

【薫り】は、金色のマナの粒子となり、瞬の食いちぎられた肩に集まって形を成し始める。

「俺は、永遠神剣第三位…【赦し】だ」

それは、血のように赤い錆びだらけの青銅のような金属感のネジとボルト剥き出しの不気味な義手。
肩から手の甲にかけて苦悶に歪む人面がびっしりと彫り込まれているのが禍々しい。
無骨で四角い三本指、親指と人差し指は四角く、中指と薬指と小指が一体化している。

「お前は今日からエターナル・シュン…魔狼のシュンだ。
 この俺を携えて、永遠に償いきれないその罪業を、永遠に償い続けるがいい」

やがて食われた肩の痛みもひいてきた頃、瞬は【誓い】を左手にもって立ち上がって。
目の前に放り投げた【誓い】を、自らの意思で【赦し】で殴って粉々に砕いた。
砕かれた【誓い】は、乾いた金属音の断末魔と共に金色のマナ粒子となって【赦し】に喰い尽された。

85 :いつか、二人の孤独を重ねて11/18 :2007/05/16(水) 11:20:32 ID:qUE8jHUU0

         −時の迷宮の保管庫・【静寂】のネリー−

「ネリーは、シアーの盾になる」

無限に広がる荒野のような空間で、ネリーは自分に呼びかけるように強くそう言う。

「ずっと昔から、そうだったんだから。ネリーは、シアーとシアーの大事なものを守る盾になる」

ネリーの前に、小さめのサイズの盾が浮かんでいる。

「…どうやら、我が主としては充分に合格点なようね。
 ネリー、私を手に取りなさい。そして、エターナルになりなさい」

こくりと頷いて、ウィングハイロゥを羽ばたかせて目の前の盾に近づいて手に取ろうとする。

「改めて、私は永遠神剣第三位【戦車】…!そして、今日からこう名乗りなさい。
 エターナル・ネリー…爆音叫び陰謀蹴散らすネリー、と」

さっ、と左腕に盾を装着してから、ネリーはしれっとのたまいはじめる。

「長い、暑苦しい、くーるじゃない。だから却下!」

そのとたん、【戦車】が思わず腕に装着されたまま器用にずっこける。

「ネリー的に、くーるな奴にする!んーと…そうだ、守るんだから騎士でいこうっ!
 エターナル・ネリー…ダイヤモンドの騎士ネリー!…うーん、くーるっ♪」

86 :いつか、二人の孤独を重ねて12/18 :2007/05/16(水) 11:23:38 ID:qUE8jHUU0

        −時の迷宮の保管庫・【孤独】のシアー−

長い、長い迷宮だった。
時々、ふらりと何も無い無限に広がる夜空に吸い込まれる感覚をこらえながら進んだ。

ぽりぽり。

やはり、不思議と眠くもならなければ空腹も疲労も全くない。
それでも、体感でもう幾数日は過ぎたように感じられて焦りが募る。

もぐもぐ。

もっと不思議なのは、こっそり隠し持っていたお菓子がまだ充分に残ってる事だったが。

「お腹がすかなくても、甘い物は欲しくなる…不思議だなぁ」

それ以前に、こんな重大な場面でお菓子を隠し持ってる事実について自分ではどうも思わないのかと。
初めのうちこそ、【孤独】を構えておっかなびっくりで進んでいたものの、長いこと何もなかった。
そのうち緊張がすっかり緩んで、ついには手持ちのお菓子を食べながらのんびり進むようになった。
ネリーなど周りに引っ張られて影に隠れがちだけれど、案外こういう風に根が図太いのかもしれない。

やがて、開けた場所に出て、そこには扉があって。
扉を開いた先には、何処までも無限に広がる草原と星空があった。

87 :いつか、二人の孤独を重ねて13/19 :2007/05/16(水) 11:40:36 ID:qUE8jHUU0

シアーが足を踏み入れると、後ろで扉がふっと消えてしまった。

「よーこそっ」

聞き覚えのある声に振り向くと、そこにはネリーがいた。

「ネリー…?あれぇ…どうして、ここにいるの?」

シアーが駆け寄ると、ネリーはシアーに首をふって見せる。

「ううん、ネリーじゃないよ。
 永遠神剣第三位【星光】…たまたま、そっちの望む姿をとってるだけだよ」

パチクリとまばたきするシアーに、【星光】は本物のネリーと寸分も違わない表情で微笑む。

「【星光】はね…今はただのマナの塊で、まだ形が出来てないの。
 だから、今はね…そっちがもし今側にいてくれたらいいなって人の姿をとってるだけなの」

そう語る【星光】の声も仕草も、シアーの知っているネリーと本当に全く同じだった。

「ね、ね、名前は?」

【星光】がシアーの手をひいて、ちょうど人が座れる形の岩に自分と並んで座らせる。

「シ、シアーはシアー・ブルースピリット…この子は永遠神剣第八位【孤独】だよ」

88 :いつか、二人の孤独を重ねて14/19 :2007/05/16(水) 11:42:42 ID:qUE8jHUU0

シアーの自己紹介にふんふんと頷く【星光】は何故か嬉しそう。

「自分の神剣、大事にしてるんだね…いいなぁ、そういう人にこそ持ち主になって欲しいな」

その台詞で、シアーはようやく、ここに来た目的を思い出す。

「あ、あのね。シアーに…シアーに力を貸して欲しいの。エターナルにして欲しいの…お願い」

じっと真剣に見つめてくるシアーを、【星光】は一瞬キョトンとしたもののすぐ真面目な表情になる。

「…そっか、ここに来たからには試練をふっかけなきゃ、だったね」

そう言って、【星光】はゆっくりと立ち上がる。

「じゃあ、何かシアーの事とかわかるものってある?まず、シアーの事を知らなきゃ、だから」

その言葉にシアーは頷いて、懐から日記帳を取り出して【星光】に渡す。

「これって、日記…?それも、交換日記じゃん。…これ、読んじゃっていーの?」

驚いて訊ねる【星光】に、シアーはいつもにもまして真面目な表情で強く頷く。

「…ふむ…ふむむ………ん? シアー、これ…忘れられていない、の?」

89 :いつか、二人の孤独を重ねて15/19 :2007/05/16(水) 11:43:57 ID:qUE8jHUU0

先ほどにもまして驚く【星光に】にシアーは頷いて答える。

「うん…。シアーにもどうしてそうなってるのかわからないけど、なんだかそうみたいなの。
 本当なら、時の迷宮の扉に触れた時点で、その日記の内容もかなり変わるはずだったんだけど。
 でも、ここに来る途中で試しに読んでみたら、どの内容も全く変わってなかったの」

そのシアーの言葉に、【星光】は絶句したのか口をあんぐり開けてまばたきを繰り返している。

「それって…奇跡にも程があるよ〜?なんというか、出来すぎというか都合良すぎというか…」

はーっ…とため息をつきながら、【星光】は改めてシアーの隣に座りなおして日記を読み進める。
【星光】がじっと詠み進めている間、シアーはずっと星空を眺めていた。

 −ここにも、あの赤い星と…小さな青い星があるんだなぁ。

そんな事を思いながら、ただずっと【星光】が読み終えるまで待ち続けた。

「…シアーは、ユート様って人の事、大好きで助けになりたいと思ってるんだね」

やがて読み終えて、日記をそっと返してくる【星光】にシアーは少し頬を染めながら頷く。

「まあ確かに日記を読む限り、不器用で頑固者で優しすぎて困ったちゃんな人みたいだねー。
 …でも、その人個人の大事な思い出と決別してまで世界を守ろうだなんて…嫌いじゃないかな」

そう言って、ふぅ、と目を閉じて【星光】はじっと考える。

「…うん、いいよ。シアーの力になったげる。これからずっと、シアーの事を助けてあげる!」

90 :いつか、二人の孤独を重ねて15/19 :2007/05/16(水) 12:05:04 ID:qUE8jHUU0

【星光】がそう言った途端、【星光】が淡い金色のマナの粒子に包まれて輝きながら散り始める。
金色の、【星光】の粒子がシアーをぐるりと包み込んで、シアーの身体に吸い込まれていく。

「シアー、ちょっと【孤独】を抜いてもらえる〜?」

【星光】の言葉に導かれるままに、慌てて立って【孤独】を鞘から抜いて真上に掲げる。
真上に高々と掲げられた【孤独】にも、【星光】のマナ粒子がどんどん吸い込まれていく。
やがて、【星光】のマナが全てシアーと【孤独】に吸い込まれた時、それは異変として起きた。

「あっ…!」

シアーが、びくん、と身体をのけぞらせる。
身体が熱い、身体中を何かが物凄い速さで駆け巡っている。
スピリットからエターナルへと変化する際の個体の存在に関する情報が書き換えられているのだ。
やがて、シアーの身体が【孤独】ごと、ひときわ黄金色に強く輝いて…ゆっくりおさまっていく。
シアーはふと、手に持っている【孤独】がそれまでよりも重くなっているのに気づく。
鞘から抜いて、抜き身のはずの【孤独】に清らかな青地に銀のラインが走る金属製の鞘がはまっている。
両手で、【孤独】ごと、その真新しい鞘を両手で抱えて眺める。

「これが…上位永遠神剣………せ、【星光】…なの?」

91 :いつか、二人の孤独を重ねて17/19 :2007/05/16(水) 12:06:33 ID:qUE8jHUU0

そう呟きながら、ふと何とはなしに【孤独】を【星光】から引き抜いてみる。
その途端、再び【星光】が金色のマナ粒子に散って、シアーの両腕を包み込む。
やがて、金色の輝きがおさまると、シアーの両腕を金属製の腕鎧が包んでいた。

「これ…アセリアがつけているのと、全く同じデザイン…」

驚いているシアーの頭に、【星光】の声が直接響く。

 −うん、そうだよ。以前に砕かれてから随分と形がなかったんだけど、ようやく形を成すことが出来たよ。
 −シアーの心の中の願望とかそういうのにあわせたら、こんなふうになったんだけどね。
 −もともとは【星光】は鞘の形の永遠神剣で、その腕鎧はシアーの願望の一つの形なんだけどねー。

シアーは頷きながら、【孤独】を振り回しつつ【星光】を動かして感触を確かめる。

 −シアーは今日からエターナル・シアー!…寄り添う青い星のシアー、だよ!

92 :いつか、二人の孤独を重ねて18/19 :2007/05/16(水) 12:07:42 ID:qUE8jHUU0

         −時の迷宮入り口の広間−

いつの間にかそこにあった扉を開けると、そこは最初の時の迷宮の扉の前の広間だった。

「シアー!…シアー…良かった、シアーも試練に受かって戻ってこれたんだな…良かった…」

ちょうど目があった悠人が、涙目になってその場にへなへなとへたりこむ。

「んもー、だからネリーが絶対に大丈夫だってさっきからずっと言ってたじゃん!」

へたりこむ悠人にネリーが走り寄ってきて、ぽかぽかと悠人を叩きはじめる。

「た、ただいま…もしかして、シアーが一番最後…?」

シアーが周囲を見渡すと、悠人とネリーだけでなくエスペリアと瞬もそこにいた。

「ええ、一番最初がユート様で、その次がわたくしで、それからネリー、シュン様の順番でした。
 おかえりなさい、シアー。本当によく頑張りましたね。心からおめでとうございます」

にっこりといつもの調子で優しく微笑んで髪を撫でてくるエスペリアに、シアーはえへへと嬉しそうに笑う。

「みなさん、全員で見事に上位永遠神剣の試練に打ち勝って戻ってこれた事、おめでとうございます」

声に振り向くと、時深がいつの間にかそこにいた。
時深は、す、と【時詠】を取り出して、その真下の床をコツンと軽く叩く。

すると、床全面に信じられない映像が一気に広がった。それは、戦場だった。

「ファンタズマゴリアは、今や完全に全土が戦場となっています」

93 :いつか、二人の孤独を重ねて19/19 :2007/05/16(水) 12:21:38 ID:qUE8jHUU0

映像がたびたび切り替わるごとに、傷ついていく仲間たちの姿が次々に映し出される。

「ロウエターナル…テムオリン陣営は、莫大なマナを一気に得るために暴挙に出ました。
 それはすなわち、各所のエーテル変換システムを襲い暴走させて全土にマナ消失をおこさせる事。
 ファンタズマゴリア全土で、あのイースペリアのマナ消失クラスのマナ消失を同時に起させる事。
 世界の破壊はもとより、全ての生ある者の命の断末魔を再生の剣に取り込ませて暴走させるのです。
 ファンタズマゴリアでそんな事が起きれば、その影響で悠人さんたちの世界もただではすみません」

時深が緊張した面持ちで説明を続けている間も、仲間たちが傷つき倒れていく。

「もはや一刻の猶予もありません。これからみなさんを一人ずつ各地に飛ばします。
 飛んだ先には、ミニオンの軍勢とロウエターナルの幹部がいます。…事実上、タイマンになるでしょう。
 エスペリアを、ラースに。サルドバルドにネリーを。サモドアにシアーを。
 マロリガンのタキオスには悠人さんと瞬さんを。ラキオスにはテムオリンがおりますので、私が。
 以上、いきなり苦しい戦いですがよろしいですね?覚悟は出来ていますか?」

全員が同時にこくりと頷いたのを確認して、時深は【時詠】を青く強く輝かせた。

「いきます!」

…全員が同時に転移した後、【聖賢】が安置されていた場所で【求め】が静かに煌いていた。

94 :どりるあーむ ◆ncKvmqq0Bs :2007/05/16(水) 12:34:24 ID:qUE8jHUU0

今回はここまでです。
何と言うか、公然オリ神剣陳列罪ソニックストライクでマジすみません…。
今回、シアーの発蒸着ということで、蒸着の描写に前回よりももう少し気を使ってみたのですが、今度はちゃんとわかるでしょうか。
では、よろしければ、また次回にて。

95 :名無しさん@初回限定 :2007/05/16(水) 18:23:35 ID:m59F/HWJ0

いいか、突っ込むぞ? ツッコムゾ!?

保管庫キターw まさか500本くらい管理してたりするんかな?
ひっぱたいたーーw アネの貫禄。流石アネたん。しかしひっぱたいたネリーの手も痛いんだよー。
瞬くわれたw これはなんか見覚えがあるシチュだが、ベルセルクというより、フェンリルの逸話ですな。
そして神剣名『薫り』。瞬としてはある意味願ったりな名前?
くーるに戦車が付いた。カオスのMBT(MainBattleTank)ネリーたんくとして120mm滑空天空斬り披露まだーw
殆ど遠足気分なシアーちょっとまてw 今泣いたカラスがもう笑う、青い輝きは控えめなれど、星河に光る星ふたつ……いや五つっていうかカオス陣営丸儲けw
そしてトキミン司令官はやはりベテランobsnだけど、戦隊物の基地指令とはちょっと違う実行派。


>82 ×通貨 ○通過

96 :名無しさん@初回限定 :2007/05/16(水) 19:01:52 ID:+q9LIus40

>>94
乙です。
保管庫てw
上位神剣の扱いが一気に軽くなりましたねw
とりあえず戦車の契約はもうちょっとこう、なんか有っても良かったような。

しかしこうなると戦力的に圧勝ですね。
つーか、こんなにエターナル放り込んで大丈夫なのかファンタズマゴリアはw

97 :名無しさん@初回限定 :2007/05/16(水) 19:18:26 ID:PbVD1civ0

>>94
乙。
なんか求めが放置されちゃってるんですけどこれは伏線?
今まであんなに頑張ってきたのにこの扱いはあんまりw
ともあれいよいよクライマックスですね。楽しみにしてます。

98 :名無しさん@初回限定 :2007/05/17(木) 00:20:46 ID:1Tvjvvp90

>>94
乙ですー。

たくさん保管できる保管庫があるとすると、神剣を残すのが目的なカオス側はともかく、
神剣を折るのが目的なロウ側は取捨選択するんだろうなあ。

「テムオリン様。先ほどの世界を滅ぼした折りに第3位と第2位を1本づつ確保しました。折りますか?折りませんか?」
「タキオス、なんですかその妙な聞き方は」
「お気になさらないでください」
「――まあいいです。 そうですね……、第2位はひとまず保管庫に。第3位とそれ以下はすべて折りなさい」
そして、時々保管庫の棚卸しをして余分な神剣を折る。みたいな。

カオス側の保管庫は戦利品の神剣をなんでも放り込むが故に、
それこそカオスな状態になっていそうw

99 :名無しさん@初回限定 :2007/05/17(木) 01:00:41 ID:XwHnVFAf0

気に入った神剣は、テム個人のコレクションに

100 :名無しさん@初回限定 :2007/05/17(木) 07:22:01 ID:zkWrWa0x0

>>94
先生! そもそもその通り名じゃ、ネリーは絶対に舌を噛むと思います!w >爆音叫び陰謀蹴散らすネリー
しかしもしネリーやシアーがうっかり間違えて瞬の開いた扉へ辿り着いていたらと思うとガクブル。
ちょ、時深おbsn、タイマンてw
ともあれ無事全員エターナルになれたようでめでたしめでたし。ロウより人数増えちゃったし、一気にカオス優勢。
ミュラーが加われば圧勝ムードまで漂っちゃいますが、さてこれから一体どう出るのか(←誰が
次回も楽しみにお待ちしております。

>その腕が突然ぐいっとひっぱられて止める
止まる?

101 :名無しさん@初回限定 :2007/05/17(木) 17:04:02 ID:adqDvA220

>>95
>いいか、突っ込むぞ? ツッコムゾ!?
ひいぃぃぃぃ((((゜Д゜;))))、そこまで突っ込みどころ満載でしたか…。
保管庫については、特に細かく決めてませんが少なくとも本当に、雑魚スレ保管庫にある作品数(画像含む)くらいはあるかもしれませぬ。
単に倉庫とか置き場所とかじゃ味気なかったので、雑魚スレ保管庫から名前を拝借しました。管理人の神剣名は424氏のみぞ知るというてことで(地球でもいいけど
瞬のカオスVer神剣は悩みました。悩んでた頃に某P3やって、各キャラに似合うペルソナ考えて、瞬がフェンリルだったんで、その線で決めていきました。
エス「テレッテッテテー。ユート様レベルアップー」悠「エスペリア、突然どうしたんだ」エス「いえ、つい…どうか忘れてくださいませ」
通貨は避難所にて修正を依頼しておきます…。

>>96
上位永遠神剣で重要なのは偉大なる十三本、てなイメージがありましたので、それ以外はそれ程でもないと考えてました。
戦車の契約は確かに非常に軽いですが、もともとシアー物な上に オリ瞬 がアレなので冗長になるのを避けるためにわざとそうしました。
メインは、あくまでシアー一人ですので。ネリーはまだサブヒロイン。もしネリーがメインなら、逆パターンになっていたと思います。
エターナルの頭数だけは確かに圧勝に見えるかもですが、実際は個々の1ユニットとしての戦闘経験や踏んできた場数はとても比べ物にならないです。
ここで語るのは余計なのかもしれませんが、ロウ面子とまともにはりあえるのは時深、相打ち上等ギリギリで悠人とエスペリアだけです。

>>97
ヒント・ハナから極度の空腹で飢え狂い状態の【求め】、んで【聖賢】が安置されていた場所はどういう場所かというと?

102 :名無しさん@初回限定 :2007/05/17(木) 17:05:34 ID:adqDvA220

>>98
某ローゼンメイデン、どうやらもうすぐ終わるっぽいですな…それは置いといて。
保管庫の内部も時の迷宮と同じ構造なので、棚卸しする時に滅茶苦茶めんどくさそうですなぁ。
カオスエタ→コマンド・道具「拾った神剣」→コマンド・保管庫にポイ=上から下までみんなしてそれしかしない。

>>99
あの手合いは、普通にそうしてそうですな。…横領?

>>100
舌噛みネリー→某AA職人さんのライダーネリシアからのネタですので、お気になさらず。
カオス保管庫は上にもある通り本当にカオス状態なので、ネリシア系が普通にそうなることも本当に普通にありそうですな。

>止まる→避難所にて修正依頼をお願いしておきます。

みなさま、レスありがとうございました(多謝

103 :名無しさん@初回限定 :2007/05/17(木) 17:19:09 ID:adqDvA220



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            -   _    ‐-;-.,_ "''=;- .,_\ \\
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     = _  ______二)        ヽ       \ ヽ
      =   ̄"'''─-、           , ´ ̄ 〉ヽ      ヽ,;";:,;・.',;";:,`;  ,;  ";,;・.
ヽ ’, ‥,    ,;'         .     ,:"ixil ノノハ)))   `    ヽ:`;:";+,;:"`;:"`";:,`   ,;"
─  +  ─┼  ̄ ̄  三 ≡ -   _ ノノi(リ ゚ヮ゚ノlヾ、  ヽ , ;・;:` ,;:"";:+,;`;:*, ;:`: ,.’  ,;' . ,. ', .
───‐ +─         ――=.  ...( イノニ ,ヘ―一')   | :、,;:`;:";+ ,;";:,;・.',;";:,`;";:,;←>>どりるあーむヽ
────‐     おるふぁき〜っく! .. _(,,/ヽ,_( ̄,,/―‐'´   i '.',;’,∴ ;. ‥,’, ・; . ',..∴.';;:`"+,;`
―‐────+” ";・‘,,,   +            ̄       ! ∴.;. '∴.',;";:,`;";:,;・`:,
   ── ̄ ̄;.;:;・ +: ̄ ̄ =  ̄ _ヾ、_、          |;・;:`,;:"" ;:+,;`;: *,;:’,;' . , . ', .:
        ”";・‘,,, + ─┼ ,,”‘;::, ,,ヾ./_     _    //’,∴ ;. ‥ ,;・ ;:`,;:"";:+,;` ;:*,;: : '
           ─┼`;,,:  .'┼;:,ー`、-、ヾ、、,  、, /i// , `:,.’,;'',.
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                                  |_/

104 :名無しさん@初回限定 :2007/05/17(木) 21:14:52 ID:OlfPLSi60

そういえばコアラはコレクション神剣を攻撃に使っていましたな
有望そうなエターナル候補には神剣与えたりしてコマにするんだろう

105 :名無しさん@初回限定 :2007/05/17(木) 21:52:44 ID:kxDJyIGG0

ガッツがそうじゃないのか?
コアラに見初められてエターナルになったとかステに書いてあった気がする

106 :名無しさん@初回限定 :2007/05/18(金) 00:14:54 ID:kynMTS1z0

若本のほかにミト姐もテムオリンに拾われてエタ化したと明記されてる
(設定資料だけど)
水棲ベジータとントゥたんは不明。

じつはミト姐も神剣と融合してントゥたんみたいな扱いなんだねーと今更。

107 :名無しさん@初回限定 :2007/05/18(金) 09:28:55 ID:raLSZPuqO

この流れなら言える!
「雑魚スピの不○議なダンジョン」を作ってくれ!


昔々…だったり未来だったり、時をかけるおbsnがあっちこっちの世界を飛び回っていました
ある日、おbsnは偉い人に呼び出され、偉い人にこう言われました
「貴女はエターナルを増やす気があるの?」
(以下、中略)
かくしておbsnは、過去に行った世界から素質がありそうな者を『時の迷宮』に強制転送させるのでした

―――はたして、転送させられた者の運命は!
結末は、おbsnでもわからない…


基本的には、不○議なダンジョンで、対神剣or対コアラ様の手下などの重要な戦闘はアセリア
新たな神剣を手にするには、課題や条件をクリアーし、神剣に認められなければならない


ザウス…作ってくれないかなぁ〜

108 :名無しさん@初回限定 :2007/05/18(金) 20:46:52 ID:kynMTS1z0

ヘンで余計な新システム盛り込んで駄作になる予感。
タイトルは「アセだん」でどうぞ。

109 :名無しさん@初回限定 :2007/05/18(金) 21:53:05 ID:DZnd4PSM0

永遠のアセリアだんじょんますたぁ
雑魚スピは全員主人公をますたぁと呼ぶ

110 :名無しさん@初回限定 :2007/05/18(金) 22:50:31 ID:S6lFIs/D0

まだ、2Dでドット絵に異様な気合いこもりまくりの雑魚スピ対戦格ゲーとか。
あと、やっぱり2Dでドット絵に気合い入れまくりの雑魚スピ無双とかがいい気がする。

111 :名無しさん@初回限定 :2007/05/18(金) 23:49:45 ID:iADIOOpa0

だが段差踏み外しただけで死亡フラグは勘弁な!

112 :名無しさん@初回限定 :2007/05/19(土) 00:06:44 ID:BwsGv5gx0

>>111
OK、つまり洞窟を冒険する2Dドット絵のエスペリアが主人公のアクションゲーム、エスペランカーということだな

113 :名無しさん@初回限定 :2007/05/19(土) 03:40:11 ID:/5duNYy60

じゃあ俺はスライムを4つつなげて消す落ちものパズル「ぷるぷる」でお願いします。
コンボを繋げるとオーラフォトンノヴァとかエタニティリムーバァァァァが撃てます。

114 :名無しさん@初回限定 :2007/05/19(土) 03:56:40 ID:u+uqCPL40

>>112
ばろすwwwww

115 :名無しさん@初回限定 :2007/05/19(土) 09:41:21 ID:+iF9MBBw0

前スレ>>885
彼らと一緒に花見をしているような感覚に襲われますた

116 :名無しさん@初回限定 :2007/05/19(土) 11:57:53 ID:J+eF4ZSlO

>対戦格闘
ム○ンでユートやコウインを作って、やらないかの人と対決!
一部の腐スピにウケる事間違いなし!

そして、ゴウキの瞬○殺を喰らうオッサン二人…

117 :名無しさん@初回限定 :2007/05/19(土) 14:37:41 ID:zjSn8E2f0

どうでもいいのだが、某ポケモンダイヤモンドパールのダンジョンにソゥ・ユートがいましたよ。
しかも、短パンはいて野球帽らしき帽子かぶって半そでTシャツで。
おまいはエターナルになってまで何をしてるのかと。

わからないネタですまん。

118 :名無しさん@初回限定 :2007/05/19(土) 14:44:57 ID:ImADOd9h0

なるかなでも序盤ヨト語喋ってるっぽいふいんき、ひょっとしてファンタと繋がるのか?

今回文字も作ってきやがったから訳せねぇ…
職人の降臨を待つ

119 :名無しさん@初回限定 :2007/05/20(日) 00:00:36 ID:buOHeIev0

なるかなまた延期だぜ。今度は8月3日だと。

>>112
ちょ、オマ、それ雑魚スピ違う
あと保管庫見れ

120 :名無しさん@初回限定 :2007/05/20(日) 01:00:32 ID:Duwqdm8x0

>>118
いまんところ「カウート」「セィン」「ヨテト」などのヨト音が何度か聞こえるので
ほぼ間違いなくヨト語だと思われる。

ゴリアと繋がるっていうか、神剣の共用語なのかもしれない。ゴリアの言語学的には
卵(言語の伝道者=ロウエタ?)が先かニワトリ(=文明)が先かって感じじゃないかと。

ところで誰か猛獣を解体するヒロインを描いてくださいませんか。

121 :名無しさん@初回限定 :2007/05/20(日) 01:30:27 ID:E2rnnT9u0

魚はともかく鳥まで解体した経験があるという現代モノのヒロインも珍しいよな
でもまあ普通は授業でニワトリを絞めるくらいはするか

122 :名無しさん@初回限定 :2007/05/20(日) 01:41:57 ID:DnudRzVV0

魚をしめるのはめずらしくない
鶏レベルになるとなかなかない
素人がやると不味くなるから慣れてる人に解体してもらったほうがいい
体験版できた人どんな感じだ
起動できないから気になっているのだ

123 :名無しさん@初回限定 :2007/05/20(日) 02:11:20 ID:E2rnnT9u0

このスレ的には、おいしそうなネタがゴロゴロ転がっているな
先の猛獣解体のくだりもそう
怯みまくっている友人たちを尻目に、
「魚や鳥と一緒でしょ」
と平然と作業をする希美ちゃんとか

124 :名無しさん@初回限定 :2007/05/20(日) 02:37:49 ID:Duwqdm8x0

>>122
よく動いて面白いよ。絵も人丸氏じゃないからって毛嫌いしてる場合じゃない程度には。
スペック足りないなら頑張って準備する価値はある。
延期したのはスペックの準備期間だと思いねぃ。

このスレ的にはレーメ、希美、カティマは間違いなくオイシイ。
特に希美の微妙に黒くてしみったれた性格は好きな人多いぞ多分。

125 :名無しさん@初回限定 :2007/05/20(日) 08:06:13 ID:H5ZXm5qR0

黒い人がいると聞いて飛んできました

               , ^》ヘ⌒ヘ《ヾ
               ( リ〈 !ノルリ〉))
        / ̄ ̄ ̄ノノ(!リ゚ ヮ゚ノリ((
   カサカサ ~ ̄> ̄> ̄>   ヽ

126 :名無しさん@初回限定 :2007/05/20(日) 08:37:24 ID:TnwAqGpl0

どう見ても這ってきました、に見えるがw

戦闘時の台詞回しが聞いた事のあるものばかりな体験版をやったんだが
今後ていうか製品版は白スピ出ないとちょっとバランス悪いような
出るんだろうか?
そして出た場合、ツンクールっぽいデレキャラになるのを予想

127 :名無しさん@初回限定 :2007/05/20(日) 08:51:06 ID:c5ObkrZi0

今回雑魚スピとかそういうのいなさそうだけどね
非攻略戦闘員という意味ならタリアとかソルがそれっぽいポジションだけど

128 :名無しさん@初回限定 :2007/05/20(日) 09:21:49 ID:Cjnc2I6A0

スレ的においしいかは分からんが旨く引っ張ってこれそうなネタは多いと思う。
型月で言うとFateと月姫みたいな感じか。
スピたんで辟易した奴にも文句無くお勧めできる感じ。

129 :名無しさん@初回限定 :2007/05/20(日) 19:15:01 ID:e1T7HEUw0

戦闘システムがどうなのか気になる。

130 :名無しさん@初回限定 :2007/05/20(日) 19:18:30 ID:BstAOG8N0

>>124
どうもありがとう
余裕がでたら買い換える

131 :名無しさん@初回限定 :2007/05/21(月) 16:34:47 ID:+sxCAlqC0

>>129
スピたんで懲りたのか、キチンとアセリアに乗っ取った流れだった

1回あたりの戦闘回数が格段に増えてるのがクセモノ
(今までの2セットから8〜10セット、ボス戦では∞に)
激突したらドッチかが全滅するまで終わらないってノリw

先読みの重要性が上がるって意味で、まあコレはコレでアリか?

132 :名無しさん@初回限定 :2007/05/21(月) 19:21:37 ID:+OqsK1Pk0

>>131
教えてくれてサンクス。かなり安心した。
スピたん、戦闘がわけわからなさすぎて楽しさが全くこれっぽっちも欠片もゼロだったからな。

133 :名無しさん@初回限定 :2007/05/21(月) 22:44:00 ID:bdOs+3DK0

>戦闘がわけわからなさすぎて楽しさが全くこれっぽっちも欠片もゼロ

ww ホントにダメなのが伝わってくる。でも、でもね、一部好事家には受けたんだよ! 制限プレーとか。
俺は先生お願いします状態だったがw




そういや、作品別にスレ数で抜かれたね。

134 :名無しさん@初回限定 :2007/05/22(火) 00:09:57 ID:SkvwZL1W0

まぁ工作は葱の倍以上平均レス数あるから。
むしろまだ追いつかれていなかったのが不思議。





…ま、負け惜しみじゃないんだからねっ

135 :名無しさん@初回限定 :2007/05/22(火) 01:38:22 ID:BCFJrPQC0

とりあえず体験版を少し進めてみた。
・・・某古本娘?


『ユウトよ』
「『聖賢』どうした?」
『我が聖獣であったとしたら、如何様な形を取るのだろうな』
「・・・ヨボヨボのじいさんか、マッチョな親父、かな」
『・・・・・・』
「ぐぉぉぉぉぉおぉっ!無言で干渉するなっ!痛い痛い痛い!!」

136 :名無しさん@初回限定 :2007/05/22(火) 01:41:23 ID:wkjbvg4Z0

同じ頃、炉亭はグダグダのハーレムっぷりに拍車かけてましたとさ…

137 :名無しさん@初回限定 :2007/05/22(火) 02:32:44 ID:f0+AQyO0O

つ[アナゴ]
つ[高屋敷]
つ[セル]

案外タキオスとソックリだったり

138 :名無しさん@初回限定 :2007/05/22(火) 06:00:44 ID:nR22PoOo0

>134
つうかこの頃の伸びは恐ろしいw
どこから湧いたんだか・・・

               , ^》ヘ⌒ヘ《ヾ
               ( リ〈 !ノルリ〉))
        / ̄ ̄ ̄ノノ(!リ゚ ヮ゚ノリ((
   カサカサ ~ ̄> ̄> ̄>   ヽ

139 :名無しさん@初回限定 :2007/05/22(火) 09:21:11 ID:q3+nc7k00

「わ、わたしの神獣だって、レーメさんに負けてないんですから!」

               , ^》ヘ⌒ヘ《ヾ
               ( リ〈 !ノルリ〉))
        / ̄ ̄ ̄ノノ(!リ゚ ヮ゚ノリ((
   カサカサ ~ ̄> ̄> ̄>   ヽ

140 :名無しさん@初回限定 :2007/05/22(火) 11:18:30 ID:9++Q91Jo0

神獣だったんかいw

141 :名無しさん@初回限定 :2007/05/22(火) 15:14:34 ID:/Xft23Nh0

なんという神獣…これは間違いなく一度で二度効くコンバット

142 :名無しさん@初回限定 :2007/05/22(火) 17:39:29 ID:3ZFzyaDW0

なるかなに出てきた黒ミニオンの神獣(人型フォルムな血吸いコウモリ)とどっちがマシだろう

143 :名無しさん@初回限定 :2007/05/22(火) 20:09:54 ID:gLNbXBLm0

まだ体験版やってないんでAAにしてみてくれそれで比較してみるから

144 :名無しさん@初回限定 :2007/05/22(火) 20:45:36 ID:eYWKMzPj0

          , ^》ヘ⌒ヘ《ヾ
          ( リ〈 !ノルリ〉))
         ノノ(!リ゚ ヮ゚ノリ((              
    ,.、-  ̄/  | l    / | |` ┬-、
    /  ヽ. /    ト-` 、ノ- |  l  l  ヽ.
  /    ∨     l   |!  |   `> |  i
  /     |`二^>  l.  |  | <__,|  |
_|      |.|-<    \ i / ,イ____!/ \
  .|     {.|  ` - 、 ,.---ァ^! |    | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄l
__{   ___|└―ー/  ̄´ |ヽ |___ノ____________|
  }/ -= ヽ__ - 'ヽ   -‐ ,r'゙   l                  |
__f゙// ̄ ̄     _ -'     |_____ ,. -  ̄ \____|
  | |  -  ̄   /   |     _ | ̄ ̄ ̄ ̄ /       \  ̄|
___`\ __ /    _l - ̄  l___ /   , /     ヽi___.|
 ̄ ̄ ̄    |    _ 二 =〒  ̄  } ̄ /     l |      ! ̄ ̄|
_______l       -ヾ ̄  l/         l|       |___|

145 :名無しさん@初回限定 :2007/05/22(火) 21:15:00 ID:B7E/2LsF0

バランスが悪いみたいだな

146 :名無しさん@初回限定 :2007/05/22(火) 22:39:44 ID:gLNbXBLm0

O.K.これとGヘリとどっちがマシかってことだな兄弟。


…ごめん、マシって単語ちょっとググってくる

147 :名無しさん@初回限定 :2007/05/23(水) 08:02:45 ID:IKHG4pixO

なんかもう、次スレの点呼ネタだな。
っ『アセリアのキャラの聖獣は?』

148 :名無しさん@初回限定 :2007/05/23(水) 21:50:54 ID:6yJ133Tg0

はははばかだなぁ、アセリアなら性獣か精獣に決まってるじゃないか

149 :名無しさん@初回限定 :2007/05/23(水) 22:04:24 ID:Jcpp79Ea0

じゃあ性緑で

アセリアの「神剣所有」キャラ(ザコスピ達やエトランジェ・エターナル・改造人間・開拓者達)の聖獣は?
だろうな、たぶん





貧乳王女も仲魔に入れてやってもらえませんか?

150 :名無しさん@初回限定 :2007/05/23(水) 22:05:56 ID:JizAhLGb0

いつぞやのネタでは「大樹」はすでにハリオンに取り込まれてるというのがあったな
それに順ずるとハリオン’とかそういうのが出てきそうです、はい

151 :名無しさん@初回限定 :2007/05/24(木) 06:38:26 ID:GtdoTrQy0

自称天才科学者のこともたまには思い出してやって下さい。


オルファの瀬移住(←何故かこう変換された はぴぃたんですか?

152 :名無しさん@初回限定 :2007/05/24(木) 16:52:53 ID:Cq6NIHZX0

『再生』でも『理念』でもぴぃたんが居るから、どっちか断言出来ないな・・・

153 :名無しさん@初回限定 :2007/05/24(木) 21:41:00 ID:0zPqOBS80

【ハリオン’】 名詞

胸の脂肪率が一挙に減少するという逆ハリオンマジックが
自動的に発動し、パーティー全員が同じ症状に陥る。結果、ヨフアルが喜ぶ。
類型として’ハリオンという胸を文字列としてしか認識出来ない存在も確認されている。
Eミニオン等が被害にあっているらしい。

154 :名無しさん@初回限定 :2007/05/24(木) 22:45:00 ID:zrxnFlX40

わからない方向にあえて間違えて書き込む。

悠人・ベルセルク 光陰・セイテンタイセイ 今日子・サンダーバード 瞬・フェンリル 時深・フォルティナ
エスペリア・ナルキッソス アセリア・アリアンロッド ウルカ・モムノフ オルファ・ジャックランタン
セリア・ヴァルキリー ヒミカ・イフリート ナナルゥ・ヒノカグツチ ハリオン・ユグドラシル ファーレーン・アルテミス
ネリー・シーサー シアー・コマイヌ ニム・ケットシー ヘリオン・ゴキトラナガン クォーリン・アルラウネ
ロティ・ガネーシャ ソーマ・ギリメカラ ミュラー・フツヌシ ツェナ・アメノウズメ イオ・ガブリエル
テムオリン・ニャラルトホテプ タキオス・ヘカトンケイル メダリオ・ダゴン ントゥシトラ・本人 ミトセマール・マンドラゴラ
    

155 :名無しさん@初回限定 :2007/05/25(金) 00:23:40 ID:CVVAieMa0

>>ヘリオン・ゴキトラナガン
なんという悪魔王
本人と聖獣の強さがまったく釣り合わない・・・!

156 :名無しさん@初回限定 :2007/05/25(金) 01:58:33 ID:VBCO2kV80

お前はゴキ付けたかっただけちゃうんかとw

157 :名無しさん@初回限定 :2007/05/25(金) 06:21:45 ID:VYaDmjp10

じゃあ更に判らなくしてみる。

悠人:キングスカッシャー
光陰:クィーンサイダロン

アセリア:セイローム エスペリア:アッサーム オルファリル:シルコーン ウルカ:ゼンダイン
今日子:キリマン+佳織:ブルマン=ブレンドン 時深=ゴブーリキ

ネリー:ポーン一郎 シアー:ポーン二郎 セリア:ポーン三郎 ヒミカ:ポーン四郎 ナナルゥ:ポーン五郎
ハリオン:ポーン六郎 ニムントール:ポーン七郎 ヘリオン:ポーン八郎 ファーレーン:

シュン:トタンカーメン テムオリン:ドン・ハルマゲ
タキオス:トンデモン ミトセマール:シャーベッタ ントゥシトラ:ナンゴック メダリオ:ペーキング

158 :名無しさん@初回限定 :2007/05/25(金) 06:41:21 ID:FV4Rvv6s0

それはまさにNGなのでは?w

159 :名無しさん@初回限定 :2007/05/25(金) 07:50:10 ID:bXS5FR9q0

じゃあ徹底的に判らなくしてみる。

悠人:アルベルト 光陰:セルバンテス 今日子:ヒィッツカラルド 佳織:幽鬼
アセリア:残月 エスペリア:十常寺 オルファリル:サニー ウルカ:樊瑞 時深:カワラザキ

シュン:幻夜 テムオリン:諸葛亮孔明
タキオス:コ・エンシャク メダリオ:イワン ミトセマール:オズマ

160 :名無しさん@初回限定 :2007/05/25(金) 09:33:59 ID:k6a/0UNw0

>>158 誰が上手い事いえ(ry

161 :名無しさん@初回限定 :2007/05/25(金) 13:21:15 ID:eAxUkcbU0

>>159
うほっ!いい十傑集!

162 :名無しさん@初回限定 :2007/05/25(金) 13:22:45 ID:jGzKOjWW0

ますます本当に判らなくしてみる。

悠人・ギャラドス 光陰・ゴウカザル 今日子・エレキブル 瞬・ヘルガー 時深・パルキア
エスペリア・キレイハナ アセリア・オニゴーリ ウルカ・グラエナ オルファ・バシャーモ
セリア・ユキメノコ ヒミカ・ギャロップ ナナルゥ・ガーディ ハリオン・ジュカイン ファーレーン・ブラッキー
ネリー・カラナクシ(赤) シアー・カラナクシ(青) ニム・フシギダネ ヘリオン・アノプス クォーリン・ロズレイド

某ポ○モンまでいくと、本当に判らなくなるな。    

163 :名無しさん@初回限定 :2007/05/25(金) 13:53:14 ID:HII8qTP/0

>>162
知らないのがたくさん居る・・・時代は変わったなぁ(´・ω・`)

164 :名無しさん@初回限定 :2007/05/25(金) 19:25:12 ID:jGzKOjWW0

>>163
今じゃ、軽く400種類を越えてるからね。コンプはマジ至難の技だよ。
なかには、映画とかのキャンペーンで配ってもらわないと入手できないのまであるしなー。

165 :名無しさん@初回限定 :2007/05/25(金) 20:40:06 ID:MAiKq67K0

少し判り易くしてみる。

悠人:ペンライト アセリア:掛け声だけ オルファ:バッチ ネリー&シアー:指輪 ヒミカ:眼鏡

166 :名無しさん@初回限定 :2007/05/25(金) 20:52:59 ID:MIybnD1F0

>>154
さりげなく本人を降臨させてるントゥたんに萌えたw

167 :名無しさん@初回限定 :2007/05/25(金) 21:28:34 ID:Xv6CC7Ev0

>>162
ミト姉:モンジャラ メダリオ:ゴルダック ントゥ:アンノーン

こうですか!?わかりません!

168 :名無しさん@初回限定 :2007/05/25(金) 23:46:51 ID:/p6R+sOh0

雑魚クリスト分補充が楽しみだなー
戦闘要員でも最初からかなり個性がありそうだし
黒かわいいよ黒

169 :名無しさん@初回限定 :2007/05/26(土) 19:37:06 ID:X/isRsqt0

>>165
3分たったらファンタズマゴリアに帰らないといけないんだな

170 :新たな技を習得しました :2007/05/27(日) 02:10:46 ID:RVFsCLKo0


それは、常春のラキオスにしてはちょっぴり冷え込んだ夜更けの事。
身震いで目が覚めたアセリアは、のっそりと上半身を起こした際に吐いた息が真っ白なのに気がついた。
「……寒い」
まだぼーっとしている頭で確認する。皺くちゃになった薄手のタオルケット1枚ではどう見積もっても快適な安眠には足りない。
そもそも寝巻きとして愛用しているエスペリアからのお下がりである白シャツは下半身まではフォローしていないので、
晒された太腿からは夜のひんやりとした空気の感触がダイレクトに伝わり、更にはうかつに床へと下ろしてしまった足の裏には霜の感触。
それが尚一層意識を眠気から遠ざけてしまう重大な要因になっているのだが、アセリアだからそこまで深くは考えない。
ただ、最近は連日エスペリア指導による神剣魔法修得の為の猛特訓が続いており、夢に魘されてしまうほど疲れているので、
唯一休息の取れる夜には出来るだけ身体を休めておきたい、ぶっちゃけ疲れてるから存分に寝こけたいという願望だけが切実だった。
しかし、この寒さではどうにも眠れそうには無い。アセリアはタオルケットを身体に巻きつけ、そろそろと部屋を出る。

171 :新たな技を習得しました :2007/05/27(日) 02:12:08 ID:RVFsCLKo0


「ん……入るぞ」
慎重に気配を殺し、忍び込んだのはエスペリアの部屋。
万が一まだ起きていたり怪しい吐息とかが聞こえていたりした場合には後が怖いので、一応声だけはかけてから入る。
でもアセリアだからノックはしない。
「……」
ひっそりと静まり返っている室内に滑り込むと、奥からは微かな寝息のようなものが聞こえてくる。
アセリアは爪先を立てながら息を潜め、月明かりだけを頼りに寝息の持ち主へと近づいていく。
エスペリアは、枕を両手で抱え込むように寝ている。それも、ぐっすりと。
確認して、やや警戒を解きつつ屈みこむ。床に落ちているものを拾う為に。
「……う、んん……」
がんっ!
「〜〜〜〜ッッ」
油断した、と思った時にはもう後悔先には立たず。
寝返りを打ったエスペリアの裏拳が手加減無しに後頭部を直撃してきたのに、声を上げるのを辛うじて留まったのは上出来。
しかし悶絶して動けずに、暫くはその場で蹲る。懸命に気を紛らわせようと自分で吐いた白い息が拡散するのを眺め、
両手で頭を抱え、ずきずきとする後頭部の瘤を擦っているとようやく痛みも収まってきた。ごすっ。

172 :新たな技を習得しました :2007/05/27(日) 02:13:14 ID:RVFsCLKo0


「〜〜〜〜ッッ」
戦場でも喰らった事の無い様な衝撃は、正面から。
遠心力とシールドハイロゥを伴った稲妻レッグラリアートが鼻面を直撃し、目からは火花が飛び散る。
それでも声は漏らせない。アセリアは放り投げられた生足をそっと顔からどかし、親指を摘み上げ、ベッドの上に戻す。
この作業に半刻ほどかかったが、当のエスペリアは歯軋りのようなものこそ立ててはいたものの、相変わらず枕を抱えて夢の中。
この寒さの中でよくも、と感心半ば呆れ半ばになりつつも、アセリアは再び床に落ちている皺くちゃのタオルケットを摘み取ろうとする。
ハイロゥを変形させた白く光る輪っかのようなもので。この技は最近覚えたばかりなので、まだ上手く制御出来ない。
しかし一旦は大人しくなったもののいつまた無意識の攻撃を仕掛けてくるか判らないエスペリア相手に油断は禁物なので、
というかもう痛いのは嫌なので、屈みこんだり両手を塞ぐのよりはリスクが少ないと判断した。
幸いにも、立て続けの襲撃によって生じた集中力のお陰なのか、今夜はなんとか爆発させずに無事ブツの捕獲にも成功する。
「どうせ……うん、役に立たない」
この寝相では。そんな補足説明が要らないほど乱れきったエスペリアの格好を一瞥し、アセリアは部屋を出ていった。鼻血を垂らしつつ。

173 :新たな技を習得しました :2007/05/27(日) 02:14:47 ID:RVFsCLKo0


そんな夜限定の異常気象が何日か続いたある日の午後、訓練施設。
「はい、良く出来ましたねアセリア……くちゅんっ」
「エスペリア、風邪か?」
「ええちょっと最近、朝起きるとタオルケットが、その……くちゅんっ!」
「……」
連日の猛特訓の成果が実り、アセリアはようやく神剣魔法、アイスバニッシャーを修得した。
そしてそれと共に夜な夜な魘されつつ詠唱していた寝言もぱったりと収まり、ラキオスもまた通常の気候へと無事復元を果たした。
しかしそれから当分の間、元々抵抗力の弱かったエスペリアだけは風邪で寝込んでいたという。

174 :新たな技を習得しました :2007/05/27(日) 02:17:29 ID:RVFsCLKo0


以下、余談。
それから数年後。常春のラキオスは、またもや夜になる度原因不明の寒波に襲われていた。
「うう〜寒いよぅ」
「さ、寒いの……あれ、ネリー?」
「シアー、どしたのヒミカに用事?」
「う、うんその……」
「……」
「……」
「……ヒミカ、寝相悪いもんね」
「そ、そうだよね……要らない、よね?」
「いい、絶対に足音立てちゃだめだよ?」
「ネリーも、声出しちゃだめだよぅ?」
こうして毎夜の潜入を受けたヒミカは二人がアイスバニッシャーを修得するまでの間風邪を引き続ける事になったという。


ラキオス布告令第2149

ブルースピリットの神剣魔法の修得は急務ではあるが、その為に過度の訓練を行う事はこれを厳禁とする。
わかった、ユートく……くちゅんっ! by レスティーナ・ダィ・ラキオス

175 :名無しさん@初回限定 :2007/05/27(日) 02:20:48 ID:RVFsCLKo0

     _ ,へ 
    ,´ /:::: |ヽ 
   ∠ <=====ゝ   風邪引かないように頑張りましょうね……と  
   んヘ!」 ‐ノ」| 
     <(つ/ ̄ ̄ ̄/
 ̄ ̄ ̄ヽ/SpiNet/ ̄ ̄
        ̄ ̄ ̄

176 :名無しさん@初回限定 :2007/05/27(日) 09:31:46 ID:9ANy+PG40

>175
ワロタ
いやてっきり、落ちてるのは、アセリアの前によばiに来た悠人なのかとw

チュンチュン
小鳥の声に目を覚まし、ベッドの上、優雅に伸びをするエスペリア。
ふわわぁぁぁああ。アクビを手で押さえながら足を降ろす。むぎゅ。
「むぎゅ? 何でしょうこれ」
寝ぼけ眼をこすりつつ、ネグリジェから零れる生足先でごろごろとこねくり回すとザラザラした感触。
良く見れば、黒いハリネズミのような物体が転がっており、目線を伸ばせば、見覚えのある陣羽織に寝巻の背中に繋がっている。
伝わる触感は結構気持ちいい。ごろごろ。
「……きゃあっ! ユートさま!? ああアセリアまで??」
今ごろ気付いた。マナ血溜まりに倒れる二体。何となく半透明に見えるのは窓から差し込む光の錯覚……だといいなあと一瞬思う。
「い、いったい誰がこんな酷い真似を?」
 ,_________________
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 |  |:::::::: ニニ ト、      _,.-个:::::::|   |
 |___ .|:::::::: ニニ |叫     |.=ニレ-'个ー‐-|
 |.  ̄\:. ニニ.|叫 ̄ ̄ ̄~T=ニ|::|`'ー.,_  .|
 |-ー‐''''个.ニニ.レ'´. ,ィ^i^!1、  -.,|::| 叫 `ー|
 |. ニ= |::_,.-'´  .,'´  ̄ `ヽ';_ ``|.,     .|
 |   _,.ト'´  / (l !i_!li_!i!リ `;_  \   |
 |  /    /.  リi〓〓iソ. `;_  .\,  .|
 |_/     /  √ |Ψ|`'i   `;_   \_|
 |      /    | |. i | .|    `;_   |
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

>白シャツは下半身
それ当たり前というか、エスペリアのお下がりなら際どいはずです!

177 :名無しさん@初回限定 :2007/05/27(日) 11:52:27 ID:2SYdmKhT0

>>175
乙。
どんな事でも覚え立ての頃は危険が付きまとうのですねw

しかし、エスのレッグラリアートは痛そうですね。
なまじ質量があるだけn(ソニック

178 :規則満面 :2007/05/27(日) 21:47:26 ID:9ANy+PG40

ファンタズマゴリアを後にして、北東に何処まで来たのだろう。
龍の爪痕遙かに遠く、ここは、荒唐無稽とも言える浮遊島。


何となく、ただ何となく、来し方をぼんやり思い浮かべていたそんな浮島の昼下がり。
大陸と変わりなく輝く太陽をうらめしく思いながら、ロティは部屋に籠もって書類整理に勤しんでいた。
隊長ともなると、それはもう色々あるのだ。ほとんどヨーティアに押しつけられた雑務な気もするけれど……中間管理職は辛いものだ、と独りごちてみる。
ポリポリとペンで頭を掻く。少し喉が渇いたなと思う。
そんなロティのところへ、いきなりドアが開いたかと思うと、ひょこっと飛び込んできたのは無遠慮なふたつの青影。
「ねーねーロティー、買い物行くからつきあって〜」
「て〜〜」
「ああ、ちょっとゴメン。ヨーティアさんに頼まれてるのがあるからさ」
両腕にぶら下がらんばかりな双子に、ロティは申し訳無い顔をしながらも、にこやかに断った。
懐かれるのは嬉しいものの、今回はあまりに余裕がない。
普段なら粘り腰を発揮して、あれやこれやロティの部屋を散らかし自覚無き邪魔に勤しむ双子だけれども、
今回は珍しく呆気無く退散してくれた事にホッと胸を撫で下ろす。


その5分後。
控えめなノックがあった。
「あ、あのロティさん。お茶煎れたんですけど。どうですか?」
「ああ。ありがとうヘリオン。丁度喉渇いてたんだよ」
「えへへ、お菓子もさっきバンジャスさんに頂いたのがあるんですよ。すっごく美味しいんです!」
ロティは、覚醒作用のあるらしいさっぱりしたお茶と、疲れた体にほどよく染みる甘いお菓子に舌鼓をうった。
大陸では味わえない美味しさを力説するヘリオンとしっかりと向かい合いながら、日頃忙しくて出来ない会話もつらつらと。
なんでも、がんばり屋のヘリオンは料理にも邁進しているとのこと。女の子らしい。
流れ的に今度手料理をご馳走して貰えることになった。
これは楽しみが増えた。でも何故か手伝っちゃ駄目らしい。

179 :規則満面 :2007/05/27(日) 21:51:13 ID:9ANy+PG40

10分後。
やや乱暴なノックにドアを開けた。
「ロティこの前の種。芽出た」
「へー、すごいねニム。ヨーティアさんに報告しておくよ。きっと褒めてくれるよ」
「……ニ、ニムって言うな」
ニムの赤面に微笑みを浮かべたロティは、思わずニムの頭を撫でたくなったが反撃が恐いのでやめておいた。
スネを蹴るのはやめてよねホント。
種というのは、ファンタズマゴリアには無い果樹のことだ。それから採取した種を蒔いて試行錯誤の末ついに萌芽したのだ。
もしかしたらだが、ニムの育てた一粒の種が、大陸を何時か襲うと見込まれる食糧問題の切り札と成り得るかもしれない。
そう思うと、なんだか嬉しさや誇らしさがわき上がってくる。


さらに5分後。
これは優しいノック。
千客万来だな、と言葉を溢して、今度は誰だろうと思いながらペンを置くと、椅子を回して振り向いた。
女の子向けの笑顔が意識せずとも顔面を支配する。
「どうぞ」
「よう」
「…………コウインさん。な、なにか」
「へっへっへ」
自動で開くドアには窮屈であろう体を屈ませて、鼻の下を指でこするコウイン隊長はニヤリ、と表情を歪ませた。
「今、女の子だと思ったろ」
「え、そ、そんなことありませんよ」
「スピリット隊、隊則42条!!」
思いっきり動揺してるロティを、出し抜けの大声が一喝した。

180 :規則満面 :2007/05/27(日) 21:53:00 ID:9ANy+PG40

キィィィーーーーン。
ぐぅぅっ。
おまけに『紡ぎ』からも痛烈な抗議の声が届く。
思わず片目をつぶって頭痛に耐えたロティは、なんとかかんとかコウインに問い返す事が出来た。
「いきなりな、なんです」
「まあいいから。ほれ、言ってみな」
「……え、え、隊則42条は……≪上司と部下の恋愛はこれを禁ず≫ です」
「そうだ。理由は言わずもがな、だよな」
「……はい。私情を挟むようでは隊の運用に危機をもたらす。長たるもの常に公平であらねばならない、と」
何時に無く真面目なコウインの眼光に、背筋が伸びるのを止められないロティは、近頃の自分を省みていた。
そうだ。こんなことではいけない。ネリー達と仲がよいのは結構なことだけれど、そこに余計な感情が入り込んで良いのだろうか。
いや、良くない。
コウイン隊長は、もとい、今はロティが隊長だけど、おそらく危なっかしいロティに釘を刺しに来てくれたのだ。
素直に痛み入る気持ちになれたロティは、感謝の言葉を吐こうとした――「さて、今の俺はなんだ?」
「え?」
「今の隊長はお前だ。そして今の俺は単なるヒラ隊員。これが意味するところが分かるかロティ」
静かに語り、うつむき加減になるコウインの立ち姿に、ロティは固い唾をごくりと飲み込んだ。
何か奥深い意味が有るのだろうか? どうにも思いつかない。偶にしか聞けないありがたい説法に期待したのも束の間。
「ふ、そうだ。俺とニムントールちゃんの間にあった障害は今は何も存在しないのだ。言わばシステムオールグリーン!!!」
ドアを蹴破らんばかりの勢いで部屋を飛び出したコウイン。
「待っててねニムントールちゃん。今は同じ立場のヒラ同士、大人の恋をしようね〜〜」
言うが早いか、走り去っていったのが早いか、ニムにどつかれるのが早いか。
遠ざかる背中を見送りながら思わず、「タフだなあ……」
変なところで感嘆するのを止められないロティであった。

181 :名無しさん@初回限定 :2007/05/27(日) 22:04:05 ID:9ANy+PG40

   γ"⌒ヽ
  (.リノ彡ヾ〉 
   !pリ゚ ヮ゚リ             と、ということは私はもう部下じゃないから…………圏内!!?
   ((<(つ/ ̄ ̄ ̄/         
 ̄ ̄ ̄ヽ/SpiNet/ ̄ ̄ ̄ ̄



おそらく稲妻は光陰にとっていつまでも部下だろうなと思う。解任指令を出せる人居ないしw


AA保管庫作ってみました。一応報告します。
http://nechanforce.o-oku.jp/

182 :名無しさん@初回限定 :2007/05/27(日) 23:39:16 ID:7lm8ZHE10

この流れでとりあえず『求め』の声を脳内で
MGSのニンジャにしたことがあるやつは前に出ろ

俺はある。なかなかイケてた

183 :名無しさん@初回限定 :2007/05/28(月) 00:20:59 ID:edYgqX7T0

>>170


>>176
はんにんh(ry

184 :名無しさん@初回限定 :2007/05/28(月) 06:52:07 ID:2rR3M1gp0

>>181
つまり一体何しに来たんだコウインw

185 :名無しさん@初回限定 :2007/05/28(月) 06:57:13 ID:2rR3M1gp0

>>181
って逝ってみたら100hit踏んだんで一応報告がてら乙

186 :名無しさん@初回限定 :2007/05/28(月) 07:15:50 ID:bL74URIdO

エスペリアはラーメンマンの技を盗んでいきました
レッグラリアートに茶を噴いた俺がいる

チラ裏
ネタと時間が出来たので久しぶりに書いてみるか…

187 :名無しさん@初回限定 :2007/05/28(月) 21:07:43 ID:Vrowwa120

>>181
最後の光陰噴いたw
てか普通に会話してるロティ見るのすげー久々w

っそいてAA保管庫乙です。
AAよりもFAQ集が便利ですね。
これ次スレからテンプレ入りで。

188 :名無しさん@初回限定 :2007/05/28(月) 22:54:45 ID:vcvbzpHR0

>>187 IDがw

189 :名無しさん@初回限定 :2007/05/29(火) 01:24:02 ID:4H9sovpC0

       /                    .\
     /          ○            .\
 \ /                          \ /
   \      ___________     . /
    \   ./                \   /
     | \/                   \/...|
     |  |                       |  |
     |  |                       |  |
  .._ |_|                       |_|_..
     |  |                       |  |
     |  |                       |  |
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     |  |/                   ..\|  |
     |  |                  ヽ)/   .|  |
   .._|/|      _ _ _ _ _ _ _∠´ ハ`ゝ . .|\|_
  / ..|  |   _−_−_−_− 彡//ノハハ〉 .|  |  \
     |  |/_/━ ━ ━ ━.  !、 リ彡彡 \|  |
   .._| /_/━ ━ ━ ━ ━  <´   ) _\.|_
     /_/━  ━  ━  ━  ━  U   、 \_\
   /  /━  ━  ━  ━  ━ <__λ__ ゝ. \  \

Youto The Third

『解凍』を手にし、エターナルとして目覚めた悠人。            
多次元世界を舞台に、ツンを巡る解かし合いに身を投じていく。
    , ヘ _
   〃 ' ヘ ヘヽ
  ノi ミ从l~iルソ  
 (((ヾ(i|゚ -゚ノi| <まだ私を溶かしてもいないくせに……。
  从i⊂》|Tリつ
    く/|_|〉
.    〈.フフ

190 :名無しさん@初回限定 :2007/05/29(火) 01:43:31 ID:4H9sovpC0

探偵へりおんE「「ツンは全て解けたっ……んでしょうか?」

とアホネタカキコしつつ。


>184
単なるからかいとやっかみで、進んで良しのグリーンシグナルを確認に来てニムとじゃれ合う大義名分を拾いに来たんですよw
ストラロスオメ。

>187
ヒラリーマンは気楽な稼業と来たもんだ、と。
やはり隊長であるが故のニム達年少組との拠って立つ立場の違いに苦慮してきた光陰の心の重しを取り払う光明である曙光が……。


テ、テンプレですか。吝かではありませんが、それは正直考えてなかった……。
このスレを世界樹の根幹とした枝葉HPなので、みなさんのお力となれれば重畳至極。

191 :名無しさん@初回限定 :2007/05/29(火) 02:29:52 ID:r4mZGCj30

リープチャージ(永峰希美)
『清浄』によって足の力を高め一気に上空に飛び上がり、空気を噴射して敵頭上から強襲する『急降下』攻撃技。
「エスペリアとハリオン。この技を真似してみ・・・え?どういう人選なのかってそりゃ体重g(ハリブラフォースアポカリプス」

体験版に6時間かけた俺ガイル。スペックが悪いとCtrlで早送りしていくにも限度があったよ・・・。

192 :立つ鳥跡を濁さず :2007/05/30(水) 06:55:18 ID:81C36cwK0


二羽は、互い螺旋を描きつつ舞い降り、つるぎを振るう。
守る為に白翼を広げ、儚く美しい四肢を深紅の血に染めて。
無数に浮かぶ羽の中、地面すれすれを滑空し、神剣魔法を撃ち出すのはセリア。
水の加護の元、青く靡くポニーテールに気高きマナの粒子が散りばめられる。
「アセリア!」
「ん。任せろ」
散りばめられた水のマナを割るように、敵へと接触するのはアセリア。
コンビネーションの果てに生み出された推進力は家屋の壁をも突き破る。
市街戦に妖精の能力は余りにも大きく、衝撃波は街路樹を薙ぎ倒し、
丈夫な石造りの建物を容易に崩し、敵と一団になって屋内へともつれ込んだ蒼い牙の周囲には
砂塵とガラスの破片と大量のマナが入り混じった煙幕がもうもうと立ち昇っては視界を濁らす。
しかし、遅れて飛び込むセリアに躊躇は無い。そこにはもう危険などは無いと確信している。
「……ふぅ」
散乱した部屋の中、佇んでいるのは輝く『存在』を携える、セリアが最も信頼している相手。
紫色の瞳は無表情のままこくり、とただ頷く。既にマナへと還った敵の金色を見つめたままで。

近寄りがたい雰囲気がアセリアの周囲には満ち溢れている。深い、哀しみと共に。
瓦礫を踏みしめながら、セリアは思う。こういう時、どんな言葉をかければ良いのか。
そんな簡単な事に限っていつも何も思いつかない。崩れた天井から見える空は、こんなにも青く澄んでいるのに。
戦うのがスピリットの宿命とはいえ、アセリアに垣間見える後悔が解るのは、唯一自分だけなのに。
「ん、セリア。帰ろう」
一陣の風が、大気を震わせる。猫を思わせる、誤魔化すように無理を押し殺した仕草。
顔を上げたアセリアは、既に再びウイングハイロゥを開き、背を向け、飛び去ろうとしている。
このまま後を追い、部隊と合流し、彼女の焦りの様な「何か」を見過ごすのは簡単だろう。
だが、それでもセリアは意を決し、ゆっくりと手を伸ばし、そっと小さな腕を掴む。
ぴくっと細かく跳ねる華奢な背中。その壊れそうに怯える心へと、出来るだけ優しく語りかけるために。

193 :立つ鳥跡を濁さず :2007/05/30(水) 06:59:06 ID:81C36cwK0


  「いつも言ってるでしょ。自分で散らかしたんだから、放ったらかしにしない」
  「……ん」

しぶしぶ頷くアセリアに、その辺に落ちていた箒とちりとりを渡し、後は黙々と掃除を始める。
僅かな塵も埃も見逃さないように、慎重に。時々目を盗もうとするアセリアを視線だけで牽制しながら。
どんな時にも躾と規律を忘れない、それがセリアのじゃすてぃす。逆らわないのがアセリアのじゃすてぃす。

194 :這えば立て、立てば歩めの親心 :2007/05/30(水) 07:00:16 ID:81C36cwK0


先ほどまで、当たり前に人が過ごしてきた風景。
それが想像も出来ない程に破壊されてしまった街の広場の一角。
放射状に抉れてしまった地面の丁度縁の部分に、黒き妖精は舞い降りる。
一部始終は、観察していた。この惨状も止むを得ない。そう判断しても、やはり躊躇う。
陥没している地面の、同心円の中心で佇む、緑色の髪の少女の気だるそうな背中を見ては。
一体、どんな風に声をかけてやれば、良いのだろう。
「……お姉ちゃん?」
戦う事がスピリットの定めとはいえ、殺す事に慣れている訳では決してない。
ましてや彼女の足元でマナへと還ろうとしている者は彼女に明確な危機感を与えていた。
防衛反応が幼い少女の潜在能力を極端に高めたが為、手加減などは無用の事態。
それはきっと、少女も判っている。だからこそ、その背中にも倦怠が見え隠れしてしまう。
「はは……やっちゃった」
「ニム……」
「めんどくさい、よね……」
ニムントールは、ただ呆然と金色のマナを見つめ続けている。
普段なら姿を見つけた途端駆け寄ってくる、嬉しそうな表情が今は酷く遠く思えてしまう。
「……あの、ね?」
ファーレーンはようやく声を絞り出し、ゆっくりと歩み寄る。
溺愛する少女の、逃避しようとしている小さな心を繋ぎ止められるのは自分だけだと信じて。
出来るだけ優しく、危機に瀕した少女へ救いの手を差し伸べる為に。

195 :這えば立て、立てば歩めの親心 :2007/05/30(水) 07:05:35 ID:81C36cwK0


「ニム、ごみはちゃんと捨てるように、って言ったでしょ?」
「……ぅに」

二人はてきぱきと、大振りな『因果』が見えなくなるまで土を被せる。
僅かな証拠も隠滅するように、慎重に。
ときどき聞こえる、ちょ、ホント、勘弁しっなどというくぐもった声は殊更無視しつつ。
妹同然の少女に所構わずちょっかいをかけてくる存在など、ごみも同然。
覆面の下で冷徹な笑みを浮かべる、それがファーレーンのじゃすてぃす。
逆らわないのがニムントールのじゃすてぃす。

196 :名無しさん@初回限定 :2007/05/30(水) 07:14:07 ID:81C36cwK0

戦いとは、事が済んでしまえば常に虚しさだけが付きまとうものなのです。

>>176さん
次の日、ベッドで再び優雅な伸びをしたエスペリア。むぎゅ。
「……きゃあ! ま、守り龍様!」
次の日、証言台にて。
わたくしの寝相は悪くありません、それは本当です。
何だかあちこち痛いような気もしますが、多分気のせいなのです。

>>177さん
うぃ、なまじスピリットの馬鹿ちかr(ヘブンズ 大根足g(エレメンタル

>>186さん
どもです。密かに喰らってみたい気がしないでもない自分もいますw

197 :名無しさん@初回限定 :2007/05/30(水) 17:48:52 ID:Ph/AJ5bD0

きゃ、きゃー! 光陰が埋められて、殺されて、犯されるぅー?!

何はともあれGJです。
ファーが黒いよ、黒いよファー。さすがブラック。

198 :名無しさん@初回限定 :2007/05/30(水) 21:21:14 ID:QJDZL8hi0

>>196
乙です。
ファーさん、さすが埋め慣れてらっしゃいますなw

199 :名無しさん@初回限定 :2007/05/30(水) 23:10:13 ID:Wm8ysB4V0

>196
む、これはふたつの作品なのね?

>立つ鳥跡を濁さず
殊勝な心がけは立派ですがセリアさん。そう言うときは神剣通話一発、(株)レッドナナルゥスィープ社にイグニッション清掃を頼めば、
瞬く間に消し飛ばしてくれますよ。もらい火は保証外です。

>這えば立て、立てば歩めの親心
親の欲目が目にまで覆面を掛けてますyo。ちゃんとゴミの日は毎週よっつの日だって教えなきゃw
ラキオスに来て日が浅いクォーリンにはいつつの日だって言うとなお良しです。

200 :名無しさん@初回限定 :2007/05/31(木) 12:30:05 ID:f5XBV6sY0

光陰カワイソス

201 :名無しさん@初回限定 :2007/05/31(木) 22:30:27 ID:JuiPw6if0

レムリアの重箱の最後の段には希望が入っていますか?

202 :名無しさん@初回限定 :2007/05/31(木) 22:54:01 ID:u9AAPOES0

どうだろう。脂肪や死亡の可能性なら充分に有りそうだけど。

203 :名無しさん@初回限定 :2007/05/31(木) 23:06:28 ID:KJkez+Xo0

俺が思うに手作りのヨフアルだと思うんだ
当然生地の色がきつね色なわけはありません

204 :名無しさん@初回限定 :2007/05/31(木) 23:54:11 ID:fN7Ojs0M0

紫色、とか身体には良さそうなんだけどな
悠人の苦手な野菜系だっただけじゃね

と女王陛下を擁護してみる

205 :ゆっくりいこう 1 / 18 :2007/06/01(金) 08:24:51 ID:c9/+WTGM0

 宵のラキオス。
 悠人は、一日の疲れを癒すべく、光陰と共に風呂場へと向かっていた。
「いやー、今日も充実の一日だったな。なぁ、悠人よ」
「……疲れたよ」
「なんだなんだ、だらしがないぞ。あれしきでへばってどうする」
「……はは、は」
 疲れ果てた悠人は反論もままならず、くたびれた笑いで返すしかない。
 今日は実戦は無く、訓練があったのみ。
 しかし、弱点補強の訓練内容は、普段使わない筋肉を使って苦手な動作や不馴れな動作、不得手な技を練習するとあって非常に疲れる。
 疲労困憊の中、監督役をしているエスペリアに、
「短所を補うよりも、長所を伸ばした方が良いんじゃないか?」
 などと、解った様な言い訳をしてみても、
「私やアセリア、オルファなどの様に他の者の下で戦う者であれば、それも良いでしょう。コマとして、その特長を最大限に生かせる位置に付けば良いのですから。
 ですが、ユート様はそうではありません。
 ユート様はスピリット隊の隊長。ラキオススピリット隊の中心なのです。
 ユート様の弱点は、そのままラキオススピリット隊の弱点となるのです。
 手足となり動く者が幾ら強力でも、それを指揮するユート様がその扱い方を知らないのでは、各々の能力も満足に発揮出来ません。
 御自覚下さいませ」
 と、整然と諭されてはどうしようもない。

206 :ゆっくりいこう 2 / 18 :2007/06/01(金) 08:28:09 ID:c9/+WTGM0

 それどころか、訓練を早く終わりにしたいが故の言い訳だったのが見抜かれていたのだろう。
「それにしても、まだ余計な事を考える余裕がおありなのですね。
 では、もう3セット程、追加致しましょう」
 にっこり笑って言われる始末である。
 視線で周囲に助けを求めるも、アセリアは「ん、頑張れ」と言うだけで、全く悠人の心情を理解していない様子。
 オルファリルは、悠人の視線の意味は察しているのであろうけれども、とばっちりを受けないように「あははー」と愛想良く笑って解らないフリ。
 ウルカは鍛練に集中していて悠人とエスペリアのやり取り自体に気付いていない。
 光陰は悠々と訓練をこなしつつ、まるで微笑ましい光景でも見るかの如く悠人とエスペリアのやり取りを眺めながら、わっはっはと笑うだけ。
 今日子は既にヘロヘロになって剣を振っていて、悠人に気を配る余力は全く無い。
 どこにも悠人に助けの手を差し伸べてくれる者はいなかった。
 結局、悠人は更に追加された訓練を息も絶え絶えになりながらこなし、そんなこんなで光陰の言うところの充実の一日を過ごしたのである。
 隣を歩く光陰も、悠人と同等以上の訓練をこなしたというのに、悠人が足取りもふらつき覚束無くなっているのに比べて、光陰は良い汗をかいたと言わんばかりの余裕の表情である。
 どうして光陰に勝てたのか、全く持って不可解だと、悠人はしみじみと思わざるを得ない。

207 :ゆっくりいこう 3 / 18 :2007/06/01(金) 08:32:13 ID:c9/+WTGM0

 何はともあれ、風呂場、脱衣所の前。
 悠人は脱衣所の中に気配が無い事を確認する。
 疲れてはいても、確認は怠らない。
 戦闘と同じだ。
 戦闘とは、交戦開始のその瞬間には、既に結果が確定しているのだ。決して準備を怠ってはならない。
 攻撃回数の尽きた攻撃スキルや防御回数の尽きた防御スキルを装備したまま戦いに臨んだり、敵サポーターに赤スピリットがいるのにも関わらず、バニッシュスキルの用意も無くエスペリアをパーティーに入れて戦闘開始の号令をかけたりしてはならないのだ。
 相手との実力が伯仲していたり、こちらの体力がピンチだったりする時は尚更だ。ついうっかりでは済まされない。
 一度の油断で絶望の淵を覗いた経験のある者として、当然の心がけである。
 疲れきっている今だからこそ、体力注意力が落ちている事をしっかりと自覚して、平時よりも念には念を入れた慎重な判断や行動をとる必要があるのだ。
 細心の注意を払って扉を開ける。半身を隠しながら、脱衣所の中を見渡す。
 と、きちんとたたまれた服が、棚にあった。
「光陰、まだ誰か入ってるぞ……って、何でもう脱いでるんだよ!?」
「全く、毎度毎度お前は、何を不審者の様な行動を取っているんだ。
 悠人よ。いいか、よく聞け。
 今の時間は俺達が風呂に入っていい時間だ。きっちりと、そう定めているだろう」
 光陰の言う通りである。
 悠人達男性(といっても、悠人と光陰だけだが)が風呂に入れる時間は、きちんと決まっている。
 一方でスピリットメンバーの入る時間は特に決まっていない。朝でも昼でも夜中でも、掃除の時間でさえなければ風呂に入れる。
 悠人達と風呂で出くわしたくない者は、悠人達の入る時間を避ければ良いというだけの話だからだ。
 スピリット優先の割り当てに、光陰はそれを知った時ほんの少しだけ驚いた顔をし、そしてすぐに「悠人らしいな」と笑ったものだ。

208 :ゆっくりいこう 4 / 18 :2007/06/01(金) 08:40:31 ID:c9/+WTGM0

「と言う事はつまり、俺達と風呂で出くわしたくない者は、風呂には入ってない。
 裏を返せば、今風呂に入っているのは、俺達と一緒に風呂に入っても構わない、って事だろう。
 そういう場合、下手な遠慮や気遣いは、無用どころか相手を傷付けかねないぞ」
「う……」
 悠人は言葉に詰まる。
 光陰の言う通り、今風呂の中にいるのは男女差を自覚していないか、或いは自覚していても気にしていない者だろう。
 そこにおいて悠人が遠慮してしまったらどうなるか。
 相手はきっと疑問に思う。悪くすれば恐縮する。
 男女差の自覚は無いかも知れない。けれども、人とスピリットという種族差を認識していない筈が無い。
 現実として、この世界でスピリットが受けているのは男女の区別以前に、種族差別なのだから。
 悠人が幾ら己の倫理観を語ったとて、誤解の可能性は排除しきれない。
 悠人はスピリットとは一緒の風呂にも入りたくないのだと、そう考えていると捉えられてしまいかねない。
 人の醜い部分を熟知している悠人だけに、そんな事まで考えてしまう。
 実際のところ、悠人のこの心配は全くの杞憂に過ぎない。悠人に対して積み重ねられた信頼は、そんなに簡単に揺らぐものでは無い。
 とはいえ、傍から見れば杞憂に過ぎない事をも真剣に悩むがゆえの悠人であるし、加え、疲れきった頭では、愚にも付かない事すらうじゃうじゃと考え、思い悩んでしまうものだ。
「確かにそう……なのかな。あ、でも……」
「おいおい、悠人。お前、一体何をしようとしてるんだ?」
「いや、誰が風呂に入ってるのかな、と思って」
「あのなぁ。女性の脱いだ服を見るなんて、礼を失するも甚だしいぞ。それは人として絶対にやっちゃいけない事だろう」
 因業坊主にも、彼なりの倫理観、道徳観はあるらしい。

209 :ゆっくりいこう 5 / 18 :2007/06/01(金) 08:44:13 ID:c9/+WTGM0

「じっくり見る訳じゃ無いって! まぁ、確かに失礼は失礼なんだけど、でも! 今風呂に入ってるのは、うっかり間違って、って可能性もあるだろ?」
 あるのだ。
 つい先日も、アバウトな性格の今日子が混浴の時間を全く気にせずに風呂に入っているのに出くわし、悠人と光陰は理不尽にも黒焦げにされた。
 光陰一人が感電させられるのであればまだしも、風呂場は水が電気を通すので危険極まりない。
 確かに、まじまじと女性の着ていた服を見るのは悠人の倫理観にも反するし、そもそもにして恥ずかしくて女性の服をじっくりとなんて見る事の出来る悠人では無いのだが、一応、今日子の服で無い事だけは判ったので良しとする。
 今日子はこんなに丁寧に、脱いだ服をたたまないのだ。
 今日子で無いならば、問答無用で殺られる事にはまずなるまい。せめて言い訳の時間くらいは与えて貰えるだろう。

210 :ゆっくりいこう 6 / 18 :2007/06/01(金) 08:53:02 ID:c9/+WTGM0

「ほら、早くしろよ、悠人。あんまりもたもたしてると、中にいる子があがっちゃうかも知れないだろ」
「……」
 そこでようやく、悠人は、はたと気付いた。
 疲労の極みにあるとはいえ、今までこの考えに至らなかったのは不覚としか言いようが無い。
 今現在、風呂場の中にいるのは、男女差の自覚が無い、即ち年少スピリットの可能性が非常に高いのではないか、と。
 年少スピリットの面々は、光陰を避けている節がある。
 光陰がいない時には、悠人が風呂に入っているのを確認して、大喜びで風呂場に飛び込んでくる(そして毎回怒られる)オルファリルやネリー達も、光陰がいる時は決してそんな事はしない。
 悠人は、自分の中にあった違和感の正体に気付いた。
 光陰が風呂に入る可能性があるにも拘らず、風呂に入っているスピリットがいるという、その本来ありうべからざる筈の事態に、悠人は妙な落ち着かなさを感じたのだ。
 思い返せば、今日は第二詰め所のメンバーの訓練は悠人達とは別メニューで、顔を合わせていない。
 つまり、中にいる誰かは、光陰がラキオスにいる事に気付いていない、若しくはその事を忘れている可能性があるのだ。
 見れば、光陰は既に素っ裸で、風呂場の扉に手をかけている。
「おい、光陰! 待て!! 前くらいタオルで隠せ!!」
「はっはっはっ、解ってないな、悠人よ。
 何を隠す必要がある。俺には恥じるものなど何も無いッ!!」
 うきうきという擬音が聞こえてきそうな勢いで、光陰は風呂場の扉を開け放つ。
 悠人も、光陰を抑えるべく、慌てて後を追う。

211 :ゆっくりいこう 7 / 18 :2007/06/01(金) 09:00:15 ID:c9/+WTGM0

「……」
「……」
「……」
 湯煙の中、そこにいたのは、ナナルゥだった。
 勿論、全裸。ほんのりと桃色に色づいた透ける様な肌が、しっとり濡れて艶めかしく光を返す。
 服の上からは良く判らなかったのだが、実は脱いだら凄かった。
 凄いのである。
 どれ位凄いかというと、高名なハリオンの胸と同じ位に凄い。
 ハリオンの胸が、大きく、そしてたゆんたゆんとどこまでも柔らかでありながら、形は全く崩れないという一つの奇跡であるならば、ナナルゥの胸は、むっちりと張りがありながら、決して柔らかさを失わないというこれまたもう一つの奇跡。
 奇跡にも色々な形があるものなのだ。

 ナナルゥは、裸の悠人達が目の前に現れたというのに、微塵も慌てる様子を見せない。
 全く無頓着に、ふくらみの先端も、淡い茂みも、全てをさらけ出したままでいる。
 悠人は、どうしていいのやら頭が空回りするばかりで、固まってしまって動けない。
 光陰にしても、この相手は予想外だったのだろう。悠人の隣でどうしたものかと固まっている。

212 :ゆっくりいこう 8 / 18 :2007/06/01(金) 09:06:13 ID:c9/+WTGM0

 最初に言葉を発したのは、やはりナナルゥだった。
「ユート様も湯浴みですか?」
「あ、ああ」
「そうですか。私が一緒では邪魔でしょうか?」
「い、いや、邪魔なんて事は全然無いんだけど、ちょっと、その、出来たらもう少し身体を隠してもらうと、助かる。
 目のやり場に困るというか」
「? 申し訳ありません。ユート様の仰る意味が上手く理解出来ません」
「胸とか、……とか、その、見えちゃってるだろ?」
「成る程」
 ナナルゥは頷く。
「ユート様は、ユート様と異なる身体的特徴を持つ私をお気遣い下さったのですね。お気遣い有難う御座います。
 ですが、その心配は私には無用です。
 身体的特徴に優越劣等を覚えるという感覚や感情を、私は自分の中に観測した事がありませんから」
 確かに、他人と異なる点というものが、優越感や劣等感に繋がるという事は良くある。
 他人と異なる部分を自分の美点と認識するか、欠点と認識するかで、それは自慢にもコンプレックスにもなる。
 しかしながら、その特徴があまりに標準と大きくかけ離れている場合は、欠点と見なされる事が殆どである。
 そういう観点からすれば、悠人とナナルゥの身体差異は非常に大きいと言えるだろう。何せ一方には何やら付いている箇所にもう一方では穴があったりするのだ。
 仮に男女という概念を無視し(そもそも、ナナルゥには性差の概念が希薄なのだろう。先程、悠人が脱衣所で考察した通りに)、悠人の身体を基準とすれば、ナナルゥの身体は(というか女性一般の身体は)異常と言って良い程に基準と異なる事になる。
 そこに立脚すれば、ナナルゥの身体は劣等を感じる十分な理由になる、という事だろう。
 だが、悠人の言いたい事はそんな事とはまるで別の次元の話なのである。
 劣等では無く、劣情の話なのだ。

213 :名無しさん@初回限定 :2007/06/01(金) 09:06:27 ID:T6Ood5pl0

4円

214 :ゆっくりいこう 9 / 18 :2007/06/01(金) 09:10:07 ID:c9/+WTGM0

 ついでに付け加えるならば。
 ナナルゥの身体が劣等に値するなどというのであれば、世の女性は一体どうしろというのであろうか。
 ヒミカやヘリオン辺りが、いじけて穴を掘る姿が容易に想像出来てしまうでは無いか。
「いや、そういう意味じゃなくて」
「それでは、見苦しいものを見せるな、という意味でしょうか」
「いやいや、それは無い。ナナルゥは綺麗だよ」
「そうなのでしょうか。有難う御座います」
「……って言うか、そうじゃなくて!!」
「?」
 悠人は混乱極まり、言葉がつかえて上手く出て来ない。
 ナナルゥは、そんな悠人の顔を確認するようにじっと凝視すると、落ち着き払って一つ一つ観察するようにじっくりゆっくりと視線を下ろしていく。
 遠慮の無い視線が、顔から、首筋、胸板、腹部、そして……
「ぽっ」
「うわわわわっ!? ちょっと待ってくれ、ナナルゥ!!
 そんなにまじまじと見て頬を赤らめないでくれよ!!」
 慌てて悠人は股間をタオルで隠す。
 光陰を急ぎ追いかけてきたまま、ずっと丸出し状態だったのだ。
「不思議です。良く解りません。
 何故、私の頬は赤らんだのでしょうか?」
「そ、それはまぁ、ともかくだな、ともかく! そんなにじっくりと人の身体を見ない事!!」
 お風呂に入ってのぼせたんじゃないのか? というお定まりのボケ台詞も出て来ない。そんな余裕は今の悠人には無い。

215 :ゆっくりいこう 10 / 18 :2007/06/01(金) 09:15:12 ID:c9/+WTGM0

「やはり、見てはいけないのですか?」
「劣等感云々よりも、まずは恥ずかしいだろ?」
「恥ずかしい……ですか?
 …………」
 いつもよりほんの少しだけ眉根を寄せて考える様な素振りを見せ、そしていつもよりほんの少しだけ大きく目を見開いた。
「……あ、少しだけ、解ったような……気がします。
 今、ユート様にじっくりと身体を見られて感じている、この感覚、でしょうか」
「そう! 胸がドキドキするとか、顔が熱くなるとか、……って、いやいやいや、俺、じっくりとなんて見てないから!!」
「……」
「いや、だから、その……」
「……」
「……ごめん。見ました」
 平常と何ら変わる事の無いナナルゥの視線も、やましい心があると常とは違って感じられるものである。
 かくも世界は相対的なものなのだ。
「?
 ユート様が何を謝られているのかよく解りませんが、恥ずかしいとは、こんな感じなのですね。
 胸がドキドキして、全身が火照り、下腹部の辺りがもにゅもにゅとうずく感じが、『恥ずかしい』なのですね」
「下腹部がうずくって……び、微妙に違う気がするぞ」
「そうなのですか?」
「……うん。違う事にしておいてくれ」

216 :ゆっくりいこう 11 / 18 :2007/06/01(金) 09:20:07 ID:c9/+WTGM0

「待て待て待て待てーい! ふっふっふ……若い、若いなぁ、悠人よ」
 すっかり困ってしまった悠人の後ろから突如笑い声が響いた。
「ふははははっ! 悠人、悪いな。今日こそは勝ちを戴くぜ」
 今まで黙っていた光陰が話に割り込む。そこにあるのは、にやりという不敵な笑み。
「俺のはどうだ、ナナルゥ」
 ナナルゥは目をぱちくりとさせて声のした方を見た。
「……コウイン様、いつからそこに?」
「初めからいたぞ」
「……失礼しました。全く気が付きませんでした」
「ぐはっ」
 ナナルゥの目には、光陰は全く映っていなかったらしい。
 光陰、ショック。
 しかし流石と言うべきか、鉄壁のディフェンダーはこの攻撃を耐え切った。
「くっ……ま、まぁいい。
 無意識にしろ、眩しすぎて直視出来無いという事もあるだろうさ。
 だが、ナナルゥ! 俺は逃げも隠れもせずにここにいるぞ!
 しかと見よ!!」
 光陰は素っ裸で仁王立ちになる。
 ナナルゥは、そんな光陰を見ると、そのまま無感動に目を逸らした。
 いや、目を逸らしたという表現は相応しくない。
 単に興味が持てなかったから視線を留めなかったという、ただそれだけの事である。
 何事も無かったかの様に悠人のほうに向き直り、言葉を紡ぎ直す。
「それはそうとユート様、先程の話の続きなのですが……」

217 :ゆっくりいこう 12 / 18 :2007/06/01(金) 09:25:20 ID:c9/+WTGM0

「ちょっと待った!!」
 光陰が再び割り込む。
「はい、何でしょうか、コウイン様」
「今の反応は、否、今の無反応は激しく納得がいかん!!
 俺のこの身体を見て、ナナルゥは何も感じないのか!?」
「はい。何も感じません」
 即答。
「ぐはっ!」
 光陰、ダメージ。
「……だ、大丈夫だ。まだだ。まだいける。
 もう一度だ! ナナルゥ!! 俺の身体をもう一度、きちんと、じっくり見るんだ!!」
「光陰、お前……」
「悠人、男には負けられない時があるんだ! たとえ相手が悠人、お前であってもだ!! 寧ろ、相手がお前だからこそ負けられん!!
 これは男の勝負だ。恨むんじゃないぞ」
 光陰にしては珍しい、真剣な表情で宣言する。
 言葉や表情だけならばかっこいい。めったに人に見せない本気光陰である。
 やっている事はただの変態だが。
「俺のボディーを見て、感じたままを素直に表現するんだ!!」
「? コウイン様の意図は理解出来ませんが、私のすべき事は了解しました」
 ど〜ん、と素っ裸で立ち誇る光陰を、ナナルゥは言われた通りにしげしげと観察する。
 こうまでじっくりと佳人に身体を観察されていながら、動じないどころか寧ろ誇らしげに堂々としているというのも、良い事なのか悪い事なのか。
 少なくとも、凡人の括りでは収まらないだろう。良くも悪くも。

218 :ゆっくりいこう 13 / 18 :2007/06/01(金) 09:30:14 ID:c9/+WTGM0

 ナナルゥは、悠人にそうしたように、光陰の顔から胸、腹へと少しずつ視線を下げていき、そして……。
 無表情だったナナルゥは、光陰の股間を一瞥すると口の端を軽く吊り上げ、
「ふっ」
 と冷笑した。
「げふっ!」
 光陰、クリティカルダメージ。
「お、俺のは悠人のと比べても……」
「大きさ太さが絶対の正義なら、世の女性は男性など相手にせずに、すりこぎでも相手にしている事でしょう」
「げふあっ!」
「コウイン様の言う事も、人間の方々の一般論としては、あながち的外れと言う訳では無いのでしょう。
 私がその論に、何らの説得力をも感じないだけで。
 そして、コウイン様のものには微塵も魅力を感じないというだけで」
「ごふぅっ!」
 光陰は、ついにがくりと崩れ落ちた。
 しかし、ナナルゥの言葉は止まらない。
「最近では、大陸中央部やマロリガン地方との交流も多くなり、伴って様々な人種を含めた人の流れも増えています。
 ラキオスの女性の間でも、最近は、どこそこの地方の男性の太いのが良いだとか、長いと奥に届いて気持ち良いだとか、やっぱりこっちの地方の男性の硬さこそが重要だろうとか、様々に言われているようです。
 ですが、正直に申しまして、その辺りの感覚は、私には全く解らないのです」
 あまりにも直接的なナナルゥの発言に、横で聞いているだけの悠人の方が赤面してしまう。
 基本的には純情ボーイである悠人にとって、整った顔立ちの女性の口からそんな言葉が出て来るだけでも刺激が強過ぎる。

219 :ゆっくりいこう 14 / 18 :2007/06/01(金) 09:36:22 ID:c9/+WTGM0

 何とか冷静さを取り戻そうと、悠人は言葉を発する。
 黙って話を聞いていては、風呂に入らないうちにのぼせて倒れてしまいかねない。
「……どこでそんな情報仕入れて来るんだ?」
「セリアが『人間の価値観を知る』という目的で購入してきた女性週刊誌に書いてありました。
 その本を顔を赤くしたり青くしたりしながら読んだセリアが、『読んでいるだけで、頭がおかしくなってしまいそうだわ……』と言って、私に焼却を命じたのです。
 それを、折角ですから処分する前に私も読んでみたのです」
「そんな本、読まないでくれ、頼むから」
 セリアは純粋に人間の事を理解しようとしてくれたのだろうが、週刊誌も下世話な記事を掲載してくれたものだ。
 その書かれた記事内容を間違いと言いきる事も出来無いが、その下世話な記事のとばっちりは、セリアにとって唯一身近な人間である悠人に来るのだろう。
 悠人は何もしていないというのに、冷たい侮蔑の視線を投げかけられる事になるに違いあるまい。
 多少の納得いかなさを感じて、悠人は溜息をついた。明日セリアに会うのが怖い。
「ユート様がそう仰るのでしたら、次からは見つけ次第に速攻で消し炭にします」
「そこまでしなくていいから、読まなきゃいいって」
 ここで肯定したら、本屋が火事になりかねない。
「了解しました。
 それはともかくです。
 その本に書いてあった事は、私には良く解らない事ばかりだったのです。
 太さ、長さ、硬さや、色形等、事細かな説明や写真も載っていたりしたのですが、何度読んでも、幾ら見ても、何も感じませんでした。
 コウイン様のものを見ても、同様です」
 膝を突いて喘いでいる光陰に、更に追い討ち。
「コウイン様のものには、全然、全く、まるっきり、何も感じるところがありません。
 それでも強いて表現するならば……そう、哀れ、でしょうか。
 或いは、( ´_ゝ`)フーン」
「むぎゅう」
 容赦の無い追い討ちに、光陰がばったりと倒れ伏す。

220 :ゆっくりいこう 15 / 18 :2007/06/01(金) 09:40:22 ID:c9/+WTGM0

「ですがユート様のものを見ますと、胸にズキューンと突き刺さると言いますか、下腹部がうずうずと刺激されると言いますか……」
 自分のものは取り立てて立派でもないと悠人は自分では思っている。
 実際、ナナルゥが読んだと言う週刊誌の価値基準で比較すれば、悠人のものは光陰のものよりも遥か下にランク付けされる事だろう。
「少々皮が長めなところなどは、慎ましげで良いかと思われます。
 ちょっとばかり曲がってるところなどは、軽く小首を傾げている様で可愛らしいと思われます。
 そんな……気がしますが……。いえ、こんな理屈の問題では無いような気もします。
 ……やはり心というものは、私には難解です」
 これは何の羞恥プレイか、罰ゲームなのだろうか。
 悠人は顔から火が出そうになりながら天を仰ぐ。
 真っ白になって倒れていた光陰が、ここでようやくふらふらと立ち上がる。
「……」
「光陰?」
「……悠人よ、俺はもうダメかも知れん。
 生物として、男として、自信を失った」
 光陰は、弱々しく呟くと、そのままふらつきながら風呂場を出て行く。
「結局、悠人にはかなわずじまいか……は、ははは……」

221 :ゆっくりいこう 16 / 18 :2007/06/01(金) 09:45:23 ID:c9/+WTGM0

 半ば呆然と、光陰の煤けた後姿を見送った悠人の横から、「くしゅん」と可愛らしいくしゃみが聞こえた。
「あ、湯冷めしちゃったんじゃないか?」
 今までの流れを吹っ飛ばして、悠人は純粋にナナルゥを気遣う。
 いかなる状態の時でも、瞬時に他者の事で頭が一杯になってしまうのが悠人らしい。
「はい。そのようです。自分が裸でいるのも忘れて、つい見惚れてしまっていました」
「見惚れ……それは、まぁ、置いといてだ。ナナルゥ、もう一度湯に浸かった方がいいぞ」
「はい。そうします。では、ユート様もご一緒に」
「い、いや、俺は……っくしゅん!」
「……」
「いや、これは……」
「……」
「う……わ、わかったよ。一緒に入ろうか」
「はい」
 ナナルゥは悠人の言葉に、心なしか笑ったようにも見えた。

222 :名無しさん@初回限定 :2007/06/01(金) 09:47:16 ID:T6Ood5pl0

C

223 :ゆっくりいこう 17 / 18 :2007/06/01(金) 09:50:35 ID:c9/+WTGM0

「俺は最初に身体流すから、先に湯船に浸かっててくれ」
「了解しました」
 悠人は身体を軽く洗い流すと、多少躊躇って、結局先に湯に入っていたナナルゥから少し離れた位置で湯に浸かった。
 ナナルゥはそれを確認すると、こちらは全く躊躇無く立ち上がり、悠人の側へと移動する。
 あれよあれよという間に、ナナルゥは悠人の真横に腰を下ろし、しなだれかかる様に柔らかな身体を密着させて寄りかかり、悠人の肩の上に形の良い頭を乗せて落ち着いてしまう。
 ナナルゥに無防備に身体を預けられ、悠人はもう身動き一つ出来無い。屈強な男にがっちりと押さえつけられても、まだこれよりは身動きが取れようというものだ。
 視線を動かすと、女性の胸というものはお湯に浮くのだなぁと、妙な発見をしてしまい、急いで目を逸らす羽目になる。視線すらも、自由にならない。
 そんな悠人の煩悶に全く頓着せずに、ナナルゥは、ほうっとひとつ息を吐いた。
「なぜでしょう。何だかとてもほっとします」
 それがあまりにも安心しきった穏やかな声だったから、悠人は混乱や緊張すら忘れた。
「入浴は、単に老廃物を洗い流す作業であると認識していたのですが……ユート様とお会いしてからというもの、私の認識していたものの悉くが、どんどん変わっているようです。
 これは、世界が変わったというよりも、私が変化しているのでしょう。
 それが私は、少し怖い……のかも知れません」
「そっか」
「はい」
 ナナルゥは自分では認めていないものの、豊かな心を持っている。
 けれども、その奥深くにしまい込まれた心を表に出せるようになるには、やはり時間が必要だろうとも悠人は思う。
 悠人がここで何かを言うよりも、ナナルゥが自分自身で見出し、戸惑い、悩み、認めていく事こそが、ナナルゥの心の為に大切だと思ったから。
 それら心の中身は、安易に言葉に置き換えられるものでは無いとそう感じたから。
 だから悠人は何も言わずに、ただナナルゥの身体を優しく支えた。

224 :ゆっくりいこう 18 / 18 :2007/06/01(金) 09:57:39 ID:c9/+WTGM0

 焦る必要は無い。
 少しずつ時間をかけて、凍った心を溶かしていけば良いのだ。
 二人はそのまま並んで湯船に浸かり、ゆっくりと温まったのだった。


おしまい



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こんな時間から御支援、有難う御座います。
かなり投稿時間間隔をあけてても連投規制に引っかかりまくってたので、助かりました。

225 :名無しさん@初回限定 :2007/06/01(金) 12:35:24 ID:lqMzZuHyO

乙!
光陰いとあはれ
さすがナナルゥだぜ! そこに痺れる憧れるぅ!
あとセリアさんに萌え
次の日出会い頭に真っ赤になってやつあたりしそうだ

226 :名無しさん@初回限定 :2007/06/01(金) 23:31:10 ID:SRzsIePS0

眩しすぎる光は、陰に置いておけ。いじけてしまうかもしれんが……w
まあ悠人の神剣は光陰のより高位だし仕方ないw 大きさなら光陰の神剣の勝ちだが。

ナナルゥが恥じらいを身につけちゃうと最強になっちゃうので、ほどほどにすべし>ユート


227 :名無しさん@初回限定 :2007/06/02(土) 00:50:40 ID:MAPLvNMw0

>>224
乙です。
さすがナナルゥ、どんな局面でも大出力の火力を放ちますねw
これは確かに光陰でも死ぬ。
そら夢幻にも見初められるわけですよ。

それからセリアさん可愛すぎ。
どこの週刊誌読んだのか気になりますw

228 :名無しさん@初回限定 :2007/06/02(土) 20:47:14 ID:5mAtYQ3S0

キモウトがキモウトじゃなくなってる件。
そしてとうとう小鳥派の朝がキタ?

229 :名無しさん@初回限定 :2007/06/02(土) 20:59:05 ID:mny6lKgP0

また触手陵辱要員だったりしてな

230 :名無しさん@初回限定 :2007/06/02(土) 23:40:34 ID:NsoB+p8j0

>>224
いや悠人よ、もう一度よく考えてみよう。
気づかれないようにこっそりと去り、
時間をずらして入浴すれば良かっただけだ。
しかし今回ばかりは怪我の功名、よくやったw

231 :名無しさん@初回限定 :2007/06/03(日) 06:59:27 ID:xLWZcr2N0

>>229

果てしなくイヤすぎる。
俺は雑魚スピたちだけでなく小鳥にも幸せになって欲しい。

232 :名無しさん@初回限定 :2007/06/03(日) 09:02:52 ID:OC7bQnGe0

>231
ヽ(゚∀゚)人(゚∀゚)ノ
凌辱のその先に愛の見えない俺がここにいるよ
凌辱ルートが良いゲームとか評価できないっす

233 :名無しさん@初回限定 :2007/06/03(日) 10:13:35 ID:U+1Lf7hb0

>232
いや、だが、あの汚れちまった小鳥に慰めの添い寝をしない悠人のバカバカって気持ちもある。

エロゲなら、

悠人先輩……
こ、小鳥……今午前二時だぞ……眠れないのか?
悠人先輩……小鳥は汚れちゃいました。朝になったら、いつもの小鳥に戻ります。だから……。

234 :名無しさん@初回限定 :2007/06/03(日) 13:11:27 ID:kLdWO5CE0

丑三つ時の今だけは本来の姿に……!

235 :名無しさん@初回限定 :2007/06/03(日) 13:33:38 ID:4OXRkTyE0

>>233
いっそそのまま、小鳥√に突入してくれ。
つーか誰かSS書かんか?

236 :名無しさん@初回限定 :2007/06/04(月) 00:33:51 ID:Yz8FaMV/0

そのまま小鳥√てアセリアの事もあるし色々難しくね?
ファンタズマゴリアに戻ってサーギオスから救出した佳織と再会、そして奪い合い。

237 :名無しさん@初回限定 :2007/06/04(月) 06:05:10 ID:Ex6O7xtu0

逆にファンタへ連れて行き拡声器型神剣を手に入れる夢をみましたよ
神剣「奇形」vs神剣「妙音」という(ry

238 :名無しさん@初回限定 :2007/06/04(月) 06:58:01 ID:eAhVZ9cr0

>拡声器型神剣
なんというソニックストライク。

239 :名無しさん@初回限定 :2007/06/05(火) 00:16:34 ID:pv0Clx+/0

                 ,..、
   , ´^⌒ヽ       _,ノ/`il  /
   !ツノノ~)))   'イ´  ハ il   フライミートゥザファンタズマゴリアですよ悠人先輩!
  (:从l`ヮ´ノリ{ {::::{   V リ  \
  /;;;彡ノ,ノ彡  ` 衣√`ヾノ
 彡'''ヽヽ

240 :名無しさん@初回限定 :2007/06/05(火) 02:43:30 ID:ky5xBMDbO

それ、なんて言うねこキャラwww

ヒミカと小鳥がコンビを組んだら、特定方面の妄想世界が広がりそうだな〜

両方楽しめる人にとっては、一粒で二度美味しい

241 :どりるあーむ ◆ncKvmqq0Bs :2007/06/05(火) 16:52:56 ID:tyXps9jY0

シアー妄想長編SSの続きを投稿させていただきます。
「最終章・いつか、二人の孤独を重ねて」です。
今まで一番、やりたい放題です…そのへん、ごめんなさい。

242 :いつか、二人の孤独を重ねて1/25 :2007/06/05(火) 16:54:45 ID:tyXps9jY0

俺は、人間でいたかった。

何処までも、人間でいたかった。
永遠の命も、永遠の強さも本当はいらなかった。
俺自身は、自分が人間である事がむしろ呪わしくさえあった。
だけれども、自分が人間だからこそ周りのひとたちが大事で愛おしいわけで。
こんな俺を、佳織も、佳織の両親も、光陰も今日子も、スピリット隊のみんなは守ってくれた。
何処までも疫病神でしかない俺にシアーは懐いてくれた、好きだと言ってくれた。
あくまでも人間のままみんなを守り続けられたら良かったけど、それは現実が許さなかった。
みんなを守るためには、人間である事を捨てるしかなかった。
俺が人間だからこそ、こんなにもみんなが俺を、俺なんかを信じてくれたのに。
みんなに報いるためには、みんなの愛を裏切るしかなかった。
そして、あろうことか最後までシアーたちを永遠者になるという選択に巻き込んでしまった。
本当は、シアーたちにはそのままで、「ひととしての限りある未来」で幸せになって欲しかった。
だけど、俺にはシアーが俺の服の裾を掴んでついていこうとするのを振り払えなかった。
なぜなら、シアーもまた自分たちの命あるものとしての尊厳のために戦ってきたから。
俺とシアーとみんなの戦いは、命あるものとしての尊厳をこの手に等しく掴むための戦いだったから。
それがわかっているからこそ、シアーの戦いを間近で見てきたからこそ、シアーたちを振り払えなかった。
俺は、いったい本当にどこまで疫病神なんだろう。

俺は、人間でいたかった!
この心の、といだ刃がいつか折れるまで、俺は人間でいたかった!

だけど。

「お兄ちゃんは、みんなの希望を繋ぐ剣」

佳織の、俺に対してその手で開く扉はいつだってヘヴンズドアだった。

243 :いつか、二人の孤独を重ねて2/25 :2007/06/05(火) 16:55:53 ID:tyXps9jY0

相変わらず、そこはあまりにもこの世界に不似合いな空間だった。
圧倒的ともいえる異様さを放つエーテル変換施設の中心部に、そのロウエターナルはいた。
今回の全ての張本人である【秩序】のテムオリンの片腕的存在、【無我】の黒き刃のタキオス。
不気味な黒いオーラのようなものを全身から放ち、悠人と瞬を値踏みするように見ている。
悠人は、目の前の黒い巨躯に圧倒されそうなのをこらえながら言い放つ。

「悪いが、多勢で挑ませてもらう。…あんたはハンパじゃないと聞かされてるもんでな」

タキオスは、ただ静かに言う。

「かまわん。強者と戦えるのであれば、それがいかような形でも俺はそれだけで充分だ」

瞬が、そんなタキオスに向かって心底軽蔑の眼差しを向けて言い放つ。

「三下のチンピラが…偉そうに武人面してるんじゃない」

瞬の挑発にも、タキオスは眉一つ動かさずにただ【無我】を無造作に肩に担ぐ。

「大丈夫か?…心配するな、俺たちは援軍だ」

両膝をついて苦しそうに肩を上下させるボロボロの光陰を背後に見やりながら悠人はそう声をかける。

「援軍…そうか、あんたらが時深さんが言ってたカオスエターナルの仲間か」

244 :いつか、二人の孤独を重ねて3/25 :2007/06/05(火) 17:17:58 ID:tyXps9jY0

ぜーっ…ぜーっ…と息を荒げながら、光陰は顔を上げて悠人に応える。
その声と自分を見る視線に、かつてのような親友としての感情が無い事に悠人は胸がしめつけられる。

「…碧光陰、だよな。強さと有能ぶりは聞いてる。もちろん、率いてた稲妻部隊の事も」

一瞬、視線から逃げるように目を閉じながら悠人は光陰からタキオスに視線を戻す。
光陰は服のあちこちに刃による傷こそあれど、決して致命傷は負っていない。
対してタキオスは恐らく利き腕であろう右腕に見た目深い傷があり、そこからマナの霧がのぼっている。

「…本当に凄いんだな。生身の人間の身で、それもたった一人であいつと戦って傷までつけるなんて」

たった一人でタキオスと戦って生きていてくれた事もだが、光陰のそんな強さが悠人は素直に嬉しい。

「おだててくれるなよ。…へッ、一人でクソ意地はってみたけど格好悪いったらないぜ」

その巨大な刃にわずかなヒビが確認できる【因果】を杖にして光陰はゆっくり立ち上がる。

「いや、俺は碧光陰という男は本気でカッコ良いと思う。…それは、ズルいくらいにな」

光陰が真横に並ぶのを感じるのをまた嬉しく感じながら、悠人は本心からそう褒める。

「岬今日子とクォーリンは?いつも一緒じゃないのかい!」

「おお、最愛のカミさんと最高の参謀ならラキオスを任せてあるぜ!」

「悠人、碧っ!貴様たちが仲いいのは勝手だがそろそろ無駄話は終いにしたらどうなんだ!」

男三人が同時にそれぞれの神剣を構え、科白と同時にタキオスへと突っ込んだ。

245 :いつか、二人の孤独を重ねて4/25 :2007/06/05(火) 17:18:55 ID:tyXps9jY0

「来るがいい、若きエターナルたちと強きエトランジェよ」

タキオスが、突っ込んでくる三人を一度に撫で斬りにしようと【無我】を無造作に振るう。
生じた剣風を、瞬は下をくぐり抜け、光陰は上を飛び、悠人は【聖賢】の刃をあわせるように振るう。
暴力的な威力を誇るタキオスの【無我】の剣風が悠人の【聖賢】のオーラフォトンに弾かれ霧散する。
瞬が【薫り】にオーラフォトンを込めアッパーを繰り出し、光陰が【因果】を脳天めがけて振り下ろす。

「ふんッ!」

瞬間、タキオスは裂帛の気合いを全身から放ち、ただそれだけで瞬と光陰を吹き飛ばす。
床を転がされる瞬と光陰、【聖賢】を大上段に構えて一直線に突撃する悠人。
ガギィン、と【無我】と【聖賢】が黒と白のオーラフォトンを火花と散らしぶつかりあう。

「うおおおおぉッ!」

「ぬうぅぅぅぅんッ!」

【無我】と【聖賢】が互いに何度も激しく刃と刃をぶつけあう。
右から瞬が、左から光陰がタキオスの死角にまわりこんで隙をうかがう。
ややあって、悠人がタキオスと鍔迫り合いの形に持ち込む。
巨躯を誇るタキオスは難無く悠人を強引に押すが、悠人はそれに逆らわない。
するり、と【無我】を受け流し、そのまま身体を前に押し出して悠人はタキオスに頭突きを見舞う。
頭突きの反動を利用してバックステップして後ろに間合いを取る悠人、わずかによろめくタキオス。
左の死角から光陰が【因果】を全力で横に振るう、タキオスは左手に障壁を集中して掴んで受け止める。
右の死角から瞬が【薫り】を狼の首から半身に変化させ、タキオスの右腕をその狼牙にとらえる。
一気にタキオスの右腕を食いちぎって右手の中の【無我】ごと床に転がす瞬。
【無我】を握っていた右腕を失った事で神剣の加護を失くしたタキオスは僅かに眉を歪める。
悠人はその隙を見逃さない、容赦なく迷いもなくタキオスの左胸に【聖賢】を深く突き刺す。
ごふっ、と汚らしい血反吐を吐いて黒き刃のタキオスは黄金のマナの霧と散っていった。

246 :いつか、二人の孤独を重ねて5/25 :2007/06/05(火) 17:20:09 ID:tyXps9jY0

不浄の森のミトセマールは、その手に持った【不浄】を連続で地面に何度も叩きつける。
そのたびに【不浄】より放たれる衝撃波が凶暴な威力を持った幾つもの黒い球となってエスペリアを襲う。
エスペリアは【聖緑】をピタリと両手で下段に構え、当たる寸前で衝撃波を全て見切って避けていく。
すでにその場は町だった名残もないほど破壊され抉られ尽くしており、エスペリア自身も満身創痍。
だが同時に、ミトセマールもまた全身に無数の切り傷と刺し傷を負い、マナの霧と散りかけていた。

「ふぅ、ふぅ…うっとおしいねえ…とっとと惨めに潰されてしまいなよォ!」

苛立ちと屈辱が繰り出させた、狙いを定めていない衝撃波が唸りをあげて地を走る。
それを放った瞬間に、ミトセマールがぐらりと頭をおさえてよろめいたのをエスペリアは見逃さない。
エスペリアが、そのたった一秒にも満たない僅かすぎる程の虚をついてミトセマールの懐に飛び込む。
両手の中の【聖緑】には、全てを灰燼に帰せる威力を秘めた緑のマナとオーラフォトンが満ちている。
その緑のマナとオーラフォトンの濁流を、大自然の怒りと変えてエスペリアは解き放つ。

「ネイチャアァァァァー・フォオォォォースッ!」

途端、その場に局地的な緑の竜巻が巻き起こり、何もかもを巻き込んでズタズタに切り裂き潰していく。
もろに、いわば根元から喰らったミトセマールは断末魔の悲鳴さえ出せないままマナの霧と散っていった。
やがてネイチャーフォースの威力が静まったあと、そこにはボロボロの姿で膝をつくエスペリアだけがいた。

247 :いつか、二人の孤独を重ねて6/25 :2007/06/05(火) 17:37:22 ID:tyXps9jY0

ネリーは、切り刻まれていた。
かつて新調した青い戦闘服も、その肌もズタズタに切り刻まれていた。
ポニーテールも完全にほどけ、青い髪は雑に乱れて疲労と傷で消耗した顔をわずかに覗かせている。
全身と、【戦車】と【静寂】にさえも無数の切り傷とヒビが走っている。
いつの間にか沈もうとしている夕陽を背に、ネリーから儚い黄金のマナの霧があまりにも綺麗に揺れる。
瀕死のオルファを連れて下がったニムたちから火急の報を聞いて駆けつけたミュラーも血塗れで立つ。

「全く物好きにも程がある方々ですね。いつかは必ず消えて無くなる世界のためにここまで頑張るなんて」

死んだ魚のような濁って淀んだ瞳で水月の双剣メダリオは両手の【流転】を構えもしないで淡々と言う。
メダリオの全身にも、ネリーやミュラーと等しく無数の切り傷刺し傷、【流転】にもヒビが走っている。

「負けない…そっちがどんなに強くても、ネリーたちは絶対に負けないんだから!」

「物好きで結構だけどね…こういう状況で必死になって悪足掻きするのも決して悪くはないんだよ?」

二人の科白にやれやれ、とあくまでだるそうに呟きながらメダリオは足元に魔方陣を展開させる。
流水の暴力、と称されるメダリオの神剣魔法…水刀の激流【流転】がネリーたちを襲う。
激流に飲まれたが最後、決して助かる事は絶対にありえない。
だが、剣聖ミュラー・セフィスはあえて、その絶対に助かる事のない激流に自ら両腕を差し出す。
激流の威力の流れる方向に合せ、見た目にもますます血に赤く染まる両腕を同じ方向に流す。
瞬間、激流が真紅に染まり、そして全くの暴力を発揮する事なく、あくまでもただ赤く弾けて霧散する。
激流の晴れた向こうで、その淀んだ瞳を見開いて立ち尽くすメダリオにネリーが翼を展開して殺到する。
あ…、とやっと何が起こって、自分に何が起ころうとしてるのか理解したのも遅く。
青いマナとオーラフォトンに満ちた、【戦車】ごと突き出されながら射出される輝く短槍に顔面を貫かれる。
一本こっきりのパイルバンカーを失った【戦車】を引き手戻し、メダリオだったマナ霧に包まれネリーは呟く。

「えへへ、やったぁ…くーる♪」

248 :いつか、二人の孤独を重ねて7/25 :2007/06/05(火) 17:38:15 ID:tyXps9jY0

心を、もう保てない。

腕の【星光】で【孤独】を支える形で盾にして、青いオーラフォトンの障壁を張り巡らし、マナを注ぎ込む。
それでも眼前に其れは異様な威容をもって浮遊する業火のントゥシトラの【炎帝】を凌ぎ切れない。
降り注ぎ、嘗め尽くし、這いより、喉もと目掛けて飛びかかる、過剰なまでの大熱量の炎を凌ぎ切れない。

心を、もう保てない。

せっかく強くなったはずなのに、何も出来ない。
せっかくエターナルになったはずなのに、何も戦えていない。
せっかく最後まで悠人についてゆく事に決めたのに、何も守れない。

心を、もう保てない。

身体中が火傷で痛い、手が痛い、足が痛い、皮膚が痛い、目が痛い、鼻が痛い、口が痛い、心が痛い。
自分の弱さがあまりに悔しくて情けなくて悲しくて、涙があふれて止まらない、その涙で余計に痛い。
一生懸命頑張ったのにとても叶わなくて、一生懸命戦ったのにとても勝てないのが、何よりも痛い。

障壁にマナを必死に注ぎ込む向こうで、ントゥシトラが巨大な一つ目を愉悦に嗤わせるのが見える。

ヘリオンたちは完全に下がってくれただろうか、アセリアは無事だろうか、それさえも今はもうわからない。
ただわかるのは、ここまで這い上がってこれておきながら自分は確実に死ぬのだという事実。
まだ何も知らなかったあの頃、いつも漠然と抱いていた死の予感が可笑しいくらい現実的になっている。

249 :いつか、二人の孤独を重ねて8/25 :2007/06/05(火) 17:39:16 ID:tyXps9jY0

周囲の温度が、また急激に上昇していくのを感じる。
それに伴い、ただでさえ薄くなっていた障壁がますます薄くなっていく。
何もかもが陽炎にゆらゆらと揺れて、自分自身さえも陽炎に溶けて消えていくように思えてくる。
がくがくと膝が笑っていた足がくずおれて、両膝をぺたんと地につけると、また燃えるように熱い。
すーっと張り詰めていたマナもオーラフォトンも落ちるように抜けていく。

障壁が消えるのと、身体が横向きに地面に墜ちるのが同時だった。
全てを諦めて、目を閉じて、死ぬのを待つ事にした。
だけど、いつまでたっても来るはずの死は来なかった。

「遅くなって、ゴメン」

聞き慣れた声が聞こえたのに気がついて、自分の身体の痛みがひいていくのにも今初めて気づく。

「時深から緊急神剣通信を聞いて、急いで駆けつけたんだ」

目を開けると、空では清らかであくまで柔らかく優しい瞬きを星が示していた。

「俺が、シアーを守る」

見慣れた陣羽織を羽織ったハリガネ頭と、いつもの赤い星が同時に見えた。

「今までシアーたちに守ってもらったぶんは、せめて必ず守る事で少しでも返す」

悠人が、いてくれた。
ただそれだけで、嬉しさと幸福感で胸がいっぱいになって熱い涙がますますあふれてくる。

250 :いつか、二人の孤独を重ねて9/25 :2007/06/05(火) 17:59:30 ID:tyXps9jY0

悠人は、オーラフォトンの障壁をはりながらシアーを両手で抱きかかえている。
いわゆる、お姫様だっこの形に抱きかかえながらシアーの火傷を癒し続けている。
シアーの顔は、ひどい火傷で皮膚も変色していてあまりにも哀れな状況だった。
悠人は迷わず無言で、、シアーの唇に自分の唇を重ねる。
二人の身体が淡く青く輝いて、シアーの顔の火傷も更に急速に癒えてもとの状態に戻っていく。
周囲の温度がいきなり急上昇して土さえ発火して燃え上がるけれども、悠人の護りは決して揺らがない。
シアーの身体に活力が、シアーの心に安らぎが満ちていく。

やがてシアーからそっと唇を離して、悠人に無言で強く頷く。

悠人はシア−を下ろして、二人で業火のントゥシトラに向き直る。
巨大な、浮遊する一つ目の異形の永遠者は忌々しげに自分の周囲から、ごう、と熱波を吐き出す。
悠人の足元に魔方陣が、シアーの背中に純白のウィングハイロゥが同時に展開される。
悠人がントゥシトラへ向かって跳躍し、シアーが一直線に同じ方向に飛翔する。
ントゥシトラの眼前に悠人が、背後にシアーが回り込む…逃げられない、逃がさない。

「コネクティドゥ…ウィル!」

「うぅ…いやあぁぁぁぁっ!」

悠人のコネクティドウィルとシアーのヘブンズスウォードが同時に放たれる。
暴虐の限りを尽くした業火のントゥシトラは【炎帝】もろとも砕かれ、成すすべもなくマナの霧と霧散した。

251 :いつか、二人の孤独を重ねて10/25 :2007/06/05(火) 18:00:29 ID:tyXps9jY0

「テムオリンは、取り逃がしました」

全員が集合しているラキオス城謁見室で、時深が苦い表情でそう告げる。
集まっているほぼ全員が、ボロボロに切り裂かれ焼かれ尽くした姿。

「現在、テムオリンはソーン・リームのアジトに立てこもっている様子です。
 その方角から、異様なマナの膨れ上がりを感じます。
 …どうやらこの期に及んで、【再生】を用いてまだ何かたくらんでいるようです」

時深の厳しい表情でそう語る様子に、場は緊張して静まり返っている。

「テムオリンに時を与えてはならない、のですが…全員、あまりに疲弊しきっています。
 ロウエターナル幹部と直接ぶつかりあったのですから当然なのでしょうけれども…。
 今の時点で突入しても、テムオリンに辿り着く前にミニオンの軍勢で限界に達してしまうでしょう。
 ですからここは、あえて一度休息をとって体勢も布陣も全て整えた上で最後の戦いに赴きましょう」

その言葉に、悠人もシアーも誰も彼もが重く頷いた。

やがて全員がぼちぼちとその場を立ち去りはじめた頃、時深が悠人を呼び止めて耳に口を寄せる。

「悠人さん、決して自分一人で全部背負おうとだけはしないでください。
 あなた自身、重々承知しているとは思いますが…この場合の自己犠牲なんて決して美しくありません。
 …どうしても前々から見えてしまっているのです、あなたがマナの霧に散って本当に消えてしまうのが」

それだけ言って立ち去る時深の背中を見ながら、悠人は軽く下唇を噛んでうつむいていた。

252 :いつか、二人の孤独を重ねて11/25 :2007/06/05(火) 18:02:03 ID:tyXps9jY0

木の下に背もたれて、ただ二人で夜空を見ていた。
悠人は、もう決して二度と離さないかのように小さい身体を両手で背中から抱きしめる。
星たちの瞬きは何も言わないけれど、二人にとって残酷な事も決してしない。
太陽の光は暖かいけれど、まぶしすぎて古傷も生傷も暴いてしまう。
月の光は優しく隠すけれど、何処か静かに凍てつかせるような冷たさがある。
星の光は何も言わないけれど、道しるべを示してくれる。

今の二人には、星の光こそが良かった。

木の下に背もたれて、ただ二人で夜空を見ていた。
シアーは自分の背中を、今自分を抱いてくれてる人を感じたいからその胸へ沈める。
星たちの瞬きは何も言わないけれど、二人にとって残酷な事も決してしない。
太陽の光は暖かいけれど、まぶしすぎて古傷も生傷も暴いてしまう。
月の光は優しく隠すけれど、何処か静かに凍てつかせるような冷たさがある。
星の光は何も言わないけれど、道しるべを示してくれる。

今の二人には、星の光こそが良かった。

「…随分と、ここまで長くかかったもんだ、よな」

今までの長い長い全てを思い出し終えて、悠人は感慨深そうにそう呟く。
悠人に抱きついたまま、その胸の中でシアーは軽く頷く。

「俺が初めてこの世界に来てから…ちょうど二年になるのか。
 なんかさ、色々変わったようで変わらないままで…変わらないようで色々変わったよな」

シアーを抱きしめる両腕に、ぎゅっと軽く力をこめる。
見上げた夜空では、いつもと何も変わらず赤い星と青い星が寄り添って瞬いていた。

253 :いつか、二人の孤独を重ねて12/25 :2007/06/05(火) 18:21:11 ID:tyXps9jY0

斬る。

横一文字に斬る。

縦に真っ直ぐ斬る。

斜めに袈裟懸けに斬る。

足を重く奪う雪を強引に踏み砕きながら、殺意だけの心失きマナの群れをただ斬る。

其れは邪悪なる【秩序】の傀儡たるエターナルミニオンどもを斬って斬って斬り抜けて駆け征く。

全員、三人一組で基本を何ら外れることなく戦術戦略戦法に忠実に一丸となってソーン・リームを征く。
悠人の両脇を、右をシアーが、左を瞬が固めて…互いの死角をカバーしあいながら決戦場を斬り征く。
アセリア、エスペリア、オルファが征く。ヘリオン、ミュラー、ネリーが征く。ウルカ、時深、イオが征く。
ヒミカ、ハリオン、ナナルゥが征く。セリア、ニム、ファーレーンが征く。今日子、光陰、クォーリンが征く。

ついぞ誰一人唯一人欠ける事なく喪う事なく、まっこと全員で最終決戦場をまっこと一丸となって斬り征く。

…そして、辿り着いた。

254 :いつか、二人の孤独を重ねて13/25 :2007/06/05(火) 18:22:15 ID:tyXps9jY0

迷宮の最深部、異様な空間の中心に、【秩序】の法皇テムオリンはいた。
常識を越えて巨大すぎる【再生】を背にして、不快なまでに無邪気な笑みを浮かべて浮遊している。
いざ対峙してみると、本物の邪悪というものが実に言葉にならないくらい洒落にならないのを実感する。

相手はただ神剣を構える事もなく、ただふよふよと浮かんでいるだけなのに勝手に圧倒されてしまう。
無理やりな例えでこじつけるなら、生命が自分より上位の存在を本能的に知覚し本能的に屈するのか。
悠人が、そんな怯えを無理やり心の中で鼓舞している隣を、時深がすぅっと前に進み出る。

「法皇テムオリン。…あなたたちの全ての企みは完全に潰えました。この世界から消え失せなさい」

テムオリンは、ただ無邪気な笑みを浮かべたままで、無言で後ろへ遠ざかる。

「さっさと舞台から降板しろ、三流以下の無能子役…貴様は大根役者にさえもなれないんだよ」

イラつきを隠さないままに、瞬がテムオリンを罵倒する。

「無知蒙昧な捨て駒が、ずいぶんとボキャブラリーを身につけましたこと」

テムオリンは、ただころころと笑いながら、ゆっくり、ただゆっくりと遠ざかっていく。
悠人は、テムオリンが真っ直ぐ遠ざかる背後に【再生】が浮かんでいるのをふと見て、悪寒を覚える。

【再生】の刀身には、テムオリンと同一の存在感を放つ一本の杖が刺さっていた。

全てが、揺れる。
大地が揺れる、大気が揺れる、マナというマナが揺れる。

「私、大変むかついていますの。…だからいっその事、みなさんを道連れにしてやりますわ。
 この私自身を媒介にして【再生】に外界の生のマナを送り込んで…一種の爆弾にしてやりますわ」

255 :いつか、二人の孤独を重ねて14/25 :2007/06/05(火) 18:23:31 ID:tyXps9jY0

皆が、吼える。

誰かが剣を振るう、誰かが炎を放つ、誰かが雷を呼ぶ、誰かが氷を射る、誰かが風を叫ぶ。
全員で今まででもっとも手加減なし容赦なしでテムオリンに全てをぶつけるも、一向に揺らがない。
悠人が【聖賢】でテムオリンを寸断しようと、全力で横に薙ぐ。
限界を越えて膨れ上がった【再生】の危険すぎるマナを得ているテムオリンは、それを素手で払う。

「…つくづく、何処でどうして完璧だったはずのシナリオを外れてしまったのですかしら」

「じゃあ聞くが、そのシナリオの主役は誰だ?」

「もちろん、高嶺悠人…あなたですわ。
 本来なら、ヒロインはそこのアセリアだったのですけれど」

「だったら教えてやる!
 本当の主役は決して俺なんかじゃない、みんなだ!ここにいるみんな全員だ!」

「…そう…まさか、雑魚スピが主役だったなんて思いもよりませんでしたわ」

そこで初めて、テムオリンの顔が屈辱に歪んだ。

256 :名無しさん@初回限定 :2007/06/05(火) 18:25:37 ID:mpnmPtDk0

会社帰ってきて一番最初にこのスレ見てる支援

257 :いつか、二人の孤独を重ねて15/25 :2007/06/05(火) 18:32:19 ID:tyXps9jY0

「とおぉぉぉぉっ!」

悠人の背後から、ウィングハイロゥを全開したシアーが【孤独】を振り上げながら躍り出る。
テムオリンがちらりとそれを見とめて、右腕の人差し指をぴくりと動かす。
シアーの頭上に幾本もの大小種類様々の永遠神剣が出現し、雨と降り注いでシア−を穿とうとする。

「させないんだからっ!」

しかし、【戦車】に護りの障壁を集中して傘状に展開させたネリーが神剣の雨へ突っ込んで、力技で弾く。

「猛々しき水流、獰猛なる突風、容赦なき氷雪!
 青きマナは病毒と苦痛を和らげると同時に命の証を灰燼に帰したりもする…
 神剣の主が命ずる…【孤独】よ、眼前の敵全てを氷塊と貫き砕いてえっ!」

シアーのウィングハイロゥが六枚の翼になり、【孤独】とそれを握る【聖光】が激しく青く輝く。
控えめに瞬いていた青い星は流星と空を駆けて、一度Uターンしてテムオリンへ真っ直ぐ突っ込む。

「スプレマシースラストッ!」

純白のダイヤモンドダストを散らして、その一撃はテムオリンの障壁を完全に砕いて失わせる。
シアーのスプレマシースラストの最中に魔方陣を展開させていた悠人が不可視の門に手をかける。
悠人が行使するそれこそは、まさしく永遠のオーラ。
異世界への門を強引に開き、別世界から超絶的な力を引き出し味方に等しく与える最強無比のオーラ。

「マナよ、オーラへと変われ。我らに宿り、永久への活力を与えよ…エタアァァァナル!」

258 :いつか、二人の孤独を重ねて16/25 :2007/06/05(火) 18:33:34 ID:tyXps9jY0

そしてそれは、本当ならこの時にただ一度しか振るえないシアーの奥義を再び可能にさせる。

「スプレマシイィィー、スラストオォォォォォォォォォッ!!」

「…っ!そん、な、わたくし、が、こんな雑魚スピごときに、たお、され…!」

青い煌きがあくまでもダイヤモンドダストを散らし、全ての守りを失い無防備だったテムオリンを貫く。
シアーの六枚の翼がゆっくりと消えて二枚に戻ると同時に、【秩序】の永遠者は散って消え失せた。

法皇テムオリンを倒した。

しかし、【再生】から感じるマナの膨れ上がりは止まらない。
すでに流れ込んでいる生のマナは止まっているものの、すでにキャパシティを超えていた。
誰もが疲弊しきって息を荒げながら、なおも膨れ上がる【再生】を歯噛みしながら見上げる。

「トキミ様…どうにかして、止める方法は…」

エスペリアのすがるような視線と声に、時深は完全に諦めた表情で首を横に振る。

「そんなぁ…ここまできて、全てがおじゃん?げーむおーばーなんて、くーるじゃないよ!」

ネリーが、その場にぺたんと力なく座り込む。
シアーは、呆然と何も言えないで【孤独】をその場にこれも力なく落とす。

259 :いつか、二人の孤独を重ねて17/25 :2007/06/05(火) 18:34:30 ID:tyXps9jY0

全員が、ただ無力感と絶望に打ちのめされ、場を重い沈黙が支配する。
不意に、それまで感じていたマナの波が変わる。
誰彼もが、漠然とした疑問に感覚を【再生】へと向けると。

「…え、ユート様!?」

シアーは、巨大な【再生】に【聖賢】を突き刺し無理やりしがみついている悠人を見とめた。

 −自己犠牲なんて、美しくなんかない。

悠人はさっきまで【秩序】が刺さっていた穴に【聖賢】を無理やりねじ込み、マナの流れを掴む。

 −だけど、諦めは決して覚悟じゃない。

【再生】の荒れ狂うマナの奔流に、【聖賢】を通じて手を伸ばして自分のマナを同調させていく。

 −何より、あんなに一生懸命頑張って報われないなんて、理不尽以外の何物でもないじゃないか。

テムオリンがやっていたのとは逆に、自分を媒介にして【再生】のマナを外界に逃がす。

 −クェド・ギン…俺は決してあの時のあんたを受け入れるつもりは無いけど…今なら気持ちがわかる。

【再生】から自分に流れ込んでくるマナを利用して、より広い不可視の異世界の門を開く。

 −だけど、あんたは自分から孤独に閉じこもってたよな。だから、やっぱり間違っていたんだよ。

悠人は更に【再生】のマナ性質を利用して、【聖賢】ごと自分を構成する情報を強引に書き換える。

260 :いつか、二人の孤独を重ねて18/25 :2007/06/05(火) 18:39:38 ID:tyXps9jY0

 −俺は、どうせならこういう背負い方を選ぶよ…ま、何処が違うと突っ込まれても困るけどさ。

【聖賢】をいわばストローかパイプに、自分自身をエーテル変換施設に、とイメージする。
開かれた、それはまさしくエターナルの門へと【再生】の危険なまでに過剰なマナが吸い込まれる。
エターナルへ吸い込まれていく【再生】のマナの流れの速さが増していくごとに、【聖賢】にヒビが走る。

悠人自身の両手両足顔面全身にヒビが走る。

【聖賢】ごと悠人の全身から金色のマナの霧が散り始めるも、悠人は決してその行いを止めない。
あらかじめ展開していた障壁を、誰かが扉を激しくノックするかのように叩いているのを感じる。
障壁を展開させるのに回すマナ量を、意識して更に増やす。
誰かが、泣いているのを感じた。誰かが、泣き叫んでいるのを感じた。

 −ごめんな、シアー…。

すでにヒビだらけの悠人の頬を、涙が伝った。

【再生】のマナを逃がしている間も、【再生】のマナの膨れ上がりは止まる事はない。
むしろ残酷なまでに、膨れ上がる速度はどんどんまさしく爆発的に増していく。
それを追うかのように、悠人が【再生】のマナを逃がす速度もどんどん増していく。
しかし、速度が増す毎に【聖賢】よりも悠人の全身をどんどんヒビが走り、はがれて落ちてゆく。

 −そういやバカ剣が言ってたな、無償の奇跡は存在しないって…本当にその通りだな。

261 :いつか、二人の孤独を重ねて19/25 :2007/06/05(火) 18:40:48 ID:tyXps9jY0

どのくらい、時間がたったのだろうか。
文字通り考える事をやめて、ただ自分自身をマナ放出装置と化す事にだけ意識を集中していた。
【再生】から流れ込むマナが、いつのまにか先ほどまでの荒れ狂う激しさを静めていたのに気づく。
ゆっくり、自ら閉ざしていた視覚を本来の状態に戻すと、【再生】は実に穏やかな姿になっている。

「ユート様?」

不意に意識に直接響いてきたシアーの声に、右隣りを振り向くとやや離れたそこにシアーがいた。
シアーは、【星光】に納めた【孤独】を悠人がそうしているのと同じように強引に【再生】に突き刺していた。
シアーの背中から展開されている六枚のウィングハイロゥから、【再生】のマナが門へと放出されている。

「我慢できなくて…まねっこしちゃった」

少しだけ悪戯っぽく笑って、ぺろりと可愛い舌を出す。

「…バカ」

悠人のそんな声に、シアーは柔らかく優しく微笑むだけ。

「馬鹿はいったい誰ですか」

また不意に聞こえてきた声にギョッとして振り向くと、そこにも全く同じ事をしている者たちが。
声の主は、エスペリア。ネリーがギロリと睨む。時深がこめかみに青筋浮かべて微笑む。瞬は無表情。

「ちゃんと謝れば、あとでお尻を百回叩くだけで許してさしあげます」

そんなエスペリアの言葉に、悠人は不覚にも泣きたくなった。

262 :いつか、二人の孤独を重ねて20/25 :2007/06/05(火) 18:42:28 ID:tyXps9jY0

突如、【再生】の全体に亀裂が走る。
ぱぁん、と軽い音と共に【再生】は力なく、本当に力なく、弾けて散った。

それと同時に、支えを失って【聖賢】ごと真下へ落下していく。

落下していくと同時に、【聖賢】を握っていた両手が音も無く砕け散る。
先ほどにもまして、全身がヒビから砕けてぱらぱらと落ちて散っていく。
落ちてゆく悠人を、ウィングハイロゥを展開して飛翔するシアーがそっと抱きとめる。
ひとつ羽ばたき、ふたつ羽ばたき、ゆっくりと二人で落ちてゆく。

だけれども、悠人が砕け散っていくのだけは決して止まらないままで。

ふわり、ととても優しく着地したシアーの腕の中で、悠人は未だ砕け散り続ける。

「…ユート様」

哀しそうなシアーに、悠人はただ微笑む。
やがて、全員が側に駆け寄って悠人の顔をみんなして覗き込む。
悠人は、何か言いたげでもどかしそうで哀しそうな皆の顔を一人一人確かめて、あくまで微笑んで。

シアーの腕の中であまりに乾いた音と共に、高嶺悠人は、それは気高き黄金色に砕け散った。

263 :いつか、二人の孤独を重ねて21/25 :2007/06/05(火) 18:45:41 ID:tyXps9jY0

シアーの腕の中からこぼれるように、黄金色のマナの霧が霧散していく。
がくり、とその場にシアーが悠人を抱きかかえていた格好のまま両膝をつく。
誰も、何も言えない。押し殺した嗚咽と、すすり泣きが聞こえる。

「…こんなの、ないよ」

シアーがこぼれるように呟く。

「こんなのって、ないよ」

シアーの両目から、大粒の涙がぽたぽたと落ちていく。

「いや…いや、こんなの絶対にいやあぁぁぁぁっ!
 ユート様、ユート様あぁぁぁぁーっ!
 ひどいよ、ひどすぎるよ…あんまりだよ…返してよ、ユート様を返してよ…
 シアーの、大事で大好きなユート様を返してえぇぇぇぇーっ!」

シアーの慟哭が、迷宮の冷たい壁と床と無限の空間に虚しく響く。
その時、不意に久しく感じていなかったマナの波動を感じる。

顔を上げた眼前に、今までになく蒼白いマナに満ちて輝く【求め】がいつのまにか現出していた。

264 :名無しさん@初回限定 :2007/06/05(火) 18:50:45 ID:mpnmPtDk0

引き続き支援

265 :いつか、二人の孤独を重ねて22/25 :2007/06/05(火) 18:51:17 ID:tyXps9jY0

 −…こうなると、思っておった。
 −思っておったが、今までの状態では何をすることも出来なかった。
 −そこで一計を案じ、ギリギリまで我が意思を眠らせておいて正解だった。
 −契約者よ待っておれ、今こそ汝の…真の求めに答えようぞ…!」

シアーの前に、先ほどの黄金色のマナの霧が集まってゆく。
それは、ゆっくりと、しかし確実に、だんだんと人の形をとってゆく。
ほぼ元の通りにマナが形成されていく毎に、シアーの顔に喜びが満ちていく。

シア−の腕の中に、悠人がいた。

かくして、実に荒唐無稽な理由と方法で、高嶺悠人は蘇った。
穏やかに、寝息をたてる悠人を嬉しそうに嗚咽をもらして泣きながら抱きしめるシアー。

「んー、なんだか、柔らかくて暖かいな…って、あれ?」

目を覚まして、驚いた表情で周りを見渡して起き上がる悠人。

「つーか、バカ剣?」

 −あのようにマナが枯渇してさえいなければ、もともと我はこのような事も不可能ではないのだ。

ふん、と相変わらずふてぶてしく偉そうな【求め】に悠人は、ははは…と乾いた笑いしか返せない。

266 :いつか、二人の孤独を重ねて23/25 :2007/06/05(火) 18:52:26 ID:tyXps9jY0


 −ついでに、汝の恋の悩みというか障害も取り払っておいてやったぞ。

その言葉に、頭の上に疑問符が浮かぶ。
言われてみれば、何だか身体に違和感を感じないでもない。
今までで一番嬉しそうなシアーの笑顔に照れながら、シアーの腕からゆっくり立ち上がる。

服…が無いのは、まあ仕方が無いとして。
ぺたぺたと、所在なさげに片手で前を隠しながら自分の身体を触って確かめてみる。
しかし、特にこれといって今までと変わっているようには感じられない。
うーむ、と首をかしげながら、不意にシアーと目が合う。

そこで気がつく、確かにシアーと同じ位置に立っているのにシアーと目線が全く同じ事に。

「…エスペリア、つかない事を聞くが…今の俺は一体何歳くらいに見える?」

周囲からクスクス笑いとひそひそと何やら面白そうに話しているのが聞こえるのに肩を震わせながら聞く。

「はい、ユート様。…そうですね、ちょうど人間の通う学校の中等部に通っているくらいの年齢でしょうか」

物凄く上機嫌なのがよく伝わる声で、はっきりとエスペリアは真実をありのままに伝えた。

 −良かったな、ロリ契。

「そこに直りやがれ、バカ剣。良いから、そこに直れッ!【聖賢】、【聖賢】は何処だあぁぁぁぁっ!」

267 :いつか、二人の孤独を重ねて24/25 :2007/06/05(火) 18:53:54 ID:tyXps9jY0

エピローグ

「はー、今日もしんどかったなぁ」

冷たい石の壁と床の地下迷宮の一階層、出口近く、地上の光が見えたところで悠人がぼやく。

「今日は初めて最深部の一歩手前…九階に降りましたからね。まだまだこれからですよ、悠人さん」

背後から時深がにこやかな表情がパッと思い浮かぶほどに悠人に比べて元気に満ちた声で返す。

「ネリー、毎日毎日同じだんじょんに潜って、同じ光景と戦闘の繰り返しで飽きたよぉ〜」

左隣りを同じ歩調で歩いていたネリーが、悠人に続いてそうぼやく。

「飽きたよぉ〜…」

右隣のシアーが、いつもと変わらない調子だけれど本当に疲れきった声でネリーに続く。

「ユートさん、ネリー、シアー。これはエターナルとしての訓練なのですよ?甘えは許されません」

背後から、エスペリアがぴしゃりとたしなめてくる。

「…だいぶ、地図も埋まってきたな」

やはり背後から、そうポツリと呟くのは少しだけ、本当に少しだけ良い方向に変わってきた瞬の声。

現在の悠人たちは時深のすすめで、カオスエターナル訓練場「混沌の試練場」という世界にいた。
毎日毎日、地下迷宮に潜ってはそこに蠢く怪異と命のやり取りをしつつ少しずつ踏破していく日々。

268 :名無しさん@初回限定 :2007/06/05(火) 18:55:04 ID:mpnmPtDk0

どんどこ支援

269 :いつか、二人の孤独を重ねて25/25 :2007/06/05(火) 18:59:47 ID:tyXps9jY0

ファンタズマゴリアとハイ・ペリアに別れを告げてから、ちょうど一周期になるのだろうか。
今も相変わらず腰に下げている【求め】のおかげで縮んでしまった身体にもすっかり慣れた。
背中の【聖賢】との仲も悪くは無い、むしろ最初の頃よりは上位永遠神剣に馴染んできたように感じる。
壁に寄りかかって、先に他の面子が出口の縄梯子を上っていくのを見ながらそんな事をぼんやり考える。

「…ユートくん」

不意に、一緒に寄りかかっていたシアーに呼ばれて振り返る。
シアーとも、今も色々あるけれども本当にお互いへと歩み寄ってこれているとも悠人は思う。
無言で見つめ合っていると、シアーが腕に何だか嬉しそうに抱きついてくる。

「大好き」

にっこりと満面の笑顔で真っ直ぐ言われると、やっぱり今でもどうにも顔が真っ赤になってしまう。
ん、とシアーが目を閉じて唇を突き出してくる。

天から柔らかく、けれども控えめにさしこむ清らかなひかりの中で、悠人はシアーと唇を重ねる。

いつか、二人の孤独を重ねて。



HAPPY END

270 :いつか、二人の孤独を重ねてEND :2007/06/05(火) 19:00:53 ID:tyXps9jY0

あとがき

長かったでした、初めてのアセリア二次創作長編。
雑魚スピスレにて、2005/10/15(土) 13:22:51連載スタート。
今が2007年であるからにして…うわぁorz
最初の頃はただシアー萌えだけで書いていました。
今日ここに至るまで書いている間に色々と変わってゆきました。
雑魚スレに時々投下される小ネタを拾ってみたり、それに合せて中途半端なプロットに手を加えたり。
避難所の面子及び424氏にも、色々とかなり負担をかけてさせてしまい申し訳ない気分でいっぱいです。
最後近くあたりでは、「ちゃんと永遠のアセリアを描けているだろうか」という不安が大きかったです。
結局、瞬が仲間になるだのやりたい放題の末にやりたかった事全部詰め込んでしまいましたが。
最初からあったテーマの一つに、孤独を抱え込んでる同士が互いの孤独を重ねあう、てのがありました。
このお話の中での悠人とシアーは、周りみんなの愛に後押しされて少しずつ重ねあっています。
周りから愛されるタイプだと思うのです、悠人もシアーも。もちろんみんなそうなのでしょうけれど。
皆様、ここまでおつきあいいただき本当にどうもありがとうございました。
それでは縁があれば、またいつか何処かで。

271 :どりるあーむ ◆ncKvmqq0Bs :2007/06/05(火) 19:03:03 ID:tyXps9jY0

これにて、閉幕。
支援ありがとうございました、今まで長らくおつきあいありがとうございました。
みなさまに、マナの導きがあらんことを。

272 :名無しさん@初回限定 :2007/06/06(水) 01:47:21 ID:eF///C5p0

かくして、大地は人の手に戻り、記憶からも記録からも消え去りし永遠者達は、今日も今日とて青い悪魔を養殖中……。

乙でした。
悠人の孤独。シアーの孤独。でもその手は、片手同士繋げば、輪ができるのさ。いくらでも大きい輪が。
大統領も気付けば良かったのに。あの秘書さんは……。
ひび割れた体の隙間に忍び込むのは奇蹟の想い。そして……因果は巡り一ヶ条。雑魚スピなめたらあかんぜよっw
求めたんサービス良すぎ。そしてすべてはショタエスの陰謀のままに……。


羽田健太郎氏の訃報との巡り合わせも、ほしめぐりの歌なのかなあ。♪あおいめだまのシアー あかくきざむそらのめあて

273 :名無しさん@初回限定 :2007/06/06(水) 02:01:47 ID:K2csZLvr0

数年にも渡る大長編、乙でした。保管庫行って全部最初から読み直したくなってきますね。

274 :名無しさん@初回限定 :2007/06/06(水) 20:06:10 ID:pk1gLrCW0

>>271
乙です。.txtに貼り付け、昼休みに職場のPCで存分に堪能させて頂きました(ぇ
>>253で誰かを書き忘れてはいないかと密かによく見直したであろうどりる氏を予想w

コアラ様、ずいぶんご乱心なボキャブラリー。雑魚スピてw
衝撃の新事実、アセリアルートだったのかぁ!(←そこかい
「本来なら、ヒロインはそこのアセリアだったのですけれど」
「なにぃ! この僕じゃなかったのかぁ!」
「本当の主役は決して俺なんかじゃない、みんなだ!ここにいるみんな全員だ!」
「今、悠人が良いことを言った!」   スマソorz
『求め』が格好良すぎ。代償はプライスレス。少なくとも、シアーにとっては。
エターナルの試練ってだんじょんますたぁだったのですか?w

>ロリ契
 ̄|_|○
        .. .
>灰燼に帰したりもする
ごめん、噴いたw

>>255
>ですかしら
でしょうか?

結局はシアーの成長というか心境ばかりに注目して拝読させて頂いていたせいか、
彼女の最後の呼び方はカナリくるものがありました。寄り添う青い星と赤い星に永遠の幸あれ。
ともあれ大団円、おめでとうございます。そして、本当にお疲れ様でした。
2年という歳月の間努力を維持し続け、完成させたその成果にマナの導きを。次回作にも期待(マテ

275 :名無しさん@初回限定 :2007/06/06(水) 20:21:22 ID:klwVoqdX0

>>271
乙です。

ラストはどうなるかと思いましたが、そうですか、ユート様をショタ化しましたか。荒業っすねw
それにしても、コアラ様終盤に来て随分俗っぽくなりましたねw
雑魚スピて、あんたから見れば全部雑魚でしょうにw
途中影薄かったけどw、最後はシアーもヒロインしてましたね。

足掛け1年半、正直、独特の表現に違和感を感じる事や、本当に風呂敷畳めんのかよと
失礼な事を思ったりもしましたが、なんだかんだ言いながら最後まで楽しませて頂きました。

本当に乙彼様でした。 次回作楽しみにしています。

276 :名無しさん@初回限定 :2007/06/06(水) 22:35:11 ID:q9Izfzr90

>>272
ありがとうございます。
いつも続きを書くたびに自分で最初から読み直したりして悠人たちの心は、こういう時どんな状態なのか考えたりするのが一番苦心してました。
毎回思うのは、「ふたり」を描くためには周りをとりまく色々な人々の想いの描写が決して欠かせないということでした。
無論、ゲーム本編で様々な場面でセーブしておいてそこで起動して確認したりを繰り返したりも。
みんなやってる事とはいえ、愛がなければできないことだなぁとつくづく。
『求め』は、テムオリンにマナを奪われていなければ、本来はああいう性質なのかもしれないと感じていました。
Wizardryは、ここでは板違いスレ違いなので詳しくふれませんが、自分が本格的にファンタジー物に目覚めた決定的なきっかけでした。
だから、必ずどこかでWizなにおいを描いておきたいという想いがいつからかありました。

>>273
ありがとうございます。そこまで言っていただけると、光栄のきわみです。

>>274
>>253については、仰る通り誰か抜けてないか確認確認再確認の繰り返しでした。
脈絡なくイオを混ぜて、どうにかピッタリおさまったのには心の底から安堵したものです。
「雑魚スピ」という単語は、是非ともテムオリンに言わせたかったので。それはもう。
何故アセリアルートなのかというと、テムオリンの脚本の本来のあるべき進行がアセリアルートだろうからです。
誤字脱字ハリオンマジックについては、いつも通り保管庫に修正依頼出しますです、はい。
シアーの成長のこの物語においての最後の形は、エスペリアっぽさもかなり意識して入っています。
…もしかして、エス姉さんルートからの分岐だと思われたのかしらん。
どうにかこうにか完成させれたのは、雑魚スレ住人と避難所のみなさまのおかげです、ハイ。

>>275
ありがとうございます。ええ、最終的に荒業ぶちかましました。どの道やりたい放題でしたし。
シアーが最後にきてきちんとヒロインしてたのについては、自分でもホッとしています。
違和感感じるのもしかたないです。自分でも、シアーやネリーの思考パターンとか違うよなぁと今でも思いますし。

改めて、みなさまにマナの導きを。
…で、次回作は…果たして誰にしたもんだか。

277 :いやし棒 :2007/06/07(木) 00:20:22 ID:VhHThznR0

「ふう……」
今日も何かと疲れた。思わず出る嘆息。
既に宵も過ぎた時間のベッドの上、両目に帳が落ちそうなうつらうつらの小康状態をギリギリ保ちながら、
今日一日を反芻する。ベッドの上に放り出された『紡ぎ』は沈黙を保っていた。

――コンコン。
静寂の調べに、なでるような音が混じる。睡魔の淵でなんとかかんとか意識が振り返り、
ロティは億劫な体を起こして立ち上がった。昼間のことを思い出して(「規則満面」参照)、ちょっと警戒。
まさかね……。

ドアの前に立つと、ロックされていないドアは勝手にスライドした。そこにいたのは――。
「こんばんはです〜ロティさん〜」
ハリオンだった。
「ハリオンさん……な、なにか用ですか?」
そよ、と薫るハリオンの匂いにドギマギする目線を揺らしながら、
「えっと〜」
小首をかしげ、人差し指を頬に当てる思案顔につられてたゆんと揺れるふたつのモノとモノから視線を必死に引きはがす――どう見てもお風呂上がりです――こんな努力を払う世の男共を知ってか知らずか、ハリオンは常と変わらぬマイペースだった。
「ロティさんと〜気持ちいい事しに来ました〜」
微笑みと方向の違いすぎる発言はロティをギョッとさせるに十分の威力だ。思わず体を引いたロティは、じょ、冗談でしょ、と言う言葉が上手く口で形作れないうちに――。
「んふふ〜♪ あ、ほらロティさんの持ってるもので〜わたしを気持ちよくして欲しいんです〜〜」

278 :いやし棒 :2007/06/07(木) 00:22:07 ID:VhHThznR0

え、あ、や、め。
完全にうら若き単音発声体なロティ――へっへっへ、声と違って体は正直だぜ?――に滑らかにハリオンは近づいた。既に硬直し始めているロティにぴとっと。
知らず知らずぎゅうっと目をつぶるロティ。固いモノに触れるのは5本の白い指先。優しくきゅっと握りしめてくれ――あ、あれ?
期待にワクテカなロティのモノは未だ何の触感も持ち主に伝えてはくれない。
なんだか後ろめたさと情けなさとお預けな気分に負けて恐る恐る見開いたロティの目には――。
「んっふふふ〜。これですよ〜ほらロティさん似てると思いませんか〜?」
「え、えっえ?」
「ほら〜船に乗る前に聞いたガロ・リキュア放送局でやってたじゃないですか〜、細長くて、固くて、先端にちょっと丸みがあって〜」
「な、何の話しなんですっ?」
「あ、もう聞いてないんですね〜メッですよロティさん〜。ほら、放送の中でよく通販があったでしょう〜?」
激しく混乱中のロティの目の前で、無意識にベッドから持って来てしまっていた『紡ぎ』が、いつの間にかハリオンの5本の白い指の中に収まっていた。
「その中で、肩凝りに効く防水性マッサージ器があったんですぅ〜〜」
「あ、つm」ピイィィィィィィィィィィィィンンンーーーーーーーーー。「あぐぅ!」
「『紡ぎ』さんて〜、放送で言ってた形にそっくりだなあって前から思ってたんですよ〜、それで〜」
ピィィーーーーーーーーーーーーーーン。「ぐあ」

279 :いやし棒 :2007/06/07(木) 00:26:21 ID:VhHThznR0

「ああ〜ほらやっぱり間違ってませんでした〜肩に当てると気持ちいいです〜。ぶるぶる〜って震えてます〜〜」
ピィィーーーーーーーーーーーーーン。【主よっ】ピィィーーーーーーーーーーーーーン。
【主よ! 特急だ。この妖精を抹殺せよ!】
「そ、そんなことい、ぐぁぁぁっっ!」ピィィーーーーーーーーーーーーーン。
ピィィーーーーーーーーーーーーーン。ぶるぶる。「ああ〜気持ちいいです〜〜先端が効きますぅ」ぶるぶる。
「凄いです〜どんどん激しく振動してますよぉ〜ロティさん〜」
【主よ!!】ピィィーーーーーーーーーーーーーン。ぶるぶるぶるぶる!。
「あ〜〜天国です〜癒されますロティさん〜気持ちいいです〜〜」ぶるぶるぶるぶるぶるぶる!! ピィィーーーーーーーーーーーーーン!! 「ぐわああああ!」
ピィィーーーーーーーーーーーーーン! ピィィーーーーーーーーーーーーーン!
ピィィーーーーーーーーン!
ピィィーーーーン。
ピィィーーン。

…………
……

280 :いやし棒 :2007/06/07(木) 00:30:21 ID:VhHThznR0

う、ううん。
呻き声が小さく部屋に響く。ロティはようやく悪夢? から目覚めた。
天井が見える……ここは柔らかなベッドの上だ。どうやら……気を失っていたらしい。
【起きたか、主よ】
右の方から聞こえた声にロティは顔を向けた。『紡ぎ』の声には少しだけの気遣いと大量の苛立ちが有った。
向いた眼前にはハリオンの寝顔がすやすや。そして……。
「ぶっっ」
【主よ……早急に我を抜くのだ】
一触即発で剣呑な声の調子もロティに届いているのかいないのか。ロティはそのままタヌキ寝入りをしたい気持ちで必至だったが、目は釘付けにならざるを得なかった。
何故なら『紡ぎ』は――窮屈そうにハリオンのふたつのモノとモノに挟まれていたのだから。
ピィィーーーーーーーーーーーーーン。

281 :名無しさん@初回限定 :2007/06/07(木) 00:35:53 ID:VhHThznR0

「いやし棒」。『ら』を足したら「いやらs(オーラフォトンNOVA)


これでロティ君ネタ打ち止めです。失礼つかまつっピィィーーーーーーーーーーーーーン。

282 :名無しさん@初回限定 :2007/06/07(木) 01:32:26 ID:N+60X35b0

>>281
ハリオン最強伝説に新たな1ページが。
しかし、紡ぎタン汎用性高いですねw

283 :名無しさん@初回限定 :2007/06/07(木) 09:44:31 ID:EKNlCLgA0

何というピィィーン

284 :名無しさん@初回限定 :2007/06/07(木) 19:58:21 ID:r+K4wful0

必死な紡ぎタン萌ピィィーーン。
つか気持ちいいのはハリオンだけな罠w

285 :名無しさん@初回限定 :2007/06/08(金) 02:58:37 ID:CJLKQC2N0

いつか、アセリアオンリーというか雑魚スピオンリーイベントあればいいなあと思う俺がいる。
近いものはすでにあるのかもしれないが。

286 :セリアの頼むから徒然させろっちゅーねん日記 :2007/06/08(金) 15:53:19 ID:CJLKQC2N0

思い出したくも月 ないわよっ!日

最悪だ。

始まりは、たまたまアセリアに用があって第一詰め所をたずねた時のことだった。
玄関から声をかけ、キッチンから聞こえたエスペリアの声。

「あら、セリアですか?アセリアなら、いつものように部屋に閉じこもっているけれども」

全くあの対人能力決定的欠如半引きこもり娘は、とぼやきながら階段をのぼる。

「よ、セリアか。何だ?何か報告か?」

のぼる階段の途中、上の段からユート様が能天気にニコニコ手を振りながら下りて来る。
アセリアに用があって来た事を簡潔に述べて、一応丁寧に応対しながら階段をのぼる。

…何故、そこにたっぷり水を含んだ濡れ雑巾があったのだろうか?

あ、と思う間もなくユート様が足を滑らせ身体を宙に踊らせ顔面から私に突っ込む。
耳から頭蓋の中にかけてイヤな音を遠く聞きながら、互いにもつれあって階段を落ちる。
拭えない違和感が唐突に感じられるまま、そのまま二人して気を失った。

目が覚めた時に開いた目に飛び込んできたのは、ユート様の部屋の天井だった。
何だかくらくらする頭を振りつつ上半身を起すと、エスペリアが心配そうに顔をのぞきこんでくる。

「大丈夫よ、エスペリア。普段訓練してるからどうって事ないわ。…受身は取りそこなったけど」

そう喋って、自分の耳に聞こえてきた自分の声がいつもの自分の声じゃないのに気づく。
エスペリアが、両手で口元を押さえて何か確信に満ちた驚愕の表情をしている。
ふと、部屋の隅っこで椅子に座って落ち着き無く私を見ている私に気づいた。

…私はここにいるのに、向こうに私がいる?

287 :セリアの頼むから徒然させろっちゅーねん日記 :2007/06/08(金) 15:56:00 ID:CJLKQC2N0

「あー、セリア…その、気がついて良かった…のか?その…ごめん」

一瞬合った視線を逸らし、目を空に泳がせながら私がユート様のような喋り方で謝る。
エスペリアが、ごくりと唾を飲み込みながらそっと手鏡を差し出してくる。
手鏡をのぞきこむ私の目に映ったのは、顔を引きつらせているユート様の顔の私。

というか、私がユート様でユート様が私だった。

精神的な疲労がどっと襲ってくると同時に頭痛が走り、眉間を指でおさえる。
深呼吸して、目をごしごしこすってから手鏡をのぞくも、鏡に映るのはやっぱりユート様。

突然襲ってきたかつてない大理不尽に盛大なため息をつきながら私のほうを見る。
私の身体のユート様は、いつのまにか椅子をたち、気まずい表情で…お尻をポリポリ掻いていた。

撲殺音。

「ご、ごめんっ、つい、いつものくせでっ…!」

血の海に沈む、ユート様IN私(セリア)を見下ろして、また途方に暮れる。

「それにしても、服も身体も汗臭いですね。ちゃんと清潔にしていただかないと隊の士気にかかわ…」

あろう事か、それは大きな鼻くそをほじって指でぴん、と飛ばしているユート様IN私(セリア)。

折檻音。

「ごめ、ほんとマジでごめ、わざとじゃないんです許してくださいセリアさん…」

再び血の海に沈みながらマナの霧と散り始めるユート様IN私(セリア)を私は遠い目で見ていた。

288 :どりるあーむ ◆ncKvmqq0Bs :2007/06/08(金) 16:01:42 ID:CJLKQC2N0

初心にかえって、セリアさん日記。本日はここまでに。
…って、もとにもどったセリアさんっ!?いやそんな殺意のマナを容赦なく『熱病』にこめないでぎゃあ痛い助けて死ぬうぎぐ「あ@:えp;、%

289 :名無しさん@初回限定 :2007/06/08(金) 23:22:49 ID:B/K9e3Y30

エ「それでは、僭越ながら定番の治療法を施してみようかと思うのですが、多数決を取ります……はい、全スピ一致で決定しました」

   ._   ._       _ _ __
 .//___//_____././/    \
// //      /./| |       |
| |  |  | '´ ⌒ヽ |  || | |       |
| |  |  |ハ」」」l」」〉 |  || | |       |
| |  |  |ヾゝ゚ ヮ゚ノゝ| .|| | |       |
\\ |_|\___|_|\\\___/
   ̄    ̄  | |     ̄ ̄ ̄
    ,べV   .| |   
   / 〃  ̄ ヾ;| | 
   ∧ ミ(ノハソ .| |
   | | (i|゚ ヮ゚ハ | | これで二人を思いっ切りですね。
   | |⊂! |T|!っ| |
   | | く/|_|〉 | |
  [_]  し'ノ  .|_|

290 :名無しさん@初回限定 :2007/06/09(土) 00:11:37 ID:gh5pr9lI0

>>288
続編希望。

291 :名無しさん@初回限定 :2007/06/09(土) 08:14:10 ID:hWAOzJ/G0

>>288
自分の身体にも容赦ないセリア見境Neeeww
取り急ぎ汗臭さをどうにかする為にとセリアが取った行動は?
1.自ら目隠し&風呂へ
2.自ら目隠し&エスペリアに拭いて貰う
3.対人能力を決定的に欠如して引き篭もり娘
4.ヨフアルヨフアルゥ!!

292 :名無しさん@初回限定 :2007/06/09(土) 14:53:36 ID:r7m3wUx90

5.貴方の身体なんだから貴方が洗いなさいよね!

293 :名無しさん@初回限定 :2007/06/09(土) 18:58:35 ID:axijL9c+0

やっぱりここのセリアさんはツンデレ分が強くて素敵だな

ニムの長編マダー?

294 :名無しさん@初回限定 :2007/06/09(土) 22:48:25 ID:ubX33X290

求めたん「奪え、犯せ、マナを、マナをよこせ!」
セリアIN悠人「な、なにこれ、求めの声なの? わ、私は違うの! 契約者じゃない! あ、らめえーーっ」

295 :名無しさん@初回限定 :2007/06/09(土) 23:27:23 ID:VsG26LHs0

求めたん「おお、いいぞ契約者! マナが、マナが満ちてイクゥ!」
セリアIN悠人「らめぇ、もう、ホントにらめぇぇ! 堪忍してぇぇっ!」
天才科学者「なんというマナサイクル。これがエトランジェの力なのか」

296 :名無しさん@初回限定 :2007/06/10(日) 00:35:34 ID:UHolYfHq0

熱病たん「ちょうどいいわ。ウチのご主人の生態知っといてよ。いっつもキツいこと言ってばかりなくせにさ、部屋に戻ってから私相手に、
今キツいこと言って嫌われなかったかなとか、なに鼻の下伸ばしてんのよとか、私を見て怯まないでよ傷つくとか、結構ナヨナヨ愚痴ってるのよね。
だからさあ、あんたから一発びしっと男らしく言ってやってよ。もう簡単に恋の病でフォーリンラブよ。保証する」
悠人INセリア「ほ、本当なのか……よし。マナをオーラに変えて。……セ、セリア。黙って俺に付いてこい!」
セリアIN悠人「ら、らめえぇぇぇ」

297 :名無しさん@初回限定 :2007/06/10(日) 00:49:58 ID:CXkfRL7U0

おまえらww

298 :名無しさん@初回限定 :2007/06/10(日) 00:52:37 ID:sRNFDCtp0

今年度のセリアさんの方向性。

「らめぇぇぇ」

299 :名無しさん@初回限定 :2007/06/10(日) 01:36:28 ID:UHolYfHq0

だが、端から見るとおそろしくキモイ光景な罠w

     ヽ)/
  ∠´ ハ`ゝ
  彡//ノハハ〉
  ゞ(リ´Д`ノ!  <らめえぇぇ
  中の人セリア

300 :名無しさん@初回限定 :2007/06/10(日) 02:00:01 ID:jN2oV16V0


   r‐-- -┐
  / /゙・ 皿・_ヽ       ヽ)/
  レ'´从リ从!〉 ┃   ∠´ ハ`ゝ
   l从◎_◎从つ    彡//ノハハ〉
    /wkつノ ┃   ゞ(リ´Д`ノ!  <らめえぇぇ
    く/|_ノ  〈≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡〉
     し'ノ  ./                        ヾ
  ||ニニニニ||(_________________,, )
  ||      ||ヾ;从;从;;从;从;从;;从从;从;;从;从;从;;从;;;从;;;ノ

301 :名無しさん@初回限定 :2007/06/10(日) 08:56:44 ID:ZEnhH/s90

ナナルゥ「全ては天井裏から見させて頂きましたセリアIN悠人」
セリアIN悠人「な、なにをよ」
ナナルゥ「犯人は……らめえぇぇぇ」
セリアIN悠人「!」

エスペリア「昨夜ナナルゥが謎の敵襲を受けて重傷を負った件について」
ヒミカ「あのナナルゥが一撃だなんて……プッ」
セリアIN悠人「……なによ」
ヒミカ「いや、別に。ごめん、こっち向かないでくれる?」
セリアIN悠人「……」
ファーレーン「ともかくこちらもよほど慎重に対策を……クス」
セリアIN悠人「対策を? ファーレーン?」
ファーレーン「す、すみません、その、ちょっとお腹が」
セリアIN悠人「……」
エスペリア「ユ……あ、そのセリア、様?」
アセリア「クス」
セリアIN悠人「……なによ」
アセリア「ん、なんでもない」
セリアIN悠人「……」
ニムントール「お、おなか痛い(ヒソヒソ」
ヘリオン「ちょ、笑っちゃだめですよぅ……クフッ(ヒソヒソ」
セリアIN悠人「〜〜〜もうっ! 笑っちゃらめえぇぇぇ!」

悠人INセリア「お、また遊びに来たのか」
ネリー「う、うん、そうなんだけどぉ」
シアー「な、なんかね……怖いの」
悠人INセリア「?」
ハリオン「えいっ」
悠人INセリア「おわっ! 急に抱きつくなって!」
ハリオン「……う〜ん何だか変な気分ですぅ〜」
悠人INセリア「え? あ、な、何だ胸の先が熱く……あ、らめえぇぇぇ!」

302 :名無しさん@初回限定 :2007/06/10(日) 10:59:43 ID:LeDiTNz10

>>301
ワロスwww

303 :名無しさん@初回限定 :2007/06/10(日) 11:23:33 ID:UHolYfHq0

YOUTO! 馴染んでるよ! YOUTO!


こうなったら、存在と求めを重ね合わせて共鳴させアセリアの心を救ったように、
悠人INセリアとセリアIN悠人を重ね合わせてSoft in1釜ゆで

304 :名無しさん@初回限定 :2007/06/10(日) 12:20:48 ID:robykfl10

そんなことしてもしセリアIN求め、求めINセリア、悠人IN悠人の組み合わせになったら…!

悠人IN悠人「お、おいやめろ、俺だって男なんだぞそんな色っぽく迫られたら流石に辛抱たまらn」
求めINセリア「いいぞさあ来い契約者よ、我を受け入れろ!」
セリアIN求め「待ちなさい! 私の身体に何を、え、ア、何、キャッ、マナ、マナが満ちて、らめえぇぇぇλ!」

もうなにがなんだか

305 :名無しさん@初回限定 :2007/06/10(日) 16:43:55 ID:EuDpkDQw0

熱病「もうらめてえぇぇぇλ! 主のライフはもう0よぉ!」

306 :名無しさん@初回限定 :2007/06/10(日) 19:30:31 ID:e07fVcc30

未だかつてない流れに戦慄

307 :名無しさん@初回限定 :2007/06/11(月) 00:08:49 ID:zbxOuEHT0

ふう……セリア分堪能した。

308 :名無しさん@初回限定 :2007/06/11(月) 00:40:18 ID:O64eGKwB0


あてんしょん

このSSは、ほぼ基本的に年少組の補完です。
時期も舞台もケムセラウト〜法皇の壁、全5回の投稿で完結します。今回は第4回目です。
ただし恋愛要素は全く含まれていませんので、そういうのが嫌いな方は遠慮なくスルーお願い致します。

309 :名無しさん@初回限定 :2007/06/11(月) 00:41:53 ID:opSIA2fYO

先制支援……いきます

310 :相生 It's raining hard :2007/06/11(月) 00:42:03 ID:O64eGKwB0


喩えるならば、龍の咆哮。
大地を震わし轟く地響きは、法皇の壁を挟んで向かい合った両軍から発せられる生死とプライドを賭けての狼煙。
人は守るべき家族を想い、自ら猛る武勇を誇り。スピリットは護るべきカゾクを慕い、その為にこそ自らの剣を振るう。
ただ一様に思うのは ―――― いつになれば終わるのだろうか ―――― その馬鹿馬鹿しくも真摯な問いかけ。
西方に聳えるエト山脈。そこに眠る魔龍シージスの魂。彼(か)の呪いなのではないかと気弱な兵士は呟く。
だが24年前から、その問いに答えられる者はこの大地のどこにも存在しない。
ただ一人、ソーンリームの奥地で目を光らせている監視者のみを除いては。

昨朝の濃霧が呼び寄せたのか、ケムセラウト上空は暗雲が垂れ込め、雨が降り続いている。
時折激しくなる雨粒は土を容赦なく穿ち、跳ねさせ、たとえ気をつけていたとしても足元をたちまち泥だらけにしてしまう。
これから正に決戦の場である法皇の壁へと赴くにしては、部隊の背中に凄愴感が漂ってしまうのは、この天候のせいでもあるのだろうか。
街の城壁を出立するスピリット隊を見送りながら、柄にも無い、そうヨーティアは吐き捨て、傍らのイオへと話しかける。
「なぁイオ、本当にこれで良かったと思うか? あたしは何か、大きな間違いを犯そうとはしていないだろうか?」
「珍しいですね、ヨーティア様がそれほどまでに気弱な態度を取られるとは」
「いやぁ、そんな殊勝なもんじゃないよ。ただ科学者たるもの、常にまず自らを疑えってね。だが今回は……いや、今回も、失敗は許されないんだ」
「……例の仮説、ですか」
「そうだ。もしそれが正しければ、この戦いの後には必ず“ヤツら”が現れる。間違いなく、この世界に対しての厄災として。それも、そう遠くない未来に」
「……」
イオは、珍しく多弁な主を好意的なまなざしで見守っている。
まるで預言者のような佇まいを纏い、鋭い光芒を宿し、どこか虚空を眺めるようにして語る横顔は、いつ見ても凛々しい。

311 :相生 It's raining hard :2007/06/11(月) 00:43:29 ID:O64eGKwB0


「この戦争で消耗しきってしまっては、ヤツらの思う壺だ。国力が落ちた所を狙って併呑する。戦略の基本さ。もっともあたしは軍政屋じゃないが」
「ですが、政略の面からもその御指摘は正しいかと。次代を担うべき彼女達を“保護”するのはその為でもありますし」
「ああ。訓練士に言わせりゃ戦場で鍛えさせるべきらしいがね。馬鹿な話さ、未熟な精神で戦えば神剣に支配されるだけだというのがまだ判らないらしい」
「しかし流石にレスティーナ女王は聡明でした」
「当然だ、そうでなければあたしはラキオスの招聘に応じてはいない。だがこの聖断で、現に部隊の戦力は大幅に削られている。問題はそこだ」
「不安、ですか? 戦いに敗れることも、可能性として或いは……」
「あるだろうな。だけどなイオ、ここだけの話だが、あたしはあのボンクラを信じている。根拠は非科学的だが……可笑しいか?」
「ふふ……いえ。ヨーティア様らしいと思います」
目を細め、楽しそうに囁くイオに、ヨーティアはそうか、と呟き泥だらけになった白衣の裾へと視線を移す。この先は、イオにもまだ話してはいない。
それは戦慄すべき仮説。もしもこの戦いの終幕までも、織り上げられたシナリオ通りの展開ならば。
クェドギンが生前主張していた、操られている世界の運命。その"物語り"から人が依然外れていないのならば。
少なくともこの局地戦での結末は、当然ラキオスの勝利、と書かれていることだろう。例えあの胡散臭い妖精趣味の男が阻害しようとも。
四神剣の伝説は、後世への重大な警告となっている。『求め』と『誓い』が相食み合わなければ、綴る意味は無いのだから。

312 :相生 It's raining hard :2007/06/11(月) 00:44:39 ID:O64eGKwB0


「結局は掌の上、ということか」
「え? 何か仰いましたか?」
「ああいや、なんでもない。あたしはな、イオ。誰にも死んで貰いたくないだけさ。まぁ今更"人"であるあたしが言えた義理でもないんだがね」
「……ヨーティア様、これ以上濡れては風邪を引きます」
雨はますます激しく、地面を叩きつけつつある。
それがまるで今から始まる滑稽劇の幕開けを皮肉る天の啓示のようにも思え、ヨーティアは重い溜息をついた。
どうも感傷的になっていけないな、と気を取り直し、首を振る。
「……すまないな、イオ。あたしはまた、お前に辛い役目を命じなければならない」
「……どうか、お気になさらず。それがヨーティア様の御命令とあれば」
イオは、携えていた『理想』を心持ち斜めに翳しながら頷く。
イオ・ホワイトスピリット。
その特徴でもあるプラチナの髪の下、レッドスピリットよりも尚赫く輝く双眸に白銀のマナを漲らせつつ。

313 :相生 Delphinium×belladonna Z :2007/06/11(月) 00:49:49 ID:O64eGKwB0


「……はれ?」
「あ、気がついた?」
額に乗せられる冷たい感覚に、目を覚ます。丁度シアーが取り替えたばかりの温くなったタオルを絞っている所。
ネリーは自分がどこに居るのか、一瞬わからなかった。ぼんやりと辺りを見回す。繋ぎの良くない壁板、その隙間から毀れる光。
「……ケムセラウトだよ」
「あ、そっか」
「ネリー、凄い熱だったんだよ。心配したんだよ?」
「ふーん……なんも覚えてないや」
他人事のように呟きながら、起き上がろうとする。しかし両手でやんわりと丸い肩を押され、ネリーは再び横になってしまう。
「大丈夫だよ。もう、シアーは心配性だなぁ」
「……無理、しないで」
「はいはい、わかったから」
ふざけた口調で誤魔化してはいるが、俯いているシアーの瞳が涙で滲んでいるのは下から仰ぎ見ている形なので良くわかる。
身体の調子はもう何でもない。それでもネリーは大人しく従う。うん、と小さく頷くシアーの蒼い髪が短く揺れている。

314 :相生 Delphinium×belladonna Z :2007/06/11(月) 00:52:13 ID:O64eGKwB0


「じゃあお水、取り替えてくるね」
「シアー、その……ごめんね」
「……うん」
目元を擦り、気を取り直したシアーが水桶を両手で持ち、ぱたぱたと出て行く。
その後ろ姿を見送った後、ネリーはこっそりと起き上がり、部屋の外を覗いてみた。日差しが明るい。太陽の位置が朝を示している。
廊下には、人気が無い。シアーの気配が遠ざかってしまうとまるで廃墟に足を踏み入れた時に直感する類の薄ら寒さが残ってしまう。
「……なんだか静かだなぁ」
元々ホームシック気味だったせいもあり、気味が悪い。じっとしていると耳鳴りが聞こえてきそうになり、若干焦りを感じながら踵を返す。
ベッドに戻り、シアーが帰ってくる前に、ともう一度寝転がる。
なんとなく膝を折り、背中になったポニーテールが引っかかるのを防ぐために軽く首を持ち上げ、

  ―――― リィィィィィン……

「……『静寂』?」
部屋の片隅に立てかけられていた細身の神剣が、薄闇にぼんやりと青白く浮かび上がっていた。
ネリーはまるで魅入られたかのようにふらふらと立ち上がり、覚束ない足取りで近づく。
「――――マナヲ」
刀身に映る彼女の瞳は、いつの間にかいつもの快活な澄んだ蒼色ではなくなっている。

「……ネリー?」
シアーが汲み直してきた水桶と慣れない炊事で作った粥を両手に抱えて部屋に戻ってきた時。
そこには既にネリーと『静寂』の姿は無かった。シアーの手元を離れた器がからん、と奇妙なほど軽い音を立て、床に転がった。

315 :相生 W :2007/06/11(月) 00:56:20 ID:O64eGKwB0


緒に就いたばかりの戦況は、一進一退を繰り返している。
街道の正面に開かれた法皇の壁の大手はその門扉が大きく開かれているが、そこでの戦闘は比較的少ない。
ただそれは、勿論敢えての比較であって、激しい抵抗の前に悠人達の方が手をこまねいていると言った方がより正確な表現となる。
サーギオスのスピリット達は、今までの対帝国散発的戦闘に於いて遭遇した相手とは明らかに異質であり、戦闘力の桁も大幅に跳ね上がっていた。
自らの意志を消した瞳の奥から殺意を漲らせ、我が身をも省みず、油断も隙も見逃さずに襲い掛かってくる。
しかもその速さが尋常ではない。以前に対峙した時にもそうだったが、神剣の力を最大に発揮した成果がこれかと悠人は舌打ちを繰り返す。
「くっ……エスペリア、まだいけるかっ!?」
「はっ、はい! 大丈夫です。ですが」
「ああ、皆の方が心配だ。アセリア!」
「……ん」
「頼む、森の様子を見てきてくれ! 中央のナナルゥ達が危険かも知れない!」
この方面は、これで悠人とエスペリアだけの、部隊とも呼べない編成となってしまう。しかし悠人は決断せざるを得ない。
人数が固まった妖精部隊の脅威というものを肌で実感してしまった以上、純粋に神剣の位が低いメンバーの方が危ない、そう直感しての指示。
悪い視界の中、牽制を兼ねて『求め』を振るい、オーラフォトンで数本の樹を薙ぎ倒す。だが、やはり手ごたえのようなものは返ってこない。
濡れた前髪から滴り落ちる雨粒が鬱陶しくなり、首を振って払い、再び敵の気配を追う。どうやら包囲されてしまっている。

316 :相生 W :2007/06/11(月) 00:58:26 ID:O64eGKwB0


「ま、光陰達がいるから大丈夫だとは思うけどな」
「くす……ユート様、それでしたら何故アセリアを?」
アセリアのウイングハイロゥが無事森の中へと飛び込むのを見送り、背中合わせに『献身』を構えたエスペリアが、可笑しそうに肩で笑う。
悠人もこの状況で我ながらと、髪をがしがしと掻いて応える。同じタイミングで、囲みの輪がじりっと狭まるのを感じながら。
「言うなよ。これでも結構、相手は選んでいるつもりなんだからさ」
「……ユート様。ユート様は、わたくしが御護りいたします。……必ず」
エスペリアの背中が、遠慮がちに優しくこつんと触れてくる。互い濡れそぼっているにも拘らず、一瞬だけは感じられる温もり。
そして次の瞬間には、敵が一斉に襲い掛かってくる。
悠人は『求め』に篭められたマナをもっとも薄いと思われる場所へと放つ。白い爆発が吹き荒れ、捻られた空間が次々と悲鳴をあげていく。

317 :相生 Bidens atrosanguineus Z :2007/06/11(月) 01:00:55 ID:O64eGKwB0


数刻前、ヘリオンは、法皇の壁へと出撃する仲間達を街の城壁まで見送っている。
隊長を筆頭にマロリガンから参戦したコウイン、キョウコのエトランジェ3人、ラキオスの蒼い牙と恐れられるアセリア、
元サーギオス妖精部隊の隊長にして漆黒の翼の異名を馳せるウルカ、元マロリガン稲妻部隊屈指の使い手クォーリン。
それにエスペリアが率いるラキオスの精鋭達が揃っている。おおよそこの大陸で考え得る最強の部隊編成かもしれなかった。
それらが一気に法皇の壁へと押し出していく。
その荘厳さにヘリオンは身震いする程の、一種異様な感動を覚え、『失望』を握る手が微かに震えてしまっている。
畏怖、という表現がこの場合には当てはまるのだろうが、今の彼女には理由も判らず、勿論震えを抑えようという発想も無くただ呆然と佇む。
「……ヘリオン殿、後は頼みます」
ぽん、と軽く肩を叩かれ、我に返る。
顔を上げると、雨で燻ぶる景色の中、澄んだ微笑を浮かべているのは濡れた銀色の髪をやや無造作に掻きあげているウルカ。
日差しがないせいか、ふとその表情にどこか透き通ったような儚いものを感じ、何か言わなくては、とヘリオンは焦る。
「あ、あのあの、ウルカさん」
「必要なのは、強さではありません。強さを求めようとする、その意味を剣に聞くのです」
「え、聞く?……剣に」
「はい。ヘリオン殿なら、恐らくはすぐにでも。ですから申し上げました。後は頼む、と」
「ふぇ……ぁ、」
実のところヘリオンは、禅問答のようなその問いかけの十分の一も理解出来てはいない。
しかし激しい雨音にも掻き消されず、はっきりと強い意志が秘められたその響きだけはすんなりと耳に飛び込んでくる。

318 :名無しさん@初回限定 :2007/06/11(月) 01:02:46 ID:n0v4wpmL0

|∀゚)

319 :相生 Bidens atrosanguineus Z :2007/06/11(月) 01:03:22 ID:O64eGKwB0


「は……はいっ!」
訴えるような、それでいて穏やかな瞳に見つめられ、激しく頷いていた。
確認したウルカは一度慈しむように目を細め、そして後は何も言わず、立ち去っていく。
「……ねぇ『失望』、わたし、ウルカさんみたいに強くなれるのかなぁ」
じっと黒鞘に納まっている自分の分身へと訊ねてみる。しかし雨粒が跳ねるだけで、剣の声などは全く聞こえない。
空を見上げると、分厚い灰色の雲だけが見える不透明な景色。痛いほどの雨が頬に当たる。濡れた髪が重たい。
「……帰ろっか」
先ほどの興奮は、いつのまにか身体の芯まで沁み込んできそうな寒気にすっかり流されてしまっている。

帰り道は、長かった。
海の中をずっと潜っているような錯覚に囚われそうになった所でようやく宿舎が見えてきて、ヘリオンはほっと息をつく。
それは、ぱしゃっと泥を跳ねて転びそうになり、わたわたとバランスを取った拍子だった。何かを訴えかけるような闇のマナの波動。
「……『失望』?」
ざわっ、と背中を走る悪寒。何か今見過ごせば、この先ずっと後悔してしまうような予感。
ヘリオンは黙って瞳を閉じ、じっと心の奥を空っぽにしようと試みる。すると今度は微かに感じられる、確かな"震え"。
「……ネリー!」
来た道を、再び駆け出す。ウイングハイロゥを開くことも忘れて。

320 :相生 X :2007/06/11(月) 01:08:38 ID:O64eGKwB0


ラキオスは当初の作戦通りに街道沿いから順に悠人達、中央に光陰と今日子を擁し、それぞれを"遊撃的な囮"として据え、
その実最大の攻略拠点である例の破壊されたままの壁の入り口へと向かう最左翼に大量編成部隊を集結させるという変則的な鶴翼の陣を採っている。
各方面で、激戦が展開されていた。それも、当初の予定よりも強靭な敵の抵抗の前に。
先日の戦闘とは比較にならないほど強力な戦闘力を持った帝国秘蔵の部隊――妖精部隊――は狡猾な本能で攻め立ててくる。
「今日子、行ったぞ!」
「判ってる……ハァァッ!」
「く、こいつら何で……何を狙ってやがる?」
すぐ横を駆け抜けようとしたブルースピリットを間に挟んだ大木ごとゲイルで吹き飛ばし、光陰は呟く。
"彼女達"は先程から、ラキオス側が展開した「戦線」の隙間を全力で突破しようと波状に襲い掛かってきている。
人間の規格で創られた戦術とはいえ、確かに後方に回られ、挟撃されれば厄介なのは間違いが無い。
しかし正面戦力を失えば、そもそも壁の防御力自体が失われてしまう。攪乱や包囲殲滅を求めるのならば、他にもっと確実な方法が幾らでもある筈。
「なんだ……何か他に、目的でもあるっていうのか……よっ!」
黄緑色に展開した魔法陣からマナを収束し、また突破を試みようとした上空のブラックスピリットを打ち落とす。
ばさばさと細かい枝を突き破りながら落下してくる少女は、失われた両脚から間歇的に血を噴き出させつつ、尚も睨んでくる。
その濁った何も映さない瞳にぞっと寒気を感じながら、光陰は強化したシールドを傘のように翳す。
すると盾に弾かれ、地面に転がり、泥だらけになった少女はそこでようやく息絶え、金色の光が淡く輝き出す。
「……悪いな。こっちも必死なんだ」
雨に阻害される視界を払うように、腕(かいな)で額を拭う。雨に冷や汗が混じっている事を、光陰は自覚している。
くだらないな、と口の中だけで呟く。ニムントールに語った偽善的理想論は、戦場では一切通用しない。

321 :相生 X :2007/06/11(月) 01:13:33 ID:O64eGKwB0


「……あん? この気配」
「光陰っ!」
「っっ?!」
「やらせない!」」
後方からの微弱な気配に気を取られた一瞬に、踊りかかってきたブルースピリットの影。
それをすんでの所で貫いたのは今日子が放った一条の光線、ライトニングブラスト。
無茶をしたのか、駆け寄ってくる彼女はライトアーマー越しの肩に薄っすらと切り傷を負ってしまっている。
「……さんきゅ、お陰で助かったぜ」
光陰は咄嗟にオーラの一部を癒しの力に換え、その傷を塞ごうと手を翳す。
「ま〜た何か余計な事考えて油断してたんでしょう、アンタのことだから……イタッ」
「今日子、感じないか? この神剣……『静寂』か」
「ああ、うん。でもさ、あたしたちはここを動かない。動いちゃだめ。そうでしょ?」
こつんと光陰の額を軽く叩きながら、微笑んでくる。光陰は一瞬目をぱちくりとしばたかせ、遅れてにやっと笑い返した。
叩かれた時に微かに震えていた指先を握り返してやりたかったが、今はぐっと堪えることにする。
「……ああ、そうだな。俺達は、決めたんだっけか。悠人達を信じるってさ」
「そういうこと。……来たわよっ!」
飛び出す今日子の服は既に泥に塗れ、翻るスカートの裾も所々切り裂かれている。
攻撃を担当する彼女にとって、何故か防衛に回っているこの状況は相当に辛い。
しかも相手は身を武器にして立ち向かってくる。これではエトランジェといえども、無傷では済まない。肉体的にも、精神的にも。
「ま、今更だけどな……俺は、今日子を護るっ!」
改めてこの世界での最優先事項を確認し、周囲の木を全て圧し折る勢いでトラスケードを発動させる。
ぶん、と両刃の『因果』を頭上に振りかざした時には、光陰の体は大きく前方に向けて跳躍していた。

322 :相生 Lemma X :2007/06/11(月) 01:16:24 ID:O64eGKwB0


壁を目前にして行なわれている戦闘は、双方死力を尽くしてのぶつかり合いになり、様々な戦局で一進一退の攻防が繰り広げられている。
ラキオス側は複雑な森の地形の中で互いの連携を絶やさぬように一本の横線を形作り、それを保ちつつ進撃を行う。
大きく翼を広げたようなその陣形は上空から見ればとても縦深とは言えないが、元々スピリット同士の戦い方に戦術はさほど重要ではない。
個々の力量や性質が異なりすぎて、人間の兵士のように単一な訓練により精製された"駒"としての機能性を複合する面に長けてはいないのがその理由。
むしろ密集して戦うのは同士討ちの危険があり愚かともいえる。爆発的な戦闘力が一つの戦略に則って動くのが、戦術といえばそう言えなくも無い。
一方法皇の壁という防御陣から出撃したサーギオスの野戦部隊は紡錘形の編成で挑む。
しかし彼女達にしてもそれは戦術ではなく、ただ神剣の叫びに従って我先にと殺到しているだけ。
壁を守るといった戦略的目的ですら、少女達の脳裏には刻まれていない。ただ、奪えばいい。マナの溢れる命だけを。
それがスピリット――――妖精部隊が自我と引き換えに手に入れた力と、純粋すぎる神剣の衝動。

323 :相生 Lemma X :2007/06/11(月) 01:17:52 ID:O64eGKwB0


「くっくっく……いよいよ、ですねぇ」
森中に放たれ、そして消えていく煌びやかな気配に、一人の男が満足気に嘲う。
ラキオス軍はかなりの距離まで迫って来ているのか、時折足元を震わせる地響きや一拍遅れて届く雨を吹き払うような突風が近い。
歪に砕かれ、その表面に苔のようなものがびっしりと生い茂っている穴を潜り抜ける。ぬかるんだ地面がばしゃりと乱暴に跳ねた。
ここが弱点だと、あの勇者殿もそろそろ気が付いている頃だろう。その為にわざわざここの警戒を手薄にさせていたのだから。
「これが見たかったのですよ、私は。私の"作品"が、その馬鹿馬鹿しい"素質"などというものに決して見劣りするものではないと」
目を細めても視認出来ない命のやり取りを、濁った瞳で感じ取る。
今は、洗い流すようなこの雨ですらも異様な昂ぶりを感じさせてくれていた。
木の葉を叩くのは、天の悲鳴。地面を穿つのは、人の憎悪。憎悪が悪などと、誰が決めた。反吐が出そうな理想論。
「人と同じ感情を持つ贅沢などは必要ない。妖精は妖精らしく、戦いに美しい彩を添えていればそれでいいのですよ」
彼は、杖を"ついて"はいない。もう、そんな擬態は必要ない。傍らに控える少女へと、曇った眼鏡を外しながら振り向く。
「さて、それでは我々も参りましょうか。あまり宴に遅れては、甚だしく礼を失するというものですからねぇ」
「……ハイ」
声を掛けられた少女が、初めて顔を上げる。濡れた瞳は泣いているような凄惨な艶を感じさせ、男の昂ぶりを促し続けている。

324 :相生 Delphinium chinensis Z :2007/06/11(月) 01:20:50 ID:O64eGKwB0


部屋を飛び出したシアーは『孤独』の分厚い刀身に、必死で呼びかけていた。
「もういない……お願い、『静寂』はどこ?」
良く知っている筈のネリーの気配が今はどこにも感じない。ただ屋根を激しく叩く雨音だけが聞こえるだけ。
転がるようにして外に出ると、向かい風に煽られた大粒の雨粒が容赦なく額へと当たってくる。
反射的に手を翳し、目を細めた。すると燻る景色の中で一瞬だけ翻り、吸い込まれるように消えていく白い翼。
「―――― ネリー!!」
シアーは叫び、ウイングハイロゥを広げる。細かい水滴が翼の粒子に触れ、チチ、と小さく音を立てている。

まるで敏捷な獣のように森の梢を跳ね渡るネリーの動きは不規則ではあるが、ある方角へと一定に突き進んでいる。
ともすれば見失ってしまいそうな背中を必死で追いかけながら、シアーは向かう先が戦場であることを、何となく予測していた。
当然敵とも接触するだろうが、こうなってはもう回避する手段も思い浮かばない。じりじりと恐怖心だけが頭をもたげてくる。
「強く……心を、強くするんだ」
濡れた梢に取られそうになった肢に力を込める。幹に添えた手を勢い良く伸ばし、反動で加速のついた全身をぐん、と前方へと伸ばす。
追いかけていた背中が、少しだけ近づいた。ふいに、木々の隙間に垣間見える地面から見上げてくる瞳と偶然視線がぶつかる。
「……なにやってんの?」
「ネリーが大変なのっ!!」
「はぁ?」
説明をして助力を頼みたかったが、残念ながら時間が無い。追いかける青い髪は今にも見失いそうに小さくなっていた。
シアーは呆れているような表情のニムントールの相手は諦め、そのまま足場の梢から強く弾む。
風の流れが急激になり、たちまち流線型になっていく視界の中で混ざり合う景色。
身体の奥からともすれば溢れてくる震えを、奥歯を噛み締める事でぐっとこらえる。
「大丈夫……大丈夫だから。『孤独』、お願い」
少しづつ、手探りで神剣の意志に踏み込む。これまでは怯え、恐れ躊躇っていた領域にまで。
刀身が青く眩しく光り、応える。『孤独』の放つ光は後方に流れていく景色まで煌々と照らすような輝きを示していた。
冷たい雫が礫のように顔に当たり、痛む。シアーはようやく、今は雨が降っているのだと思い出していた。

325 :名無しさん@初回限定 :2007/06/11(月) 01:23:52 ID:n0v4wpmL0

|∀゚)

326 :相生 Lemma Y :2007/06/11(月) 01:24:37 ID:O64eGKwB0


金色に舞い上がったかつての仲間達を見送りながら、ウルカは唇をぐっと噛み締める。
かつて砂漠の国で一夜を共にしたクォーリンに語った言葉。それがこれほど虚しく、そして滑稽に思い出されようとは。
「お前たち……済まない」
命を奪うしか、方法が無かった。せめて苦しまないようにと、一撃で。それでも、胸の内には深く刻まれる。決して消せない痕が。
強さとは、なにか。今逝った少女達が得たものは、果たして強さなのか。否。剣の声を、既にウルカは聞き識っている。

『それに……願いも、あるのです』
『願い?』
『部下を……同胞を、あそこから助け出したい』

「ッッッ!!」
がっとむき出しの岩肌を拳で叩きつける。鈍い音と共に血が滲んだが、躊躇などは微塵も起こらない。
そのまま押し付けるように捻りこむ。それでも痛みは感じず、より大きな痛みがささいな肉体の損傷を軽く凌駕してしまう。
ウルカはもうその細身には抱えきれない程の、切り刻まれるような精神的苦痛を持ち合わせてしまっていた。
「この痛みは……忘れない。我が身が滅ぼうとも、心だけは」
別の生き方。それを模索する猶予も訴えかけるだけのささやかな時間も与えられはしなかった仲間に対して。

327 :相生 Lemma Y :2007/06/11(月) 01:26:17 ID:O64eGKwB0


『別の生き方があることがわかれば……手前らとて、変われるかもしれない、と』

国を捨て、同胞を捨てた自分が説得するなどとは尊大を通り越している。それでも、彼女達が幸せだったとはどうしても思えない。
かつての自分を思い出し、その非力さに割れた拳を見比べる。空を仰ぎ、冷たい雨を受け入れた。願わくばハイペリアの導きが、と。
離さない力。失わない力。守るための力。心を。ただ、心だけを。それが強さなのだと。教えてくれた背中は今も大きい。
切り立った崖の地形を確認し、厚い灰色の雲から聳え立つ壁との位置関係を計算し、方向を見定める。
左手奥に確認出来る味方のエトランジェの気配の更に向こう。忘れもしない血生臭い腐臭のような匂い。
「……そこか」
元々遊撃に位置する彼女には、或る程度の行動範囲の広さが許されている。そしてもうここには"敵"は居ない。
ウルカは翼を広げ、『冥加』を鞘に収めると、矢のようにその場の地面を強く弾く。双眸が赤く強く前を見据えている。
「ソーマ……貴公だけは許さぬ。決して」
遅れて起きた真空が、慌てて空気を呼び戻そうと渦を成す。
そしてそれは雨粒さえも取り込み、残された金色のマナの間で涙のように零れ落ちていく。

328 :相生 Nerium indicum Mill Z :2007/06/11(月) 01:28:27 ID:O64eGKwB0


忙しげに飛び去っていくシアーのウイングハイロゥを見送りながら、咄嗟に反応が出来ない。
「……なにあれ」
仲間を(主にファーレーンを)街の入り口まで見送るつもりで付いていったニムントールは途中で"風邪を引くといけないでしょう?"と
当のファーレーンにそれとなく諭され、渋々引き返してくる途中だったので、元々やや不機嫌だった。
振り続ける雨にずぶ濡れになってしまった戦闘服や髪が重たいのも、行きは気にもならなかったが帰り道で独りになってみると鬱陶しさしか感じない。
その上、半ば無視されるような格好でシアーにまで放置され、ニムントールの不満は更に上乗せされてしまっている。
「勝手にすれば。ニムには関係ないし」
口を尖らせ拗ねてみても、周囲には誰もいない。ぱっとしない壊れかけた建物の中でさえ、息遣い一つしない街。
小さな瓦礫の欠片を蹴飛ばしてしまい、その反動で僅かに歩様が乱れ、それを理由にして立ち止まる。
暫くの間響き続けるのは、ただ雨を弾く泥のぱしゃぱしゃという無粋な音。他の音は全てが打ち消されていて聞こえない。
前髪から伝い、顎を通り越した水の流れが襟元から鎖骨の辺りまでに垂れてきては柔肌を侵し、体温を下げていく。
寒かった。灰色の景色が。そこに独りで立ち止まっている自分が。誰もいないというこの状況が。しかし、もっとも嫌だったもの。それは。

 たまには振り返ってみるのも一興だとは思わないか?……――――

「……『曙光』」
呟きに応えるように、槍の穂先が淡い緑色に変化する。ニムントールは踵を返し、駆け出した。森の奥に察知した『静寂』の意識を追って。
そこは既に戦場と化しているという事態や、更にはファーレーンの言いつけなども、今は思考の範疇からすっかり抜け落ちてしまっている。
「はぁ、まったく、めんどくさい、んだから」
思わず漏らした呟きが息切れてしまうほど全力で駆けている自分に、ニムントールは気が付かないふりをしている。

329 :相生 Anthurium scherzerianum Z :2007/06/11(月) 01:31:54 ID:O64eGKwB0


擂り鉢状に抉れた地面の一番底の部分にオルファリルはしゃがみこみ、エヒグゥを相手にしていた。
融解したのか所々ガラス状になっていて滑りやすい地面にしがみつく様に震えている、ずぶ濡れの白い動物に話しかけている。
仲間が出撃した後、何となく街中をぶらぶらと歩いていたら見つけてしまった。彼女の場合、退屈凌ぎに、雨は障害とはならない。
「ねーねー、元気だった?」
実際には似ているだけの全くの別エヒグゥなのだが、オルファリルにしてみればそんな事はどうでもいい。
どうやってこのケムセラウトまで辿り着いたのかは判らないが、自分に会いに来てくれたのだと本気で思い込んでいる。
しかしエヒグゥにしてみれば迷い込んでしまった殺風景な土地で雨に会うという生存本能が訴える所の最悪の状況で、
新鮮な草葉を捜す為や個体の保全に必要充分なだけの安息が得られるテリトリーを探す為に必死だった。
しきりに首を動かしてはどうやら敵対する意志の無さそうな目の前の赤いマナに満ち溢れた生物の動きを時々チェックする。
ところがその少女が突然立ち上がり、激しい動きを見せたので、エヒグゥは縮こまり、警戒の態勢を取った。耳がぴん、と立っている。

「え、なに……『理念』……敵、ううん、違う……でも」
オルファリルは逃げもしないエヒグゥをちらっと一瞥し、そして駆け出す。
「……ごめんね」
今ここで放置すれば、この弱々しいエヒグゥはもしかしたら死んでしまうかもしれない。
しかし、自分は"いっこしか救えない"。そして、"命もいっこしかない"。
ヨーティアの言葉が脳裏に浮かび、消える。選択肢が、あった。オルファリルは迷わずに選んだ。
街の城壁を抜けた所に適当に開けた入り口を見つけ、鬱蒼とした森の中に飛び込む。向かう先は、『理念』が教えてくれている。

330 :相生 Y :2007/06/11(月) 01:35:40 ID:O64eGKwB0


突如現れた一人の少女の迫撃の前に、セリア達本隊の衝力は完全に失われていた。
中央に戦力が集まる妖精部隊を大きく迂回しながら辿り着いた、緩やかな起伏に壁を望む地点で、たった一人に翻弄される。
ポニーテールを靡かせたグリーンスピリットはファーレーンの速度を凌いで星火燎原の太刀を逸わし、
振り切った『月光』に自らの剣を滑らせて手元から伸び、仰け反ったファーレーンの兜を弾き飛ばした。
ファイアエンチャントを纏う『赤光』で放ったヒミカのトリプルスィングは虚しく地面を抉り焼き払い、
次の瞬間には猛烈な蹴りが長身をくの字に折り曲げる程の衝撃を与え、爪先に穿たれた腹部から鮮血が滲む。
したたかに大木へと身を打ち据えられたヒミカは辛うじて立ち上がりはしたものの膝が震えて思うように動けない。
機敏な動きで皆をサポートしていたハリオンは同じグリーンスピリットに速さで勝負を挑まれ、それでも暫くは良く防いでいたが、
細身の剣が繰り出す斬撃は徐々にその盾を削り、遂には全身に生傷を負わせ、『大樹』で支えていた膝をつかせた。
更に飛躍した高速詠唱による攻撃魔法は一度対戦した勘だけでセリアが一度は防いだものの、偶然が二度続くとは限らない。
我慢比べのような持久戦が続く。しかもその少女のハイロゥだけが、時間と共に輝きを帯びていく。
「……あの娘、ですよね?」
荒くなった呼吸を整えながら、ファーレーンが呟く。
遭遇した妖精部隊の力量については、セリアから詳しく聞き知っている。
しかし再び鞘に収めた『月光』、その位は第6位。それが完全に力負けしているとなれば、情報は完全に食い違ってしまっている。
敵の能力は他を隔絶しており、所有している神剣は恐らくエトランジェクラスではないか。
「ええ。でも、神剣の形状が違う」
隣でぐっと身を沈め、『熱病』の剣先をやや上げたセリアが信じられない、といった表情で唇を噛み締める。
容姿までもを見間違える筈は無い。確かに、数日前まではほぼ互角だった。それなのに、今では全く太刀打ち出来ていない。

331 :名無しさん@初回限定 :2007/06/11(月) 01:37:45 ID:E3YWuump0

その心に支援

332 :相生 Y :2007/06/11(月) 01:38:01 ID:O64eGKwB0


「……こんな話、聞いたこともない」
「ええ……ですが、事実です」
二人は、微妙な勾配でせり上がった丘の上で雨に負けない緑雷を纏う少女を見据える。
周囲の樹木の幹が撓む程の威圧感。それは物理的な迫力を持って、巨大なマナのシールドを形作りつつある。
ぶわっと大きく広がった境界線上の小石が圧力差に耐え切れず浮かび上がり、降り注ぐ雨粒は沸騰する事も叶わず昇華して空に還る。
「神剣ヨ、力ヲ解放セヨ、スベテノマナヲ力ニ変エテ……」
少女はだらりと下げていた細身の刀の切っ先をすっと持ち上げ、再び感情の乏しい詠唱を始める。
「……チイッ!」
「セリアっ!?」
同時に、セリアは殆ど反射的に起伏の頂上目指し弾けた。

詠唱に伴うマナの収束が速すぎる。もう、悠長に抗神剣魔法を駆使している暇も無い。
これだけ繰り返されれば嫌でも覚えるグリーンスピリット最大にして唯一の技――エレメンタルブラスト。
刻まれた記憶が、身体を条件反射で突出させる。
「神剣よ、我が求めに答えよ、与えられし苦痛を、与えし者に返せっ!」
一拍遅れ、ファーレーンもウイングハイロゥを羽ばたかせ、跳ねる。
間に合わないまでも、一寸の隙を生じせさめようと放つ、アイアンメイデン。
黒く渦を巻くマナはファーレーンの掌から放たれてすぐに消滅し、次の瞬間にはグリーンスピリットの足元に出現し、下から襲い掛かる。
「……なっ!?」
少女の姿が歪んだ、と思ったときには、ファーレーンの身体は仰向けになり、宙を舞っていた。恐るべき瞬発力に、全くついていけない。
敏捷な小動物のように跳ねた少女の蹴りが打ち付けた脇腹に激痛が襲ったのは、弾むように転がり落ちた地面の泥が頬にべったりと付いた後。
見上げると、丁度掌底による当身を受けたセリアの身体がくの字に折れ曲がり、口元からは霧のような赤が吐きだされている所だった。
鮮血は狂ったような急激さで弧を描き、そのままグリーンスピリットの神剣へと吸い込まれていき、新たな緑雷の為の供物となる。

333 :相生 Y :2007/06/11(月) 01:40:24 ID:O64eGKwB0


「眩ク貫ク衝撃トナレ……」
詠唱は既に終えられようとしていた。
降り注ぐ雨の中、煙ぶる大地には裂けるような震動が走り、濃密な空気が引き裂かれるような鈍い響きが伝わる。
ヒミカもハリオンも、まだ動けない。ファーレーンは、目を瞑った。これから起こる事態に対し、覚悟を決める為に。

 ――――ウオォォォォ――――…………

喩えるならば、龍の咆哮。
「……え?」
大地を震わし轟く唸りのような地響きは背後から訪れ、気配を悟ったファーレーンは不思議そうに顔を上げる。
仰ぎ見ると、グリーンスピリットの詠唱も中断させられていた。震動が伝わってくる方角を見定め、そちらに剣を構え直している。
警戒しているのか、全身の神経をそちらに集中させて動かない。丁度ファーレーン達が倒れているその後方を凝視している。
「――――ッッ、まさかっ?」
ファーレーンは、愕然とした。恐る恐る振り返る。
無数の樹が生え折り重なっている視界の中で急速に近づいてくるそれは、最も恐れていた予感。
「ネリー!?」
叫んだのは、セリアだった。

334 :相生 Z :2007/06/11(月) 01:43:04 ID:O64eGKwB0


常に不確定要素の絡み合う戦場は、それゆえ次第に錯綜の色を濃くしてゆく。
膠着したまま噛み合った二つの勢力は丁度のこぎりの歯のような戦線を形作り、
各々が押されたり押し返したりを繰り返す度に森全体が咀嚼にも似た蠢動で混乱を飲み込んでいく。

ナナルゥとクォーリンは光陰達とセリア達の間で連絡役を兼ねた小隊として、すり鉢状になった地形の坂を上りつつ侵攻している。
左手と後方に高い崖がせり出し、視界を遮っていた。初めての戦場なので、クォーリンは頭の中でざっと地形を把握しようと試みる。
法皇の壁が正面にあり、左手から後方、そこからL字型に折れ曲がっている部分までが崖を形成し、高地部分は緩やかに勾配しつつ街道へと続く。
生い茂った草木が邪魔だが、大雑把に捉えると影響がある程の間違いはなさそうだった。後ろから付いて来ているナナルゥがぼそっと呟く。
「右……散開」
同時にクォーリンは大きく跳躍し、同じタイミングで飛び出してきたブルースピリットの鼻先に向けて両手で構えた神剣を薙ぐ。
マナを纏ったそれは鎌のような形状にふさわしく、クォーリンを軸に1/4πほどの中心角を描き、加速の加わった遠心力が周囲の草木ごと文字通り刈り落とす。
同時にブルースピリットの突き出した剣先がライトアーマーの肩口を抉っていったが特に問題は無い程度の擦過傷。
少なくとも両脚を足首から失ってしまった敵よりは軽症である。クォーリンは追撃せずに、さっと軽快に身を翻す。
するとそのタイミングを見計らっていたかのようなナナルゥのファイアーボールが飛来し、ブルースピリットはアイスバニッシャーも使えずに消滅してしまう。
「……ふう」
先ほどから、同じような連携による戦いが続いている。ナナルゥが探知し、クォーリンが迎撃し、折をみてナナルゥが止めを刺す。
そのコンビネーション自体に、クォーリンはなんら問題を感じてはいない。
ただ、お互いこれが殆ど初顔合わせで、打ち合わせもしていないのにここまでスムーズに運ぶことが、最初は不思議だった。
しかしやがてこれが彼女のスタンスなのだと理解してからは、実に快い安定感を背中に感じる。それは例えばエトランジェ・コウインに非常に近い。

335 :名無しさん@初回限定 :2007/06/11(月) 01:43:41 ID:E3YWuump0

支援、間に合え。

336 :相生 Z :2007/06/11(月) 01:46:31 ID:O64eGKwB0


「左上空……退避」
「……は?」
突飛ともとれるナナルゥの発言。振り返ると、彼女は黙ってせり上がった木々を見上げている。
そしてつられてその視線の先を追いかけたクォーリンは、そこで一瞬動けなくなった。

  ――――オオオォオォォォッッ!
  ――――ガアァァアァァァッッ!

ばきばきと枝を折る激しい音に混じり、聞こえてくる獣のような叫び声。
それは次第に近づき、すぐにどんっと巨大な炸裂音を響かせて崖付近の地面に衝突していた。
無数に飛来する砂礫からナナルゥを庇うように、シールドハイロゥを展開させる。大地の祈りほどではないが、それで突風も防げる。
神剣を前に翳しながら、その向こうに見る。落下した瞬間に、それぞれ反対側に飛んだ二つの黒い塊を。
斜面にへばりつくように屈みこんでいるのはグリーンスピリット。全身傷だらけになりながら、細身の剣を構えている。
そしてもう一人、枝に片腕でぶらさがっている人物。髪を留めてはいなかったが、こちらには確かに見覚えがある。振り乱した前髪から覗くその顔は。

337 :相生 Z :2007/06/11(月) 01:48:35 ID:O64eGKwB0


「先制攻撃……行きます」
「ッッ待ってっ!!」
猛烈な殺気に反応したナナルゥが、イグニッションを放とうと『消沈』を構えている。
神剣の意志に殆ど飲まれていて気がついていないのか、スフィアハイロゥは既に収束し、周囲の光景が歪む程の密度になっていた。
慌てて制止しなければ、そのままこの辺一帯と共に彼女達はマナに還元されていただろう。
「あれは、ネリーよ!」
「……ネリー?」
ナナルゥには、"それ"が彼女の知る仲間だとは認識できない。姿形ではなく、存在が放つ気配というものがまるで違う。
それは、どちらかといえば抑制の出来ないマナ暴走寸前のエーテル変換施設に非常に酷似している代物。
濁った瞳に映し出されているのはただ神剣の意志。それはネリーと呼べるものなのだろうかとナナルゥは思索する。
「……」
ふと、反対側から、今度は認識できる気配が迫ってきた。ナナルゥは無造作に振り向く。
白銀の塊は一瞬で彼女を飛び越え、二人の"未確認情報"の間へと割って入り、ウイングハイロゥを更に広げると、神剣を両手に持って構え直した。
「ん……遅れて、すまない」
ラキオスの青い牙――――アセリアの持つ『存在』の剣先は、敵のグリーンスピリットでは無く、
むしろ味方である筈のネリーに向けられており、それがナナルゥの微かな混乱に拍車をかける事となる。

338 :相生 [ :2007/06/11(月) 01:51:29 ID:O64eGKwB0


衝突し、絡み合うようにして落ちていったネリーと敵の少女の居た空間のすぐ向こうに、目指した"入り口"がぽっかりと口を開けている。
しかしセリア達4人は彼女達を追いかける事も、又その先に進むことも出来ず、ただ眼前に忽然と現れた人影に釘付けにされていた。
長雨のせいか空気中に浮いた細かい水滴が霧のように舞い、輪郭を曖昧にはしていたが、
かつて砂漠で遭遇した時と相も変わらぬふてぶてしさだけは隠しようもないその尊大な態度、口調。
男は、二人が落ちていった崖の辺りをつまらなそうに見やり、呟く。
「全く、役に立たない……ふむ、期待をかけ過ぎましたか。所詮はその程度と言った所ですかねぇ。いやいや、お恥ずかしい」
「――ソーマ・ル・ソーマ!」
吐き出すように叫び、『熱病』を構え直すセリアの瞳が青く燃え上がる。
男――ソーマはその気色ばんだ様子を窺ってすら何か面白いものを眺めているかのような表情を変えなかった。
それどころか肩から吊るしていた長剣をゆっくりと鞘から引き抜き、細身の銀色を口元に近づける。
「おや、私を知っていますか、感心ですね。ですが、それにしてもラキオスの妖精というものは相変わらず躾がなっていないらしい」
「……正気?」
よろよろと立ち上がったヒミカが呟く。生身の人間が、スピリットに勝てる筈が無い。そんな表情が露骨に出ている。
殊更念入りに探ってみても、周囲に他の敵――具体的には妖精部隊――の気配は今の所ネリーと共に落ちた少女以外感知出来ない。
壁の上辺、屋上にはずらっと並ぶ一般兵が弓を番えているのは知っているが、彼らは臆しており、スピリット同士の争いが収まるまでは決して動かない。
つまりこの場にいる敵は正真正銘この男、人間1人のみ。単独で、一体何が出来るのか、と。
しかしその裏付けによる威圧も物ともせず、ソーマは刀身越しに『赤光』とヒミカを交互に見やり、静かに勾配を下り始める。

339 :相生 [ :2007/06/11(月) 01:54:12 ID:O64eGKwB0


「正気もなにも、その不遜な態度が気に入らないのでねぇ。故障だらけの道具の分際で、口の利き方に気をつけなさい」
「そうですねぇ〜。ぼろぼろですぅ〜」
「ハリオン、そこは正直になる所ではありませんよ」
木にもたれかかったままのハリオンが神妙に頷き、息の荒いファーレーンが窘める。
「確かに体調は万全ではありませんけど。ですが、貴方一人で四人同時に相手が出来る程の技量が……ありますか?!」
問うなり、ファーレーンは大きく跳躍する。一足で詰める間合いは、確実に倒せるという自信から。
だが、侮りが油断を生み出す。そしてそれは同時に斬り込んだヒミカとセリアも同じ。
右から青のマナ、左から赤のマナ、正面には黒のマナ。3つの属性がソーマを取り囲む。これ以上無駄口を叩く事も出来ない筈の距離。
「――――ふん」
だが、その絶体絶命と思えた瞬間、ソーマは奇妙な動きを見せる。肩幅に開かれた足を、膝から上だけ折り畳む。
上半身を仰け反らせる、といった程度では無く、膝を中心軸に1/4πの円をすら描く頭部。外れた眼鏡が空中に取り残される。
地面とほぼ水平になった身体は3人に対して目標を失わせしめ、
「……あ?」
振り切ろうとしていた『熱病』の先で、ぽっかりと浮かぶ眼鏡。その隣で浮かぶ、もう一つの茶色い紙包みのような物体。
そこから一本の細い紐が延びている。その端の反対側を咥えていたソーマがにっと笑い、顎を引くのをセリアは見た。

  ――――……ズウゥゥゥン!

340 :相生 [ :2007/06/11(月) 01:55:58 ID:O64eGKwB0


「!」
「何?!」
「あっ?!」
放り投げた爆弾による爆風と閃光は極僅か、目晦まし程度に過ぎない。
しかしその一瞬、動きの止まったセリアの中途半端に差し出した『熱病』の切先を、彼女自身の勢いを利用して引き寄せたソーマは、
突如目の前に出現した幅の厚い刀身に躊躇してしまうヒミカの『赤光』をそのまま『熱病』で受け止め、
抜き打たれた『月光』から盾にするように泳いだセリアの身体を引き寄せ、同時に鳩尾に膝蹴りを打ち込み、
反動で地面についた片手を泥の中で捻り、今度は腕を軸に地面とは水平左方向へと1/2πの円運動を行なった。
「貴女がたはっ!」
結果セリアの身体は九の字に折れ曲がったまま1メートル程空中へと放り投げられ、
「マナというものをっ!」
遠心力を充分に乗せた回し蹴りを横顔に受けてしまったヒミカは傍らの大木に背中から打ち付けられ、
「全く! これっぽっちも理解していないっ!」
まだ握られていた『熱病』ごと振り下ろされたセリアがファーレーンと激突する。
「はっ! 脆い、脆すぎますねぇ! 全く反吐が出そうですよっ!」
「……ぅ」
「く……油断、し、た……」
「セリア! ヒミカ! くぅぅっ?!」
後頭部を強打したヒミカは昏倒し、鳩尾への当身で気を失ったセリアの全身を何とか片手で受けたファーレーンは動けない。
そこに初めて振るわれたレイピアのような剣が、二人纏めて串刺すように襲い掛かり、瞬間庇ったファーレーンの肩口を貫いて"加速"する。
「ぇ……あ、あああっ!」
ファーレーンはもしも知っていれば、その動きは現代世界のフェンシングにそっくりだと気づいたかも知れない。
背中を向けて一度屈み込んだ姿勢から全身を叩き込むような一連の動きはソーマと彼女を一丸にして勾配の一番下まで運び、
そしてファーレーンの背中が大木を圧し折った所でようやく止まった。『月光』がばしゃりと彼女の手元から落ちる。
「ぅ、ぐ……―――――」
ずるずると腰を落とし、あひる座りの姿勢になり、俯いたまま動かない。喉輪に、手刀を打ち込まれていた。

341 :名無しさん@初回限定 :2007/06/11(月) 01:58:09 ID:E3YWuump0

マナよ、支援へと変われ。

342 :相生 [ :2007/06/11(月) 01:59:11 ID:O64eGKwB0


光輪が消えるのを確認し、雨の中、ゆらりと立ち上がるソーマの口元に歪んだ笑みが浮かぶ。
「油断……? クク、これはまた場違いな事を。本当に愚かですねぇ、貴女達は」
振り向きざま、ファーレーンから引き抜いた細身をひゅん、と後方に投げる。
それで『大樹』が弾かれ、集中力の途切れたハリオンから治癒魔法の詠唱が途切れ、形を成そうとしていた緑色のマナが霧散した。
剣が回転しながら空中を彷徨う。目を奪われたのは、つい一瞬。それでも、次の瞬間には雨に濡れた男の顔が空間一杯に広がっている。
「……ぁ」
信じられない。人間が、あの距離を、一足で。そんな疑問をぐるぐると巡らせながら軽く口を開いたまま、ハリオンの意識は途切れる。
ぐったりとして動かなくなった彼女の左胸に、肋骨を数本折った拳がめりこんでいた。ずぼり、と鈍い音を立てて、ソーマは手を引き抜く。
肉体が衝撃に耐え切れなかったのか、拳の皮はめくれ、鮮血が噴き出していた。微かに痛みを感じる。手首も脱臼しているようだった。
「ふむ、いささか本気を出しすぎたようですかね……んっ」
ごきり。無理矢理外し、そして又はめ込む。想像を絶しかねる痛みも、かつて味わった地獄に比べれば大した事は無い。
ひび割れ、最早その機能を果たすとは思えない眼鏡を拾い、かける。地面に突き刺さっていた剣を引き抜くと、血痕はもう蒸発していた。
急にいらいらとしてきたソーマは、四肢を投げ出しうつ伏せに倒れている青く美しい妖精の頭をごりっと勢い良く踏みつける。
「ここをどこだと思っているのですか。戦場に油断もクソも無いのですよ」
「……ぅ、ぁ」
「おや、まだ息はあるのですねぇ。手加減をしたつもりは無いのですが……ふむ、所詮エトランジェの血とはこの程度のものなのでしょう」
顎に手をやり、ひとしきり首を傾げた後、高らかに哄笑する。狂気にも似た瞳の色で、空から落ちてくる雨粒に対して咆哮するように。
「フ、ハ、ハヒ、ヒャーーッハハハハハァッ!! そうですとも、そんな馬鹿げた力が、我々を凌駕するなどありえないのです!!」
天に向かって挑戦するように歩き回り、やにわに土を掻き毟る。爪にめり込む小石にも頓着はしない。
ただ、悦びの勝鬨を叫び続けて。止め処もなく涙を流し、唇から泡の混ざった唾を飛ばしながら。

343 :相生 [ :2007/06/11(月) 02:01:47 ID:O64eGKwB0


「妖精風情が! あの狂った皇帝陛下殿が! 世界の何を! 判った気でいるのですか! 世界は我々人間のっ……あ゙?」
演説は、唐突に終わりを告げる。
「……ソーマ・ル・ソーマ」
気配に振り返ったソーマの眼前に陽炎のように降り立った天使は、かつて漆黒の翼と恐れられた帝国の剣士だった。

雨は景色から色を奪い、無彩色に溶け合ったウルカの全身は輪郭が曖昧になっている。
しかしその中でも強烈な存在感を示す白く輝くウイングハイロゥと燃え盛る双眸だけが、ソーマに正気を取り戻させていた。
「……おや、誰かと思えば裏切り者が紛れ込みましたか。折角です、教えて頂けませんかねぇ、かつての同胞の血を啜るというのはどういう気分なのかを」
「……っ」
「悲しいですねぇ、貴女には確かに最高傑作になる素質があった。それが今ではここに転がっているガラクタと同じ、ただの欠陥品にすぎません」
ソーマは軽くセリアの頭を蹴りつける。しかしそれでもびくん、と一度痙攣しただけで、彼女はそれ以上の反応を示さない。
完全に気絶しているのを確かめ、ソーマは歩き始める。ウルカを中心として間合いを外し、その円周をなぞるように。
雨は、やや小降りになってきている。それでも発生した沈黙が、森中の葉に受け止められる雨音のハーモニーをよりはっきりと強調させて已まない。
ウルカは、黙ってその場に濡れたまま、ソーマの動きだけをじっと見つめる。一挙一動も見逃さないよう、赤い、獣のような瞳で。

344 :相生 [ :2007/06/11(月) 02:04:24 ID:O64eGKwB0


「思えばあの頃から戦いに徹しきれていない所がありましたが、あれが限界だったのかも知れませんね。ふむ、そういえば剣の声とやらは」
「……ソーマ、覚悟」
「覚悟? これはこれは、私は何を恨まれているのですか? かつての仲間が戦場で生き残れるように、強化を施したことですかね?」
「っ! その為にっ! 手前らの心を弄んでも良いとっ!」
「心? ハッ、下らない。剣の声が聞こえないなどと見当違いも良い所の悩みを抱えていた貴女が、今更それをいうのですか?」
「〜〜ッ、戦いとは」
「そもそも心などという幻想は貴女方には必要無いと、何度言えば判るのですかね! 道具風情が戦を語るなど、小賢しい!」
「いざ!」
ソーマの歩様が丁度丘の傾斜に差し掛かった所で、弾かれたようにウルカは飛び出す。
だがその直前、まだ残像を残す前の初動に半歩先立ち、ソーマはにぃ、と笑った。
先ほどの戦闘で乱れた呼吸を整える為の時間は稼いだ。理解は出来ないが、こういったやり取りがラキオスの妖精達を激昂させる事も判っている。
その証拠に、ウルカの仕掛けたタイミングが、所謂気息体が僅かに一致していないのは永年の剣の修行で培った勘が確信していた。
ずれたその部分に集中し、ウルカが穿つ土の地面に視線を落とす。服の裾に隠し持っていたもう一つの紐を引き摺り出しながら。
「切り札は最後まで取っておく……そういえば、貴女には教えていませんでしたか」
ウルカが現れるまで、何も考えずにその辺をぶらついていた訳ではない。気絶している4体の妖精に止めを刺すだけならば簡単だった。
しかしソーマはそこで、"戦果"を拡大する戦法を選んでいた。すなわち、4人を囮として使い、罠を張り待ち受けることを。
手首を使い、くい、と紐を引く。すると同時に、地面へと一直線に穿たれていたウルカの歩様が唐突にがくん、とその軌跡を途切れさせる。

345 :名無しさん@初回限定 :2007/06/11(月) 02:08:22 ID:E3YWuump0

集中支援、いっけぇーっ

346 :相生 [ :2007/06/11(月) 02:10:54 ID:O64eGKwB0


「――――あッッ?!」
鉄製の、獣を捕獲する為の鋏がウルカの右足首をがっしりと捕らえ、羽ばたきかけたウイングハイロゥが地に落ちる。
「……く、うおおっ! 卑怯なっ!」
勢い余って膝を付いた体勢のまま、ウルカは呻く。いくらスピリットとはいえ、腱に噛み付いている分厚い刃を引き離すのは難しい。
暴れれば余計に深く食い込み、骨にまで到達する。様子を窺っていたソーマは剣を構え、身を沈める。間合いを測り、飛び出す体勢で。
「ハッ、お似合いですよ! 心などと、そのようなつまらないものをいつまでも抱えているから――――は?」
「うぉ、うおおおおおっっ!!」
「――――なぁ?!」
結果から言えば、ソーマの演説は長すぎた。
悠々と近づく彼の目前でばつん、と激しい音を響かせ、自らの足首を"引き千切ってしまった"妖精の瞳が赤く迫る。
ウルカは鮮血を噴き出しながら、もう一方残った左足で大きく踏み込んでいた。
それだけで二人の距離はお互いの射程圏内へと突入し、『冥加』の刀身が唸りを上げ、闇の加護を受けたマナを噴き出しながら鞘を滑る。
「っそんなものでっ!」
一方のソーマも多少は驚いたものの、片足のみの踏み込みで既に漆黒の翼とは思えない乱れた剣先に恐れなどは感じない。
受け流し、すれ違いさま薙ぎ払う。たとえ致命傷を与えなくても片足を失った敵など、その後でどうとでもなる。
ただ、この一撃だけをまともに受けなければ良い、そう判断して迎え撃つ。
剣で受け、かしん、と予想外の軽い音で『冥加』をすり上げると、眼前には予想通りの大きく開いてがら空きな胴が見えてくる。
「貴女も――――」
そしてそれが、ソーマの右目が見た最後の光景だった。
「――――はがあっ?!!」
熱い、ソーマがそう感じたのは、眼鏡を突き抜けたウルカの親指が右眼窩に中程まで潜り込んだ後だった。

347 :相生 [ :2007/06/11(月) 02:13:38 ID:O64eGKwB0


「ひゃああ、ひゃがはははぁぁっ!」
「――――グッ!」
狂ったように暴れ始めたソーマの剣の刀身が偶然横殴りに当たり、そのまま吹き飛ばされ、濡れた地面を滑り、崖の手前でようやく止まる。
しかしもう、ウルカは動けない。足首を失ったという情報が自律神経を駆け抜け、無傷な筈の左半身をも不自由にさせている。
女性の、華奢な肉体が個体の自己保存本能を優先させ、心の命令をすらもう受け付けてはくれなかった。
がくがくと勝手に痙攣する全身を諦め、ただ唯一動く首を懸命に捻り、唇に付いた泥を不快に思いながらソーマを睨む。
「ははぁ、ははあははぁぁぁっ!」
ソーマは片目を抑え、もう一方の腕でぶんぶんと剣を振り回している。既に正気とは思えなかった。
血塗れの顔には何故か笑みを浮かべたまま、ふらふらと、壁の穴へと戻りだす。
もはや何を求めているのか、そして一体どうしたいのか、それすらも夢の中の出来事であるかのように。
今は哀れな姿がウルカの視界から消えても暫く、その偏狂的な笑い声は森中に響き渡っていた。ただ、残された眼鏡だけが泥に半分埋もれている。

348 :相生 Lemma Z :2007/06/11(月) 02:20:40 ID:O64eGKwB0


「グルルルル……」
「よしよし。おいで、ネリー」
"ラキオスの青い牙"が噛み付きそうな表情で睨むブルースピリットに対し、
まるでエヒグゥを躾けようとでもしているかのように穏やかな声色で語りかけている。

「……」
その背中はいかにも無防備に見え、少女は戸惑った。戦場で、敵に背を向ける。
スピリット同士の戦いにとって、それがどれだけ不利益なことか。いくら記憶を検索しても、そのような"戦法"は無い。
神剣を、ぐっと握り締めてみる。あのブルースピリットによりかなりの肉体的損傷を負わされてはいたが、まだ充分に戦える。
口の中に違和感を感じ、べっと黒く湿った土の塊を吐き出すと、そこに混じっている赤いものがべしゃり、と地面に吸い込まれた。
足元に小さなシールドハイロゥを展開させ、その反動を利用して飛び出す。それでも白銀のウイングハイロゥは微動だにしない。
倒せば、莫大なマナが摂取出来るであろう。その予感に、少女は舌なめずりをする。
「させないっ!!」
「!」
脇から弾けるように突っ込んできたグリーンスピリットが、長身を生かした間合いの長さから大鎌のような神剣を振るって迫る。
大気ごと切り裂くようなその斬撃を身体全体を折り畳むようにして避わし、そのまま空中でくるっと回転した。
そして回避運動を即座に変換。
風に靡く臙脂色のマント、鎌に嵌め込まれた緑色の結晶、そして流れる軌跡の上で舞う緑のマナを流し見つつ腕を捻る。
とん、と乗せた刃の鋭利な先端で削り取られるように掌が裂けたが戦闘には支障が無い。
接触点から片手で間合いを詰め、左手に持つ神剣で顔面を水平に薙ぐ。長物は、内に潜り込まれれば弱い。

349 :相生 Lemma Z :2007/06/11(月) 02:25:12 ID:O64eGKwB0


「マナよ、燃えさかる炎となれ、雷の力を借りて突き進め――――」
「ッッ!」
今度は、赤のマナの気配。少女は、再び軌道修正を行なう。飛来するポイントから離脱しなければ、流石に生命を落としかねない。
「ライトニングファイアッ!!」
「ハァッッ!!」
剣先にシールドハイロゥを集中させ、空中で灼熱の槍を受け止める。
このレッドスピリットの神剣魔法は非常に強力だが、単発な上単一方向にのみ指向されるマナの流れな為、予測すれば受ける事も可能。
そのまま威力に逆らわず、森の奥へと運ばれていく。追撃はない。だが万が一に備え、神剣魔法の詠唱に精神を集中させる。
左手に見える崖が緩やかな勾配に変わった頃、ようやく少女は余韻の様な熱を全て神剣に吸収し、ぺろっとその刀身を舐めつつ着地した。
「フ、フフフ……」
大量のマナは逃したが、敵後方に出ることは出来た。そしてこの一帯には、待ち望んだ微弱な気配があちらこちらに点在している。
さて、どれから。狩場として降り立った地面は燻ぶり、火傷で爛れた踵からは骨が見え始めている。それでも、少女は笑う。

350 :相生 Delphinium chinensis [ :2007/06/11(月) 02:29:38 ID:O64eGKwB0


真っ直ぐにネリーを追い、森を貫くように駆け抜けていたシアーは、唐突に開けた場所へと出た。
「誰? ……敵?」
そしてそこに、一人の少女が立っている。戦闘服はぼろぼろに切り裂かれ、足元からは細かく金色のマナが立ち込めている景色の中。
なのにそれでも天を仰ぎ、笑っている。それは例えば、雨に濡れているのを楽しんでいるかのよう。
周囲に満ちる水のマナが、緩やかな気流に乗って彼女の神剣に吸い込まれていくのをシアーは何故か幻想的な光景のように眺めてしまう。
少女、グリーンスピリットが何も映し出してはいない漆黒の瞳でゆっくりとこちらを向くまで。

「……見つけた」
「!」
途端、ぼっ、と火のついたような威圧感。『孤独』がびりびりと震えだす。シアーは口を開こうとする。抗神剣魔法を唱えるつもりで。
「ハヴッ〜〜ッッッ!!」
何が起きたのか、判らない。グリーンスピリットの姿が一瞬揺らいだ、と知覚したときには吹き飛ばされてしまっている。
顎を仰け反らせ、その反動で身体が折り曲がる。驚くべき事に、その間にも迫ってきている、敵の顔。速度に差がありすぎる。
どん、と背中に走る衝撃。そしてそこで、初めてシアーは理解する。腹部が、敵の神剣によって貫かれているという現状を。
「く、あ、あああぁアアァ!!」
一本の大木に磔にされてしまったシアーには、抵抗らしい抵抗が出来ない。ただ、地面に決して届かない肢だけをばたばたと暴れさせる。
ウイングハイロゥが一枚一枚ばらばらの羽となって舞い、消滅していく。そして風に流されていくその光景も、涙でぼやけていく。
シアー自身の自重を伴い、神剣はじりじりと肉を切り裂きながら心臓へと迫り、その刀身へとシアーのマナを吸収しては輝く。
「ああっ! あ、あああっ!」
ぴくぴくと痙攣する全身。『孤独』を握っている掌から、徐々に力が失われていく。痛みを、感じる事が出来ない。
「ネ、ネ、リぃ……」
かはっと吐き出した血が霧になり、降り注ぐ雨に混じる。ああ、死ぬんだ、そんな考えがぼんやりと頭に浮かぶ。
追いかけ続けた、華奢で無邪気な後姿。見慣れたポニーテールが風に流れ、振り向くのは、"静寂"に満ちた歪んだ"黒翼"。

 ―――― 死ね、ない

351 :相生 Delphinium chinensis [ :2007/06/11(月) 02:32:22 ID:O64eGKwB0


「死、ね、な、い……シアー、は、まだ……死ねないの!」
「ッッ?!」
ぐっと持ち上げた右手には、まだ僅かながら力が残っている。シアーは震えながら『孤独』を上段へと持ち上げる。
その先で巨大な刃が白く眩しく光を放ち、水滴に反射したグリーンスピリットの驚愕する表情を映し出した。
「うああああああっ!!」
深い心の奥底で。共鳴していた『孤独』の叫びが咆哮となり、そして一気に振り下ろされる。遅れて発生する青白いマナ衝撃波。
鎚のように深々と打ち込まれたそれはシアーを中心に全方向へと時差も無く解放され、威力を遠慮なく迸らせ、地面を削り大気を裂いていく。
寸前で剣を引き抜き飛び跳ねたグリーンスピリットが常に纏うシールドハイロゥに亀裂を走らせ、次の瞬間には粉砕させる。
「ガッアッアアアッ!!」
少女は両腕で顔を庇いながら、さっと身を翻す。ここにいてはいけない、そんな闘争本能が脚を突き動かせる。
そしてその予感は正しかった。襲い掛かるのは、鋭く研ぎ澄まされた閃光のようなマナの緑刃。
つい先程まいたと思っていた例の皮色のライトアーマーを鎧った緑の髪の少女の放つライトニングストライク。
彼女が持つ神剣の鈎爪のように湾曲した部分がすれ違いざま、深く脇腹の脂質と筋繊維を抉り取っていったのだから。

352 :名無しさん@初回限定 :2007/06/11(月) 02:32:51 ID:E3YWuump0

神剣支援魔法、砲撃用意。

353 :相生 Delphinium chinensis [ :2007/06/11(月) 02:34:53 ID:O64eGKwB0


「シアー!」
クォーリンは、眼前の敵よりも瀕死の"友人"を迷わず選んだ。駆け寄り、まだ息があることを確認する。
周囲は、一切が黒く焦げ付いている。蒸発し、空気さえも失われつつあった空間に大気が戻ろうとして、風を結ぶ。
衝撃の勢いからか、放りだされている『孤独』。地面に垂直に突き刺さっているそれからは、未だに噴き出すようなマナが感じられる。
剣から迸る迫力に、クォーリンは躊躇った。まさかこの少女に、これほどの潜在能力が秘められていたとは。
指向性はともかく、破壊力は桁違いで、例えば自分のデボテッドブロックでも上手く完全に防げるかどうか。
「ク、クォーリン?……シアーね、シアー……」
「喋らないで! 喋っちゃだめっ!」
「判ったの……強く、それは……」
躊躇している暇はない。慌てて『孤独』を瀕死のシアーに握らせる。
対象の治癒能力を活性化させる神剣魔法は、所有する神剣と本人が触れていなければ意味を成さない。
「自分も、大事にしなきゃ……いけ、ないんだ、よ。守る……ために。力……ね、『孤独』……」
「お願いだから……喋らないでぇ。木漏れ日の光、大地の力よ――――」
クォーリンは、無我夢中でやや舌足らずになってしまった大地の祈りを唱え始める。
涙を流していた。心の、声が聞こえる。聞こえてくる。どうか、助けて。剣を通じて伝わる、心の共振。
あれほど求めて已まなかったウルカからの問いかけ。見つけたのは、確かに彼女自身の"心"が導き出した祈り。

354 :相生 Nerium indicum Mill [ :2007/06/11(月) 02:39:04 ID:O64eGKwB0


ニムントールは、一人てくてくと見通しの悪い獣道を歩いていた。
「シアー達、どこいっちゃったんだろ」
突き出た細い枝々が少々邪魔ではあるが、踏みしめている地面はゆるやかに上り始めている。
法皇の壁は敵にとっての第一の防衛ラインであるから、当然篭城の際には周囲を見渡す事が可能な地形に沿って張り巡らされている筈だった。
簡単に言えば丘、もしくはそれに準じた山の頂上。視界を狭くしたり、押し寄せようとする敵の盾となる木々が生えてなければ尚都合が良い。
つまり坂を上っている以上、このまままっすぐ進めばそのままいつかは法皇の壁に辿り着ける。もしくは味方にも合流できるだろう。
「ま、その前に敵に遭うかも知れないんだけどね」
言いながら『曙光』の柄を軽く持ち直し、手元だけで確かめる。剣は先程から、不自然な位に黙り込んでいた。
元々敵意に対しては敏感な神剣なのだが、しかしそれが持ち主の性格を反映したものだとはニムントールは認めていない。
だがそんな事よりも、今は敵地にいる筈なのに『曙光』が全く反応を示さないのはニムントールにとってはかなりの不安材料だった。
「……まぁいいけど。その方が楽だし」
冷静に戦術講義で学んだ知識に則った行動。自分は間違ってはいない。
誰に聞かせるでもなく軽口を叩いてみる。しかしそのくせ口調は微妙に硬くなっていく。
俄かにざわついたような空気を神剣を通してよりも先に肌が感じてしまい、
そしてそれを気のせいだと言い切れる程ニムントールは楽観主義ではない。いつのまにか冷たい汗をかいている。
グリーンスピリットにとっては心地良い筈の、ふんだんに繁った緑の木々。だが今はその隙間に、何か粘っこく纏わりつくような息遣い。
「?――――ッッ!!」
ニムントールは、跳ねた。
「……グゥッ!」
しかしその時には既に敵の振るった棍棒のような神剣が刃の側面でニムントールの踝を粉砕していた。

355 :相生 Nerium indicum Mill [ :2007/06/11(月) 02:41:41 ID:O64eGKwB0


「ア、アアアッッ!」
全く気配も感じさせず ―― 少なくともニムントールには ―― グリーンスピリットは殆ど地面すれすれの姿勢から音も無く忍び寄り、
そこで初めて神剣に鉄のように凝縮させたマナを送り込み、走りこんだ勢いのまま小柄な体躯を一旦大きく捻りながら腕を畳み、
逆巻く風圧に気づいたニムントールの空いた胴へと反動を利用したソニックストライクを叩き込んできた。
華奢な体つきからは想像も出来ない会心の一撃を咄嗟に避わそうとしたニムントールの足元にその全威力が集中し、
遅れてきた衝撃波とマナの奔流が真新しい戦闘服を切り裂き、構えかけた『曙光』の加護をいとも容易く突き抜ける。
「くっ、こ、このおっ!! これくらい、でっ!」
「ハ、ハハハァ、ハァッ! シネ、シネェッ!!」
グリーンスピリットは、反撃を許さない。畳み掛けるように連続で響く、鈍い金属音。
まるで時差でもあるかのように、今更のように『曙光』が悲鳴を上げ始める。重い、と舌打ちしている暇も無い。
「あ、グッ!」
初撃で受けた傷が拙かった。
二度三度、辛うじて目で追える流星のような動きに一々後退を余儀無くされた足首ががくっと崩れ、噴き出した血で金色に染まる。
同じグリーンスピリットにこうも圧されるのは初めての事。しかし悔しいが、襲撃を捌けない。
防いでいる腕が次第に痺れ始めてくる。的確に急所ばかりを狙ってくる敵の動きは防御魔法を唱える余裕をすら与えてはくれそうに無い。
繰り出されるグリーンスピリットの斬撃の勢いはもはや神剣全体を鋭い刃にまで高め、それでいて叩き潰そうという威力は損ねていない。
それでも身についた剣技だけで小刻みに防ぎつつ、ニムントールはようやく悟った。敵は、強い。"自分より高位のスピリットなのだ"、と。
どん、と壁に退路を塞がれ、しまった、と思った瞬間にはディフェンスの隙間から、竜巻のようなマナの塊が迫って来ている。
ニムントールはぎゅっと目を瞑った。助けて、生まれて初めての弱気な本音を小さく呟きながら。

356 :相生 Nerium indicum Mill [ :2007/06/11(月) 02:43:59 ID:O64eGKwB0


  ―――― ドスッ!!

「全く困った嬢ちゃんだな。来るなって言ったつもりだったんだが」
「……コウインっ!」
壁だと思っていたのは、光陰だった。敵を弾いた『因果』を肩に担ぎながら、にっと笑う。
グリーンスピリットは獣のように四つんばいで離れた地面に着地し、一瞬鋭く睨みつけた後、森の奥へと消えていった。
光陰は追いかけるでもなくその後姿をのんびりと見送り、そして座り込んでしまっているニムントールへと振り向く。
「ああ、正義の味方、コウイン様だ。よ、ニムントールちゃん。何やってんだ、こんな所で」
「あ、ちょ、ちょっと」
そのまま片腕で抱き締められてもニムントールは竦んだまま何も出来ない。
先程の戦闘での恐怖の余韻か、それとも安堵感か。感情とは裏腹に、つい身を任せてしまう。
「あ〜、ま、嫌ってるならそれでもいいがな。ちょっとだけ我慢しててくれ」
「……ふぇ? ……あ、これ、緑の」
「ああ、どうだ? 少しは見直してくれたか?」
「……」
光陰の放つ黄緑色のオーラは、グリーンスピリットが加護を受ける大地のマナに非常に似ている。
その作用には回復要素が含まれており、心地いい。ニムントールは何も言わずに、小さく一度だけこくりと頷く。

長くしつこく降り続けた雨も、ようやくおさまろうとしている。
「……おんぶ」
「へ?」
「だから、おんぶ。ニム、動けないんだから」
仄かに明るくなってきた木々の間で、ニムントールは囁き、それきりそっぽをむく。
負傷した踵は既に完治しており、自力で立ち上がるのに支障はない。そしてそれは光陰ももちろん承知している。
だが光陰は呆れたように肩を竦め、それから黙ってニムントールに背中を向け、屈みこむ。
「……よっと。やれやれ、置いてきた今日子が気掛かりなんだがな……痛てっ!」
「……ふん」
反射的に光陰の肩を抓ったニムントールは大きな背中にゆっくりと体重を預ける。今だけなんだから、そんな言い訳を自分に試みながら。

357 :名無しさん@初回限定 :2007/06/11(月) 02:48:01 ID:E3YWuump0

この支援にマナもオーラフォトンも全てこめて、いけぇっ

358 :相生 Bidens atrosanguineus [ :2007/06/11(月) 02:49:09 ID:O64eGKwB0


ヘリオンは、道に迷っていた。
「ふえぇぇぇ〜、またですかぁ〜〜〜」
そもそも追いかけている最中に、濡れた枝から足を滑らせたのが拙かった。
咄嗟にウイングハイロゥでバランスを取り、今度は上手くいったと心の中でナナルゥに反撃し、
空中で体勢を立て直して颯爽と降り立ったつもりが、そこは豪雨により発生した泥沼。
うっかり手放し、沈めてしまった『失望』を掻き出しているうちに剣の声も再び聞こえなくなり、従ってネリーの気配も捕まらない。
「ゔうぅぅ〜。どうして私ってばいつもいつもこんな時に限ってぇ……」
真っ直ぐに法皇の壁目指して飛んできたのは判っているので右手には恐らくL字に曲がった街道があるのだろうが、それも心許無い。
泥んこになってしまった戦闘服に、黒は目立たなくて良かったなどと現実逃避を始めながら、とぼとぼと歩き出す。
「……あれ?」
何度目かに掻き分けかけた草叢の向こうで、何かちかっと赤いものが光り、足を止めた。目を凝らし、警戒の為に腰を落とす。
鞘に納まっている『失望』の柄に左手をかけ、
「あうっ!」
今まで両手で抑えていた弾力のある細い草束が、反動で勢い良く跳ね返る。
顎にクリーンヒットし、ヘリオンは思わず仰け反った。草は充分に濡れているので予想外に痛い。
涙目になりながら顎をさすり、再び視線を前に戻す。すると目の前には、いつのまにか敵意に満ちたグリーンスピリットが迫って来ている。

359 :相生 Bidens atrosanguineus [ :2007/06/11(月) 02:53:07 ID:O64eGKwB0


「え……わっ! わ、わ、わっ!!」
突然袈裟に切り込んできた細身の神剣を、『失望』を鞘ごと押し当て懸命に受け流す。
バランスを崩した所に、旋回した刃。慌てて首を引っ込めたその空間を、ひゅん、と通過する鋭い刃音。
既に居合いの間合いではない殺所での、超接近戦。それでもヘリオンは、『失望』を抜かない。いや、抜く暇を与えられない。
あっという間に追い詰められてしまった為に、自信の拠り所はがらがらとあっけなく音を立て崩れ去ってしまった。
もう、教科書通りの戦法も技術も全く役に立たない。培った速度も追いつけず、変則的な攻撃も敵の威力が遥かに上回っている。
そんな状態で求められるのは、豊富な経験が支える臨機応変。しかし残念ながら、ヘリオンはそれを持ち合わせてはいない。
乱暴に繰り出されてくる溶岩のように硬いマナを馬鹿正直に順番に、その度突き抜ける鈍い衝撃と共に刃で受けるだけ。
「あうっ! ぐ、きゃあっ!」
相手が格上なのだと、半端に悟ってしまったのが事態の拙さに拍車をかけていた。
この場から逃げ出したいのだが、身体が竦んでしまって思うように動けない。うかつに背を向ければ、それが最後の時間になるだろう。
辺りには、次第に血飛沫が舞い始める。しかしそれが手負いのグリーンスピリットのものだとは、ヘリオンは気づかない。
目の前の竜巻のような攻撃を懸命に捌く。左手の籠手が弾かれ、骨が折れるような衝撃に歯を食いしばる。脂汗が全身を支配し始めていた。
このままだと殺される。死ぬ。――死ぬ。小さな心臓がうるさい位の悲鳴を放つ。針のように頬に当たる雫。頭の隅で、今は雨だったのだと思い出す。
踏ん張った右踵がずるりと滑り、体勢が崩れる。結果力の入れ処を失ったヘリオンの身は、差し出されるように右へと大きく泳ぐ。
そこにもう何度目かも判らなくなった斬撃が襲い掛かる。為す術も無く、ただばしゃばしゃと跳ねる茶色の地面を見つめるしかない。

360 :相生 Bidens atrosanguineus [ :2007/06/11(月) 02:55:48 ID:O64eGKwB0


 ―――― それで、いいの?

「――――ッ! ヤだぁっ!!」
突然手元から"聞こえた声"が、僅かながらも力を取り戻させていた。大きく開いた左肩を狙うグリーンスピリットを見上げ、鞘を走らす。
ようやく刀身を現した『失望』は眩い程に輝いていた。滑るような軌跡が敵の神剣と交差する。その瞬間、偶然が引き寄せられた。
「あ、あああっ!」
「クゥッッッ?!!」
グリーンスピリットの神剣は、ヘリオンの左鎖骨を砕いた所でそれ以上進まず、停止していた。
その寸前、居合いにより伸びた『失望』の剣先が握る手の人差し指だけを切断していた、その偶然の為に。
ヘリオンは、狙った訳ではない。ただ無我夢中で振り回しただけ。それでも、人差し指のみとはいえ失えば力は入らない。
グリーンスピリットは止めを刺そうと柄に噛み付き、それを支点に体重をかけ、じわじわとヘリオンを圧し潰していく。
食い込んでくる刃がもたらす激痛に気が遠くなりかけながら、ヘリオンは空いた右手の籠手でそれを懸命に防ぐ。
「……ナニ?」
「剣は……籠手で受ける……一度抜いた剣は……鞘に……収める」
「……??」
グリーンスピリットの表情に、疑念の色が灯る。ヘリオンは、ぶつぶつと呟いていた。
俯いたまま呟き、そしてぶるぶると震える左手を恐ろしく緩慢な動作で引き戻そうとしている。
既に勝負付けは済んでいる。恐らくあと少し少女が力を篭めれば、傷は心臓へと達するだろう。
ヘリオンの右肩から噴き出す鮮血はぬるりと戦闘服を伝い、地面に赤い染みを作り始めている。
だが、グリーンスピリットの脇腹や神剣から滴り落ちている鮮血も、それ以上に激しく地面を彩っている。
「……認めて、それから、それ、から……剣に、乗せる……心を」
「――――ッッッ!!!」

361 :名無しさん@初回限定 :2007/06/11(月) 02:58:01 ID:E3YWuump0

新たな支援施設が完成しました。

362 :相生 Bidens atrosanguineus [ :2007/06/11(月) 03:03:19 ID:O64eGKwB0


 剣に、心を乗せるのです……――――

瞬間、少女は殆ど自失した。乱れた気合が心の奥底を揺さぶり始める。
頭の中で、そして外で弾ける何か。混乱した思考から大声で叫ぶ者。
弾ける緑が少女の視界を埋め尽くし、同時にヘリオンは『失望』を鞘に収め終わっている。
お互いに、目の前で起きている事態を正確に把握してはいない。
「……『失望』!」
体勢を崩したグリーンスピリットの首めがけ、星火燎原の太刀が迫る。
しかし既に力尽き、よろよろとした軌跡を描く動きはとても駿速とはいえない。
何かを探すように身を乗り出したグリーンスピリットの体躯にあっけなく鍔元を押さえられ、
威力を消され、そのまま圧し掛かられてしまう。背中に自分の、そして目の前の敵が吐いた冷たい血の感触。
混濁した意識の中、ぼんやりと浮かぶグリーンスピリットの戸惑う表情を揺れる視界に収め、頬に当たる雨が小降りになってきているのを感じる。
そしてそこでヘリオンの意識は背中の赤黒い泥へと引きずり込まれるように、闇の中へと落ちていった。

363 :信頼の人 :2007/06/11(月) 03:05:00 ID:O64eGKwB0

しかし何故、自分はよくネリーをトラブルメーカーに選んでしまうのだろう。
そんな疑問を抱きつつ、4回目の投稿となります。
えらく中途半端な所で終わっていますが、分割してみたらこうなってしまったという事でどうか御容赦を。
こんな深夜に沢山の支援、有難うございました。
誤字脱字ハリオンマジック等、御指摘があれば幸いです。

364 :名無しさん@初回限定 :2007/06/11(月) 03:10:20 ID:E3YWuump0

>>363
乙です。ソーマって本当に、ロウエターナル幹部どもよかよっぽど怖えぇ。
いや、怖いのは人の狂気なのだろうか。いったい何をもって狂気とするか、はまた別として。
読んでいて、ふと考えた。憎悪に人を溺れさせる根本は、いったい何なのだろう?

365 :名無しさん@初回限定 :2007/06/11(月) 21:20:06 ID:7F19nlez0

>>363
乙です。
もう、オールスター総出演って感じで最高ですね!
こんなにも登場人物が居るのに、要らない子が居ない作品ってそうそう無いと思います。
しかしながら、そんな中でも光っているソーマ様。
ここまで悪役を貫かれると、逆に惚れてしまいそうw
ある意味、作中で一番のスピの理解者だからこそ、こういう役割を与えられたんだろうなと妙に納得してしまったり。

他にもピックアップしたいキャラがたくさん居るんですが、全部語るとSS一本分の量になってしまいそうなのでこの辺りで。
続きすげー楽しみにしています。

366 :名無しさん@初回限定 :2007/06/12(火) 06:28:29 ID:BpXkR6If0

>>364さん
む、難しいですね、欲求に釣り合わない渇望、とか>根本
ソーマは経歴を見ると色々とこう、歪み度合いがアレというか(←日本語で(ry
>>365さん
お話のコンセプトとして必然的にそうなってしまう為、
特に気を付けた点でしたのである意味最高の褒め言葉ですw>要らない子が居ない

今回もお付き合い頂き有難うございました。

367 :トウソ、セィン アネース ナイハムート :2007/06/13(水) 19:21:24 ID:70bjEcq00

随分と誤解を招きかねない、下手糞な言葉を残したものである。

曰く。

ラ クフォエル テカレウト、デ テスハーア レナ イウロス アトエフ レナ。
リュー マク ヤァ ヨテト、デ リレイラート ラナ レナ、 イウロス テカレウト ユウラス。 

それは本当に何でもない、いつもと何も変わらない、ただ何でもないこと。
たまたまぶらりと第一詰め所の近くまで来てみたら、たまたま悠人がそこにいた。

「よ、シアー。エスペリアに買い物を頼まれたんだが、一緒に行くか?」

街で人間たちの敵意に晒されるのは怖かったけど、悠人が守ってくれるならと思い、行く事にした。

「ネリーはどうしたんだ?…はは、そうか、今日はセリアの特訓の日なのか。…ご愁傷様だな」

シアーが知る限り一番優しくて暖かい眼差しで真っ直ぐ目を見て、その手を差し出してくれる。

「シアー、お菓子のいいにおいに弱いだろ?はぐれないように手を繋いでいてやるよ」

とても暖かくて、とても優しくて、とても力強くて、でも何だかとても寂しそうな、その温もり。
何だろう、信じられる。
その手から伝わる温もりだけで、信じられる。
その声から伝わる優しさだけで、信じられる。
その目から伝わる暖かさだけで、信じられる。

「ほら、シアー。そこに大きな石があるから転んだりしないようよけて歩こうな」

何だろう、満たされる。
この胸を満たすのは、とても暖かくて気持ちが良くて、でも少しだけ痛くて。

368 :トウソ、セィン アネース ナイハムート :2007/06/13(水) 19:22:36 ID:70bjEcq00

わかるのは、ただ悠人の何もかもがそうさせているということだけ。

「ええと、エスペリアのメモっと…げっ、またリクェムをこんなにたくさん使うのかよ」

わかるのは、ただ悠人のそばにいるだけで世の中の何もかもが怖くないということだけ。

「さて、と。頼まれたものはこれで全部か。シアー、ついでにヨフアル屋台に寄っていこうか」

このひとの目は、とても青い。
ブラックスピリットのような黒い瞳なんだけど、でもとても綺麗な青い目だと思う。
悠人の瞳の奥に、シアーにはとても清浄でどこまでも澄み切った綺麗な青い空が確かに見える。
戦いの時、その遥か遠くを射抜く目は、時にはそれは鋭く勇ましい蒼に染まる。
だけどほんの時々、悠人の目はどうしようもないくらい悲しくて寂しそうな藍を映すこともある。

このひとは嘘つきだ。嘘がばれても、同じ嘘をどうしてもつき続ける嘘つきだ。

「よし、ネリーたちのぶんもきっちり買って…と。じゃあ帰るとするか、シアー!」

シアーにはそれがどうしてなのかも、どうすればいいのかもわからない。
だけど、せめてその背中を追いかけたいと思う。
見失っても、はぐれてしまっても、その背中を追いかけていたいと思う。

「もちろん、またはぐれてしまっても何度でも俺から探しにいくからな?」

曰く。

ラ クフォエル テカレウト、デ テスハーア レナ イウロス アトエフ レナ。
リュー マク ヤァ ヨテト、デ リレイラート ラナ レナ、 イウロス テカレウト ユウラス。 

随分と誤解を招きかねない、下手糞な言葉を残したものである。

終わり

369 :どりるあーむ ◆ncKvmqq0Bs :2007/06/13(水) 19:29:02 ID:70bjEcq00

シアーから、もしかしたらこう見えているのかもしれない悠人の姿。
相変わらず聖ヨト語が自分でもなんかおかしいですが、指摘指導いただけると幸いです。

370 :名無しさん@初回限定 :2007/06/14(木) 12:09:51 ID:NOXBPZMXO

ハイペリア訳をお願いします

371 :名無しさん@初回限定 :2007/06/14(木) 15:40:07 ID:zDRHaYYF0

>>370
ゴメン。
必ずしもヨト語の意味の単語そのままでなく、日本語での同義語のイメージとかフィーリングでやってます。

トウソ、セィン アネース ナイハムート
小さき、青の愛しい人

ラ クフォエル テカレウト、デ テスハーア レナ イウロス アトエフ レナ。
リュー マク ヤァ ヨテト、デ リレイラート ラナ レナ、 イウロス テカレウト ユウラス。 

救いを求めるのは、救いの必要ない者ではなく救いを必要とする者である。
私が来たのは、人間と自らを名乗るものを導くためでなく、スピリットたちを助けるためである。

372 :名無しさん@初回限定 :2007/06/14(木) 17:25:56 ID:Y9fKW2H20

>>369
乙です。子犬みたいなシアー視点に感動しつつ、やっぱり悠人はネリシアに対して「妹」扱いが多いような・・・。やっぱりロr(ry
>>370
気になる気持ちはわからないでもないが読んだ感想もなしに言うのはどうかと思う。

373 :名無しさん@初回限定 :2007/06/14(木) 17:57:14 ID:2sBVGsZG0

悠人  バリートゥード
光陰  ロリコン(偽)
ロティ ロリコン(真)

こんな性癖イメージ

374 :名無しさん@初回限定 :2007/06/14(木) 21:02:08 ID:NOXBPZMXO

どりるあーむさん、すぐのお答えありがとうございます。又不作法お詫びいたします。
「誤解を招きかねない、下手糞な言葉」訳を読んでそうは感じません、悠人の優しさ強さを感じます。うまく言えませんが次作品にも期待してます。

375 :名無しさん@初回限定 :2007/06/15(金) 00:17:17 ID:pSvjVyhQ0

なんだか聖書っぽいな。
まあ、聖ヨト語は資料集辞書持ってない人にはどうにもならん面あるし。

コ「やあみんなそろってクオヴァディス!?」
ネ「コーインさまあっちいって」
ニ「ついてこないで」
シ「じゃま〜〜」
ヘ「あ、あのもう少しやんわりと断るべきかと〜」

>374
デフラカナ(気にしなーい)

376 :名無しさん@初回限定 :2007/06/15(金) 01:44:20 ID:4HB1p7bLO

>>373
ロテイ=シスコン(年上、年下問わず)

377 :名無しさん@初回限定 :2007/06/17(日) 01:01:29 ID:UnkATuIR0

マテマテ〜クォーリ〜ン     ウフフ 
   '´⌒ ヾ        γ"⌒ヽ
  | ゙「_~~_i        (.リノ彡ヾ〉
〜ヾ(i゚ ヮ゚ノ         !pリ゚ ヮ゚リ  ツカマエラレルモノナラツカマエテミテクダサイ
  (》つY[]つ       ⊂》 ノ リつ    コーインサマ♥
〜 く/_人ゝ       〜 く/|_ノ  
   〈_ノヽ_〉      〜  ι'J
 
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄○ ̄
         O
       。
   ヽ从/
  γ"⌒ヽ
  (.リノ彡ヾ〉
   !pリ;゚ヮ゚リ  エッ!
  _| ⊃/(___
/ └-(____/
 ̄ ̄ ̄


  γ"⌒ヽ
  (.リノ彡ヾ〉
   !pリ゚ ヮ゚リ  …………。
  _| ⊃/(___
/ └-(____/



 γ⌒ヽ/ヽ-、___   モ、モウイッカイ……。
 (ミ _/____/  

378 :名無しさん@初回限定 :2007/06/17(日) 10:44:18 ID:KYS8vnV/0

>>377
おま…w

379 :名無しさん@初回限定 :2007/06/17(日) 14:39:09 ID:g99qkbdf0

>>377
良い夢を・・・

380 :不屈の闘志 :2007/06/17(日) 22:15:31 ID:Egmgoye50


とあるのどかな昼下がり。
クォーリンは、いつものようにいそいそとコウイン様の部屋の掃除に勤しんでいた。
ちなみにこの内助の功はマロリガン時代から綿々と続けられているが、
肝心の本人に気づいて貰えそうな気配が微塵も無いのには既に慣れっことなっている。
それはそうと、そんな陰の女的な現在のポジショニングにちょっぴりの不満と
僅かながらの陶酔のスパイスを加えた気分の中で机を整頓していた彼女は、
袖机の一番下、こう、一番深い引き出しの奥に何か紙の塊みたいなものを見つけた。
「……? 何かしら」
引っかかって出てこないので一旦籠手を外し、もう一度手を伸ばす。
すると今度はずるずると手応えがあり、やがてよれよれの本らしき物体の表紙が目に入る。
「〜〜〜〜〜っっっ!」
と同時に悶絶した。それはもう盛大な勢いで。
のけぞった勢いでベッドの角に後頭部をしたたかに打ち付けてしまい、蹲ったまま動けなくなる。
涙目になりながら頭を両手で抱え、じんじんとした鈍い痛みが収まるのをただひたすら待った。
ようやく落ち着き、あひる座りのまま放り投げてしまった本ににじり寄って恐る恐る覗き込むと、
やはりそこには○○○が×××で△△なニホンゴの羅列と何故か裸の女の人。
「〜〜〜〜っっっ!」
再び悶絶し、今度は床に額を打ち付ける。泣きそうになった。
いや、正確には後頭部や額の痛みで既に泣いてはいたのだが、それでも泣きそうになった。
まさかコウイン様を驚かせ→褒めて貰うという2重のコンボを決める為に、
こっそりこつこつとユート様の支援を受けつつ覚えてきたニホンゴがこんな所で役に立ってしまうとは。
落ち着いて、そう自分に言い聞かせる。胸当ての奥でばくばく言っている心臓が煩い。
「そう、そうよ、コウイン様は男の方なのだから。こ、こ、こんなのはああああたりまっ〜〜〜〜ッ」
よせばいいのに口にしようとして舌を噛む。もう頬と額とついでに舌も真っ赤っ赤。
クォーリンはそのまま両手で顔を被い、いやいやを繰り返す。身体中が火照ってしまっている。

381 :不屈の闘志 :2007/06/17(日) 22:16:42 ID:Egmgoye50


「……」
ちら。
「……」
ちら。
「……」
ちらちらちら。
見れば見るほど全裸。表紙の女性は両手を万歳の形に上げ、にっこりとこちらに微笑んでいる。
というかどうして異世界の本がこんな所にあるのか、それを先ず疑問に思うべきクォーリンの頭脳は、
今はもう遥か彼方法皇の壁を一周してしまう程の旅へと出かけて逝ってしまっており、上手く機能していない。
ぼーっとした顔つきのまま、ふらふらと頁をめくる。めくると、めくるめく世界。めくるめきすぎて目が巡る。
「こ、こ、こういう女の方が好きなのかしら……ごくり」
そんな訳でいつの間にか、熱心に読み耽ってしまうクォーリンであった。

382 :不屈の闘志 :2007/06/17(日) 22:18:18 ID:Egmgoye50


「ええと……巨……なんだろう」
所々判らない単語の部分は推測するしかない。
しかしその手のものはやはり万国、もとい万世界共通なのか、雰囲気で感づく。
なんとなく皮の胸当てを外し、持ち上げて比較してみると、殆ど差は無かった。
むしろほんの少し、勝っている気もする。
戦闘には役に立たないので今まで考えた事も無かったが、今は無性に優越感。
「ええと、……こう?」
いつの間にかモデルの姿勢の真似をし始める。
まずはあひる座りの片足だけを大きく伸ばし開き、背をややのけぞらせて顎を上げ。
裾のスリットが大きく開いたというか殆ど無防備に捲くれ上がってしまっているが、自分からは見えないので気にしない。
ニーソックスを履いていないしっとりとした太腿が約60°程開かれている為奥に白い何かが見え隠れしているが、自分からは見え(ry
また、胸当てを外してあったのでゆさっとした双丘の緩やかに曲線を描く輪郭が薄いインナーを通して恐ろしいほど鮮明になり、
その先端で息づく突起の位置などは簡単に判明する位に強調され、少しづつ自己主張まで始めているが、自分からは(ry
普段は前に垂らしている緑の一房を軽く梳き、両手をそのまま頭の後ろで組むと、
散らばった前髪が強調された鎖骨や双丘の先端を刺激して一瞬ぴくりと官能的な表情を浮かべたが、自分から(ry
元々細身な上引き締まった腹筋の持ち主なので、お臍のラインまでもがくっきりと目立つのだが、自分(ry
息苦しさが変な波長で一部非現実的なギミックを施され、良く判らないまま吐息のように求めすがるが、自分(ry
「はぁ……こ、こうですか、コウイン様ぁ……」
「ん? なにがだ?」
「……ハ?」
自分だけじゃなかった。

383 :不屈の闘志 :2007/06/17(日) 22:19:37 ID:Egmgoye50


突然の闖入者、というか部屋の主なのだが、の出現に、動きも台詞もついでに心も凍りつく。ぱくぱくと動くだけで何も発さない口。
しかし当の光陰は一切無関心のまま部屋を横切り壁に立てかけてあった『因果』を手にする。どうやら忘れ物を取りにきただけらしい。
「おお、こんな所に忘れてたか。……あれ? その本」
「……はぅっ! い、いいえこれはその」
「はっは〜ん。ああ、いやいや皆まで言うな。俺はそんなに心の狭い男じゃないぞ。そっちへの理解もあるつもりだ」
「あ、はい、……え? な、うぁ?」
「いいぜ、気に入ったんならやるよ。どうせ俺の趣味じゃないし、たまたまこの世界についてきちまっただけだしな」
「え゛」
「じゃあな。あ、後散らかした部屋はちゃんと片付けとけよ」
ばたん。
「……」
おおよそ自分ひとりでは考えもつかないような恥ずかしい、アピールするには思い切り良すぎる位の体勢。
しかしそれすらもスルーで何事も無かったかのように出て行った主の部屋は、その手の本が散乱してしまっている。
最初の一冊を引き出した時に芋づる式に発掘されてしまったのだろう。
「……シクシクシクシク」
クォーリンはのろのろと立ち上がり、それらを纏め、とぼとぼとゴミ焼却炉へと向かった。
本を抱えていると押さえつけられややつぶれた、最近急成長した胸が違った意味で切ないくらいに息苦しい。
「……明日の掃除はもっと念入りに 萌 や し て み せ る」
ぐっと拳を握り締め、空を仰ぐ。この位ではもうへこたれるにはやや足りない。
気持ちを切り替え、胸を張る。どうでもいいが、すっかりニホンゴが上手になってしまったクォーリンであった。

384 :名無しさん@初回限定 :2007/06/17(日) 22:20:37 ID:Egmgoye50

ありがちなネタスマソorz

385 :名無しさん@初回限定 :2007/06/17(日) 22:35:56 ID:UnkATuIR0

流石は光陰様。自動歩る野所持禁止法はしっかりと守っておられたんですね!
え、全員18歳以上だから問題ナッシングw? いやでも頭身とか角度とか。

しかし光陰、掃除くらいは気付いてやれ……。って結局自分でもマメにやるから常に100%状態で変化無しなのかも。

そして今ごろ、ナナルゥが自室でクォーリンのポーズを真似てついには炎のコマから水魚のポーズまで名古屋撃ち。

386 :名無しさん@初回限定 :2007/06/17(日) 22:42:42 ID:vrbNmLyD0

>>384
乙です。
って光陰。何故にソレを連れてきてるんだ!鞄か?鞄に常備していたのか?
雨にも負けず、風にも負けず、砂漠の暑さにも負けず、それを鞄に入れていたのか?

387 :名無しさん@初回限定 :2007/06/18(月) 02:02:52 ID:ItrU7cxk0

>>384
乙。
相変わらず光陰様のスルー力(対クォ限定)は半端じゃ有りませんねw
ここまでくると北風と太陽に倣って、一度距離を置いてみるのも。
あ、でも普段が太陽なのか。 …頑張れ(´・ω・`)

388 :セリアの戦う徒然メイドさん日記 :2007/06/19(火) 15:01:50 ID:P1wz2BWP0

メイドさんは月 好きですか?日

度重なる戦闘と日々の訓練で、ついにいつか来てしかるべき日が来てしまった。
私個人の全てのラキオススピリット隊戦闘服が全て破損して使い物にならなくなったのだ。

仕方ないので、作業着として常備していたメイド服を着用する事にする。

戦闘服ほどではないといえ、もともと作業着は作業着。
戦闘でも訓練でも戦闘服の時と変わりない使い方をしているが、なかなか丈夫だ。
スカートがひらひらする件については、キョウコ様がはいていた「すぱっつ」の予備を貸してもらった。

メイド服で、『熱病』を帯剣する。
メイド服で、ラキオス古流の剣術の型を繰り出す。
メイド服で、ウィングハイロゥを展開して空中にて高速機動をおこなう。
メイド服で、青いマナを神剣魔法へと変えて解き放つ。
メイド服で、いつものようにいらんことしいするネリーをふんづかまえて説教する。
メイド服で、一日がはじまって一日が終わる。

389 :セリアの戦う徒然メイドさん日記 :2007/06/19(火) 15:03:03 ID:P1wz2BWP0

気のせいか、ユート様から熱っぽい視線を感じる気がする。
まあ、もともと女性に対する免疫がそれほど無いようなのでさほど気にする必要は無いだろう。
敵と交戦する際も、最初に目を合わせた時に敵が惚けた表情で頬を紅くしているが気のせいだろう。
交戦の末にトドメをさした時の断末魔の声が「萌え…本望」と聞こえたのも絶対に気のせいだろう。

メイド服を着用するようになってから、エスペリアが何やら心中穏やかでなさそうなのも気のせい…よね?

破損したメイド服が新調されるたびにややデザインが変わるのはまあ仕方ないとする。
だけど、リボンやひらひらが増えたり胸元が開いてたりスカートが短くなっていくのは何故なのだろう。
そしてずっと以前から戦闘服の修繕を頼んでいるにも関わらず戦闘服だけが来ない。
何故メイド服ばかりが新調されて届くのだろう、早く修繕のすんだ戦闘服を受領したい(涙

終わり

390 :名無しさん@初回限定 :2007/06/19(火) 15:04:50 ID:P1wz2BWP0

更にありがちなっていうか、そろそろ飽きられた感が否めないメイドさんネタ。

391 :名無しさん@初回限定 :2007/06/19(火) 20:16:32 ID:eZ5iKJD90

>388-390
GJ
題材なんて灯の当て方でどうにでも料理できるというのが再認識できた作品ですな

392 :名無しさん@初回限定 :2007/06/19(火) 20:26:53 ID:CP9+QI81O

>>390乙です。……ということは、よく怪我するヒミカももうすg(フレイムレーザー
エトランジェが訓練を改名し調教にして自分が担当すると女王に進言してきました。
如何なさいますか?
1、茹でる
2、煮る
3、焼く
4、地下室で監禁

393 :名無しさん@初回限定 :2007/06/19(火) 20:55:09 ID:2+IFhg6k0

>>390
乙。>>391に同じく。
調理次第で無限の広がりを見せる、セリアさんのメイドワールド。

>>392
5、承認。 但し、光陰専属。

394 :名無しさん@初回限定 :2007/06/20(水) 00:53:52 ID:6YvAmq0q0

そして……

「ふぅ……戦闘服はやっぱりこのスリットがはしたなくて。でもこれでユートさまとの間に新たな展開があるのなら安いものです」
厨房で屈んだ青スピの戦闘服着用茶色髪さん。ビリィッ。「あ」
「もう、脆いんですから。これで何枚目かしら」

>392
6.サウナ
騎手としてはやはりちっこい娘じゃないと斤量面で不利ではないかと(ぇ

395 :名無しさん@初回限定 :2007/06/20(水) 19:42:40 ID:saY4NpcD0

>>390
乙。っていうか薄々感づいていながら流されるセリア萌え。
しかし破壊力抜群ですな、味方にも敵にもw

>>392
いや、もうこのタイミングでは
7.エトランジェにもメイド服を着せてみる
としか言いようががが

396 :名無しさん@初回限定 :2007/06/20(水) 23:49:08 ID:6YvAmq0q0


  週刊スピリット自身編集部様御chuっ!
     ☆ミカ先生ファンレター係様江

☆ミカ先生こんにちは。
先週から始まった新連載「セリア雑魚式」楽しく読ませてもらいました。
汎用ツン型メイドスピ「セリア」と色々召喚とかあって一つ屋根の下で住むことになった主人公「ユゥト」がすごくうらやましいです。
いきなりすごいはちゃめちゃでちょっとエッチな展開に僕のハートは釘付けになってしまいました。
デレインプリンティングを拒否し続けるセリアと、でも、その凍りついた心のグリスを溶かしてくれる
ヘブンズ三角締めをコネクティドさせてくれるユゥトの希望。
ホントはデレしたいのに上手くいかないセリアの気持ちを大事に汲んでいって欲しいです。

それでは短いですがこの辺で。お体に気をつけて下さい。

P.S 姉であるエス可燃式の登場もちょっぴり期待です。

397 :名無しさん@初回限定 :2007/06/22(金) 07:25:00 ID:SKYrqBun0


       ⊂⊃
       ___
       r'⌒';=〔X〕=:、
       川_ノ从仆从))
       | |_」O  Oy
       | .人ひ − ノ|  ソゥユート…
      `⌒ニ| 匸⌒'
        f´\〔X〕フ、
       !__j_》、___,》_)
       〔>ヽヽっ./ /〕   
        ム/i\_)_∧j
        /\i    i∧     
     /:::/::`ー一ヘ::::ヽ    
     く::/:::/:::l::::lヘ:::ゝ::::ゝ    
     `´^ト‐iー'i_´ー^´      
        f`f⌒if⌒i    
     ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

398 :名無しさん@初回限定 :2007/06/22(金) 17:54:16 ID:tZzmRDo90

>>397

目が怖い((((゜Д゜;))))

399 :名無しさん@初回限定 :2007/06/22(金) 20:50:30 ID:CX/VhVSa0

>>397
どうした、『献身』でも落としたのか?

400 :名無しさん@初回限定 :2007/06/22(金) 21:23:03 ID:aNs89PlQ0

                    _
                  '´ M ヽ.
                 ! ノ从 リ))〉
                 |lゝ゚(プノ|
                +ミ⊂)i介!つ
                く/_l_ 〈__」 」
                    し'ノ
    __            きしん
  「,'´r==ミ、                                   _
 くi イノノハ)))            (⌒          _____    '´/ ,、ヽ
  | l||#゚ヮ゚ノl|          ,´/´^`ヽ       {l,、,、,、,、,、,、,、,、l|l=とエi (ノノ"))i
  j /ヽ y_7っ=        ノ〈 从ソ)ハ                   `(i '"ワノii
  (7i__ノ卯!         (リ゚Д゚三゚Д゚ノリ)                l⌒l允{ヾ)
   く/_|_リ            ⊂)允iつ                  〈坐〉人ヽつ
  まじん             く/_lj〉                   めがみ
                   じフ..

ぷちAAで現役張ってるおbsnは凄いと思いました。

401 :名無しさん@初回限定 :2007/06/23(土) 02:20:49 ID:aV2/3bpr0

ぱにぽにでも活躍したしな

402 :名無しさん@初回限定 :2007/06/24(日) 10:00:15 ID:so5DdZrX0

「ダーツィ首都、キロノキロを制圧しました。
ユートさま。キロノキロの住民の方々から噂を入手しました。流離いの凄腕医師ブラック・ファッ○が助手のニムコと一緒に、
この街周辺に隠棲しているそうです。ブラック・ファッ○さまは人もスピリットも分け隔て無く接し、神業的医療技術で、
どんな傷も治してしまう伝説的存在です。お会いして協力を仰いでみるのも良いかも知れません」
「……どっかで聞いたような設定な気もするけど、それ何で伏せ字なんだ?」
「もうっユートさま。これはPS2版なんですから当たり前です」

403 :名無しさん@初回限定 :2007/06/24(日) 10:05:00 ID:H3DG5eH90

「えっ、ユートさまが大怪我を……クスクス、それでは10000000000ルシル頂きましょうか」
「ふう、アッチョンブリケ」

404 :名無しさん@初回限定 :2007/06/24(日) 15:43:55 ID:so5DdZrX0

第四部隊に一人ポツンと配され、孤独にブラック・ファッ○の調査を開始するヘリオン。
小石を蹴りつつ、涙を奮って握り拳。
「わたしみそっかすですけど、これはある意味役得というか一石二鳥です! きっとハイペリアのクサツノユでも治らないという、
こ、この胸の高鳴りを治める方法を授けてくれるに違いありません!」
町外れの一本カク(杉)の木の下のあばら屋。
ギィ。
「ご、ごめんくださ〜い」
「あ、また来た。いっとくけど10人待ちだかんね」
受付に座るメンソレータムルックニムコ。
「え、あ、セリアさん……ヒミカさんにナナルゥまで! ななんで皆さんていうか全員いるんですかっ!?」
意に介さぬニムコはレジを打ちつつ、
「とりあえず手付け払って。5000000000ルシルにまけとくから」

405 :忘れえぬ炎 :2007/06/25(月) 19:31:03 ID:Q4jSIRA+0

それは、忘れえぬ炎なのだと思う。

フルートの音色が聞こえる。

熱く激しく燃えさかる、けれどもあたたかくやさしい・・・忘れえぬ炎なのだと思う。

遠くから、フルートの音色が聞こえる。
妹の、佳織が奏でるそのフルートの音色を遠く聞きながら、俺は墜ちてゆく。

【無償の奇跡は存在しない。あるのは代償を果たす契約のみ】

この声を聞いた時に、俺は墜とされたのかもしれない。
自らの幼さゆえに願った、妹への救いという奇跡の代償に、俺は墜とされたのかもしれない。
墜ちた大地で俺を待ち受けていたのは、ただ理不尽だった。
俺と、俺を護ってくれた妖精たちに降りかかる、区別という言葉を被った差別という名の理不尽。
この呪わしい、全ての始まりといえる一振りの無骨な剣がマナを求める強制力という名の理不尽。
何のゆかりも恨みもない、名前も知らない生きた「敵」を殺さねば殺される、戦争という名の理不尽。
ただ目の前に巨大に横たわる現実になすすべもなく弄ばれ、親友とさえ殺しあう運命という名の理不尽。

フルートの音色が、ただ遠く何処か寂しそうに少しだけ拙く、ただ遠く聞こえる。
遠く音色が聞こえる向こうで、紅蓮の炎が散りゆく花びらのように吹雪いて俺を包むように舞う。
光り亡き黒い闇に炎が花吹雪と舞う向こうで、俺はそこに確かに小さなひとかげを見る。

炎の眼差し、炎の髪、炎の装束、炎の肌、炎の手指、炎のうたごえ、炎のみわざ、炎のこころ。

墜ちた大地で俺が出会ったのは、それはけして忘れえぬ炎だった。
小さな、いかにも頼りなく儚い灯火だったけれど、それは俺にとってけして忘れえぬ炎だった。

406 :忘れえぬ炎 :2007/06/25(月) 19:31:55 ID:Q4jSIRA+0

マナよ。
マナの導きよ。
正しきマナの導きよ。

信仰心など持ち合わせていない俺だけれど、マナの導きをだけは心から祈ろう。
オルファが、オルファたちがこんなあまりにも悲しい運命から解放されますように。
オルファが、オルファたちがこれ以上無自覚にあまりにも優しすぎる心を歪められませんように。

【無償の奇跡は存在しない。あるのは代償を果たす契約のみ】

この大地の理とあまりにも対立する俺の願いは、ただの醜い傲慢なのかもしれない。
でも俺は知っている、無償の奇跡は確かに存在しないけれども無償の愛情は確かにここにある事を。
オルファが、オルファたちがあまりにも純粋にその無償の愛情を確かに示すから。

マナよ、精霊光よ。
どうか俺に、その無償の愛情に応えられる力を。
あの守り龍が言ったように、負けぬように小さき妖精たちを守り抜ける力を。

俺の心の中で、小さなひとかげが炎の歌を歌い炎の花吹雪の舞を踊る。

それは、忘れえぬ炎なのだと思う。

終わり

407 :名無しさん@初回限定 :2007/06/25(月) 19:43:39 ID:Q4jSIRA+0

わかりづらいですが、悠人視点のオルファルート短編です。
何かネタはないかと保管庫で一番最初の過去スレを読んできて、雑魚スレそのものも雑魚スレをとりまく周囲も何もかもが変わったのだなあとしみじみ。
セリアさんがほとんど動いてなかったり、初代からファーレーンに和装させてハァハァ妄想してる人やクォーリンに注目してる人がいて驚いたり。
クラブザウスで人丸氏が言ってた通り、本当に今日までファンが大切に育ててきたのだなーとつくづく。

408 :名無しさん@初回限定 :2007/06/25(月) 19:56:07 ID:/8yE43Jh0

不思議な空間乙。
エターナル後のお話なのか、それともソーンリーム前なのか。
そんな風につい考察してしまうのは野暮ですな。
んー、何か上手い言葉が見つからない。古語でいう「もののあはれ」というか。
しみじみとした内容なのに、酷く暖かく感じるのはやはり情熱の赤ゆえか。
この時点での悠人の状況をあれこれ想像すると、色々な意味に取れて切ない。G.J.。

409 :名無しさん@初回限定 :2007/06/25(月) 21:16:11 ID:zT/Xm/qT0

再生の炎GJ。
御しきれない炎は守るべき者をも飲み込んでしまう。
逆巻く炎に聞かせるように銀色の音は暗闇に涙を湛え、
渦巻く炎は律せられ小さき命を再生する。
炎は歌う。忘れえぬ命を。

410 :名無しさん@初回限定 :2007/06/27(水) 00:06:49 ID:p47lZTf80

      「あのコウイン様、何の御用なのでしょう?」
      「ああ……クォーリン」
      背中を向け、タバコを燻らす光陰を見詰めるクォーリン。
      光陰を目の前にすると、今も変わらず不必要に肩に力が入ってしまうのを自覚してしまう。

      「そろそろ……結婚しないか?」
  ┌─―「……え」
エ . |    紫煙が、信じられない言葉と共に空気に同化していく。その光景だけをクォーリンの瞳は映していた。
l  .. |
テ.  |    「ほら、稲妻の奴らも大分身を固めただろう? 美人なのに不思議とクォーリンは男っ気がないからよ、
ル.. |    ちょっと適当に見繕って……おっと、言葉が悪いな。全員俺の目に適った奴らだ。お買い得だぜ?」
ジ .|    「…………」
ャ  .|
ン  .|    「とりあえず、三人分のプロフィールと、アセリアに頼んで書いてもらった似顔絵だ。
プ. |    よっく吟味してくれ。ま、いくらでもセッティングはしてやるから、
  │    焦らず適当に肩に力を抜いて考えてみてくれ」
  │
  └→  「お、お願いしますっ!!」
       「お、おう。日取りはどうする」
       「は、早いほうが!」
       「おうそうか。それじゃ、ちょっと話し付けてくるわ」
       「は、はいっ!!」

       「ふぃ〜。結構乗り気だな。こんなんだったらもっと早く世話してやるんだったぜ。元隊長失格だな。
       へっ、でもよ、ちょっとばかり寂しいもんだぜ」
       鼻を指でこすりながら、光陰は城へ戻っていった。


                    γ"⌒ヽ
                    (.リノ彡ヾ〉
           *・゜゚・*:.。..。.:*・゜n pリ‘ヮ‘リ)η゚・*:.。. .。.:*・゜゚・* !!!!!

411 :名無しさん@初回限定 :2007/06/27(水) 00:12:39 ID:lt7iBW020

>>410
(つД`)

412 :名無しさん@初回限定 :2007/06/27(水) 01:34:07 ID:K1WgxE3o0

>>412
お約束過ぎて泣けてきた・・・

413 :名無しさん@初回限定 :2007/06/27(水) 14:42:57 ID:7RzAlxvI0

>>412
アンカ、アンカミスってるよ。

>>410
このまま夢見させてあげたいよ…

414 :名無しさん@初回限定 :2007/06/27(水) 19:13:37 ID:j2T3QX1b0

何と言う可哀想なクォーリン
俺が嫁に貰ってあげますよ
ナナルゥを

415 :名無しさん@初回限定 :2007/06/27(水) 21:35:17 ID:p47lZTf80

「ファーレンさん」
「うひゃぅっ。……あ、ああナナルゥさんですか。あのいきなり後ろに立たれると……」
「……気をつけます師匠」
「……は? え、と?」
「昨夜の話しです」
「え、ええ」
「コウイン隊長にハイペリアでの冗談の分類を教示していただきました。それによるとどうも私の冗談は、ブラックジョークに分類されるようです」
「え、ええ」
「それに依拠するところでファーレーン師匠と呼ぶことに決定しました」
「え、ええ」
「逆らわない方がいいな……的表情が見受けられますが」
「え、いえそんなことありませんよ」
「そうですか。それは何よりです。ではお聞き下さい」
「え、ええ」
「はっつあん、レスティーナ女王陛下ってのはきれい好きなんだってねえ」
「え、ええ」
「そこは別に相の手は要りません」
「あ、そうなんですか」
「仕切り直しです。はっつあん、レスティーナ女王陛下ってのはきれい好きなんだってねえ。へー旦那そうなんですかい。
ああ、なんていっても洗濯板だからねえ。はっはっはそいつはいいやたしかにきれい好きで」
「……え、えと」
「……失念していました。これは機密事項に抵触する内容ですね。記憶の黒塗りが必要です。どうか忘れてください」
「え、ええ」


>414
どぞ

416 :名無しさん@初回限定 :2007/06/27(水) 23:32:51 ID:eeL80QGY0

>>415
ブラックというよりアメリカンww

417 :名無しさん@初回限定 :2007/06/28(木) 00:37:50 ID:mZjeap3r0

  |
  |∋θ∈
  |ノ))))
  |゚ -゚ノl|
  |ゝと|)
  |!芥!〉リ   
  |iVil,ゝ

418 :名無しさん@初回限定 :2007/06/28(木) 23:12:09 ID:gKfFPtp70

気づくと、見てる。いつも、見てる。
柱の影から。胸凹ませて。それが運命。

419 :名無しさん@初回限定 :2007/06/29(金) 23:08:02 ID:fw+nyyCV0

緑亭株主総会に行ってきたよ。
ハリオン社長手ずからの「あ〜ん」権が株主優待だからすっげえ人の波。
でも俺は、ヒミカ会長のスケブが目当てだから涙を呑んでスルー。
こっちはこっちで何か特殊な人たちばっかで、特に女が目立ってたな。スピリットも多かった。
まあ俺も特殊な人なんだけどねw らめぇセリアー描いてもらったぜ!
そういや、両経営者そっちのけで、皿に積まれたヨフアルやら、創作お菓子を一心不乱に食べてた娘がいたな。
カナリ可愛い娘だったけど、あの食べっぷりは百周期の恋も冷める罠。
でもなんか噂ではあの娘が筆頭株主だとか……まさかねえ。

お土産にお菓子の詰め合わせとあいすばにっしゃー団扇もらって帰宅。
この団扇青スピ四人が描かれてて結構イイ! 来年も来ようっと。

420 :名無しさん@初回限定 :2007/06/29(金) 23:19:15 ID:WV97aS370

最近になって増えた旧ラキオス領外の個人株主からは、現物優待よりも配当を増やして欲しいという要望が多かったから土産やイベントはなくなるかもな

421 :名無しさん@初回限定 :2007/06/29(金) 23:36:09 ID:bdEOkDbH0

いやいや、☆ミカ社長のスケブのプレミアっプリを知ったら、
そんなことは言えなくなるでしょ。

422 :名無しさん@初回限定 :2007/06/30(土) 07:57:56 ID:cguEm0KW0

ヒミカ会長に一目会いたくて2年分の貯金はたいて株買って行って来たんで、ちょっとレポ

憧れのヒミカ会長は・・・言葉で表せない位美人さんでした
赤いインナーの上に黒いジャケ、青と緑と白い花をあしらった髪留めに
なにやら綺麗に輝く眼鏡・・・魅力50倍ですしw
笑顔が素敵でした
でもちょっと目の下辺りに疲れが見えていたような・・・?
それと皆さんなにやらスケブ?なるものを持ってましたね
とても楽しそうだったんで私も次回から持って行くことにします

ヒミカ会長の右側のガードの翠の服のちょっとぶっきらぼうな子
あの子仏頂面でダルそうだったけどかなり腕がたちそうだったね
左側の蒼い服の娘は筆頭株主?の女の子のほうをちらちら見てて
ちょっと注意力散漫かも?
筆頭株主?の女の子が食べつくしたビュッフェのテーブルをすごく悲しそうな顔で見てたのが
印象に残ってるなぁ・・・

以上です、とても楽しいひと時を過ごしました、片道5833IPかけて行って来た甲斐があったですよ
肝心の会社経営方針などは・・・憶えてません、すいませんです

423 :名無しさん@初回限定 :2007/07/01(日) 11:48:26 ID:e7KIsU2O0


あてんしょん

このSSは、ほぼ基本的に年少組の補完です。
時期も舞台もケムセラウト〜法皇の壁、今回の投稿で完結します。
ただし恋愛要素は全く含まれていませんので、そういうのが嫌いな方は遠慮なくスルーお願い致します。

424 :相生 Delphinium×belladonna [ :2007/07/01(日) 11:50:43 ID:e7KIsU2O0


目の前で剣を構える"白き鎧を纏った妖精"に何か危険なマナの気配を悟った『静寂』は、
暫くの睨み合いの末、主の身体を大きく後方へと跳躍させていた。
斜めに崖を駆け上がり、そこで大きく聳え立った石の障害を一振りで崩す。
粉砕された衝撃が生み出す瓦礫と、雨混じりの噴煙。飛び込むと、屋内だった。幸い、追っ手はまだ届かない。
細長い通路を、ウイングハイロゥを慎重に調整しながら飛び進む。もっと確実に奪えるマナが必要だった。

「……?」
ふらっと目の前を横切ろうとする影が、何やら無造作に剣のようなものを振り回している。微かにだが、マナの気配。
得たり、とばかりに『静寂』は主の唇をぺろりと舌で舐めさせ、身体に秘められた水のマナを少しだけ解放し、獲物に向けて牙を剥く。
振り向く姿が人間のものでも、スピリットでももはやどうでもいい。暴走しかけている主の精神が渇望の障害とならなければそれで良い。
片目だけを大きく見開き、半身を沈め、手にした剣の先をこちらへと向ける標的へとただ殺到する。いや、"させる"。
「ッ……もうこんな所にまで来ましたか!」
「……」
主が修練してきた戦術指南によれば、あの構えでは切先直線延長上での攻撃以外、人の肉体では再現不可能。
『静寂』は右のウイングハイロゥだけを殊更に折り畳み、揚力の失った身体を長く続く右側の壁へと着地させ、そのまま駆けさせる。
斜め上方へと駆け抜け、標的の横を駆け抜け、何故このように無駄に高い天井なのかを理解しかねつつ跳躍し、
背後へと降り立つと同時に自らの刀身に先程引き出したマナを篭めて振り下ろす。人間の反応速度では、明らかに間に合わない。

425 :相生 Delphinium×belladonna [ :2007/07/01(日) 11:52:13 ID:e7KIsU2O0


「?!」
「ふむ、中々の完成品と見ましたが……少々、観察能力が不足しているようですねぇ!」
「……グッ! アッ!」
向かって右側、つまり相手にとっての左側を攻撃地点に選んだのには、さしたる理由が無い。
ただ単に主が自分を左手に持っていたので、反動を利用して威力を増すのには都合が良かったというに過ぎない。
しかし支配した主の肉体には規則"正しすぎる"呼吸や間合いがあり、標的がそういうものの機先を制する技量の持ち主であり、
更には標的は隻眼であり、この場合死角からの弱点攻撃がセオリーだという単純な戦法すら、主が気性として持ち合わせていなかっただけ。
そしてそれを『静寂』が悟ったのは、背後に降り立ったその瞬間、正に待ち構えていたかのような閃光弾が炸裂し、
爆風で互いに減速しながら反対方向へと離れていく際、光の中から飛来した小さな細いナイフのようなもので左肩の関節を打ち抜かれた後だった。

「ッ!!」
「貴女も、マナの使い方を知らない」
爆風の中、ソーマは既に反転し、まだ着地もしていないネリーの身に迫っている。
骨同士を繋ぐ腱は物理的に切断されており、『静寂』にしてみれば反撃するには自らを持ち替えて貰う必要があった。
だが、人間相手に、損傷を受けた身軽な身体は悲しいほど時間が足りない。
ソーマは先程と同じような刃物を懐から数本取り出し、取り出すと同時に放ち、それが面白いほどネリーの急所を貫いていく。
右大腿骨、左脇腹、右鎖骨、左大腿骨。知覚を越える痛みの増加に伴い戦闘能力は次々と失われていき、
最後に右乳房を拳で打ち抜かれた所で背中から冷たい石畳に落下した身体は華奢な四肢を放り投げたまま全く動けなくなった。
「……ぅ」
無意識にくぐもった呻きを漏らし、詰まった呼吸を取り戻そうと胸が軽く上下する。
『静寂』は判断した。依り代である彼女に死なれては、マナの蒐集どころではない。
このまま強制による支配を続けていては、肝心の肉体を構成する為のマナが欠乏してしまう。意志が、すっと後退する。
「……んぁ?」
「おや、"戻って"しまいましたか。いや、実に惜しい」
「――――ひっ?!」
こうして自我を取り戻したネリーが最初に見たものは、圧し掛かり、戦闘服の胸元を今正に引き裂こうとしている狂った隻眼の男だった。

426 :相生 Delphinium×belladonna [ :2007/07/01(日) 11:57:01 ID:e7KIsU2O0


「い、嫌ああぁぁぁぁっ!!」
びぃっ、と鋭い引き裂き音が、広い廊下へと響き渡る。
剥き出しにされてしまった素肌が当たる冷気で鳥肌を立たせ、男の顔からぼたぼたと滴り落ちてくる血液の熱さが気持ち悪い。
抵抗しようと身体を捻ろうとして全身を針のように刺す激痛に強制的に弛緩させられ、ネリーはあやうく気絶しそうになった。
「うあっ! あ、あ……ぅ」
「ほう、意外と幼い。しかし、生かしておいた価値はあります。才能がありますよ、貴女……ク、ククク」
「は、……放、せぇ……」
本能的な恐怖に駆られ、絶望的な強がりで睨みつける。
しかし涙を浮かべたSappheiros(サファイア)を想起させる美しい紺碧の双眸は、男に愉悦の表情を漏らさせてしまう。
ぐっ、と顎を仰け反らされ、それでも自由に動かせない全身が悔しい。事情は掴めないが、酷い事をされようとしている。
ネリーは動かない左手をそこだけぽっかりと空いている壁の穴に向けようと懸命になり、そして動かないと悟ると、泣きそうになりながら呟く。
「やだ、やだやだぁ……シアぁー……助けてよぅ……」
「そうそう、その怯えた顔が実に妖精風情にはふさわしい――――?!」
どん、と鈍い衝撃。
「ネリー! 見つけたぁ!!」
「チイィ!次から次へと! 全く、 しつこいですねっ!」
「ヤアァァァァッ!」
ネリーの開けた穴から飛び込み、咄嗟に翳したソーマの剣を弾いたのは、大きくウイングハイロゥを羽ばたかせたシアーだった。

427 :相生 Lemma [ :2007/07/01(日) 11:58:47 ID:e7KIsU2O0


当ても無い道を、少女はただ歩いていた。
否、そこは道と呼べるような代物ではない。
その証拠に、所々突き出した鋭い岩の尖端や突き出た枝々がゆらゆらと進路を妨げる。

 ―――― とうとう、止めを刺すことが出来なかった。

混乱が鈍い痛覚を呼び覚まし、寒さが失血による眩暈を引き起こす。
引き摺るように持っている神剣が酷く重い。偶然太い木の鋭い枝先が傷に食い込み、低く唸る。
元稲妻部隊だと思われるライトアーマーの少女から受けた脇腹の傷は予想以上に深く、
エトランジェが放った強烈なオーラはシールドハイロゥを展開する為のマナをごっそりと奪っていった。
片足の踝からは突き出した骨がぬかるんだ泥に塗れ、利き腕の指は4本に減ってしまっている。
しかし肉体的な損傷よりも、精神的な苦痛の方が遥かに大きい。このままでは戦闘が不可能になる、と唇を噛む。
「確かに、私も言われた筈……それも、何度も……何度、も……」
剣に、心を。ぶつぶつと反芻しながら、雨に濡れそぼる。陰鬱な光景の中に過去を照らそうと何度試みても、上手く行かない。
問題は、この神剣。細身を天に翳してみる。相手はブラックスピリットだったとはいえ、何度も間合いを読み間違えた。
それは微妙な誤差だったが違和感を感じるのには充分だったし、その兆候はブルースピリットの腹部を貫いた時にも感じている。
以前はもっと、深い間合いだった筈。容易に敵の反撃を受けるリスクの多い、こんな間合いでは。

 ―――― そもそも、どこで"ずれて"しまったのだろう。

ふと、そんな疑念が湧き起こり、少女は慌てて首を振る。一体何に慌てているのかも知覚出来ずに。
道は、次第に歩きやすく開けていく。その先に見える巨大な石造りの壁、そこから響いた爆発にも俯きながら歩く少女は気がつかない。

 ―――― ぱしゃり

水溜りを跳ねる音に、顔を上げる。壁を背負うように、そこには赤い髪を二つのお下げに分けた少女が立っていた。

428 :相生 Anthurium scherzerianum [ :2007/07/01(日) 12:02:22 ID:e7KIsU2O0


「あ、……えっと」
オルファリルは、当惑していた。
『理念』の導きに従い、崖を横目に周囲の気配に気を配りつつようやく辿り着いたのは、法皇の壁。
あまりにも複数の轟音と衝撃が響き渡り、肝心のネリーもどこにいるのか判らないままいつの間にか最前線まで来てしまった。
入り口も無く、また、入り口があったとしても流石に単独で侵入するつもりもなかったが、こうなってはここは行き止まり。
さて、右に行こうか左に行こうかと迷っていた所で背後に弱々しい気配を感じ、振り返ってみれば敵の少女。
しかもそのグリーンスピリットは既に戦闘を繰り返してきたのか身体中ぼろぼろで、剣を杖にやっと立っているという有様。
「……」
このまま先制を仕掛け、"やっつける"のは簡単だと思った。
しかし、どうしても腕が動かない。ヨーティアに言われた言葉が金縛りのような効果を発揮しながら耳の奥で鳴り響く。

 ―――― 気に障ったなら、いつでも殺していいんだよ

気に、障っていない。むしろ、可哀想という感情だけが優先して湧き起こる。
ふと、エヒグゥを思い出した。目の前の敵が、何故だか雨に震えていた小動物に被さってしまう。――怯え、警戒し。そして傷ついている。
そっと胸の奥から滲み出てくる不思議な感覚。ごくっと喉を鳴らし、半歩歩み寄る。すると相手も同じように、半歩下がる。
「……ね、やめよ?」
オルファリルは、囁く。敵意が無いと、慎重に伝えるように、身を屈めて。
「uuuuu……」
少女は、唸る。正体不明の意地に押され、ふらつく身体のマナを絞り集めて。

 ―――― ガッ!

429 :相生 Anthurium scherzerianum [ :2007/07/01(日) 12:07:08 ID:e7KIsU2O0


「っっっ!」
雨中を割いて一直線に突撃してきた少女の剣を、紫色の『理念』が受けた。
放出されたマナに空気が圧され、周囲の樹が張り巡らせていた枝々を次々とへし折っていく。
「ちょ、ね、やめようよぉ!!」
主の危険を悟ったスフィアハイロゥが殆ど自動的に防衛活動を示し、ひゅんひゅんとせわしく動き回る。
不規則に巡り、標準を合わせるのは"敵の"背中。ぎりぎりと憎悪に満ちた少女は気が付いていない。ただ目の前のオルファリルを睨んでくる。
『理念』から生み出される衝動は、より引き出す事は出来ても制御する方法などは知らない。今までの戦いで、そんなものは必要なかった。
これだけの敵意を剥き出しにされ、尚且つ自らの生命も危険に晒されているにも拘らず、遂にオルファリルは泣きそうな声で叫ぶ。
「やだ……やだやだ! このままじゃ、――――殺しちゃうよぉ!!」
皮肉にも、呼応したのは『理念』。
ぶわっと膨れ上がった火の属性がスフィアハイロゥを赤々と変化させ、詠唱も無く槍状に変化し、
その内の何本かがグリーンスピリットの弱々しいシールドに巨大な穴を開け、残りがそこに殺到する。
そこ、無防備に晒された胸の中央へと。フレイムレーザー。オルファリルは目を見開き、ひっと短く息を飲む。
「やだぁーーっっ!!!」
「永遠神剣『理想』の主として命ずる、不純物を除き、純粋なる元素へと姿をかえよ――――ピュリファイっ!!」
瞬間、炎の槍はただの熱量へと変換され、轟音と共にマナとなって霧散していた。
そして、そこに立っている。全体に白っぽいローブのようなもので雨を避け、不思議な混ざり合った色のマナを纏うスピリットの眷属が。

430 :相生 Anthurium scherzerianum [ :2007/07/01(日) 12:09:36 ID:e7KIsU2O0


「……間に合いましたか」
「っ! イオお姉ちゃんっ!」
「怪我はありませんね?」
唇の端だけで、イオは微笑む。元々白すぎる顔色は、今は戦闘のせいか、うっすらと紅を帯びている。
「お姉ちゃん……オルファ、オルファ……うわああぁぁぁぁんっ」
オルファリルは脇目も振らずにその胸の中へと飛び込むなり、わんわんと泣きじゃくる。
戦場が怖い、と思ったのは、初めての事だった。歩み寄ろうとした相手を殺そうとした恐怖の余韻が、今も体中を戦慄として駆け抜けている。
その心中を慮り、それでもそっと尋ねるイオの口調はあくまでも穏かだった。
「オルファリル……スピリットは戦う定め……嫌に、なったのですか?」
「ッッ……ううん、ううんっ! 違うよ! 違うんだよぉっ!」
激しく揺れるお下げの髪に手を伸ばしかけたイオは一瞬戸惑い、それから恐る恐る触れ、そして結局は優しく撫でる。
敵の少女は、もうこの辺りにはいない。ピュリファイの水蒸気爆発に紛れ、姿を消している。だが向かう先は、予測がついている。
空を仰ぐ。泣き止む頃には、雨雲も晴れるだろうと思いながら。

431 :名無しさん@初回限定 :2007/07/01(日) 12:11:32 ID:hfBiYfue0

最終C

432 :相生 Anthurium scherzerianum [ :2007/07/01(日) 12:14:21 ID:e7KIsU2O0


しかし当たり前すぎるイオのその予想は、数秒後には破られてしまう。
「――――行かなきゃ」
「……オルファリル?」
腕の中で顔を上げ、ぐいっと力強く涙を払うオルファリルがいた。唇をぎゅっと噛み締めている。
イオの目が大きく見開かれていく。目の前の少女の目元は赤く腫れたまま、年相応の幼さを残したまま。
にもかかわらず決意の篭ったPeigon's Blood(鳩の血の色)の瞳の奥には、深みのある大人びたイメージが被さっていく。
「オルファが行かなきゃ。教えてイオお姉ちゃん、あの子はどこ?」
「彼女は混乱しています。危険ですよ?」
「そんなのっ!……へへ、お姉ちゃんが言ったんだよ、スピリットなんだから、戦わなきゃだめ、なんだよね?」
「……私はヨーティア様に、貴女の保護を命じられてここへ来ました。必要ならば、障害は取り除かなければなりません」
「お姉ちゃんっ!」
「ですが、今の貴女には……もう、その必要は無いのかも知れませんね」
「あ……」
「急ぎましょう、リュートリア。彼女はおそらく、そう長くは保ちませんから」
「う、うんっ!……へ? りゅーと? なにそれ。オルファはオルファだよ?」
「……、あら? ふふ……さあ?」
首を傾げるオルファリルを先導するように、歩き出す。
誤魔化したイオにも、封印されていた間の記憶から綻びた発言の説明はつかない。
それよりも今は、与えられていた筈の命令に背いてまで行動している自分の足取りがこんなにも軽い。

433 :相生 Delphinium chinensis \ :2007/07/01(日) 12:18:12 ID:e7KIsU2O0


クォーリンの制止を振り切って無理矢理動かした身体は脇腹から胸に到達してまだ塞がってもいない傷と相混じり、悲鳴を上げ続けている。
それでもシアーはネリーの気配を懸命に捕捉し、辿り着いた。法皇の壁の内部、組み伏されていたネリーの元まで。
初撃で大きく吹き飛ばした人間は、剣を弾かれた衝撃からか手首を抑えて蹲ったまま動かない。警戒しつつネリーの側へと駆け寄り、抱き抱える。
「ネリー! 捕まえたよ? 今度こそ、今度こそ捕まえたよ!!」
「あ、あはは……捕まえられちゃった、のかな? 良く、判んないけど」
「もう……心配したんだよ? いっぱい、いっぱい心配したんだからぁ……」
「うん、ごめんね……ごめん……ふぁ」
「……? ネリー?」
腕の中で、ネリーはくたっと力を抜き、そのまま気絶していた。
呼吸の安定を確認し、静かに横たえ、そしてシアーは立ち上がる。身長に余る、『孤独』を片手で構えながら。
ぐいっと片手で拭ったネリーと同じSappheiros(サファイア)を想起させる紺碧の双眸で、一つの影を捉えながら。
唇を噛み締め、身体の震えを逃がす。見据えた先で、敵の男がゆらりと立ち上がっていた。
ずだずだに切り裂かれ、泥にまみれ、もはや防護としての役割を放棄してしまっている黒っぽい服。そこから剥き出した、無数の切り傷。
右肘から先が通常有り得ない方向へとへし曲がり、大きく腫れあがっている。そして片目からは、大量の血を流し続けていた。
「――――ヒッ」
シアーは、短く息を飲む。確かに、人間。なのに、怪物に見える。あんな怪我をしていたら、スピリットでも耐え切れない。
痛くはないのだろうかと、戦闘とはまた別の、異質な恐怖が身を竦みあがらせる。怨念のようなものが纏わり付いて、動けない。

434 :名無しさん@初回限定 :2007/07/01(日) 12:18:59 ID:oM1x+FKG0

|∀゚)

435 :相生 Delphinium chinensis \ :2007/07/01(日) 12:23:04 ID:e7KIsU2O0


怯える彼女をちらっと伺い、それから男はゆっくりと、落ちていた剣を拾う。
「ククク……怖い、ですか? 誰が、そんなものを、妖精に求めているのですか?」
「……ッ」
「ラキオスですか? それとも"世界"、ですか?……ほら、ごらんなさい。貴女が"壊した"のですよ。不遜にも、人間である私のこの腕を」
「ぁ……ぁっ」
ごきゅっ、と鈍い音を立て、肘から腕が"落ちる"。その腕をべしゃりと踏みつけ、そして踏んでから不思議そうに首を捻る。
鮮血が壁や床や男の全身へと飛び散り、辺りが俄かに色を取り戻す。無機質な灰色から、生臭い朱へと。
「おや、"治そう"と思ったのですが……まったく、役に立たない。まぁいいでしょう――――ハァッ!」
「ッッッ?!」
じりじりと後ずさっていたシアーは壁に背中を当ててしまい、びくっと震え、そしてその一瞬の隙に男は間合いを詰める。
シアーは、動けなかった。殺す事も、防ぐ事も、ましてや逃げ出す事も許されない。棒立ちのまま、近づいてくる切先を眺める。
「シアー! 目を瞑っては、ダメ!」

436 :相生 Delphinium chinensis \ :2007/07/01(日) 12:25:47 ID:e7KIsU2O0


「ッ――――青い、牙?!」
「アセリア!……うんっ!」
声は、同時だった。
ソーマは咄嗟に身を逸らし、『存在』の気配を避わす。
一度見た者なら誰でも恐れるだろう、白い甲冑が殺到してくる前にと。
「チィィッ!」
そしてそのまま、剣を持った姿勢から拳を石床に叩きつける。途端、今まで居た空間に、痺れる程強烈なマナの奔流。
圧力に押されながら2度3度廊下を右へと反転し、弾むように『存在』の影響圏外へと飛び、着地の際の衝撃は膝で逃がす。
片腕なので、左右のバランスが取り辛い。
「……拙い、ですねぇ」
他のスピリットならば、策はある。
しかしこのある意味単純過ぎる神剣の意志には通用しない。万全でも、まともに殺り合う相手ではないだろう。
淡々と呟きながら、ソーマは次の策を探る。今度は正面から潜り込むように襲い掛かる、涙目の少女が水平に薙ぐ大振りの神剣を目で追いながら。
「負けない! シアーは負けないんだからぁ! タアァァァァッ!」
「拙すぎますねぇ! 貴女も! マナの使い方が!」
『孤独』の潜在能力を最大限に発揮したフューリーは重厚な水のマナを纏い、威力は申し分無い。
しかし起動も軌跡も単純で読みやすい上、シアーは向かって"左"から薙いできた。
つまりソーマにしてみれば、避わす体捌きが自然にアセリアの射程圏内からもより遠ざかる結果となる。

437 :相生 Delphinium chinensis \ :2007/07/01(日) 12:29:01 ID:e7KIsU2O0


そして現実も、その予想通りに進行した。
流石に無傷でという訳にはいかず、力点を流すように受けた剣の衝撃から肘の骨が粉砕はしたが、それでも爆風と反動を利用して死角に回る。
丁度、アセリアが飛び込んできた穴の辺りへと。――――だがそこにはいつの間にか、待ち構えていたかのような緑色の髪。
「―――ナッ?!」
「間に合った……覚悟!」
シアーを追いかけている途中でアセリアと合流し、そのままウイングハイロゥで壁の内部へと運んで貰ったクォーリンの一撃は緑雷を纏っている。
「ッッ! あぐ、ぁぁぁっっ!」
大鎌のような神剣で弾かれたソーマの剣は地面に叩きつけられ、あっけなく"ひしゃげ"、ただの鉄の塊となる。
同時に、シアーの放った一撃で崩れかけた壁から飛び散った石片がばらばらと降りかかり、背中を痛めつけてくる。
もう痛覚なのか痺覚なのかすら判別不能な腕を庇いサイドステップを行なおうとしてバランスを崩し、そこでソーマはようやく悟った。
気を抜き、だらんと両腕を下げる。一瞬動きの止まった3人の訝しげな表情を順に眺め回しつつ。
「そのライトアーマ……クク、ライトニングス。なるほど、ここまでのようですねぇ」
稲妻の異名を持つ妖精は、確実に右目の死角に回りこもうとしている。正面からは気を取り直し、無言で突進してくる青い牙。
そもそももう、両腕が"役に立たない"。躊躇している暇は無かった。道具に止めを刺される、そんな屈辱を受け入れる訳にはいかない。

438 :相生 Delphinium chinensis \ :2007/07/01(日) 12:31:52 ID:e7KIsU2O0


「今回は私の負けのようです。まさか使う事になるとは思いませんでした……が、今日の所はこれで失礼させて頂きましょうか」
服の胸に仕込んだ最後の紐を、血溜まりになっている奥歯で噛み締め、引き抜く。
すると直後、背中に隠していた炸薬が爆発し、それを目晦ましと勢いに利用して、ソーマの身体は宙に舞った。
「ヒャァハハハ! 私は忙しいのでね! 次の作品を創り上げねばならないのですよ! いつまでも貴女達の相手をしている暇は……――――」
ネリーの開けた穴の外に放り投げられ、仰向けに落ちていく。高らかに笑い、鮮血を雨の上がった中空へと巻き散らかしながら。
「……逃がさない」
「アセリア、待って下さい! それよりネリーを! まだ、不安定だと思います」
「……ん」
「シアー、いらっしゃい。もう、大丈夫だから」
「……う、うん……うんっ!」
今更緊張が解け、かくりと折れる膝を抑えながら、シアーはクォーリンに抱きついていった。

439 :相生 Nerium indicum Mill \ :2007/07/01(日) 12:37:11 ID:e7KIsU2O0


光陰に抱えられたまま今日子と合流し、向かった壁への侵入ポイントで、ニムントールは信じたくない光景を見た。
「――――お姉ちゃん!」
大木の傍らで蹲っているファーレーンを見つけ、慌てて光陰の腕の中から飛び降り、駆け寄る。
肩からは夥しい血が流れており、顔色が紙のように白い。命に別状は無いようだが、早急な治療が必要だった。
「おいおい、こりゃまた派手にやられたもんだなぁ」
「ッッ!!」
「おっと、睨むなって。大丈夫だ、全員生きてる」
丘の中腹で倒れているセリアの首筋に当てていた手をおどけるように上げた光陰が、そのまま肩を竦める。
同じように丘の側面で気を失っているハリオンとヒミカを看ていた今日子が立ち上がり、周囲を見渡していた。
その間に光陰は奥まった崖の側で屈み込み、ウルカの失われた足首に対してトラスケードによる応急治癒を試みている。
「うん、こっちも大丈夫、気絶しているだけよ。でも驚いたわね、この5人がここまで、その」
「ああ、言いたくないが、マロリガンじゃ結局誰も倒せなかった。しかも、あの時よりも嬢ちゃん達は確実に強くなっている」
「複数?」
「判らんな。気配は感じなかった。けど、複数なのを祈るぜ。漆黒の翼を倒した奴がもし単独だとしたら、敵には絶対に回したくない」
「……」
二人の冷静さに呆れながら、ニムントールは急いで緑のマナを『曙光』から引き出している。
しかし苦手意識のせいか、まだエスペリアやハリオンに比べ、回復魔法はぎこちない。焦っている分、時間もかかる。
もっと『曙光』に意識を集めて、と懸命に自分に言い聞かせていると、
「ねぇ、ニムントール?」
「後は任せたぜ」
「〜〜っ」
背後から二人同時に声を掛けられ、集中を邪魔される。かっとなったニムントールは振り返り、
「――――ぁ」
そこで初めて、妖精部隊の集団に取り囲まれている事に気づいた。意志の無い目が数え切れない程こちらを見据えている。

440 :相生 Nerium indicum Mill \ :2007/07/01(日) 12:45:54 ID:e7KIsU2O0


ぽかん、と一瞬口を開きかけたまま呆然としていると、光陰の背中がゆさっと動き、それでようやく現実感も戻ってきた。
「神仏は見捨ててなかったようだぜ、良かったな今日子。どうやら団体様のおでましだ」
「そんな事言って、アンタの煩悩が呼び寄せてるんじゃないでしょうね……ニムントール?」
「……え? あ、うん?」
「悪いな、俺らはちっとばかし忙しくなりそうなんだ。頼りになる仲間は全員すっかり熟睡してるときてるしな」
「だから、片っ端から起こしてちょうだい。なるべく早い方が助かるかも」
「約束だ、その間の時間は稼ぐ。だから……頼んだぜ!」
「いい、遅刻したら後でキョウコお姉さんが、きっついお仕置きあげるからねっ!」
二人は周囲を圧するオーラを身に纏い、一斉に逆方向へと飛び出す。ニムントールを中心に、丁度円を描くように。
一度だけ振り向いた光陰が、にっと笑いながらつき立てた親指。ニムントールは真っ赤になりながら、叫ぶ。
「っそっちこそ! 約束破ったら、酷いんだからねっ!!……そうじゃないと、……寝覚めが悪いし」
胸に、熱いものが流れてくる。勢いにまかせ、振るう『曙光』。詠唱が滑らかに空気を満たす。
「神剣の主が命じる。マナよ、癒しの力となれ!」
いつもより少しだけ高揚した問いかけに、戸惑いつつも強い輝きを見せる『曙光』。
主の瞳や髪の色と同じ、濃いEmerald(エメラルド)に秘められた癒しの光が分散し、盾となり仲間達を包み込んでいく。

441 :相生 Lemma \ :2007/07/01(日) 12:49:59 ID:e7KIsU2O0


先を急いでいたオルファリルは、急に立ち止まったイオに気づかず森の奥へと駆けていった。
その背中を見送り、別の方角へと、イオは駆け出す。
壁の方から察知した二度目の爆発が、『理想』を通じて彼女に再びの任務を与えていた。
すぐに聳え立つ石壁が開け、その前へと向かい、複数のスピリット達が集まってきている。全て、敵だった。
「上、ですね。ここで逃がすのは、ヨーティア様の本意ではありません……ハアァァッ!」
敵は全員、一目散にある一点を目がけ、駆けつけようとしている。到達が、最終目的であるかのように。
操られている瞳には、感情という色が無い。イオはその全てに焦点を合わせ、光輪を変形させ、"全ての色"を開放する。
緑には、赤。赤には、青。青には、黒。黒には、緑。それぞれの属性を操り、負荷に耐え、唇を噛み締める。
「マナよ、我に従え!」
短く区切った詠唱は『理想』から迸り次々と群がってくる少女達を薙ぎ倒していく。そしてその度に、彼女に掛かった制限が身を蝕む。
頭の中がぎりぎりと細い縄で締め付けられていく感覚。駆ける足が覚束無くなっている。一瞬が、数刻にも思えた。
「――――どきなさいっ!」
血みどろになって襲い掛かるレッドスピリットは『理想』の抉りで打ち払い、
瞬時に身を屈めて頭上を掠めるブラックスピリットの刃はシールドハイロゥで避わす。
追い越し、ウイングハイロゥを広げようとするブルースピリットをテラーで打ち落とす。
その間にも仲間をフォローしようとするグリーンスピリットの眉間はファイヤーボールが焼き尽くしている。

442 :相生 Lemma \ :2007/07/01(日) 12:54:05 ID:e7KIsU2O0


「はぁっ、はあっ……ここっ!」
戦いの中、唯一冷静を保っていた理性が悲鳴を上げている。それでもイオは走り続け、最後の敵を倒した所で膝を付く。
壁までは、数メートル。この地点で間違いは無い。白いローブが泥に塗れ、荒い呼吸が力を奪い去っていく。
限定された力で属性を放出した代償で、余力は殆ど残されてはいない。もう、顔を上げる事も叶わなかった。
無理をして突破したせいか、僅かな時間で身体中では様々な裂傷や火傷が血をマナに変え、皮膚を赤く爛れさせている。
そもそも"現役"である彼女達に対し対抗し得たのは短期決戦だったからで、人間に毛の生えたような程度の持久力はとうに払底し尽くしていた。
だが、まだ、これ位の事は出来る。震える腕で『理想』を地面に打ちつけ、刃を空に向け、両手でがっしりと固定する位の事は。
「っっっ!」
そして、耐えた。直後、落下してきたソーマの身体を『理想』が貫く衝撃に。

どん、という鈍い音。

443 :相生 Lemma \ :2007/07/01(日) 12:57:30 ID:e7KIsU2O0


「……ハァー?! ァ、アァァッ?!」
頭上から響く、断末魔。加速度の加わった重量に、びりびりと震える刀身。
そのすぐ傍で、有り得ないものを見たかのような獣染みた形相の隻眼。ずぶずぶと未だ沈みつつある肉塊。
イオは俯いたままプラチナブロンドの髪を揺らし、ぜいぜいと息を切らせ、小さく一言だけ囁く。
するとまだ生きていたのか、口から細かく淡い血を吐いていたソーマ・ル・ソーマは微かながらにも反応を示す。
「な、に?」
「――――任務、完了、と言ったのです」
「……! お、まえ、」
ばたばたと頭上から降る粘ついた血の雨が、髪や顔や全身を隈なく朱へと染め上げていく。
イオは唇を噛み締め、その陵辱を必死で受けた。ともすれば蘇ってしまいそうな恐るべき過去にしっかりと封印を施そうとするかのように。
ややあって、自分に止めを刺した相手の正体をようやく悟ったソーマは口元を泡立てながら、最後の台詞を放つ。
「あ、あれ程の仕打ち、に会い、ながら……に、にく、憎しみも、も、持たない、とは……ヒャ、ハハ、す、素晴らしい!」
片目だけの瞳に憎悪を剥き出し、空を掻き毟る。その度に『理想』が揺れ、しがみつくような格好のイオの額からはじわりと汗が滲み出す。
「本当に、カハッ、素晴ら、しい! 愚かで……そして、最、高、傑作、で、すよ、……貴女は」
びくり、と大きく全身を痙攣させ、そして永久に光が失われる左眼。
気配が完全に事切れている事を確認し、イオはようやく腕の力を解放し、その場にどさりと横たわる。
「は、あ、熱い……"帰ったら"、お許しを頂かないと……」
雨は止み、雲の切れ間からは陽光も差し込んできている。

444 :相生 Anthurium scherzerianum \ :2007/07/01(日) 13:02:05 ID:e7KIsU2O0


濡れた雑草を掻き分けつつ先を進んだオルファリルは、切り立った崖の傍で敵を防いでいるナナルゥと遭遇している。
壁を背にしている姿を見つけ、何故敵の施設を守るように戦っているのかと疑問に思いながらも即座に『理念』を振るう。
「ナナルゥお姉ちゃん?! マナよ、神剣の主として命ずる その姿を火球に変え敵を包み込め!」
「マナよ、炎雷となりて敵を撃て ライトニングファイア!」
咄嗟に唱えた神剣魔法が、偶然ナナルゥの詠唱と重なる。放たれた赤い槍は数体のスピリットを戦闘不能にさせていく。
しかし意外な方向からの攻撃で予想外の損害を被ったものの、敵の数は依然として多い。
僅かに乱れた陣容の隙間を縫い、身を屈めたオルファリルはナナルゥの元へと駆け寄る。彼女は肩で呼吸をしていた。
「……はぁ、オルファリル、何故ここへ?」
「ふぇ? 何故ってええっとぉ。ナナルゥお姉ちゃんこそ、なんで1人なの?」
「任務ですから」
「任務?」
「ええ、任務です」
ナナルゥは斜め上方へと顔を上げ、壁の上部をちらっと見つめる。
つられて見上げたオルファリルの視線の先には、ぽっかりと空いた穴。丁度先程までイオと居た辺りだった。
「――――あれ……イオお姉ちゃん?」
「? イオが、どうかしましたか?」
「あ、ううん。……まずは、やっつけちゃわないと。ヤだけど、そうしないといけないんだよね」
「……よく判りませんが……貴女は、本当にオルファリルなのですか?」
「へ?」
戦場にはおおよそ似つかわしくない、空々しい空気が流れる。ややあって、ふと柔らかいものに変わる、ナナルゥの目元。
しかし一瞬の変化だったので、オルファリルは気が付かない。ただ、瞳をくりくりと回しながらナナルゥを見つめる。

445 :相生 Anthurium scherzerianum \ :2007/07/01(日) 13:07:52 ID:e7KIsU2O0


「……なんでもありません。道は、私が作りましょう」
「え、え? ちょっと」
オルファリルが戸惑う隙にも、ナナルゥの詠唱は始まっている。
残ったマナを全部注ぎ込むようなスフィアハイロゥの輝きが赤い後ろ髪を長く靡かせ、乱れた気流が戦闘服を波立たせる。
動揺の走った敵が、一斉に向かってきた。『消沈』の唸りが木々の間を伝播して梢をびりびりと震わせ、咆哮する。
「消耗が激しいので使いたくは無かったのですが……止むを得ません。危険ですので下がってください」
「う、うわわわっ!」
「敵を……焼き尽くします。アークフレア!!」
数間の間に敵が到着するのと、オルファリルが身を伏せたのと、天が鳴動したのと、衝撃が地面を揺るがしたのが同時だった。
無数の灼熱が大気を覆い、気圧を倍以上に膨張させ、耐え切れなかった熱量が爆発しながら降り注ぐ。
貫かれ、一瞬で蒸発した敵の悲鳴すら、圧迫された鼓膜の影響か聞こえない。オルファリルは必死で頭を抱えながら、驚く。
「こんな、こんなの、知らないよぅ……」
初めて悟った。自分の神剣魔法など、本気になった大人達に比べれば児戯にも等しい、と。
焦げ臭い匂いが周囲に立ち込め、振動が収まった頃、鋭い声が頭の上から響く。
「行きなさい!」
「ハ、ハイッ!」
ぴょんと反射的に飛び起き、焼けた黒い地面を駆け、振り向く。まだ数人残っている敵の間から、"あの"ナナルゥが軽く手を振っていた。

446 :相生 Delphinium×belladonna \ :2007/07/01(日) 13:10:57 ID:e7KIsU2O0


深い眠りにつこうとして、揺り動かされる。
明晰と、混濁の狭間。その両端に向け、行ったり来たりを繰り返す。
空間と呼べるようなものはどこにもない"空間"。漂いながら、ネリーの意識は呼び止められる。言語ではない、純粋な別の意識に。

≪マナより生まれ出ずる存在≫
「……ネリーのこと?」
≪守りたい、それが衝動≫
「……そうだよ、そうじゃないと、泣いちゃうもん」
≪喜ばせたい≫
「もっちろん! 笑ってくれた方が、ネリーも楽しいに決まってるじゃん」
≪悲しませるのが、辛い≫
「あ、でも最近さ。いっつも寂しそうにネリーを見てるんだ……どうしてなのかなぁ」
≪マナより生まれ出ずる存在が喜ぶべき自由≫
「? それって?」
≪マナを、得る≫
「う〜ん……そうなのかなぁ」
≪得る為には≫
「敵さんを、倒す?」
≪答えは自ずから≫
「そっか……そうだよね。それならシアーも守れるし」

447 :相生 Delphinium×belladonna \ :2007/07/01(日) 13:15:46 ID:e7KIsU2O0


猛烈な黒に覆われつつある『静寂』とネリーを前に、アセリアは脂汗を流していた。
合わせた『存在』を介入して同期を得ようとどんなに歯を食いしばっても、拒絶されてしまってそれ以上"進めない"。
このまま時間だけが空しく過ぎ去ればネリーがどうなってしまうかは、あまりにも自明すぎて想像するのも恐ろしい。
平時は滅多に変わる事の無い表情に、珍しく焦りの色が浮かんでいる。
「くっ、うっ」
「……アセリア?」
「アセリア……大丈夫だよ、ね?」
「んっ……難しい」
シアーの治療が終わり、二人が駆け寄ってくる。
だが、振り返る余裕も無い。アセリアは、そのハイロゥリングを精一杯に輝かせながら懸命に精神を集中させていた。
しかし皮肉な事に『静寂』の黒はより一層光を飲み込みつつあり、その対称が芳しくない状況を如実に物語ってくる。
目を閉じたまま横たわっているネリーの髪が次第に黒ずんでいくのを見つけたシアーが小さくひっと悲鳴を上げた。
そっと隣から覗きこんだクォーリンも小さく息を飲み、瞳の色を深刻なものに変える。
シアーは『孤独』を脇に抱えたまましゃがみ込み、そっとネリーの頬に触れる。桜色の肌がじっとりと汗ばみ、震えていた。
「ねぇ、ねぇ! どうしたの?! ネリー、起きてよぉ!」
「これは……共振が。このままでは……シアー?」
「ふぇ?――――ぁ」
半狂乱で泣き叫ぶシアーの肩をそっと叩いたクォーリンが示していたのは、自らの神剣。
「――――うんっ!」
唇をぎゅっと噤んだシアーは大きく頷き、『孤独』を手に取り答える。
そうして神剣を軽く打ち合わせた二人は、そのままゆっくりと『静寂』へと近づいていく。
「ごめんなさい。私はきっと……手助けしか出来ないと思う」
ぎゅ。
「ううん、いいの。それだけで」
シアーはいつの間にか、初めて会った時のようにクォーリンの服の裾を握っている。震えている指まで同じに。
「それだけで……怖く、ないから。だから……シアー、強く、なれるの」
「……いってらっしゃい」
「……うん!」
『孤独』の刃の中程が『静寂』と交わりかちりという軽い音が響く。
そしてそれを最後に、シアーの意識は水と大地のマナによって広く深い"空間"へと送り出されていた。

448 :相生 Delphinium×belladonna \ :2007/07/01(日) 13:18:45 ID:e7KIsU2O0


≪守る為の力≫
「欲しい……かなぁ」
≪より強い力≫
「あのさ、強くなったら……シアーをもっと守れる? もう、泣かさないで済む?」
≪委ねる≫
「へ?」
≪我に、心身を委ねる≫
「そうなの? でもそれじゃ、ネリーは?」
≪答えは自ずから≫
「……それで、シアーは笑っていられるんだね?」
≪もとよりマナより生まれ出ずる存在≫
「……っ、……っ、……わかっ」
「――――駄目ぇっ!!!」
「……シアー?!」
「駄目だよぅ、ネリー、負けちゃ、駄目だよぅ!」
「ちょ、なんでここに? なに言ってるのかわかんないよ」
「ネリー、忘れてる。今、何をしようとしたの?」
「何って『静寂』にもっと頑張って貰って……ぁ」
「……思い出した?」
「ぁ、ぁはは……そっか、そうだよね。そっか、駄目じゃん」
「うん……そんなの違うよ。強くないよ」
「う〜ん……ネリーがいなくなったら、シアー、泣いてくれる?」
「ッッ! 駄目だよぅっ!!」
「あははっ、やっぱそっかぁ。……うん。じゃあさ、シアー、手伝って?」
「……辛い、よ?」
「うん、頑張ってみる。シアーとずっと笑っていたいから」
「ネリー……いく、ね?」
「うん、お願い……ふくっ!? ア、アアアアァァァ――――」

449 :相生 Delphinium×belladonna \ :2007/07/01(日) 13:22:04 ID:e7KIsU2O0


「……落ち着いた」
「……もう、大丈夫ですね」
お互いの額に浮かぶ汗を見つめ合いながら、アセリアとクォーリンは呟く。
辺りには4本の神剣から迸ったマナの余韻が粒子となって立ち込め、息苦しさの替わりに細胞の隅々までもを活性化させていた。
先ほどまで細かく痙攣を起こしていたネリーの身体は今は落ち着き、穏やかな呼吸を繰り返している。
散らばってはいるが、髪も寄り添うシアーとお揃いの、鮮やかなサファイアへと戻っていた。
やがて同じ色の睫が同時に震え、2人はゆっくりと瞳を開く。目覚めるタイミングまでもが一緒だった。
「んぁ……ふああ」
「あむ……ヤシュウゥ……」
「起きた」
「ふふ、ヤシュウゥ、シアー」
「あれ? アセリア。それにクォーリンも?……そっか、ネリー」
「ん。ネリー、よく頑張った。偉い」
「あ、はは……えへへぇ」
いきなり褒められ、頭まで撫でられ、ネリーは照れた。その隣では、シアーがじっと黙ったまま様子を窺っている。
起き上がり、『静寂』を掴もうとして視線に気づいたネリーはそっと手を差し伸べる。まだ少し、震えていた。
「……うん。もう大丈夫。みんな、ごめんね。ネリー、もう負けないから」
「良かった……良かったよぉ……」
「わっ、わっ、と、ちょ、シアー?」
裾を握り締め、それから抱きついてきたシアーを慌てて受け止めるネリーの片手で、『静寂』が柔らかく輝いている。

「……クォーリン」
「そうですね、行って下さい」
二人の様子を相変わらずのぼーっとした表情で見つめていたアセリアが、突然ぴくりと反応を示す。
門の方角を睨み『存在』を構えなおすその態度に、同じように気配を探っていたクォーリンも同意を示して頷く。
「彼女達は私が。急がないと、正門の方が危険です」
「ん……頼む」
言うや否や、アセリアは壁廊を西へと飛び去っていた。後には白い羽だけが舞い残される。

450 :相生 Delphinium×belladonna \ :2007/07/01(日) 13:26:59 ID:e7KIsU2O0


「ネリー、少し良いですか?」
「ふぇ、なに?」
これまでの経緯を簡単に説明されながらシアーから貰った予備の結い紐で後ろ髪を縛り付けていたネリーは、
癒しの詠唱を施された後、クォーリンに訊ねられている。彼女は緑色の前髪を指で弄りつつ、どこか少し躊躇いがちに囁いていた。
「正直に言いますと、今はこれ以上貴女達を戦わせたくはありません。ですが、その」
「……? ネリー、もう大丈夫だよ? ね、シアー?」
「う、うん……『静寂』の気配、もうおっきくないの」
「あ、えと、心配はしていないのですけど。いえ、心配は心配なのですけれど、そうじゃなくてですね。ええと……ウイング、ハイロゥ」
「ハ?」
「……?」
ネリーとシアーは顔を見合わせ、そして再びクォーリンを見上げる。
すると何故か彼女の顔は茹蛸のように赤くなっており、しずしずと伸ばされた細い指が遠慮がちに二人の翼を指していた。
「あったりまえじゃん。どしたの、今更」
「う、うん……クォーリン?」
「えっとですから……わたし、飛べないんです」
「え?」
「実は今、丁度この下でナナルゥが頑張っているというか、私が置き去りにしてきたせいなのですけど元はといえばシアーを助ける為にやむを得ず」
「……良く判んないけど、急いで飛び降りて助けないといけないんだよね」
「あ、はい! その通りです!」
「でもクォーリン、飛べないの」
「はうっ」
「はは、変なの〜。そんなの恥ずかしがらなくてもいいのに」
「いいのに〜」
「だ、だってそんなの子供に頼むなんて恥ずかし……ぇ」
「行っくよー!」
「ちゃんと、つかまってるの」
「あ、そ、そんな急に、きゃあぁぁぁっ」

451 :相生 Delphinium×belladonna \ :2007/07/01(日) 13:30:41 ID:e7KIsU2O0


問答無用で両脇を掴んだネリーとシアーがウイングハイロゥを大きく開き、そして数秒後、3人は降り立つ。
丁度複数の妖精部隊に肉薄され、そのうちの1人の斬撃を『消沈』で受け止めようとしたナナルゥのすぐ隣へと。
「はああっ」
「てりゃああっ」
「いやあぁぁっ」
地上に着地した3人は同時に敵を切り伏せ、そしてナナルゥを守るように取り囲む。これが本来のレッドを擁したスピリットの戦法。
そして当のナナルゥといえば、突然の味方の支援にも驚きを微塵も見せず、ただじっとネリーの後ろ髪を凝視している。
「なに? ナナルゥ。びっくりしたぁ?」
「貴女は、ネリーですね」
「……ハイ?」
再び訪れる、戦場には相応しくない気まずい空気。
一度小さく頷いたナナルゥの表情には、何故か納得したような清々しさが見て取れる。

452 :相生 Bidens atrosanguineus \ :2007/07/01(日) 13:36:12 ID:e7KIsU2O0


気を失っていたヘリオンは、頬を叩かれる感触に薄っすらと瞼を開いている。
耳元では、いやに間延びのする聞き覚えのある声が囁かれ続けていた。
「ヘリオンさぁん、起きて下さいなぁ〜。起きないと、あぶないですよぉ〜」
「ぅ、あ? ハリオン……さん?」
目覚めると、緑色の光。癒しのハイロゥ。心地良さに、目を細める。すると、ゆらゆらと歪んだハリオンの顔が覗き込んでいた。
「ふぁぁ〜。ニャヒュゥゥございまふぅ……」
「あらあらぁ、知りませんからぁ」
「ヤシュウゥじゃないわよ」
「あゔっ!」
セリアの肘がまともに後頭部へと突き刺さる。

「あたたた……あれ? セリアさん。私……あっ!」
「ようやく目が覚めたようね」
目から火花が飛び散る程痛い。しかしそのお陰で意識ははっきりとしてきた。
肩の痛みが引いている。見ると、ほっとしたような顔のハリオンとセリアが並んで転がっていた。
「……転がって? なんでそんな所で寝てるんですか?」
「……寝起きの所悪いけど、冗談に付き合っている暇はないの。寝てる訳じゃないわよ」
「私もぉ、セリアさんもぉ、敵に吹っ飛ばされてしまったんですよぉ〜」
「吹っ飛ばっっ……こほん、悔しいけど、間違ってはいないわね。私は丁度良いクッションがあったけれど」
そう不貞腐れるセリアの肘は、未だにヘリオンの後頭部の上に乗っかったままである。
「治癒魔法の使いすぎで、もう疲れちゃいましたぁ〜」
「はへ?……あ! そうですっ!」
がばっと立ち上がり、もう一度見渡す。目の前には焼けた一本道が広がり、その奥には小高い丘が拓けている。
『失望』に頼るまでもなく、敵の気配が明滅を繰り返していた。肘を下ろしたセリアが疲れたような口調で漏らす。
「仕方ないわね。どうしてここに来たのかは後でしっかり聞かせて貰うけど……後は、任せたわ」
「……は?」
「敵さんはあと少しですからぁ〜。早く壁を陥とさないとぉ、ユート様達が大変ですぅ〜」
「あ、は、はいっ! わかりました!」
状況はいまいち理解しきれていない。しかし、為すべき事は理解できた。
ヘリオンはぴょんと敬礼らしきものを見せ、セリアが飛ばされて来た焼け野原の上をウイングハイロゥで滑空していく。

453 :相生 Bidens atrosanguineus \ :2007/07/01(日) 13:41:05 ID:e7KIsU2O0


見送ったセリアは心底嫌そうな顔でハリオンを見つめている。
「それにしても。当分貴女と二人きり、なんてね」
「いいじゃないですかぁ〜。動けない者同士、仲良くお話でもしましょう〜」
「……だから、何でそんな呑気な顔でいられるのよ、こんな切羽詰まった状況で」
「信じていますからぁ〜」
「……」
「ん〜?」
「……くす。そうね」
「はいぃ〜」
スピリットは類い稀なる能力の持ち主とはいえ、その持久力には限界がある。
神剣魔法も斬撃も、マナが枯渇しては個体の維持すら覚束無い。そして、二人の存在必要マナは、もうぎりぎりの所まで来ていた。
エトランジェに救われ、ニムントールの支援によりある程度は回復したが、それまでのダメージの蓄積が
次々と現れる新手の敵に対して対処しきれなくなり、マナを惜しんだ防御の隙間を狙われ、今はこうして草叢の中、横たわっている。
そのお陰で偶然倒れているヘリオンと遭遇する事は出来たが、ハリオンがアースプライヤーを唱えた所が限界だった。
肝心な所で動けなくなり、こうして待つだけの身が歯痒く、そしてこんな時にまで泰然としているハリオンが頼もしいとセリアは思う。
前方から響く轟音や振動に身を任せ、そっと目を閉じた。『熱病』を握り締める手に冷たい汗を滲ませながら。

454 :相生 Bidens atrosanguineus \ :2007/07/01(日) 13:45:14 ID:e7KIsU2O0


「おっ……っと、危ね。あー、こりゃやべぇな」
展開している精霊光の盾が、急速に縮んでいく。黄緑に輝くそれを恨めしく眺めながら、光陰は『因果』を脇に引き寄せた。
こちらは消耗し、相手は新鮮になる。とんでもない持久戦だった。敵は、残り少ない。しかし、こちらも体力が残り少ない。
ファーレーンとヒミカは一人の敵に手こずっている。相手も手負いだが、それ以上に彼女達の動きも緩慢だった。
「てやああぁぁぁ!」
ウルカはまだ気絶したまま。今日子は坂を縦横無尽に駆け回っているが、もう雷撃は放てない。
細身のレイピアのような形状の『空虚』ではマナを纏わずに敵に止めまで刺すのは難しく、自然防御が多くなる。
そして自分に向けても、今は四方からじりじりと敵が迫って来ている。体術を駆使しても、急場を凌げるかどうか。
今日子を助けに行きたくても、ここをまず突破しなければ話にもならない。
細かく計算すればするほど八方塞りとなりそうな展開に、光陰は舌打ちをする。
「ちぇっ。本来俺は、こういった役回りには向いていないんだけどなぁ」
「……文句、言わない」
とん、と背中を押す体温に、我に返る。そう、もう一人居た。傷だらけのくせに、変に強情を張る妹みたいな少女が。
光陰は、へへっと口元を緩ませる。すると、小さな頭は軽くこつん、と再び背中を押してくる。
「ニムが、守ってあげる。それとも、不満?」
「とんでもない、上等だ。ニムントールちゃんがいるなら百人力だぜ」
「ヒャク……? 良く判らないけど、ちゃんって言うな」
「まいったね。こんな所でへばってる場合じゃないってか?」
「ん〜?」
「痛っ! 悪りい悪りい、ただ、ちょっとな」
少しでも会話を流すと背中合わせの姿勢からでもぐりぐりと『曙光』の柄を押し付けてくる。
判り易い感情表現に、何となく気分が解れてきたような気がして、光陰は笑う。
『因果』を握る手に力が戻る。まだ、動ける。身体に沁み付いた修練の成果も、ちゃんと足を肩幅と同じ自然体へと保っている。
「アイツの気持ちが判っただけさ。勝てなかった訳だ……行くぜっ!」
「あ、ちょっと。……思い切り、いく。悪く思わないで!」
同時に、最初に間合いに入ったブルースピリットへと、神剣を振るう。黄緑のオーラと緑のハイロゥが、少しだけ大きくなっていた。

455 :相生 Bidens atrosanguineus \ :2007/07/01(日) 13:50:21 ID:e7KIsU2O0


「たああぁぁぁっ!」
混戦の中に飛び込んだヘリオンは、まずファーレーンとヒミカを翻弄しているブルースピリットを鞘ごと振りぬいた『失望』で気絶させ、
派手に土砂を撒き散らしながら急制動をかけ、反転して木の間を抜けると今日子が切り裂いたシールドハイロゥの隙間から、
突然のブラックスピリットの闖入に驚いたグリーンスピリットが繰り出してきた蹴りを避わしつつ、膝で顎をかち上げている。
「――――ヘリオン? どうしてここに?」
「話は後です! 神剣よ、我が求めに答えよ、彼の者に潜み、その力を抑えよ!」
反転しながらマインドブレイクを唱える。目の前に黒い球体が複数浮かび上がり、次の瞬間には無軌道に飛びまわり、
それぞれが光陰とニムントールを追い詰めていた残りの敵の神剣に吸い込まれ、マナを拡散させながら崩壊してゆく。
「おっ、助かる!」
「……やるじゃない」
唐突にマナを失い、肉弾戦を余儀なくされた敵は怯んだ隙に、『因果』の旋回によってあっという間に叩き伏せられていた。

456 :相生 \ :2007/07/01(日) 13:53:34 ID:e7KIsU2O0


「あー、帰ったらエスペリアのハーブでも飲みたいな」
蜜に群がる蟻のように巣から溢れ出て来る敵に、悠人は呆れながら軽口を叩く。
「ふふ、とっておきを淹れて差し上げます。疲れが取れる薬効の」
「うげっ。それってこの前のやたらと苦かったやつじゃないだろうな」
雨が上がり、視界は良くなった。
しかしそれは逆に、今までどれほどの敵が門前に伏せていたかをも明らかにしてしまっている。
どう見積もっても、想定の数倍。予想の甘さは常に事態が顕われてから、危機という形でその身を襲う。
「くすくす、どうでしょう。また、当てて下さいましね」
「ちぇ、またそうやって。俺をからかって楽しいか?」
アセリアが去ってから、既に数刻。
同じように背中合わせの体勢は保ってはいたが、二人とも服は焼き爛れ、全身は無数の裂傷と泥と土埃に塗れと、酷い格好である。
「ええ、とっても。お悔しいのでしたら、早くリクェムを食べられるようになって下さいな」
切り裂かれ、最早戦闘服としては役に立たなくなっているメイド服の隙間から見える火傷に手早く治癒魔法をかけながら、エスペリアが囁く。
長かったスカート部分は、動きの邪魔になるからといって自ら引き裂いてしまっていた。メイドキャップは弾かれ、どこに飛んだか判らない。
「いや、あんな苦いもの、食べなくたって生きていけるって」
所々血のこびりついた羽織りを肩の動きだけで脱ぎながら、悠人が言い訳を試みる。
爆煙と雨と泥でべたべたになってしまった髪をわしわしと掻き毟ると、砂に混じっていた金色のマナが手の中で消えていく。

457 :相生 \ :2007/07/01(日) 13:58:08 ID:e7KIsU2O0


「またそんな、オルファみたいな我儘を言って。いいですか、リクェムは」
「おっと待った、その話は"後"で聞くよ。……まだ、大丈夫か?」
「はい。たった今、約束を頂きましたから。必ずですよ、"後"でしっかり聞いて頂きますから、ね?」
「……ああ。もうちょっとだけ、頑張ってくれ。頼む」
悠人は、東の方角を睨む。森の奥、残り少なくなった敵の気配の中、弱々しく移動する味方の気配。
立ち聳える法皇の壁を望む。雲が晴れ、合間から差し込む陽光。そして、その中に感じた。力強く輝く7色を。
「勝たなきゃ、な」
「……当たり前、です」
目を瞑り、こつん、と頭を背中に預けたエスペリアが合図。
「……行くぞっ!」
「はいっ!」
門の前に密集している敵へと並んで突入しながら、どういう訳か二人は戦いの先に見える勝利を確信していた。

458 :相生 \ :2007/07/01(日) 14:02:33 ID:e7KIsU2O0


ニムントールは、何故か光陰に膝枕をしてしまっている。
「あー、もう身体が動かねぇ」
「ちょちょちょちょっと! 離れなさいよ!」
「ちょっと光陰、嫌がってるじゃないの」
「今日子、お前は労いって言葉を覚えた方がいいな。もう限界なんだよ〜、ニムントールちゃん」
「くぅ〜〜〜〜っ」
「ふぅ、何が労いだか。勝手になさい、知らないから」
「でも珍しいわね、ニムがここまで気を許すなんて」
「ゆ、許してなんかないぃっ!」
「そんな真っ赤になるほど嫌なら、振り落とせばいいじゃない」
「セリア、そんな乱暴な。ニムも好きで大人しく座っているのですから」
「お、お姉ちゃん?!」
「ぷるぷると震えて、何だか微笑ましいですねぇ〜」
「うわっ、うわっ、そうなんですか? ニム、いつの間にコウイン様と」
「だから違うって! これはその、し、仕方なくなんだから!」
「またまた、恥ずかしがる事なんか無いぜ。なにせこれで俺達の仲はファーレーン公認と」
「〜〜〜! こ、こ、このぉ〜〜」
「あ」
「あーあ」
「ごっ! ちょ、待っ! 許しぶべらっ!!」
「馬鹿じゃないの! 死ねっ! やっぱりコウインは、クトラ死ねっ!」
「あああニム、止めなさいっ! それ以上は本当に死んでしまいます!」
「じゃあ、ホントに死んじゃえぇっ!」
「ああああぁぁあぁぁっぁぁ……――――」
「……馬鹿。言わんこっちゃない」
「……馬鹿?」
「馬鹿ね」
「お馬鹿さんですねぇ〜」
「あわわわわコウイン様がお星様に」

459 :相生 \ :2007/07/01(日) 14:08:03 ID:e7KIsU2O0


「敵……そこっ!」
アセリアは単騎、螺旋状の階段に弧を描く粒子を撒き散らしながら、滑空していた。
たまに遭遇する敵を『存在』の一撃で打ち払いながら、門を目指す。『静寂』から吸収したマナが咆哮を呼び込む。
「てやああぁぁぁっ!」
アセリアの場合、戦場では、スタンドアローンで動いた方がより"青き牙"としての本領を発揮する事が出来る。
ましてや今回はこの殺所に到るまで殆ど戦闘をしていない。いわば温存された水のマナが惜しげもなく放たれていく。
「――――ハァッッ!」
気合を入れる度、轟音と共に亀裂が入る壁。
途中、酷く不愉快に思えた空室を衝撃波だけで吹き飛ばしていたが、別に剣に支配された訳ではなく、ただ何となく。
そこが腐臭漂うソーマの部屋だったとは、知る由も無い。1階に降り立ち、T字廊下の左右を鋭く見据える。敵は、居ない。
「ん、待ってろ」
両肩に力を込め、最大限のウイングハイロゥを展開する。即座に室内を光で満たす白銀の『存在』。
踏み込んだ石畳がぼこりと放射状に凹む程の勢いで、身長をゆうに超える翼を舞い躍らせ、見通しの良い通路を迷わず西に飛翔する。
間を置かず見えてくる、街道へと通じる唯一の連絡口、大手門。数人のスピリットが驚いてこちらを振り向き、剣を構えているのが判る。
アセリアは、躊躇せず飛び込む。くすんだ分厚い門扉の向こうで奮闘を続ける、良く知った気配を2つ確かに感じながら。

460 :相生 \ :2007/07/01(日) 14:14:58 ID:e7KIsU2O0


漫才みたいなやり取りの末ぼこぼこにされた光陰は急に真面目な顔を作り、殊更声を低くする。
「いいか、ヘリオンちゃんもニムントールちゃんも、ここで待機だ」
「何格好つけてんのさ、頭こぶだらけにしてるくせに」
「痛てっ! ちゃかすなよ今日子。……こほん、ともかく。これ以上戦闘に参加させたら、俺が悠人に殺されちまう」
「わ、私、まだ戦えます!」
「ヘリオン殿、手前が言った事を失念してはいませぬか?」
「あぅ……」
「いいわね、ニム」
「……うん」
「よし、もう作戦もへったくれも無いが、とりあえずは突入だ。多分、敵ももう残り少ない」
「うん。悠が引き付けてくれているわ。こっちもくたくただけど……行くわよ!」
光陰を先頭に、頷いたセリア、ハリオン、ヒミカ、ウルカ、今日子の順に歩き出す。
皆振り返らず、そのまま壁の内部へと吸い込まれていった。ふと、顔を上げたヘリオンが呟く。
「ぁ……雨が」
「……いつの間に」
ニムントールが猫のように目を細め、手を翳す。陽光が、雨に濡れた草葉を眩しく照らし出していた。


戦いは、終局へと向かう。

461 :相生 Lemma ] :2007/07/01(日) 14:16:26 ID:e7KIsU2O0


  ――――帰らなければ。

満身創痍のグリーンスピリットは、ただそれだけを考え、彷徨っていた。正確には、考える事で何かに縋っていたとも言える。
出撃時にはあれだけ光を漲らせていた大地の加護は今や存在を維持するだけで枯渇に耐えている状態であり、
スピリットの特徴であるハイロゥリングが消えかかっているのも本人の意志によってではない。
不思議な事に、マナの放出を必要以上に抑えようと働いているのは彼女の持つ神剣の方だった。
淡く緑色に輝く刀身から、剣の持つマナが緩やかな水の流れのように次々と少女の体内に吸い込まれ、相対的に神剣の輝きは鈍くなっていく。
ずだずだに切り裂かれたり焦げ付いてしまった戦闘服やニーソックスはともかく、その癒しの力は彼女の生命的な危機だけは辛うじて回避させていた。
しかし肝心の少女の精神は焦点の定まらない視線を漂わせ、戦闘によって凹凸の激しくなった地面に向かい、ふらふらと惰性のように足を運ばせる。
怪我に対する痛みも既に感じてはいないので、自らが持つ神剣の不思議な意志などは、特に気にも留めない。
「帰って……回復しなければ」
こんな不可解な精神状態からは開放される、そう思い詰め、向かう。出撃してきたあの場所へ。薄暗い、天井がぎしぎしと鳴っていた陰湿さの中へ。
急に勾配がきつくなり、石に躓き前のめりにバランスを崩す。濡れた木の枝が後ろ髪に引っかかり、拍子にぽとり、と目の前に何かが落ちてきた。
少女は反射的に屈みこみ、それを拾い上げる。
「……ぁ」
掌に収まる程度のそれは木製の楕円で、中央に丸く穴が穿たれている。
じっと眺めていると、ふいに胸の奥でざわめく何か。突き上げるように駆け上り、視神経を刺激してゆく。

462 :相生 Lemma ] :2007/07/01(日) 14:20:10 ID:e7KIsU2O0


「マナヲ――――」
しかし、その原因を特定する為の時間が与えられる事は無い。
皮肉にも、ようやく抜けたゆるやかな勾配の先で。
まだ戦いの惨禍に巻き込まれることから逃れていた樹木の隙間に窺えるのは、彼女の神剣が今もっとも欲しているものを瑞々しく保有している存在。
「――――ウバエ」
瞬時に、別の意志へと切り替わる心。少女はもう限界を超えている脚の筋肉に命令を告げる。跳ねろ、と。

463 :相生 Nerium indicum Mill ] :2007/07/01(日) 14:23:34 ID:e7KIsU2O0


「……ふぅ」
二人きりになり、特に会話も無くヘリオンから少し離れたニムントールは、
度重なる戦闘により半ばから圧し折れ、焦げ付いた樹木の幹にそっともたれかかっている。
「……コウインなんか、乗っけたから」
膝が、細かく震えている。聞こえないような声で悪態をついてはいるが、この場合は肉体の方がより正直だった。
朝から始まった戦いは既に午後へと突入しつつあり、そのような長時間に及ぶ戦闘はニムントールにとっては初の体験。
ここまでの持久力を想定しての訓練メニューをこなしてもいなければ、最年少の未成熟な身体がそれに耐えうる程の天性を持ち合わせている訳でもない。
油断すると折れそうな膝を懸命に騙し、なんとか姿勢を維持しているだけで精一杯である。
切れそうな呼吸を規則的に保とうと努力をしつつ、暗雲の隙間からようやく差込み始めた日光をもう一度見上げ、目を細める。
「……」
正直、立っているのが辛い。
しかし今目の前には、同年代の仲間がいる。それも、結構元気そうに。そんな場で座り込むなどは、負けん気の強いプライドが許さない。
まだ疼く、回復したての踝を軽く見えない角度で浮かす。僅かな動きでも、直前の戦闘で負った生傷があちこちから痛みのシグナルを送ってくる。
そっと二の腕を擦ると、そこにも生々しい斬り傷があり、白っぽい脂肪が見える程深い。そもそも、無傷の部位を探す方が大変だった。
使いこなせる数少ない癒しの神剣魔法をそっと試してみたが効き目は薄い。思わず顔を顰めてしまう。
『曙光』に残されたマナが残り少ないのは、色あせた緑色にぼんやりと明滅する刀渡りの輝きでも窺い知れる。
「く……こんな、時に」
仲間内でも最も小柄な彼女の肉体には、戦闘に必要な体力やマナの貯蓄量が元々一際少ない。
それは生来のもので、決して彼女のせいではなかったが、それでもニムントールは舌打ちをする。
突き上げてくる疼痛にただ耐えることでしか応える事が出来ず、思うように動いてくれない身体に対して理不尽な想いを抱きながら。

464 :相生 Nerium indicum Mill ] :2007/07/01(日) 14:27:56 ID:e7KIsU2O0


「――――?」
そうして髪を整える振りをしつつ襟元の傷跡を改めて確認するべく、崖に向けていた顔を動かそうとして、不審な表情のまま視線だけが止まる。
「……っ危ない!」
それは今までどんな場合でも、1歩離れた位置から傍観する姿勢を崩した事のなかった彼女が、いつの間にか無意識に持ち合わせていた感情。
飛び出そうとする敵に"より近い位置に立っている"ヘリオンの更に前面へと、ニムントールは跳ねている。

465 :相生 Bidens atrosanguineus ] :2007/07/01(日) 14:33:07 ID:e7KIsU2O0


勾配の中腹、樹木の高低差にはっきりと区切られた右手から飛び上がるように発生した旋風(つむじ)のような緑色の残像。
そして、少し離れ、樹にもたれかかり休んでいた筈のニムントール。
それぞれが前面に押し出したシールドハイロゥは正面から激しく衝突し、弾けたマナが眩しく飛び散る。
目前で畳み掛けるように展開される事態に意表をつかれたヘリオンは、半ば呆然と対処も出来ず佇む。
大気が歪む程の波が空気を伝播しつつ土を削り、土砂を巻き起こし、次の瞬間には旋風に身を突き上げられてしまう。
「きゃあっ! あ、ああっ!」
そこでようやく悲鳴らしきものが唇から飛び出した。
何が起こったのかが、理解できない。咄嗟に片手で顔を庇い、利き腕で『失望』を掴む。
脚を踏ん張ると、腕の隙間から垣間見える、きりきりと回転しながら吹き飛ばされる"物体"。

「――――ニム?!」
互いが持つ防御壁の反発力がそのままの威力でそれぞれの肉体へと返っている。
敵のグリーンスピリットとニムントールはぶつかりあったゴムマリが丁度見せるような物理現象に実に忠実に、
接触した角度の分だけ回転力へと変換されたシールドハイロゥの威力により独楽鼠のように錐揉みを繰り返し、
衝撃の際に砕けたマナの欠片に全身を切り刻まれながら、突入したのとはほぼ逆方向へと吹き飛び、深い崖へと吸い込まれていく。
ヘリオンの眼前で渦を成しているのは、その余波で生じた緑色の切れ端、赤い霧。
そしてそれらが紛れも無くニムントールから"ばら撒かれた"戦闘服や血液だと悟ったその刹那。ヘリオンの思考は停止した。

466 :相生 Bidens atrosanguineus ] :2007/07/01(日) 14:36:55 ID:e7KIsU2O0


「う……うわあああああっ!」
ハイロゥリングを白翼へと変化させ、大きく羽ばたかせる。無我夢中で、地面を蹴った覚えすら無い。
黒い戦闘服が残像を残し、残された空間へと大気の流れを急がせる。『失望』の鞘の末端から、乗せきれなかったマナが溢れ、迸っていた。
襲撃してきたグリーンスピリットは空中で豹のように身を翻し、大木に着地すると同時に膝で衝撃を逃がし、
屈んだ姿勢から神剣を突き出すように構え直し、反動に撓む樹木から砲弾のように勢い良く撃ち出されようとしている。
まだ遠心力に従う直前の血液やマナが飛び交う中で、全身に深手を負いながらも爛々と獲物を追い求める姿は、獰猛な猛禽類を連想させていた。
「はあああっっっ!!!」
ヘリオンは確かに、"彼女"を視界の片隅で、静止画像として捉えていた。
しかし構わず背を向け、飛ぶ。すると即座に頭の中で鳴り響く声。珍しく高揚した『失望』の強制力が働き出す。

  リィィィィン……――――

それが背後からの脅威に対しての警告だとは、判っている。
しかし、ニムントールの意識が途絶えているという事をも同時に理解していたヘリオンは、
殆ど反射的に、生まれて初めて『失望』の声よりも自らの意志を優先させる事を選んでいた。
「! 『失望』、ごめん! お願い!」
――――追撃を受けるのならば、追いつかれなければよい。
一層加速度の加えた身体が気圧に耐え切れなくなり悲鳴を上げ始め、長く伸びたツインテールがぴん、と真っ直ぐ後方へと引っ張られる。
崖の上空で仰向けになり、止まっているように見えるニムントールに追いつくと、両腕で小さな頭を抱え込むように抱き締め、翼を捻った。
所々鋭い岩が剥き出しになっている崖の壁面を削るように滑空し、衝撃を逃がしながら減速しつつ上昇する。

467 :相生 Bidens atrosanguineus ] :2007/07/01(日) 14:42:12 ID:e7KIsU2O0


  リィィィィン……――――

「はぁっ……はぁ、はぁ」
どさっ、と投げ出されるように丘の上にまで戻ってきた時には、ニムントールを庇った両腕とニーソックスはずだずだに引き裂かれていた。
まだ濡れている土や草が、小石までもが潜り込んで傷だらけの四肢を鋭く刺激し、痛ませ、呻き声を漏らさせる。
「ふぅ……いたたぁ……ニム?」
「……ゔ……ぅ」
血の滲む腕の中に収まっている、小さな身体を覗きこむ。
ニムントールは頬にも痛々しい裂傷が走ってはいたが、その睫毛は呼びかけにぴくりと反応を返した。僅かだが、呼吸も確認出来る。
「ほっ……良かった……"あの子"は!?」
出来るだけゆっくりとニムントールの身体を横たえながら、急いで顔を上げる。
上半身を起き上がらせるだけで支えの両腕に激痛が走ったが、不幸中の幸いというか、焦りが痛みを棚上げにしてくれている。
「ふぇ……あれ? え? なんで?」
垂れ下がった両お下げの間には、意外な光景が顕われていた。

「もーっ! 怒っちゃったんだからぁっっ!!」
いつの間に現れたのか、敵の突進を受け止めた巨大な紫の刀身が大気を圧倒するように旋回している。
丁度、地面すれすれに高速運動を繰り返すスフィアハイロゥがぶおん、と重い音で目の前を横切っていった所だった。
神剣魔法の詠唱が風に乗って流れてくる。遅れてやってきた猛烈な突風を浴び、ヘリオンは咄嗟に前髪を抑えていた。
『マナの支配者である神剣の主として命ずる――――え?』
しかしそこで突然詠唱は中断してしまう。そして何故かその背中には動揺が走る。
「っいけない!」
慌てて片足を立て、居合いの構えに移行する。『失望』の柄越しに、傷だらけになってしまった白い膝小僧が見えている。

468 :相生 Anthurium scherzerianum ] :2007/07/01(日) 14:45:30 ID:e7KIsU2O0


大きく迂回し、何度も転びながらようやく駆けつけた草叢の向こうに複数の仲間と巨大なマナの気配を感じたオルファリルは、
咄嗟に『理念』の両刃を鋭く後方へと振りかざした反動で前方へと飛び、そこで再遭遇を果たしたグリーンスピリットの刃を受け止めている。
「はっ! く、あううっ!」
樹の幹からの反動を活かしたグリーンスピリットの強襲は重い。その上、マナの威力も加算されている。
重量では圧倒する『理念』でもその衝撃はとても受け止めきれず、気を抜くと弾かれそうになってしまう。
オルファリルは両手で『理念』を水平に翳し、両脚を大きく踏ん張り、歯を食いしばる。
目の前では火花のように迸る炎のマナと緑のマナが眩しく忙しく飛び交い、地面には自分の爪先が刻む真っ直ぐな溝が黒々と延びていく。
「っ、っ……こんのおっ!」
「ッッッ?!」
「やめなさいって……言ってるでしょおっっ!」
「――――グアアッッ!」
『理念』の左切先が斜めに沈み、勢いを流されかけたグリーンスピリットの身体が大きく泳ぎ、脇腹が開く。
そこにオルファリルの左膝が食い込み、グリーンスピリットは大量の空気を吐き出し、呻きながら吹き飛ばされた。
そして次の瞬間、片足だけで一旦離れたオルファリルの周囲には、ふたつの巨大なスフィアハイロゥが出現する。
「もーっ! 怒っちゃったんだからぁっっ!!」
まだ宙に浮き、壊れた人形のように歪んだ顔を向けるグリーンスピリットに対し、『理念』を垂直に翳して両手をその間に伸ばす。
すると呼応したスフィアハイロゥは急激にその様態を換え、赤く分散しながら空中に浮かんだ紫色の刀身へと吸い込まれていく。
「マナの支配者である神剣の主として命ずる――――」
かっとなったせいか、無意識に発動する詠唱。
不思議に『理念』は大人しい。これなら、と意識の片隅で、照準だけは周辺に留める。殺す気は無い。
「――――え?」
しかし、威嚇攻撃を放とうと真っ直ぐに突き出した両腕の間から思わず漏れるのは、疑問符。
こちらを向いた、虚ろな瞳。殺意の中に哀しみのような色が混じる少女の眼差しから溢れるのは、透明な雫。

そして、畳み掛けるような偶然は、オルファリルを更に混乱させる。

469 :相生 Anthurium scherzerianum ] :2007/07/01(日) 14:51:51 ID:e7KIsU2O0


躊躇した手元の向こうを横切るようにぴょん、と跳ねてきたのは白い生物。
何を思ったのか、現れたエヒグゥはそこでようやく縮こまり、周囲に漂う殺意から身を守ろうとするかのように動かない。
「っ?! 危ないよぉっ!!」
オルファリルは悲鳴のように叫び、膝を屈め、素早く捕まえグリーンスピリットから背を向ける。
当然手放されたままの『理念』が戸惑うように中空でその身を小刻みに震わせていた。
その間に着地し、姿勢を整えたグリーンスピリットは、姫貝細工のようにマナを迸らせながら"最後の"攻撃を仕掛けてくる。
「っっあうっ!!」
一瞬の隙を逃さず放たれた蹴りは、少女の剥き出しの骨が自身の勢いによって砕かれてしまう程容赦が無い。
背骨を圧し折るような衝撃が襲いかかり、吹き飛ばされ、地面に叩きつけられたオルファリルは軽い脳震盪を起こす。
「……ぅ゙」
「マナヨ、ワレニシタガエ……」
緩やかに、そして滑らかに始まる詠唱に、オルファリルは為す術が無い。
遠く響く韻律と薄い緑色に包まれ、重力を無視して浮かび上がる小石の群れ。
全身に痛みと痺れが走り、髪留めが外れ、長い髪も散り散りに解けてしまう。
覚束無い足取りのグリーンスピリットが、『理念』を奪いあげているのも視界の片隅から垣間見えた。
「……えへへ……大丈夫だよ……絶対に、守、る、から……」
それでもオルファリルは腕の中で縮こまった自分よりも弱い存在、エヒグゥへと微笑みかける。
エスペリアをして"完璧"とまで言わしめる、赤い瞳の黄金率をほんの少しだけ崩しながら。

「てりゃああああっ!」
「はああああっっ!」
白翼が2対、別々の方角から舞い踊るのを感じていた。

470 :相生 Delphinium×belladonna ] :2007/07/01(日) 14:57:28 ID:e7KIsU2O0


脂汗が額を流れ落ちていく。氷のような呼吸が冷たく喉を刺す。
この戦場に降り立ってから、再び鎌首をもたげてきた『静寂』の衝動。

すぐ隣にいるシアーに対して、ネリーは常に背中を向けていた。指先の震えを悟られないように。
「つぅ、くぁっ……ホント、辛いなぁ」
数間向こうの前面を覆い尽くす崖。その壁面からせり出し肉の厚い葉を自由気儘に広げている樹木を見上げる。
あちらこちらに潜み、無差別な殺意をぶつけてくる瞳、気配。その一つ一つを、確認するように探っていく。
「あれも……違う。ええと……痛ぅっ!」
しかし、理性的な思考を試みようとする度に、阻害するかのような強制力による激痛が襲いかかる。

(もうっ! 『静寂』、うるさいっ!)
ネリーは、気がついていた。いや、精確には直感で確信していた。
これまでずっと大人しかった『静寂』がケムセラウトに着いて以来こうまで唐突に性質を変え、繰り返し干渉をしかけてくるその理由に。
今も感情を平静に保とうとするだけで邪魔をするように襲ってくる鋭い頭痛。急に、ネリーの感覚では"我儘"になり始めた衝動の意識。
それらの事実を並べ、推論をした訳でも無く、考察した訳でもなく。ただ、原因だけにはおおよその見当が付く。
「――――これっ!」
そして、ようやく"見つける"。
振幅の波が一際激しく、思わず意識を真っ白に塗り替えられてしまいそうになる程の気配。非常に"近い"想い。
ぐっと舌を噛んで耐え、崖の先を見上げ、きつく睨みつける。そこに在る、『静寂』が"共鳴している"緑"の波動を。

「あ痛っ! あっ……あたたぁ……へ、……へへへ」
「……どうした、の?」
異変を感じたシアーが振り向くのが、背中越しにでも良く判る。周囲に対して、異常なまでに過敏になっている神経。
身体中のマナが全て戦闘用に置換されていく。快楽信号が全身を駆け巡り、殺意と引き換えに意識を譲り渡せと迫り来る。
手放せば、それが代償になる。それでシアーも守れる。誘惑が本来の潜在能力と混ざり合い、『静寂』の干渉を心地良いものへと換言する。
「でも、さぁ。……それじゃ、泣くんだよ、ねぇ」

471 :相生 Delphinium×belladonna ] :2007/07/01(日) 15:03:25 ID:e7KIsU2O0


  パシッッ……――――

丈夫な糸が張力に耐え切れず千切れるような。短く区切る、閃光のような音がネリーの深層で響く。
切所に於いて制したのは、単純に結晶化された思考。"泣かれるのは嫌だ"、という、宿主の根本的な拒絶。
引き出された『静寂』の残力がネリーの身体へと逆流し、敵を威圧する程の巨大なウイングハイロゥを現出させる。
「っ! わ、わわ、ネリー?!」
「はあぁぁぁっ! いっけぇーっ!」
正に飛びかかって来ようとしていた敵の機先を制するようなタイミングはおおよそ偶然だったにせよ。
破壊衝動でもなく、殺意でもなく。ただ純粋に、もうこれ以上は泣かせないという、ただそれだけの為に。
共鳴の"根源"へと、ネリーは白翼を羽ばたかせる。そしてそれは、紛れも無く"ネリーの意志"だった。

風を巻き上げ、発生した乱気流が木の葉を無数に舞い上がらせ、それに乗じて突っ切った崖の上空。
静止した空中で目標の少女と、そのすぐ側で動かないオルファリルと、立ち向かおうとしているヘリオンを見る。
髪の毛に絡みついた木の葉や露や土埃などは、気にもならない。どうせ滑空してしまえば、全部振り切れる。
「てりゃあぁぁぁっっ!」
ネリーは、突っ込んだ。『静寂』を両手で引きつけ、恐らく一撃では難しいであろう狙いだけに焦点を定めて。

472 :相生 Delphinium chinensis ] :2007/07/01(日) 15:07:48 ID:e7KIsU2O0


虫の知らせ。
眼前で、大きく羽ばたくウイングハイロゥ。
シアーは真っ先に確認し、そしてほっと息を付く。翼の向こうで自由に靡くのは、見慣れた鮮やかな蒼のポニーテール。
「……うんっ」
頷き、即座に重心を低く取る。両手で握った『孤独』を水平に保つ。
大きく身体を捻ると、たちまち風は切り裂かれ、水のマナをたっぷりと保ったまま、砲塔のように旋回する刀身。
先程の戦闘中、半ば無我夢中で放った技。
それがフューリーと呼ばれている、属性を"練りこんだ"非常に高度な剣技であるとは、シアーは知らない。
「! シアー、それはっ!」
「大丈夫……だよっ!」
背後から投げかけられるクォーリンの切迫した声色を、はっきりとした口調で抑える。
シアーには、確信があった。それは、"自分の剣技は未熟である"、という唯一点。
とてもの事、ここまで膨大に集積してしまった『孤独』の全ては制御出来ない。
暴れまくる気流が渦を成し、圧縮して熱を放つ。両手持ちの柄で、接触した部分からは焦燥のような意識が流れ込んでくる。
ごめんね、シアーは心の中でそっと謝る。
こんなにも巨大な潜在能力を秘めながら、主の能力に制限されている『孤独』の意志に。
こんなにも巨大な破壊力を持ちながら、未だ強制らしい強制を働きかけてこない、優しく利発な意志に。
「でも……いつかっ」
凝縮され、具現化し、もはや質量まで持ち始めた青と白の粒子の塊。
神剣との相互干渉により目まぐるしく体内を駆け巡るマナが自然と生み出したウイングハイロゥを大きく広げ、輝かせる。
「てやあぁぁっっっ!!」
残像を捉えきれた者が果たして何人その場に居たのかは判らない。
しかし確かにシアーは左側へと大きく跳躍し、着地した地面を大きく削り、無数の砂礫を舞い散らせていた。

473 :名無しさん@初回限定 :2007/07/01(日) 15:10:02 ID:fDKZwIxU0

乾綱支援剣!!

474 :相生 Delphinium chinensis ] :2007/07/01(日) 15:12:57 ID:e7KIsU2O0


シアー達は法皇の壁を背に敵と対峙し、つまりは出立してきたケムセラウトの方角へと体を向け、
右手と前方に大きく切り立つ崖に囲まれた袋小路のような窪地で拠点防衛戦闘を行なっている。
ただし拠点単独では意味は無く、戦略的な観点でのみその価値は評価され得るべきもの。
一方、レッドスピリットは地勢上、左手街道方面にしか進撃は出来ない。そういった立場を保ち、ナナルゥは依然防御を続けていた。
壁を神剣魔法で破壊し、侵入してしまうのは簡単だが、構造物の爆発で目立つ上単騎突入では各個に待ち受けられ、戦線自体が崩壊する。
むしろナナルゥとしては、何故こんなにも敵に後方に回られてしまったのか、そして重圧が時と共に増していくのか、
そういった疑問の方が先刻から幾度と無く脳裏に浮かび上がり、仮定を繰り返しては消えていた。
ただ、スピリットである以上、与えられた使命を全うする。それが最優先事項なのには変わりは無い。
その為に、底を尽きそうになる自らのマナと相談しつつ最も効率の良い撃退法を考えるので精一杯だった。
「……なるほど」
しかし、そのナナルゥでも思わず意表を突かれ、唸らされてしまうほどの意外な解決法が、目の前に提示されようとしていた。

475 :相生 Delphinium chinensis ] :2007/07/01(日) 15:14:11 ID:e7KIsU2O0


「てやあぁぁぁぁぁっっ!!」
一足飛びに仲間と離れたシアーは渾身の力を篭めて『孤独』を振り切る。
目標は、まだ見ぬ気配を殺した敵が多数潜んでいると思われる、せり出した崖に群生している木々。ただ、完全な指向性は期待できない。
飛び去りつつあるネリーの翼を指標にしながら、そのすぐ下方を左右に割るような勢いで『孤独』を咆哮させる。
妖精部隊の反応は、速かった。しかし、砲弾のように撃ちこまれたフューリーは彼女達の肉体よりも、精神に衝撃を与えてしまう。
シアーの身長程にも膨れ上がったマナ結晶は剣先の動きに呼応するかのように、最初に打ち込まれた崖の岩肌から右へ一文字を描き、
その途中で葉を散らし、枝を圧し折り、幾人かの不幸な逃げ遅れた妖精部隊の四肢を奪い去っていた。
更には氷の炎がその通過点の一切を薙ぎ払い、後に残るのは黒々と刻まれた燻りのみ。
龍の鈎爪で引き裂かれたような大きな溝と、焦げ臭い匂いが場の空気を一時的に沈黙で支配する。
しかし、その程度の事で残存する妖精部隊の濁った瞳の奥に蠢く神剣の欲望は止まらない。
被害を防いだ大勢がシアーに憎悪と攻撃の焦点を定め、前傾姿勢から崖を足場に踏み出そうと脚に力を篭める。

  ズ……ズズ、ズズズ、ズズズズゥ……――――

476 :相生 Delphinium chinensis ] :2007/07/01(日) 15:16:35 ID:e7KIsU2O0


「……ッッ!」
集団が、集団ごと錯乱を生じてしまうシステム。
それは、極微細なきっかけが増幅しながら伝播してしまうパニック。
足に、力を。敵の思惑は、根底がまず崩れ出す。朝から振り続けていた雨は、地盤を緩み切らせてしまっていた。
自重に耐えかねた彼らが"引金"を引かれる事によって決壊する堤防のように自由落下を選んでも、なんら不思議は無い。
直後、些細な崩れは波のように広がり、崖を形成している土や石や接触しているあらゆる物へと次第に拡大し、伝わっていく。
真っ先に異変を感じ取り、振り返ったレッドスピリットは落下してきた岩石に頭蓋を割られた。
降り注ぐ土砂にシールドハイロゥの間に合わなくなったグリーンスピリットは鋭く折れた大木に背中から貫かれた。
速度を生かし、土砂崩れを逃れようと飛び出したブラックスピリットはクォーリンの鎌のような神剣の餌食に。
抗神剣魔法を唱える暇すら与えられなかったブルースピリットはナナルゥの炎で焼かれ、そのまま強制的に土葬され、マナへと還る。
そうして、轟音と、押し殺された悲鳴と、舞い上がる土煙と、視界の悪くなった戦場と――――後に残るのは、大きく変化した地形のみ。

惨劇が生じる直前、シアーは小さく呟いている。
「クォーリン」
「……あ、は、はい?」
「ごめんね……後はお願い」
告げるや否や、シアーはウイングハイロゥを羽ばたかせていた。
崖の上、強烈に自己主張を繰り返している複数の気配。『孤独』が鋭敏になっている今だからこそ判る、幾つかの感情。
短く刈り込んだ髪の隙間からきらきらと輝く水のマナが、眼下で金色に変わる敵の姿と混ざり合う。
ぐっ、と、せりあがりそうになる嗚咽を喉の奥に抑えようと、必死だった。

477 :相生 ] :2007/07/01(日) 15:26:10 ID:e7KIsU2O0


正門は、砕かれた。
突如内部から突出してきたたった1騎のブルースピリットの為に、小隊ごとに密集していた妖精部隊の陣容は見事に覆えされてしまっている。
名状し難い混乱が遂には同士討ちまでをも呼び込み、街道を次々と黄金色へと彩っていく中、悠人とエスペリアは夢中で駆けた。
マナの渦が舞い上がる、その中心で銀のつるぎを風のように踊り振るう仲間の元へと。
「……アセリアっ!」
「ユート、こっち」
「行きますっ!」
合流した3人は、同時に頷く。
壁へと突入する直前、悠人は振り向き、一度だけ大きく『求め』を振りかざした。
エトランジェの持つオーラを一筋の光として大気中へと放出する。それが合図となっていた。
隣で支援を行っているエスペリアがシールドハイロゥで防ぎ、舞い降りたアセリアが敵の最後の殺到を蹴散らす。
「……よしっ! アセリア、もういいぞ! エスペリア、壁の構造は判るか?!」
「勿論です! こちらへ!」
侵入した、薄暗い石造りの内部。陽光も届かない硬質な空間で、『献身』が淡く緑色に灯る。
柄を脇に抱えたエスペリアが軽く微笑み、先を促す。アセリアは黙って頷き、入り組んだ奥に隠れる階段へと先導する。
悠人はぽん、とエスペリアの頭を撫で、大きく頷く。少し驚き、そしてはにかみながら、エスペリアも続いた。

478 :相生 ] :2007/07/01(日) 15:30:57 ID:e7KIsU2O0


「呆れるわね」
まだ抵抗を続ける残存部隊。その戦闘意欲に感心を示した訳ではない。
その一人、地盤もまだ定まっていない残骸の中から飛び出してくるブルースピリットの一撃をシールドハイロゥで弾きながら、クォーリンは呟く。
肉体は大きく損傷し、戦闘に回せるマナももう殆ど残っては居なかった筈。なのに、あの活き活きとしたウイングハイロゥはどういう訳だろう。
先ほどのフューリーといい、あの小さな身体の一体どこにそんな力が、と苦笑せざるを得ない。
体勢を崩したブルースピリットの足元を巧みに攻め、氾濫し、そして干上がった川の跡のようになった斜面へと押し付け、当身で気を失わせる。
「……次っ!」
度重なり持続する戦闘は、収束を見ない。従って、マナの無駄遣いは一切出来ない。存在必要マナの制限が迫っている。
威圧するようにびゅんっ、と鋭く振りぬく神剣は気性が荒いという程ではないが、マナが枯渇すればスピリットとしての戦闘力は失ってしまう。
「マナよ、炎のつぶてとなれ 雨の如く――――」
「駄目っ! ハアアッ!」
シアーが引き起こした崩落で、集団戦術の取れなくなった妖精部隊を虱潰しのように倒していくのが、戦略レベルの欲求。
それでもクォーリンは、効率良く敵を殲滅出来る神剣魔法を唱えようとするナナルゥを制し、自ら前に出ては体術のみで叩き伏せる。
「共鳴……そう、心って……強いのですね」
シアーの『孤独』はネリーの『静寂』に呼応して、強くも弱くもなっている。その振幅が、クォーリンには羨ましい。

479 :相生 ] :2007/07/01(日) 15:32:57 ID:e7KIsU2O0


屋上へと続く石段を警護していた数人の妖精部隊に進路を阻まれた光陰の表情には、焦りの色が浮かぶ。
「くそ、我ながら、間抜けすぎたな」
抜け道を潜り抜けた壁の内部は酷く狭く、こちらの方が多数なのにも拘らず、その一部しか戦闘には参加出来ない。
今、敵ブラックスピリットの相手をしているのはヒミカだが、スピリット同士の戦いに必要な空間はそれで精一杯。
巻き込まれての同士討ちを考慮に入れれば後に控えるセリアには補助魔法を打ち出す自由も与えられず、見守る以外に手の打ちようがない。
皮肉にも衝撃に充分耐えうる壁下部の複雑すぎる構造が奇襲を成功させ、そして敵の遅滞行動にも一役買っている形となっている。
「俺もまだまだだぜ、ったく。寡兵をもって集兵を防ぐ……この位は、戦術じゃ基本中の基本だろ」
殿を務めるファーレーンが追撃してくる妖精部隊を斬り防いではいるが、事実上の挟み撃ち。
すぐ目の前に活路が開かれているというのに、団子のように固まったその中央で歯噛みしている自分に自虐的な笑みを浮かべる。
「いっそ『因果』で壁を……いやだめだな、巻き込まれたみんなを同時に守れる程の力は残っちゃいねぇ」
「な〜にぶつくさ言ってんのさ」
すると気配を悟ったのか、側に立つ今日子が背中に肩を預け、耳打ちしてくる。

480 :名無しさん@初回限定 :2007/07/01(日) 15:35:03 ID:fDKZwIxU0

    _ _ 
   .,'∧==∧、
   i イノノハ)))
   リ || ・ヮ・ノl|   <源ツナが支援するよ
   j/ヽ y_7つ
  (7i__ノ示!  
    く/_|_リ

481 :相生 ] :2007/07/01(日) 15:35:27 ID:e7KIsU2O0


「今日子、気づいてるか?」
「……そうね、こういう時、いつもならちゃんと駆けつけてくれるのにね」
「ああ、俺には勿体無さ過ぎる位の副官だ。判断は全面的に信用出来る」
「つまり、そういう事。外で動いてないんだから、ちゃんと理由があるの」
「判ってるさ。だから、心配なんだ。アイツは頑張りすぎる。くそっ」
「慌てない。あの娘だって気がついている筈。きっと間に合うわよ」
「……チッ、歯痒いぜ。待つだけってのは慣れてないんだ」
じりじりと、少しづつ広がる味方のスペース。確かに時間は掛かるが、味方が優勢なのには変わりは無い。
陽の届かない分厚い石の天井を、光陰は睨む。
屋上に配置されている人間の弓兵。怯懦の塊のような奴らがこの状況で、一体いつまで物見遊山の姿勢を保っていられるのかと。
「……待ってろ」
俺が行くまで、その聡明な頭をフル回転させていろ。どれが保身に結びつく、最良の手段なのかを。
間違うなよ、力尽きたスピリットを多少討ち取ってその場限りの栄誉を味わうのは得策じゃない。
テンぱってうっかり弓の操作を誤ったりすると、怒りにトチ狂ったエトランジェに何をされるか判らないぜ……――――

482 :相生 ] :2007/07/01(日) 15:44:37 ID:e7KIsU2O0


サーギオス帝国の衛兵は、比較的訓練精度が高い。
しかし法皇の壁は所謂国の外堀も外堀なので、戦争勃発と同時に徴兵された速成の兵士も中には混じっている。
むしろこの、後備とも言える部署に限っていえば、新兵の比率の方が圧倒的に多い。
城門が破られたとの報告を聞きながら、対ケムセラウト方面城壁警備統括である男は、それが気掛かりでならなかった。
地崩れによる土煙を観測した瞬間浮き足立ちかけ、必死に自制を試みたのは男ですら例外では無い。
「構えを解いてはいけない! だが、命あるまでは決して撃つな! これは厳命だ! 背けば死罪とする!」
先程、物見からの伝達でラキオス軍人兵主力が動き出したとの報告があった。
いや、報告を聞くまでも無く、森での戦闘が我がスピリット隊の敗北を意味しているのは、どこよりも高台のここから望んでいるのだから良く判る。
そしてスピリットが無力化されてしまえば戦争自体の継続が不可能、それがこの世界の常識。ソーマも案外だったな、と舌打ちを繰り返す。
「貴様っ!」
「グアッ!」
目の前でぶるぶると震え、あやうく番った指を手放そうとしていた兵を片手で殴りつけ、気絶させる。
からん、と乾いた音を立てて転がる弓矢。雨が上がった為、湿った鏃の弾薬を換装させていたのが仇になったかと振り返る。
どの兵も目が血走り、何が引金になるか判らない。そして少しでも指先に力を篭めてしまえば、制御する術は無い。
後に続く惨劇などは予想も出来ないまま愚かな暴走は始まってしまう。手元に掌握している兵だけでもこの始末。
果たして、手のつけられないこの状況は、正門上部方面ではどうなっているのか。混乱した中、情報だけが不足している。
「……まだか」
軍人として、これ以上は無いであろう屈辱。この上、更に恥の上塗りだけはなんとしても回避したい。
唾を吐き捨て、軍靴で踏み、焦れる。同時に背後で、城壁内部へと続く通路の扉が乱暴に叩き壊される轟音。
男は待ち侘びた恋人を迎えるような笑みさえ浮かべ、振り向く。爆風に身を晒したまま両手を上げ、従順なる降伏の姿勢を示しながら。

483 :相生 ] :2007/07/01(日) 15:47:35 ID:e7KIsU2O0


真っ先に『因果』を振るい飛び込んだ先に待っていたのは、一斉に武器を捨て、諸手を掲げる兵士達。
一瞬あっけに取られるが、放心し、へたり込む者もいる中で一人毅然と立つ男を見つけ、光陰は駆け寄る。
殆ど目鼻がくっつくような距離で2人の"異国民"は対面を果たしていた。
「……賢明な判断だ、命拾いしたな」
「遅かったじゃないか、エトランジェ」
「悪かったよ。抵抗が予想外だった」
「その言葉、帝国への褒め言葉と受け取っておこう」
「へっ……ヒミカ、ファーレーン!」
「ハッ!」
「すぐに!」
予め指示を受けていたファーレーンがすばやく敵兵の弓を奪い取り、それにヒミカが調整した神剣魔法で火を放つ。
煙はすぐに立ち昇り、やがて大きな狼煙となって青空へと広がっていく。
「光陰! あっちも!」
「なんだ、追いつかれちまったか」
今日子の声に振り返り、正門の方角からも立ち昇りつつある煙を見やり、苦笑いをしてみせる。
セリアとハリオンが降伏してきた兵を一纏めにして拘束していた。その様子を見渡しながら、ゆっくりと壁際に近づく。
この程度の距離なら楽に感知出来るグリーンスピリットの気配へ向け、大きく手を振ってやる為に。

484 :相生 ] :2007/07/01(日) 15:52:28 ID:e7KIsU2O0


「……終わりましたね」
「……そのようですね」
ようやく殺意の収まった窪地の真ん中で。
ナナルゥとクォーリンは背中合わせの格好のまま、同時にずるずると腰を落としている。
まだ濡れている地面が戦闘服越しに湿り気を伝えてくるが、その程度に気を配っている余裕は無い。
精も根も、というが、泥だらけで憔悴しきった二人の表情にはどんよりとくたびれ切った疲れのような、
それでいて何かを達成した者が見せる満足感のようなものが漂っていた。ほう、と小さな溜息を付きながら俯いたナナルゥが呟く。
「……何故、殺さなかったのですか?」
「そうですね……どうしてでしょう。スピリットとしては、失格でしょうか」
同じように俯き、自らの前髪が揺れるのをぼんやりと見つめながら、クォーリンは答える。
周囲を見渡してみても、金色のマナはどこにも見当たらない。ただあちこちで蹲り、くぐもった呻き声を漏らす者達。
「でも、こうしないと怒られるような気がしたんです。……ふふ」
「? 理解しかねます。貴女はもっと冷静な分析力を評価されていたのだと」
「それは買い被りでしょうね。ところで」
「質問ですか?」
「貴女はどうして殺さなかったのですか、ナナルゥ?」
「……不思議です。理解出来ません。私は疲れているのでしょうか?」
背中から伝わる動きで、ナナルゥが本気で首を傾げているのが判る。
堪えきれずにクォーリンは背中を丸め、くっ、くっと苦しげに笑いを堪えた。
どうしてこんなに可笑しいのか。それが少し判ったような、喉のつっかえが取れたような、そんな清々しい気分だけが残っている。
「本当ですね。理解できません、心って……ルゥ」
笑いをようやくのことで収め、こつん、とナナルゥの頭に自分の頭を押し当て、空を見上げる。
するとナナルゥも顎を上げ、共にストレートの髪が微かな音色で擦れ合う。
「……終わりましたね」
「……そのようですね」
暗く覆っていた雨雲が嘘のように澄み渡る青空。大きく斜めに区切る、法皇の壁。
その境界線から一筋の狼煙が立ち昇り、間を置かず、屋上部分から小さな人影が現れる。
身を乗り出して手を振っているその人物に、クォーリンは微笑んで見せた。見えないだろうな、と思いながらも。

485 :相生 ] :2007/07/01(日) 15:58:17 ID:e7KIsU2O0


街道の後方で待機していたラキオス軍兵士が一斉に動き出したのを確認して、悠人はほっと腰を下ろす。
実に戦闘が始まってから数時間、久し振りの地面の感覚は、石のひんやりとした冷たさが実に心地良いものだった。
アセリアに指示を出していたエスペリアが身繕いをしながら近づき、遠慮がちに報告を始める。
「この方面の制圧は完了いたしました、ユート様。ダスカトロン方面からの反撃も予想通りその動きは無さそうです」
「ああ、そうだろうな。主力は当然ここに固められていた筈だから」
「ええ。スピリットの多くは戦線を縮小し、首都や秩序の壁へと撤退します。事実上、法皇の壁は全体が陥ちたとみなしても宜しいでしょう」
「うん。……ふう、エスペリア、お疲れ。ところで」
「はい。……アセリア!」
「ん。まだ少しいる。でも、……ん、大丈夫」
「もしもご心配でしたら、わたくしが行きましょうか?」
「そうだな、いや、でももう、認めないか? 確かに命令違反だけどさ、みんなも仲間なんだ」
「もう……ユート様は、甘すぎます」
「ユート、甘いのか?」
「はは。だけどさ、どのみちここからは遠すぎる。もっと近い所にもいるじゃないか」
改めて森全体の気配を探り、ぼんやりとした敵の衰微しつつある勢力を見つけ出し、空を仰ぐ。
目に痛いほど澄み渡った青に織り重なる強い意志が、彼女達へと急速に近づくのを感じながら。

「俺はさ、きっと、信じたかったんだよ。エスペリア」

486 :相生 Tie the wind :2007/07/01(日) 16:03:26 ID:e7KIsU2O0


「全テを貫ク衝撃トナレッッ!」
別々の方角からの攻撃。選んだのは、より脅威を感じる上空の敵。
詠唱途中で膝を曲げ、本来重力に任せる筈の神剣魔法に指向性を持たせる。
咄嗟の判断だったとはいえ、潜在能力が生み出す創造は紛れも無く少女の才能。
仰角をつけられたマナは緑雷の槍と成し、放物線を描く軌跡の頂点で一瞬静止しなければならなかったネリーに向かう。
「うわっ!とと…… あぶなっ!」
「ッ!」
しかし渾身のエレメンタルブラストは虚しく大気のみを切り裂き、放電を繰り返しながら霧散していく。
その正に紙一重の中空でウイングハイロゥを細く畳み、すんでの所で回避したネリーの声色が普段より1オクターブ高い。
殆ど条件反射がもたらした偶然だったが、身を捩ったネリーの遥か後方で炸裂したマナの稲妻が結果としては少女の最後の抵抗となった。
もっともこれ以降彼女には、一体何に抵抗しているのか、というような理性的な活動を行うような時間を殆ど与えられはしなかったが――――

直後、ヘリオンとネリーの攻撃が奇跡的な連携を織り成し、少女へと襲い掛かる。
「そこっ!」
今日初めてまともに鞘を滑りぬけた『失望』が地面すれすれから伸び、オルファリルに止めを刺そうとしていた細身の神剣を弾き、
高速で行なわれている連撃がヘリオンの手元に戻った瞬間を狙ったグリーンスピリットのポニーテールを掠めるのは上空から飛来した『静寂』。
「チイィッッ!」
「惜しいっ! こんのぉ〜!」
どん、という巨大な衝撃が少女のすぐ脇で地面を抉り取り、砂塵が舞う。僅かに掠めただけの戦闘服が大きく破れ、脇腹の傷を露見させる。
金と朱の交わる液体が肉の間で玉になり、スローモーションで浮き上がる中を、黒く1閃するのはヘリオンの第2撃。
深く沈めた膝の上から滑り出す『失望』が間合いを大きく伸ばし、上体を逸らしたグリーンスピリットを土煙ごと断ち切ろうとする。
着地し、大振りの後に隙だらけの背中を見せていたネリーを薙ぎ払おうとしていた少女は手先を変化させ、鍔元で受け、きん、と鋭い音が響く。
しかし、逆転した勢いは止まらない。次第に回転数を上げ始めたヘリオンの攻撃は旋風をすら生み出しつつある。

487 :相生 Tie the wind :2007/07/01(日) 16:05:35 ID:e7KIsU2O0


「ハァッ……オルファ、今です!」
「う、うん!」
その間に『理念』を拾い上げたオルファリルはエヒグゥを抱えたまま一足飛びに間合いを外し、
丘の中腹辺りで倒れているニムントールへと駆け寄り、顔を覗き込む。顔色が紙のように真っ白だったが、まだ生きている。

「クウッ! ナ、ナゼッ!」
少女は、目の前のブラックスピリットが振るう連撃を、懸命に捌く。
見覚えがあった。一度は絶命寸前まで追い詰めた相手。その相手が、こうまで回復している理由が理解できない。
「逃がさない!」
「っ!」
がんっ、と重たい衝撃。辛うじて受け止めたまま、上体がずれる。踏ん張った骨だけの踵に潜り込んでくる泥の不快感。
このブルースピリットにも、見覚えがある。確かに敏捷性は互角だった。それにしても、この我が神剣との共鳴は一体。
「……な、に?」
そしてその中でも、最も理解できないもの。
次第に膨れ上がっていく、破壊衝動。『静寂』の青白いマナが剣を通じて入り込んでくる。
その不躾で、乱暴な感覚。空回りを始める神剣の支配。
どうして、初めて湧き上がる疑問に、自問自答を繰り返す。こんなに忠実に動いているのに、何故マナだけが手に入らない。
「っあぅっ!」
遂に、捌き切れなくなった緩く湾曲した黒のマナを伴う神剣が手首の腱を断ち切り、
その直後には膨大な水のマナを湛えた神剣が戦闘服の胸元を大きく切り裂いていく。
衝撃で仰け反りかけた顎を懸命に引き戻し、唇を噛む。だが鉄の味も、乳房から噴き出す鮮血に掻き消されてしまい、混乱する。
少女は追い払うようにがむしゃらに振った剣をそのまま纏わり付くヘリオンへの対応へと回す。変化の激しい状況が思考を許さない。

 ―――― 思考?

浮かぶ、何か。そして、崩壊を起こす地面。がくん、と沈んだ身体がここでの戦闘継続の不可を訴え続けている。

488 :相生 Tie the wind :2007/07/01(日) 16:08:39 ID:e7KIsU2O0


「おわっ、っとと!」
「わっわっ! な、なんですかぁ?!」
轟音と共に起きた地滑りに、ヘリオンとネリーはウイングハイロゥを羽ばたかせ、上空へと逃れる。
「オルファ! ニム!」
「シアー?!」
「んっ……ごめんねシアーのせいで。大丈夫?」
「へ? どゆこと?」
「あうう」
直後崖に生えた樹々の隙間から飛び出したシアーが、上昇する勢いのままオルファリルとニムントールを救い上げる。
そしてその間にも、丘に生えていた大木は次々と倒壊し、土砂崩れへと巻き込まれていく。

確率の非情性は、等しくグリーンスピリットの少女へも殺到する。
だが、迫り来る大木の群れに対し、少女のみは為す術がない。
ウイングハイロゥで逃れる事も出来ない。上手く動かない四肢では体捌きも覚束ない。
ほぼ底を尽いてしまっているマナで、暴力的な土砂を防ぐ為のシールドハイロゥも最早展開出来ない。
乱れるマナの気流の影響か、判断力すらも働かない。そして彼女だけには――――どこからも、救いの手は伸びてこない。
「……ぁ」
少女の手は、自然と前に差し出される。何も無い、ただ広がり続ける灰色の虚空へと。
僅かな理性が瞳へと戻る。浮き上がった身体から伝わってくるのは、軋み、痛み、悲鳴。
一方反射的に呼びかけた神剣からは、何の反応も返ってこない。その沈黙が気絶しそうな程の失望、孤独を生み出す。そして、恐怖。
「ぁ……たす、け」
氾濫する音が、微かな呟きをすら飲み込んでいく。
巨大な質量が硬度を保ったまま自然落下してくるという理不尽な世界では、濁流に揉まれる1枚の葉などは軽々しく圧し流されてしまう。
目の前が、ぐにゃりと歪む。遠ざかる意識の中で、いやにはっきりと感じられる、今正に自分を潰そうとしている自然の暴力。
どうして。少女は、最後に思考する。どうして、自分は戦っていたのだろう――――

  ―――― たい、ちょう

それは、風に縋る行為にも似て。意識が、終息へと嫋やかに導かれて逝く。

489 :相生 Phenomena smiling on graceful :2007/07/01(日) 16:15:00 ID:e7KIsU2O0


「お、重いぃ〜」
「ネリー、もうちょっとだからぁ」
「えっと、あ、あそこです!」
「……ぅに」
「あ、ニムも目、覚ましたみたいだよっ」
「いいから早くぅ〜!」

「……ぅ゙」
どさり、と少々乱暴に下ろされた、城壁の側。そこで少女の意識は"掬い上げられて"いた。
瞼が開く。最初に見た光景は聳え立つ石壁、いつの間にか晴れた空、そしてそこに伸びる一筋の煙。
ぼんやりと、ああ、負けたのだな、とどこかで納得している自分を知覚する。
投げ出されている四肢には殆ど力が残っておらず、それどころかこのままでは回復も厳しい。
しかし、頭の中だけは霧を追い払ったように、妙にすっきりとしていた。
気持ちが不思議な程の清々しさに包まれている。しかし次に浮かぶのは、疑問。そして、憤りのような誇り。
取り落とさなかったのが不思議な位の神剣を、まだ生きている方の腕で懸命に掴み、それを杖にして立ち上がる。
「あ、気が付いた?」
「あー、重かった」
「あぶなかったねぇ〜。もう少しでみんなぺしゃんこだったよ」
「ご、ごめんなさいぃ……」
「ああ、別にシアーが悪い訳ではないのではないかとっ」
「……何故、助けた」
「ふぇ?」
「はい?」
「あれれ?」
「何故、助けたと聞いている」
両脚が勝手に震え、膝が落ちそうになる。
それでも少女は睨みつけたままの表情を変えず、ゆっくりと、確かめるように呟く。一斉に首を傾げる、5人の少女へと向けて。

490 :相生 Phenomena smiling on graceful :2007/07/01(日) 16:16:40 ID:e7KIsU2O0


「何故って言われても……やっつけたくなかった、から?」
「ニムに聞かないでよ」
ぼろぼろになりながらも再び剣を構えなおす少女に、オルファリルがまず困惑しながら答え、ニムントールが続ける。
「はぁ、面倒。とにかくもう、止めなよ。壁は落ちたんだから、戦う理由なんてもうないんじゃない? それとも何? まだ守りたいの?」
「ハ?……フ、フフ、フハハハッ! 止めろ、だと? 私に? 戦いを?」
吐き出す言葉に鮮血が混じる。
血生臭さが漂い始めるが、全員がその類いの匂いには既に麻痺しきってしまっているので、特別な反応は誰からも示されない。
動揺が伝播しているのは、少女の放つ言葉に対してのみ。発せられた感情を皮膚で感じ取り、少女の語調は増々硬化していく。
「お前たちに、何が判る……ナンだ……ナンだお前たちは。何故笑っていられる? 何故、私を助けて笑っていられる?」
矢継ぎ早に疑問をぶつけ、ふらふらと近づく。シールドハイロゥすら展開していない。
そのくせ歩みだけは止めず、何かを求めるように差し伸べている両手は、あらぬ方角へと彷徨っている。
恐る恐る近づいたシアーが、殊更慎重に声を漏らす。
「……泣いて、るの?」
「っっ! うるさい、うるさいうるさいうるさい! 敵を倒す! それだけがスピリットの存在理由!」
「ひゃっ!」
「シアー! ああっ、もうっ!」
咄嗟にシアーを庇い、前に出たネリーが頭を抱える。共鳴は、まだ完全には抜けていない。
よろけてしまう足元に、被さるような悲鳴。その頑なな意志こそがこの頭痛の原因なのだと、今はっきりと確信する。
「それを否定するお前たちに……一体何が判るっ!!」
「わっかんないよ! そんなの、つまんないじゃん!」
「〜〜っ! つまらない、つまらないだと! ……そうとも、判る、筈がない」
「え? ……何、それ」
「……お前達、にはっ!」

491 :相生 Phenomena smiling on graceful :2007/07/01(日) 16:19:13 ID:e7KIsU2O0


口を丸くして固まってしまうネリーを他所に、少女の言葉と行動はもう完全に、矛盾してしまっている。
彼女は細身の神剣を何故か槍のように構え、虚空を睨み続けながら叫ぶ。
しかし怒りに満ちた断定には訴えるような嗚咽が混じり。踏み出す足は迷子のようにおぼつかず。
「……ははは。判る筈がないんだ。庇い合う戦法……そんなものを、"当たり前に選べる"お前たちに」
その場に立つ者全てが、ただ呆然と呟きを受け、口を噤み、見守る事しか出来ない。
ただよろよろと、震える剣を前方に翳し。時折躓き。それでも泣きながら、縋るように迫ってくるか細い瞳を。
「"仲間と普通に笑い合える"お前たちに、何が……くそっ! くそっくそっくそぅっ!」
少女は半狂乱になり、振り払うように剣を振り回す。
もう、そこに手筋などといった技術は無い。びゅんびゅんと、回旋する剣だけが木々の枝を削ぎ落としてゆく。
「ふざけるな! ふざけるな! ふざけるなぁぁぁ!!!」

  ―――― どすっ

そうして何度目かに少女の神剣が"突いた"先。
そこで剣先の行方を赤く染め上げ、彼女の視界を遮っていたのは、突然現れた灰色の影。

492 :相生 Phenomena smiling on graceful :2007/07/01(日) 16:28:04 ID:e7KIsU2O0


「……あ?」
「クッ、強くなったな……だが、もう、いい……よく頑張ったな。もう、いいんだ」
ぴぴっと頬に当たる生暖かい感触が、少女を我に返させる。
呆けたような表情が、目の前の赤い瞳に強く映し出していた。
それが自分の顔だとようやく理解し、遅れて身体に震えが走る。がくり、と力の抜け落ちる膝。
心に刻み込んだ記憶が、手元の赤を現状のものとして認識させていく。
霧のようだった視界が後退してゆき、唯残るのは遠かった筈の懐かしい光景。
「……たい、ちょう……?」
「お前に重荷を押し付けたまま去ってしまった手前を、許してくれとは決して請わぬ」
「た、い……」
「償いは、我が身をもって示そう。好きなようにするがいい。ただ、これだけは言わせてくれ」
「あ……わ、私は、わた……」
「……ありがとう、"生きていてくれて"」
「……ぁ」
大きく見開らかれた瞳。一瞬の後、くしゃりと崩れていく表情。
「あ、あ……わああああああっっっ!!」
少女は、ウルカの腹部を血に染めた剣を慌てて抜き去り、半身ともいえるそれをいとも簡単に放り投げ、再びしがみつき、泣き続ける。
いつまでも、いつまでも。母親の腕(かいな)にようやく辿り着いた、幼子のように。
「……済まない」
反応した森のマナが二人の周囲に集まり、エメラルドグリーンの輝きを放つ。
雨の余韻か、水分を含んだ大気に反射しては七色に煌き、万華鏡のような紋様を描きながら大地へと還っていく。

493 :相生 Phenomena smiling on graceful :2007/07/01(日) 16:29:46 ID:e7KIsU2O0


草叢に転がった細身の神剣を、そっと取り上げた者がいる。
「これですか……なるほど。出来ますか? 『理想』」
くん、と機敏な反応を示す剣に微笑みかけ、イオは少女の神剣を側の樹へと突き通す。
そして構えた『理想』の剣先を柄に当てると、キン、と鋭い金属音が響き、細身の剣は半ばから折れ、変形を始める。
純粋な大地のマナを吸い取り、細身の槍状へと、在るべき姿へと。
「これで、制御可能な筈。……ヨーティア様、これで本当に、任務は無事完了しました」
空を一度仰ぎ、仲間の居る方を振り返る。赤い瞳は空の青さに流れる風の結び目を、しっかりと捕らえて放さない。

こうして、誰の記憶からも失われる事の無い願いは続く。



                                   ―――― 相生 ende ――――

494 :相生 Plural corollaryl :2007/07/01(日) 16:32:18 ID:e7KIsU2O0


ありとあらゆる辺境を。
共に歩んだ。共に戦った。
争乱は、紛争は後を絶たない。
求める六芒は惹かれ、吸い寄せられる。
傲慢は、欺瞞は後を絶たない。
妖精は、求められるままに惹かれていく。
共に歩むために。背を追いかけるために。
ありとあらゆる辺境を。美しき1:(√5+1)/2に見守られて。

それは、剣を半身に生れ落ちた生命。
永遠の名の下に創造され、神の禁忌に分割された黄金比。
なればこそ、伴侶の名は神剣。相求め、惹かれ逝くスピリットのつるぎ――――

495 :相生 Plural corollary :2007/07/01(日) 16:37:13 ID:e7KIsU2O0


「……んっ」
手元から鋭く伸びる緑色の槍。その穏かな波動に秘められた意志を忠実に受け継ぎ、少女は駆け出す。
故郷からは遠く離れた砂漠の地で。もっとも信頼の置ける、そして失うべからざる"仲間達"に囲まれて。
「ね、ね、これが終わったらさ、例の冒険だよね?」
「ネリー殿、気を緩めてはなりません。まずはここを」
「そうだよぅ、しっかりしないとだめだよぅ」
「全く、そんなんで大丈夫なの? すっごく不安なんだけど」
「み、皆さん真面目に……はぁ。もう、着いちゃいますよぅ」
隣で展開される賑やかな会話。そこに辺境反乱の鎮圧任務という殺伐さは微塵も無い。
灼熱の大気で歪む地平線や蹴り上げる乾燥し切った砂塵の埃っぽさも、観じて見れば生きている証左。
「ねぇ、ホントにいいの? オルファ達と残っても」
「……くす」
後ろからかけられた声に、思わず口元が緩む。そんな些細なことが、とても嬉しい。
斜め前を駆ける美しい銀髪。それを纏め上げている、楕円の髪留め。
まだ追いかけていられるという、ただ、それだけの今。
それが本当は、一体どれ程幸せな事であり、そして又、どれ程貴重な絆だった事だろう。
想いを噛み締めつつ、少女は黄色く揺れる景色を見据え、永遠神剣を握り締める。きつく、きつく。

澄んだ瞳に飛び込んでくる仲間達の背中を、少女は認識する。勿論それを、どこまでも守る為に。
澄んだ瞳に浮かんでくる微笑みを、少女達は知覚する。勿論それは、妖精たる彼女達自身の意志――――

496 :信頼の人 :2007/07/01(日) 16:39:20 ID:e7KIsU2O0

幾度か挑戦し、その都度挫折し、そしてやっと気づきました。
ウルカルートでは、そして勿論その他のルートでも、妖精部隊を救う事は難しい、と。
ウルカや悠人がどれ程頑張ってもグリーンスピリット1人救えないのですから、当然といえば当然ですが。
で、もっと大勢の、例えば年齢的に比較的精神の成長が速い(と見込める)年少組が、もう少しだけ早く、
そしてほんの少しでもいいから、足並み揃えて生命の大切さというものにちょっと慎重になってくれていたら。
それに引き摺られる形でもいいから、ラキオススピリット隊全体の意識として、世界全体で捉えてくれたなら。
集団の意識として、敵に対してさえも心のどこかに余裕のようなものが芽生えていたならば。そんな妄想が、スタート地点でした。

一応ウルカルートのお話ですので、リレルラエルに到達してからではご存知の通り間に合わず、
たらればが許されるのがSSのそもそもの存在理由(大げさ)だと自己弁護を試みつつ、
その尺度を大きく外れない程度にソーマの出現を法皇の壁攻略時期に修正してみました。
次に、まずはネリーが動かないと動かないシアー、素直すぎる性格で言葉を字義通りに受け取ってしまうヘリオン、
問答無用で動かないニムントール。この3人にそれぞれ動機付けを行い、その前提としてネリーとオルファリルが動く展開に。
すると彼女ら5人がそれぞれ抱えているスピリットとしての命題を多少なりとも解きほぐす過程で学ぶであろう何かが
部隊全体へのささいな影響力へとなるその為の補助役として、当の部隊の面子までもが全員必要となってしまっていました。

こうなるとひたすら逆算を繰り返すのみでして、既に構築している意志に忠実な者、微妙に変化する者、
影響を受けて変わる者、影響を受けて能動的に変わろうとする者、それぞれが5人を中心にして回りだし、
後は勝手に動き出す個々を設定通り、映画の巻き戻しのように再現していく作業が終わった時にこのお話と相成りました。

497 :信頼の人 :2007/07/01(日) 16:41:25 ID:e7KIsU2O0

軍隊戦術の描写とはやや異なりますが、戦闘地域に於ける各部隊の動向と相互影響や進捗の描写等は某幕末小説の大家に
その手法を学び(当然だだ甘な自己流ですが)、最初から配置図や彼我戦力、天候、地形、時間経過による動向や影響等を素人なりに用意してみました。
特に重点を置いてみたのは忘れがちな時間経過の影響ですが、それでもやはり素人ですので、どこかしら穴はあるかもしれません。
ただの戦闘詳報に終わってしまえばそれまでですし、そもそも年端もいかない少女が戦闘に赴く際、壊れた精神の負債は
一体誰が支払うのか、というような根本的な問題にも敢えて触れてはいませんが、せめて命とひとつまみの心だけは。そんな感じです。

今回もですが、連載途中で沢山の御支援を受けました。改めて、感謝を。
そして相変わらずの稚拙な文章にお付き合い頂き、本当に有難うございます。
スレに、そして皆様に、マナの導きがありますように。
誤字脱字ハリオンマジック等、御指摘があれば幸いです。それでは。

498 :名無しさん@初回限定 :2007/07/02(月) 01:05:25 ID:Mpi7Zs7h0

長編乙です
すごく・・・面白かったです・・・


コーインとりあえず俺と代われ
膝枕券ハ俺ノモノダ

499 :名無しさん@初回限定 :2007/07/03(火) 07:11:06 ID:dpE4Utvn0

>>498さん
ありがとうございます。
膝枕券は慎重に使用しないと雷撃の危険性を高めますw

500 :名無しさん@初回限定 :2007/07/03(火) 21:42:08 ID:RQcIpZ7E0

>>497
長編完結乙です。
堪能させていただきました。

作中の光陰…待望(?)のニムのフラグ立っていそうですけど。
その後日数が経過するたびに旗がヒビ割れてへし折れる確信があるのは何故だw

501 :名無しさん@初回限定 :2007/07/04(水) 20:22:59 ID:aYHgvs400


ラキオス惨議員選挙立候補者 マニフェスト一覧

・猪突静寂党 ネリー       くーるびずでふぁんたずまごりあおんだんかたいさく

・引込孤独党 シアー      お菓子あげたら投票してくれないかなぁだめかなぁ

・臍曲熱病党 セリア       同種族・異種族を問わず全ての不純異性交遊を禁止します

・眼鏡赤光党 ヒミカ       全ての同人誌に国費で印税を付与します

・隠密消沈党 ナナルゥ     疑わしきは罰す……冗談です

・双丘大樹党 ハリオン     あらあらぁ、生涯愛し続ける事を誓いますぅ〜

・日本曙光党 ニムントール   ニムって呼ぶな

・腹黒月光党 ファーレーン   そうですね……夜道を照らすのは禁止にしましょうかクスクス

・最速失望党 ヘリオン     あのう、皆さん、満30歳以上なんですかぁ?

502 :名無しさん@初回限定 :2007/07/04(水) 23:11:32 ID:Kj5w2KZO0

ネリーだけじゃないか・・・普通のマニフェスト出してるの・・・

503 :名無しさん@初回限定 :2007/07/04(水) 23:12:26 ID:9NwNzr2x0

>501
ラストのヘリオンさんが何を言いたいのか分からないw
おじさん好み?


>432
えーとまだ読んでないんだけどチラ見して気付いたんで。
×リュートリア
○リュトリアム

504 :名無しさん@初回限定 :2007/07/05(木) 00:37:49 ID:dxeDW2eNO

>>503
参院の被選挙権は満30歳以上

505 :名無しさん@初回限定 :2007/07/05(木) 01:16:46 ID:tG8l+XUq0

>504
おう、そう言う意味かサンキュ。


だが、絶対王権を死守せんが為レスティーナの暗躍が始まる……。

……

「ヘリオン候補の選挙事務所に差し入れで〜す」

506 :名無しさん@初回限定 :2007/07/05(木) 03:18:47 ID:Vbru/0ffO

ウルカだけが頼りだな

507 :名無しさん@初回限定 :2007/07/05(木) 22:23:36 ID:C9jIofBg0


    |┃     __
    |┃.  「,'´r==ミ、
    |┃三 くi イノノハ)))
 ガラッ.|┃.   | l|| ゚ヮ゚ノl|  <年齢詐称と聞いて飛んできました
    |┃.   j /ヽ y_7っ=  
    |┃三 (7i__ノ卯!
    |┃.    く/_|_リ

508 :名無しさん@初回限定 :2007/07/05(木) 23:35:16 ID:oMcv8oB70

時深さん、ひとつ質問があるんですけど……。
……もしかしてもしかすると、年金生活者だったりします?

509 :名無しさん@初回限定 :2007/07/06(金) 06:34:21 ID:jLlCd1S/0

この騒ぎに便乗して窓口でガナリたてるおbsnモエスw
「私は平安の頃から税金払ってました!」

510 :名無しさん@初回限定 :2007/07/06(金) 07:16:48 ID:XZaRrnuL0

     '´∋θ∈  
    ! ノノ))))
    i (リ゚ -゚ノl|  <そんな記録はありません
    ⊂)iゝヲiつ    
   ノl〈/ !芥!〉リ   
    く_/liVil,ゝ

511 :名無しさん@初回限定 :2007/07/06(金) 19:32:48 ID:POaYTcB40

>>497
遅レスながら乙でした。
今回もファンタズマゴリアfeat信頼、存分に堪能させて頂きました。
短い一コマでこれだけの物を詰め込める辺りはさすがとしか。
つーか、緑っ子まさかの生存でびつくりです。始めから終わりまで死亡フラグバンバン立ってたのに。
てかソーマ様、壮絶なラストでしたね。何気に今回一番輝いていた気がしますw

感じることが色々あって何を語っていいやら全く分かりません、素敵な作品ありがとうございました。

512 :名無しさん@初回限定 :2007/07/06(金) 19:36:46 ID:POaYTcB40

>>503
リュートリア→前の再生の主
リュトリアム→オルファ

オルファ本人を呼ぶなら確かに後者だけど、今回の場合イオに紐付けされている記憶が曖昧な事考えると、
どちらの名前を読んでもおかしくない気がする。

513 :名無しさん@初回限定 :2007/07/06(金) 22:12:41 ID:87sR1aBx0

>>500さん
うーんやっぱりフラグ立っちゃってますか。
いや、自分もへし折れる確信がありまくりですけどw

>>503さん
御指摘感謝です。早速保管庫に御報告をば(汗

>>511さん
どうもです。詰め込みすぎてごたごたになってなければ良いのですが(汗
ソーマ様は今回ラキオス隊との比較強調の為に散々輝いて頂きましたw

>>512さん
自分で言うのもなんなんですが、御指摘を受けてみれば、
『再生』の前の主ですと下手をするとファンタズマゴリア開闢以前の可能性が出てきますので、
やっぱりリュトリアムの方がより無難かと。っていうか自分の考察不足です、すみませんorz


>>509
一体いつから受給し続けてうわなにを

514 :名無しさん@初回限定 :2007/07/07(土) 00:28:07 ID:kxffYI1K0

魔物達の大攻勢をコウインの思いがけない助力もあり、凌ぎきった探検隊一行。
しかしその前には……
「大将!? あんた生きてたのかっ」
「未だ足掻いているだけとも言うがな……」
意外どころではない人物の登場に面食らう面々。
その一人であるニムは、思わず姉の服の端を握っていたのだが、ふと奇妙なことに気付いた。
見上げる姉の表情が何処か熱に浮かされている様に見えたのだ。
まさか、ロティみたいにお姉ちゃんも!?
ニムは、心配の余り息苦しさを感じるほど。姉を護る気持ちに逸る――そんなニムの耳に姉の呟き声が届く。
「あの仮面……凄く欲しいです……」

515 :名無しさん@初回限定 :2007/07/07(土) 01:31:41 ID:Ehb1I3km0

仮面コレクター発動フイタ

516 :名無しさん@初回限定 :2007/07/07(土) 07:17:50 ID:oMHqNAIX0

アルフォード
「ほっほっほ、あきらめたら、そこで試合終了ですよファーレーン」

517 :名無しさん@初回限定 :2007/07/07(土) 11:28:16 ID:5ByUaVJe0

エンレイン
「・・・・・・・・・・・・。
 (違和感無い位似ているな、アルフォード)

518 :名無しさん@初回限定 :2007/07/07(土) 11:34:45 ID:5ByUaVJe0

ファズリィズ
「・・・・・・・・。
 (てゆーか、誰ですか?)

519 :名無しさん@初回限定 :2007/07/07(土) 11:46:39 ID:qqvHwq6K0

ファブリィズに見えた……

520 :名無しさん@初回限定 :2007/07/08(日) 01:32:36 ID:lgV+6MLz0

レイヴァーン
「・・・・
 (てゆーかむしろ俺達が、誰ですかになってないか?)

521 :名無しさん@初回限定 :2007/07/08(日) 02:02:35 ID:CpiLIvl+O

ロテ(削除されました

522 :名無しさん@初回限定 :2007/07/08(日) 03:04:26 ID:+FrDU8An0

     ヽ)/
  ∠´ ハ`ゝ 
  彡//ノハハ〉.            
  ゞ(リ ゚ -゚ノ!  / ̄ ̄ ̄ ̄/  スピたんネリシアルート終わらしてみたんだが、
   j(!つ y つ/ SpiNet  /   これ、俺だったらセリアに殺されてるよなw 
 ̄ ̄ ̄ ̄\/____ / ̄ ̄

523 :名無しさん@初回限定 :2007/07/08(日) 16:50:46 ID:cl7js2vA0

ハリウス
「・・・・・・・・・・・・。 
 (てゆーかそもそもアルフォードが一番覚えにくくない?) 

524 :名無しさん@初回限定 :2007/07/08(日) 18:08:25 ID:2FP3NHfP0

         _
     ヽー´, , ,ヽ
     <彡ノノ从〉
 彡)O  入(!|゚ -ノ|l <左手は添えるだけ…
 , --‐/ナi_(こf^(=O
 `-ー―ナT /ゝ、`
    ∠_ノ_'/乙ソ

525 :名無しさん@初回限定 :2007/07/08(日) 20:55:12 ID:+FrDU8An0

     ヽ)/
  ∠´ ハ`ゝ 
  彡//ノハハ〉.            
  ゞ(リ ゚ -゚ノ!  / ̄ ̄ ̄ ̄/    ヘリオンルートも終わった。正直なところこれはホントに「ヘリオンのお話し」だな。
   j(!つ y つ/ SpiNet  /     >520はほとんど出汁というか「俺を踏み台にしたぁっ!?」
 ̄ ̄ ̄ ̄\/____ / ̄ ̄  かめはめ波加速ワロス。

526 :名無しさん@初回限定 :2007/07/09(月) 15:38:46 ID:UPnNNQic0

    ______,.___, |;:;:.... |
 ゚     。  :     ..:| |l島| このスレは出雲に監視されています
:         。    ..:| |l根|  
    ゜     : ..:| |l県|
  :       ゚   ..:| |l_| __
    ゚   :     ..:|;:;:.... |r==ミ、   
      ゜  :  ..:|;:;:.... |ノノハ)))  
  。           ゚ ..:|;:;:.... ||*゚ヮ゚ノl|   
   :     :   ..:|;:;:.... | o【◎】 
 ゚  。  :   :  ..:|;:;:.... |   |
  :      :   ..:|;:;:.... | ⌒J
      ,,.,、-‐''"´~ `ー-‐


      ヽ)/
    く´ハ `ゝ 
   〈ハノ/ノハミミ
    li、゚- ゚リゞ   
    ( Y `)
     >iiT |U
     |_トj_|襾
         ̄  

527 :名無しさん@初回限定 :2007/07/09(月) 23:07:50 ID:WoPmZdKG0

ごめん、クォーリンに関してはこのスレが詳しそうだから少し伺いたいのだが・・・

クォーリンの半公式絵って初出はどこなんですか?

528 :名無しさん@初回限定 :2007/07/09(月) 23:11:25 ID:bztYQqEq0

ザウスの会員ページらしい
俺は会員じゃないから見たこと無いが

529 :名無しさん@初回限定 :2007/07/09(月) 23:58:31 ID:UPnNNQic0

>1の画像板を見ると顛末が分かるかも。

クォーリンでググると、関連検索に「光陰 クォーリン」が出てくるのにワラタ

530 :名無しさん@初回限定 :2007/07/10(火) 00:25:03 ID:kMOXcMRs0

わかりました

サンクス

531 :名無しさん@初回限定 :2007/07/10(火) 01:18:04 ID:muKW+eB50

>>530
これで探したほうが早いかも。
ttp://etranger.s66.xrea.com/gallery/archives/cat_13.html

424氏頑張ったなw

532 :名無しさん@初回限定 :2007/07/10(火) 19:59:31 ID:EifSvtSZ0

ところで次スレが近づいてきたけど、スレ的に第二章は扱うの?
>>126-128みたいな意見もあるけど。
1.スレタイに加える
2.スレタイには加えず発売まで様子見(次スレ途中で発売する可能性有り)
3.発売してもネタバレ防止で次々以降暫く様子見
4.第二章は需要があれば他に立てる(立つ?)

533 :名無しさん@初回限定 :2007/07/10(火) 20:39:17 ID:ieS9ucV90

>>532
4じゃないかねぇ。
一応、スレ内では第二ファンタズマゴリアって別名もあるぐらいだし。
使えそうなネタは引っ張ってきつつ、世界観とキャラクターの共有は無し(もちろんアセリアの登場人物は別)
ってのが無難な扱いじゃまいかと。

534 :名無しさん@初回限定 :2007/07/10(火) 20:48:38 ID:iPz5Rv9Y0

他に建てるのはどうかと
基本的に同じシリーズだからある種の重複な気がするし

535 :名無しさん@初回限定 :2007/07/10(火) 21:26:30 ID:ieS9ucV90

>>534
じゃあ3?
でもスレ内で扱うのはなんか違くない?

536 :名無しさん@初回限定 :2007/07/10(火) 22:56:13 ID:gz0S6SRY0

>>534
それはエロゲ板的発想っぽい気が。>重複
このスレに『聖なるかな』を無理やり押し込んでも、
どっちをも窮屈にして共倒れという落ちになる気がする。
ということで、>>533に賛成。前向きな意味でね。
その程度の懐の広さは葱にはあると思うんだが、無いん?

537 :名無しさん@初回限定 :2007/07/10(火) 23:24:43 ID:ueLNNakw0

俺はひとつにまとめていいと思うんだが。
なるかなにアセリアのキャラが出てないのなら別スレ立てるべきだとは思うが、
おもいっきりおb時深さんとかユーフィーでてるし関連が薄いどころか
濃すぎてどうなの?って言うくらいアセリアの続編臭がするし。
ひとまとめにすれば過疎ることもないだろうし、
作品の関係性が強いなら窮屈にはならないと思うんだよね。
とは言ってもどうなるかは出てから次第だけども。
出てからアセリアと関連が深そうならまとめる、実はそれほど関係なかったなら別スレ立てる。
こんな感じはどうだろう。

538 :名無しさん@初回限定 :2007/07/10(火) 23:42:39 ID:P04H9ket0

俺はゴリアから出ない方がいいと思う。
あくまで中心に居るのは雑魚スピであって欲しい。

539 :名無しさん@初回限定 :2007/07/10(火) 23:54:08 ID:SaY9F1jf0

別スレ立てても過疎るだけな気がしてならないので合同で良いと思うよ。
全くの憶測だが、なるかな二次は盛り上がらないと思うし。同人は知らんけど。
obsnやユーフィーに関して知見が増えるのは歓迎。


ところで、アセリアOVAのページで
「2007年6月23日の新着情報」などど表示されてるのだが、なにか変わってるのだろうか?
三巻発売と言うわけでもないし。

540 :名無しさん@初回限定 :2007/07/11(水) 00:47:00 ID:a0QS0Sr90

3,4ヶ月くらい様子見の必要がありそうだけどね。
スピたんみたいに話題にする人少なくてネタバレ少ないならともかく、期待作だから解放したらネタバレで埋まりそう。

541 :名無しさん@初回限定 :2007/07/11(水) 03:36:16 ID:a+y5bUuG0

アセリアのSSスレとして見ると、続編っぽさが強いから一緒でもいいんじゃね?と思うけど、
雑魚スピ補完スレとして見ると、続編でも雑魚スピは誰もでないんだろ?って思ってしまう。

で、保留というか、発売前後になるかなの別スレをとりあえず立ててみて、
そのスレの進行具合で決めるってのはダメなのかな?
勢いが弱かったり、アセリアとのクロスオーバーが多かったら合流、みたいな。

542 :名無しさん@初回限定 :2007/07/11(水) 03:43:32 ID:t1HQ/d2P0

ソレを言うならスレをむやみに増やすよりひとつのところでやりつつ
勢いやスレ内の割合が傾いているようだったり、要望が出るようだったら
別スレを立てるという形の方がいいんじゃなかろうか?

543 :名無しさん@初回限定 :2007/07/11(水) 07:14:25 ID:acL6XsoG0

問題はこのスレは元々雑魚スピの補完としてスタートしたものだということ。
その補助としてメインヒロインを加えるという意味で2からスレタイが「&」になった。
SSも当初は雑魚スピ補完の補助として認められた。
そのスタンスでいくと聖なるかなも雑魚スピネタ補完の補助として有効ならば
このスレで扱ってもいいということになると思うんだけど、その辺体験版遊んだ人の意見はどうなんだろう?
ちなみに自分はネタバレ怖くて殆どやってません、スマソ。

544 :名無しさん@初回限定 :2007/07/11(水) 07:31:25 ID:t1HQ/d2P0

素直に>>537でいいんじゃね?とか思うんだけど

545 :名無しさん@初回限定 :2007/07/12(木) 00:17:59 ID:cdF5etzL0

発売直後ネタバレの嵐→数ヶ月でなるかな関係ネタ消滅というのが最悪の流れだな
巻き込まれて過疎る典型

546 :名無しさん@初回限定 :2007/07/12(木) 02:46:45 ID:eBBmQbVm0

過疎やら即死やら危ぶまれるような存在だったのを、
運も実力も力技も総動員で生き抜いたのがこのスレなんだがなぁ。
「俺が過疎になんかさせない」という気概が誰にもなくて
過疎を恐れて立てないってぐらいなら、別スレどころか、
ここの合同化も必要ないかもしれないね。

ぶっちゃけ、
   合同スレ化→あいかわらず『雑魚スピ』スレ→
   こんなに尊敬してるのにカティマタソが人気ないなんて差別ニダ!
みたいな奴が出なければそれでいいや、とも思ったりはする。
このスレでは、不遇を感じる者が行動力に変えて他人を魅せてこそ、だよね。

547 :名無しさん@初回限定 :2007/07/12(木) 07:40:43 ID:KogZply00

とりあえず450K近いので次スレ点呼ネタも同時募集ってことで。

>>546
そこまで投げやりにならなくてもw
とりあえずやってみればいいと思う>合同
むしろまた雑魚スピスレか!とか言われる位の勢いで

548 :名無しさん@初回限定 :2007/07/12(木) 10:26:46 ID:EIgro+Jl0

ここの書き込みを見て、自分がクラブザウス会員であったことを思い出し、会員ページを見てきた。
4月の座談会を見て猛烈に吹いたw
○○を見て書いたクォー○○(イメージ図)最高だ!

549 :名無しさん@初回限定 :2007/07/12(木) 16:18:08 ID:W+hvy/o60

とりあえず今は「発売○○日くらいはネタバレ禁止」だけ決めておこうよ。
別スレか合同かは様子を見てからで良いんじゃないかな。

550 :名無しさん@初回限定 :2007/07/12(木) 21:02:38 ID:A5KgPFt60

>>549
1週間は待って欲しいと思うのだが

唐突な話で申し訳ないんだが「アセリア空想設定読本2」と言うのを注文した
このスレの評価はいかがなものか

551 :名無しさん@初回限定 :2007/07/12(木) 22:38:58 ID:pNqYDM7M0

>550
まだ手元に来てないのね?
まあ、ようするに民明書房的? 評価しづらい。


なるかなはなるようになるかなでFAかな?
1週間くらい、8/11辺りからネタバレ解禁でいいだろうか。次のテンプレに入れた方良いかも。
あんまり派手にネタバレるのは遠慮して欲しいけど。

obsnユーフィーがいるならユートの名も一度くらいは呼ばれそうだな。

552 :名無しさん@初回限定 :2007/07/12(木) 23:56:22 ID:RUMvVa4t0

スレタイはどうする?検索考慮して

永遠のアセリア&雑魚スピ分補充なるかなスレッド

とか

553 :名無しさん@初回限定 :2007/07/13(金) 00:03:15 ID:3H1/oMwQ0

一週間は早いんでない?
どうせ作別スレでやってるだろうし、1ヵ月ぐらいでいいよ。

>>552
スレタイ変えるのは実際に流れ見てからの方がいい希ガス。

554 :550 :2007/07/13(金) 20:31:36 ID:Brnklwci0

>>551
そーですか、民明書房か・・・まあ、このスレにいれば大抵は大丈夫でしょうよ
明日到着予定

555 :名無しさん@初回限定 :2007/07/15(日) 04:20:25 ID:mWEtciEm0

この雑魚スレも、終焉を迎える日がもうそう遠くないって事だな…。
本当に終焉を迎えてしまう前に、ニムルートやハリオンルートに紅蓮の剣、他にもまだメインヒロインとしての長編が出ていない雑魚スピの「完結編」を見たいものだ。
まあ、ねだるぐらいなら自分でひねり出せればいいんだけどな。

556 :名無しさん@初回限定 :2007/07/15(日) 04:57:29 ID:y78QAJ5D0

一度不安定な時期を迎えるだろうけど、それを乗り切れば終わりはしないだろ。
人間の妄想が留まることを知らないから人間は進化してこれたんだし(意味不

557 :名無しさん@初回限定 :2007/07/15(日) 19:41:56 ID:Pg1o5Ktz0

多少ペースが落ちる位じゃ、一度染み付いてしまった雑魚スピスレ魂はなんともないぜ!

つ点呼ネタ

スピ達に言って貰いたいPCシステムボイス

558 :繋がりの後先 :2007/07/15(日) 21:08:19 ID:08F2IXiP0

「だぁう〜。難しいです」
小鳥が全然深刻そうじゃない顔で、最後の設問にコメントを寄せる。
今日子も似たようなツラで、その時になってみたいとね〜などと毒にも薬にもならない答えをほざいて、ぼりぼりと頭を掻いている。
見る度思うがハリネズミみたいだよな。青けりゃ何処ぞのキャラクターか。陸上部だし。
などと俺が思っているとは露にも思わないだろうな……おっと、これで的中率350%占いも終わりなはずだ。
どうせ、あなたがもっとも愛するタイプの人は誰かが守らないといけない儚い人、とか言うオチなんだよな。知ってるっての。
「さて第四問です!」
ええっ!!? ガタガタ!!
イスの後ろ二本脚を支点にしてバランスを取っていた俺は、想定外の事態に思わず倒れそうになってしまった。
「あ、悪りい」
後ろの机に座る鹿島に謝った俺に、今日子が馬鹿にした目つきで言ってくる。
「何驚いてんの」
ぐ、そんなこと言ったってな。これって三問で終わりじゃん……そう思うのだが……あれ、何でそう思うんだ俺?
「いや、デジャブって言うか、なんて言うか」
歯切れの悪い俺を片眉上げた今日子は、ふーんの鼻息ひとつで完全無視して終わりだ。
「えといいですか? それじゃ第四問です。ジャーン!
あなたはにわか雨にたたられ、ある商店の軒先で雨宿りしています。
そんなあなたの耳にどこからか鳴き声が聞こえてきます。路地をのぞいたあなたは段ボール箱を発見します。
さて、その段ボールには何が入っているでしょう?

選択I   子猫
選択II   子犬
選択III  子豚

「おいおい、いくら何でも3はあり得ないだろ。常識的に考えて」
「え〜そうですか? でもちゃんと意味あるんですよ」

……女の子向け雑誌ってこんなんばかりなのかね。日本の将来が心配です。
だが何か選ばなければ……それじゃ、無難なところで……。

559 :繋がりの後先 :2007/07/15(日) 21:11:05 ID:08F2IXiP0

Iを選択。

「にゃ〜んだな。俺って猫派だからなやっぱり」
「あ〜そうなんですか〜。小鳥は気まぐれ猫な悠人先輩に食べられちゃう運命なんですう」
相変わらずの軽口に、俺は笑ってやり過ごす。
「ふーん。悠って猫好きなんだ」
「マンションじゃ飼えないけどな」    ニムントール
                       LOVE +5

あれ? 何か今視界の隅に。
「なあ、今」
キーンコーンカーンコーン。昼休みが終わっちまった。あ、そういえばウチのコタツ調子悪いんだよな。
唐突に思い出したけど修理した方安いかな……。

560 :繋がりの後先 :2007/07/15(日) 21:15:31 ID:08F2IXiP0

IIを選択。

「男なら犬だろ。公園でフリスビー投げたりしてるの見てると憧れるよなあ」
「なーにが男ならよ。こーのケダモノが! 佳織ちゃんにセクハラしまくりな言い訳にでもなるってーの?」
「えーセクハラなら小鳥にしてくださいよっ、先輩なら大歓迎です! あ、でもでも、子犬の横にはあなたって事ですよねえ。
憧れちゃうなあ。家は小さくてもいいですからね悠人先輩!」
真顔で申告後、頬を染める小鳥はホントに忙しい奴だよなと思う。
黙ってればカワイイんだけど。     ヘリオン
                       LOVE +5
                       
あれ? 今何か見えたような。
「おい、今そこに」
キーンコーンカーンコーン。あーあ昼休み終わっちまった。次の授業は……ヤバ、体育じゃん!
校庭を見ると当然ながらみんな集まってる。しかも雪降ってきてるし。犬は喜び庭かけ回るって言うけど俺は勘弁だなあ。

561 :繋がりの後先 :2007/07/15(日) 21:19:10 ID:08F2IXiP0

IIIを選択。

「いや、あり得ないし」
でも……しかし……自爆ボタンを押したくなる誘惑とでも言うんだろうか? 滅びの美学に俺は酔いしれつつ、
ポチッとな。

…………
……


「ユートさま。起きて下さいませ。ユートさま!」
う、うぅん。あれ、ここは……? 視界がぼんやりしておかしい。
ここは、詰所の食堂……だ。夢……だったのだろうか。小鳥や今日子とのやり取りが無性に懐かしい。

「もう。居眠りなんてしちゃいけません。次の問題ですよ」
三重だった輪郭がフォーカスされたエスペリアとホナクル(勉強)をキハロナ(始める)する。
「ラ、ソゥ、ユート、ヤァ、エスペリア、イス、カンケルゥ」
えーと、確かラは「は」で、ヤァは「が」だったよな。カンケルゥって何だろう?
答えられないでいる俺にエスペリアはにんまりと笑みを浮かべて「分からないならお仕置きですっ(はーと)」なんて腕まくりしている。
あれ、でも俺エスペリアの言うこと完璧に理解してるよな。
なのに一部の単語だけ意味が抜け落ちてる……。変だな……あれ?、凄く、眠い。

…………
……

562 :繋がりの後先 :2007/07/15(日) 21:26:11 ID:08F2IXiP0

「目が覚めましたか?」
目を開くと、大きな月と一緒に綺麗な人が俺を見下ろしていた。とても優しい表情で深い所まで見通すような黒い瞳が印象的だった。
きっと巫女さんなのだろう。月光で染まっているけど、赤と白のいわゆる紅白の衣装が目に入る。
そして今さらながら、俺はこの女性の膝の上に頭を載せていることに気が付いた。
ベンチに横になった俺の体には毛布が掛かっていて、この寒空でも余り寒くない。
記憶にないけど神社で倒れたんだろう。これはかなり迷惑掛けた気がする……。
気遣いに感謝した俺は慌てて起きようとするけれど、
「あれ? 力が入らない」
本当にダメだった。金縛りにあったときの不快感とは違うけれど、体が言うことを聞いてくれない。
その女性はふわりと俺の体を抑えると、小さく首を振る。そうして毛布越しに円を描くように撫でてくれた。

こんな綺麗な人に膝枕され、間近で笑いかけられてるのに、俺は不自然なくらい自然だった。
「もう少し、こうしていた方が良いでしょう。しばらくすれば――元に戻りますから」
彼女の童顔にわずかに走った痛みのようなもの。俺はそれを理解することもなく、
感覚が何処かに迷いこんでしまった体のことを忘れて、言いようもない安堵感を覚えた。

俺は、「そうだな」と聞こえるか分からない呟きを返すと、
彼女に見守られながら素直に目蓋を降ろした。毛布が俺の肩まで引き上がる感覚。

――りぃぃん。
何処かで、何かが鳴っている。高く澄んだ不思議な音。
俺は躊躇いもなく、そのままもう一度まどろんでいった。

563 :繋がりの後先 :2007/07/15(日) 21:28:25 ID:08F2IXiP0

――夢。
ああ、夢だな。

まだ、ばあちゃんの家にいた頃だ。
いつだったろう、佳織が河原で拾ってきた……段ボールに入った小さな命。
完全に忘れていたけれど、俺の魂には刻まれていた。
飼うの飼わないのという議論など起こることもなく、それ以前に、ただ、ひっそりと、佳織の腕の中で消えていった命。
こぼれ落ちる命をただ見ているだけだった、俺と佳織。
今なら、どうだろう? 俺の手は、片腕だけでも伸ばせるだろうか?
今なら、掴めるだろうか? 思い立って、片方の腕を伸ばしてみる。触れるのは馴染み深い、固い金属の感触。
もう片方を伸ばしてみる。そっと何かに触れた。

564 :名無しさん@初回限定 :2007/07/15(日) 21:29:31 ID:ZNtM8XCg0

4円

565 :名無しさん@初回限定 :2007/07/15(日) 21:33:32 ID:08F2IXiP0

もともとギャグ話でしたが書いてるうちにずれていく。ズレルと痛いのだろうかやはりw

なんとなく、最初に瞬にやられた辺りか、と。
しかしこれ、三問目が家族でドライブ中事故って悠人にこんな質問持ってくるなよ。配慮が必要ですzo。

566 :名無しさん@初回限定 :2007/07/15(日) 22:08:13 ID:Pg1o5Ktz0

しっかり両腕使ってるエターナる。
第四問目にデフォで驚いてる悠人ワロス。
フリスキーならぬフリスビーに飛びつくヘリオン幻視してしまいましたw
というかVはエスペリアで確定ですかそうですか。

×:修理した方安いかな
○:修理した方が安いかな

567 :名無しさん@初回限定 :2007/07/15(日) 23:13:53 ID:W4wkI+oO0

ねタ占いキター
こ豚ワロス
だが、せっかくだから俺は子猫を選ぶぜ
いやしかし、自爆ボタンは男のロマン
すルーするのは難しい
きょうは時読みの目に何が増えて映るのか

568 :名無しさん@初回限定 :2007/07/16(月) 08:09:55 ID:nWCWl7NiO

忙しくてまだ手を付けてないネタがまだまだあるんだぜ
と、遅レス

仕事で体力消耗+ステッカーを切ったりしてると本当に書く暇ないや…
とりあえず、保管庫の画板にある某製品ロゴなニムを作ってもよかとですかっ!たぶん単色になるけどっ!

>3
迷わず、犬!ハグハグ〜♪
ちゃっかり餌付けで猫を寄せる事も忘れない。子豚は…後が怖いから手を出せねぇ〜

569 :煽り文ネタ :2007/07/16(月) 10:58:16 ID:uUlVSBzO0


この前第二詰所行ったんですよ、初めてね。
で、生まれて初めてスピリットを補完したわけですわ。
正直最初はスピリットの補完って簡単だと思ってたのよ。みんな普通に補完してるからさ。
あのね、俺が間違ってた。あれはメーカーが補完するもんじゃない。ネタだね、ネタで補完するものだよ。
最初に妄想する時さ、めちゃめちゃびびって切り番そろ〜って踏んでネタ振りそろ〜っと話したのよ
10レスくらいかけてさ。でなんか怖くなって接続切り離しちゃったのさ。
そしたらミカ先生がさ「もっとネタ仕込んで!」とか言うの。
同じ過ちは2度繰り返さないのが俺よ。
だから仕込んだのさ。えぇ、そりゃもう仕込みましたとも。全てを忘れて仕込んだよ。
設定確認とか神剣の強制とかナポリタンとか色々忘れてね。だって先生が仕込めって言ったからね。
そしてらエライ事になった。
もうすごい大妄想。すごいG。ヘリオンくらい。スピたんならツェナだってオッドアイ。
それで横見たら冷凍ヒミカがすごい勢いで俺の事見てんの。ホントごめんなさい。
正直「男ならハリオンだぜ!」なんて見栄張らないで素直にツンデレにすりゃよかったと思ったよ。
心の底からハリオンマジックにした事を後悔したね。
でも第二詰所出て光陰と「前のニムントールクーデレだったな!これだからエレブラは。」とか言っちゃてんの。
ホント俺ってダメエトランジェ。 誰か助けて下さい

ここまで来たかのアセリア&雑魚スピ分補充スレッド27


改変スマソ

570 :名無しさん@初回限定 :2007/07/16(月) 22:35:25 ID:Dz4TXvj60

>566
ヘリオン号は、その長い毛並みを地面に付けることなくフリスビーをキャッチすることで幽明ですw。
指摘サンキュです。他にも自力発見しましたorz

>567
時読みの目には次の一手はこう映っています。

「それじゃあ第五問です! あなたはなるかなの為パソコンを新調することになりました。
どんな柄のパソコンを選ぶか欲望の限り素直に答えてください。

I ホルスタイン柄。
II ☆ミカサイン入り薔薇柄。
III ふたりはネリシア Spirish Star

「……性能じゃなくて柄かよ。まあ無難にGateway一択だろ。つーかまずカタログでよっく吟味しなくちゃな」
「まーた悠のカタログ蒐集癖が始まった。で、Gatewayってなに?」
「先輩ってやっぱりおっきい方いいんだぁ〜豊胸体操佳織と一緒にしっかりしてますからね悠人先輩!」

>568
ステッカーwktkです。
子豚さんは深情けですよ〜w

>569
ワロス

571 :名無しさん@初回限定 :2007/07/17(火) 21:32:10 ID:xG5iPGiJ0

T ヘリオン   Mind -20
U 時深     Mind -10
V ファーニム  Mind -10
Gateway一択  Dell -100

572 :名無しさん@初回限定 :2007/07/18(水) 02:08:11 ID:xAdcQDdwO

たまにでいいからナナルゥのことも(ry

573 :名無しさん@初回限定 :2007/07/18(水) 13:25:15 ID:uCbPYu1C0


   '´ ⌒ヽ
   ! l」」ルl」」
   i !ゝ゚ -゚ノゝ                                             ゚ー゚              
  cく_>ycく__)
  (___,,_,,___,,_)  ∬                      
 彡※七楽※ミ 旦                                        ======     
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
   \ どっ!!  /   \ ワハハ! /
     \     /      \    ∞
 l|||||||||||||| ∩,,∩ ∩,,∩  ∩,,∩ ミ∩ハ∩彡
 (,    )(,,    )    ,,)(    )(    )

574 :名無しさん@初回限定 :2007/07/18(水) 21:09:56 ID:JuHTjhFX0

>>568
>作ってもよかとですかっ!
よかとです!
ただ、色を塗ったやつをそのままモノクロに変換しただけだとちょっと汚いので
モノクロ調に修正した物を画像板に貼りました
よければそちらをお使いください

575 :逆転の発想 :2007/07/19(木) 22:03:59 ID:LQUA/AkS0


ラキオスからやや離れた郊外。
時折思い出したように囀る鳥や虫達の旋律を除けば静寂と言って差し支えない夜。
青紫の帳が下りる森の中で、時深は一人佇む。来るはずの人物を待ち受ける為に。
「……やはり来ましたか、悠人さん。それに……アセリア」
現れた二つの影に、しかし時深はこっそりと溜息を漏らす。
本当は、来ない方が彼にとっての幸せ。しかし、やはりこうして彼は来てしまう。
それは、繰り返し『時詠』が見せてきた、罪深い未来。
判ってはいても痛む胸の奥に、眉を顰めながら彼と――彼女の決心を聞き届ける。
「ああ。決めたよ。俺は、エターナルになる」
「……アセリアも。それで良いのですか? 仲間から、忘れられるのですよ」
「わたしはユートと行く。ん……カオリとの約束」
もう充分納得済みなのだろう、蒼い瞳には迷いの色は無い。
大きく頷く二人に対し、もう説得する言葉が見つからず、再び深く溜息を付く。
何もかも垣間見た粗筋通りに進行している。なのに、この不安感は何なのだろう。
扇を振るいながら、ふとそんな久しぶりの感覚を味わっている自分に時深は気づく。
「判りました。では、時の迷宮への門を開きます」
「時の迷宮?」
「ええ。上位永遠神剣のうち、偉大なる13本」
「そんなにあるのか」
「いえ、そのうちの」
「ちょーっと待ったぁ!」

576 :逆転の発想 :2007/07/19(木) 22:05:39 ID:LQUA/AkS0


「……はい?」
思わず間抜けに答えた瞬間、がさがさっと草叢が揺れ、マナ蛍が一斉に舞い上がる。
飛び出してくるのは小柄なスピリット。
ウイングハイロゥとついでにポニーテールを大きく靡かせながら颯爽と降り立つのは。
「とうっ! じゃーん! ネリー、参上っ!」
「え、ネリー? どうしたんだこんな所に!」
「どうしたじゃありませんユート様。水臭いじゃないですか」
「ってヒミカ! いつの間に?!」
そして一体どこに隠れていたのか、わらわらと現れ出すラキオススピリット隊。
「んふふ〜。ヒミカだけじゃありませんよぉ〜?」
「時深様から聞きました、一言も無しなんて寂しいですよ」
「ハリオン? ファーレーンまで!」
そういえば悠人さんの記憶を操作する時、全員に洗いざらいぶちまけてしまっていたような。
そんな事を頭の片隅で思い出す。しかし仕方が無かったとはいえ、早計だったと後悔しても時既に遅し。
「ユートさまぁ、お菓子上げたら付いて行ってもいい?」
「わわわわたしもっ! 御供させて下さいっ!」
「シアー、ヘリオン……ばかだな、鬼退治じゃないんだぞ」
「……お姉ちゃんが行くっていうから」
「エターナルになっても、草笛を吹く事は可能です」
「か、勘違いしないで。ユート様だけじゃ危なっかしくて落ち着かないから」
「ニム、ナナルゥ、セリアまで……ぐす……ちくしょう、みんなありがとう」
「……」
涙ぐむ悠人の背中は、時詠みの力でも見えなかった、有り得ない未来。
時深は少し離れた地点で扇を翳したまま固まり、ただ呆然と成り行きを見守るしかない。
とか言ってる間にも、どんな世界樹の分岐にも無かった筈の予想外な展開は続く。続いてしまう。

577 :名無しさん@初回限定 :2007/07/19(木) 22:06:02 ID:D66x6+5/0

|∀゚)

578 :逆転の発想 :2007/07/19(木) 22:06:57 ID:LQUA/AkS0


「ユート様、言った筈です、わたくしが盾になります、と」
「手前はユート殿の剣。丸腰で、どちらへ行かれるおつもりですか」
「エスペリア! ウルカも!」
「パパ〜、アセリアお姉ちゃん、ずるいよこっそりなんて〜!」
「ん。オルファ、すまない」
「でも……本当にいいのか? こう言っちゃなんだが、綺麗さっぱり忘れられちまうんだぞ?」
「何言ってんの、ユート様!」
「みんなでぇ〜、エターナルになりましょう〜」
「そうです! みんなで行けば、誰も忘れません!」
「ハイペリアで言う所の、ギャクテンノハッソウというものです」
「……おお。みんな、頭いい」
「なるほど……そうか! それは盲点だった!」
「あのー、悠人さん?」
「ああ、時深。そんな訳だから、全員頼むよ。みんなスピリットなんだから、問題ないよな?!」
「え? ……え、ええ」
ようやく我に返った時深の目の前には、一斉に頷く満面の笑顔。
とてもその場のノリを壊せるような雰囲気ではない。
つい勢いに圧されるまま首を縦に振り、迷宮の門への入り口を開けてしまう。

579 :逆転の発想 :2007/07/19(木) 22:10:03 ID:LQUA/AkS0


「じゃ、行くぞ、みんな!」
『おおー!』
「……あいたっ」
悠人を先頭に次々と躊躇わず潜り抜けて行く、思い切りのありすぎる次期ライバル候補達。
その能天気な背中を黙って見送り、最後に自分も飛び込もうとして、時空の縁で豪快にけつまづく。
(言えない……今更迷宮には4本しかないだなんて言えない……)
先ほどから感じていた不安の正体はこれだったのかと、ようやく納得する。
しかし、納得したからといって何も解決はしない。
よろよろと立ち上がろうとして軽く眩暈を起こし、またけつまづく。いい加減、巫女装束も土だらけ。
「そ、それにしても」
レスティーナ以下の忘れられっぷりといったら"渡り"どころの騒ぎじゃありませんね、と他人事ながら呆れつつ、
ここはやっぱりもう一度序章からやり直すべきなのだろうかなどと、がっくりと膝をつく時深であった。

580 :名無しさん@初回限定 :2007/07/19(木) 22:12:15 ID:LQUA/AkS0

ドタバタで促進してみるテスツ。
支援、有難うございました。

581 :名無しさん@初回限定 :2007/07/19(木) 23:55:20 ID:F0gghj+g0

>580
聖賢【四つの物を、ヒーフーミー……13人で分ければ必ず奪い合うこととなる。それならば汝らは何を手に入れる?】
「もーこむずかしいなーシアー?」
「うん、げきむず〜」
「別に要らない」
「ニ、ニム?」
「そうね。これも逆転の発想よ」
「ええ〜ケーキを切り分ける時はみんな公平にです〜」
「いわゆるワークシェアリングね。この場合カウート・シェアリングかしら」
「で、でも赤スピの皆さんには合いそうな剣はなさそうですよっ」
「大丈夫です。オルファリルが既にチョロまかしてきています」

「何だか大損している気がします」
「ん、エスペリア。私もそう思うけど気にするな」
「みんな一緒だよ〜みんなパパのこと大好きだもん!」
「ふふ。そうですなオルファ殿」

……「ですが」「だけど」「でも」「しかし」
火花散るいびつな13角形の対角線。焦点にはソゥユート。
さすがに「コレ」をシェアする気は無さそうな面々の永遠はどっちだ。


そのころのレスティーナ以下……
「ほら、キリキリ歩く! 私はぬるま湯が好きなんだからあんたも一緒にエターナルにならなくちゃいけないってのっ」
「俺って、愛されてるよなあ……クォーリン?」
「え、ええ…………(どさくさで付いて来ちゃったけどテスハーアですよね?)」

582 :名無しさん@初回限定 :2007/07/20(金) 01:32:43 ID:1lw/lVjkO

まあ迷宮内にはまだ上位神剣はあるはずだし
四本なのは偉大なる13本の中の神剣
いがいといけるかもな、エターナル軍団

583 :名無しさん@初回限定 :2007/07/20(金) 01:53:23 ID:btowzcV40

>582
一応、時深さんは「13本のうち5本が眠る」って言ってたと思う。
依存みたいなてきとーな後付もあるかも試練がw

584 :名無しさん@初回限定 :2007/07/20(金) 02:07:25 ID:WMBS1Gm20

流石のコアラ様も余裕こいてる場合じゃないな

585 :名無しさん@初回限定 :2007/07/20(金) 02:45:06 ID:QULIOaQM0

最強の軍団ってレベルじゃないぞ、これ

586 :名無しさん@初回限定 :2007/07/20(金) 03:05:15 ID:1lw/lVjkO

エターナル軍団最強は誰になるか

バランス:アセリア
鉄壁&不死身:エスorニム
全体魔法:ナナルゥorオルファ
特殊能力:セリア

あたりか
あとはネリシアは二人でオールラウンダー出来たりしてもいいかな
ピンだと弱そうだし
もしくは二人だけなら100%流転使用可とか

587 :名無しさん@初回限定 :2007/07/21(土) 00:01:33 ID:OCv+hYIK0


    - Youto The Sacret Keeper -

エターナルとして目覚めた悠人。
多次元世界を舞台に13人の使徒を従え、永遠神剣を巡る戦いに身を投じていく。
後に故郷に立ち寄った際、痴話喧嘩の末ゴルゴダの丘に磔にされる。
だがエターナルなので僅か1週間後には復活を遂げたという。

       /                    .\
     /          ○            .\
 \ /                          \ /
   \      ___________     . /
    \   ./                \   /
     | \/                   \/...|
     |  |                       |  |
     |  |                       |  |
  .._ |_|                       |_|_..
     |  |                       |  |
     |  |                       |  |
     |  |                       |  |
     |  |/                   ..\|  |
     |  |                  ヽ)/   .|  |
   .._|/|      _ _ _ _ _ _ _∠´ ハ`ゝ . .|\|_
  / ..|  |   _−_−_−_− 彡//ノハハ〉 .|  |  \
     |  |/_/━ ━ ━ ━.  !、 リ彡彡 \|  |
   .._| /_/━ ━ ━ ━ ━  <´   ) _\.|_
     /_/━  ━  ━  ━  ━  U   、 \_\
   /  /━  ━  ━  ━  ━ <__λ__ ゝ. \  \

588 :名無しさん@初回限定 :2007/07/21(土) 01:27:23 ID:x6GDK/DA0

>>576
流転2本を1本ずつ分けて持ってるのは何かいいかも。

589 :名無しさん@初回限定 :2007/07/21(土) 02:18:01 ID:9z8ANrN8O

いろんな意味でコアラ軍団がフルボッコな予感

590 :名無しさん@初回限定 :2007/07/21(土) 12:55:33 ID:cvqOfJrz0

むしろコアラ軍団をフルボッコして上位神剣を強奪するスピリット隊

591 :名無しさん@初回限定 :2007/07/21(土) 15:10:21 ID:GhN0DaSX0

そして全員ロウ側の真剣に支配されて、敵に回るわけか。

592 :名無しさん@初回限定 :2007/07/21(土) 15:11:51 ID:GhN0DaSX0

誤字った。
わかると思うけど神剣な。

593 :名無しさん@初回限定 :2007/07/21(土) 16:41:50 ID:E6YyCiqe0

雑魚スピに触手が標準装備されるわけだな?

594 :名無しさん@初回限定 :2007/07/21(土) 16:47:22 ID:9z8ANrN8O

そしてハリオンは触手でヒミカに

595 :名無しさん@初回限定 :2007/07/21(土) 21:07:25 ID:9sd5EXyy0

焼きたてのヨフアルを作ってあげる、と。

596 :名無しさん@初回限定 :2007/07/21(土) 21:41:28 ID:oHto4uHP0

    ' ⌒ ヽ
   / _ ノノハ
   (6リ`o-oノ  
   oリ)||  ||(リつ  <勇者殿!
   |_ /|i .リ  
    く/ 丁 〉  

突然だがソーマ作ってみた。どうでしょう?

597 :名無しさん@初回限定 :2007/07/21(土) 21:44:30 ID:oHto4uHP0

    ' ⌒ ヽ
   / _ ノノハ
   (6リ`o-oノ  
   oリ)||  ||(リつ  <勇者殿!
   |_ /|i .リ  
    く/ 丁 〉  

ズレタorz  

598 :名無しさん@初回限定 :2007/07/21(土) 21:47:15 ID:4O4AaA6i0

ぬぅ・・・ふんどし?

599 :名無しさん@初回限定 :2007/07/21(土) 21:54:03 ID:oHto4uHP0

やぱり?
なかなか良いのが見つからなくて試行錯誤はしてみたが1から作るのってむずい。
エロイ人セーブミー。

600 :名無しさん@初回限定 :2007/07/21(土) 21:59:09 ID:z/8U0RO40

顔長いな

601 :名無しさん@初回限定 :2007/07/21(土) 22:16:02 ID:a9A6lm0y0

まぁ、見えないこともない

602 :名無しさん@初回限定 :2007/07/21(土) 22:24:27 ID:9sd5EXyy0

眼鏡の位置はヨーティアにも使えそう
自分にもAAの技術があればなぁ。職人の光臨に期待

603 :名無しさん@初回限定 :2007/07/21(土) 23:08:14 ID:OL3FpR+K0

おk、じゃあちっと賢者様AA化挑戦してみるぜ

604 :名無しさん@初回限定 :2007/07/21(土) 23:42:56 ID:jOU5hGis0

職人キター━━━━━(゜∀゜)━━━━━!!!!!!!
ってことで、wktkしつつテンプレ用意してみた。>>569で。

この前第二詰所行ったんですよ、初めてね。
で、生まれて初めてスピリットを補完したわけですわ。
正直最初はスピリットの補完って簡単だと思ってたのよ。みんな普通に補完してるからさ。
あのね、俺が間違ってた。あれはメーカーが補完するもんじゃない。ネタだね、ネタで補完するものだよ。
最初に妄想する時さ、めちゃめちゃびびって切り番そろ〜って踏んでネタ振りそろ〜っと話したのよ
10レスくらいかけてさ。でなんか怖くなって接続切り離しちゃったのさ。
そしたらミカ先生がさ「もっとネタ仕込んで!」とか言うの。
同じ過ちは2度繰り返さないのが俺よ。
だから仕込んだのさ。えぇ、そりゃもう仕込みましたとも。全てを忘れて仕込んだよ。
設定確認とか神剣の強制とかナポリタンとか色々忘れてね。だって先生が仕込めって言ったからね。
そしてらエライ事になった。
もうすごい大妄想。すごいG。ヘリオンくらい。スピたんならツェナだってオッドアイ。
それで横見たら冷凍ヒミカがすごい勢いで俺の事見てんの。ホントごめんなさい。
正直「男ならハリオンだぜ!」なんて見栄張らないで素直にツンデレにすりゃよかったと思ったよ。
心の底からハリオンマジックにした事を後悔したね。
でも第二詰所出て光陰と「前のニムントールクーデレだったな!これだからエレブラは。」とか言っちゃてんの。
ホント俺ってダメエトランジェ。 誰か助けて下さい

ここまで来たかのアセリア&雑魚スピ分補充スレッド27


前スレ:永遠のアセリア&雑魚スピ分補充スレッド 26
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/erog/1178902150/
発売元:Xuse【本醸造】公式サイト
http://www.xuse.co.jp/
外部板:雑魚スピスレ保管庫
http://etranger.s66.xrea.com/
外部板:雑魚スピスレ避難所@MiscSpirits
http://www.miscspirits.net/Aselia/refuge/

605 :名無しさん@初回限定 :2007/07/21(土) 23:50:25 ID:jOU5hGis0


Q: 雑魚スピって何ですか?
A: サブスピです。

Q: 具体的に教えて下さい。
A: シアー・セリア・ナナルゥ・ニムントール・ネリー・ハリオン・
   ヒミカ・ファーレーン・ヘリオン、以上9名の総称です。

Q: 最近設定かネタか判んなくなってきちゃった。
A: ここで確かめましょう。→http://nechanforce.o-oku.jp/

Q: これまでに投稿されたSSはどこで読めますか?
A: ここで読めます。→http://etranger.s66.xrea.com/

Q: これまでに投稿されたAAは?
A: ここで観れます。→http://nechanforce.o-oku.jp/

Q: 俺あんまりサブスピに興味ないんだけど。
A: 雑魚スピです。>>1の関連スレリンク集で行き先を探してみましょう。


>>181>>187>>190>>4もちょっと変えてみた。
>>2-3は省略。変なところがあったら修正ヨロ。
点呼ネタは、>>557

606 :名無しさん@初回限定 :2007/07/22(日) 00:02:31 ID:K9Hzu4ZB0

とりあえず賢者様プロトタイプをぺたり。
ツンツン頭なんで一部ソゥ・ユートのパターンを流用してみた。

    ヽ)/
 ∠´ノノハ`ア
<彡ノク~~ヘリ
∠イi ・o-oノ
  / く|U|>ゝ
  U__:|-|__|
.   /_/ ヽ.)

…なんかカジュアル系主人公っぽくなってしまった。
むぅ、白衣っぽく見えない。

607 :名無しさん@初回限定 :2007/07/22(日) 00:50:57 ID:PwTk/Mmf0

かわいいなw
手に何か欲しいところ

608 :名無しさん@初回限定 :2007/07/22(日) 00:55:31 ID:oSFF0l7N0

酒瓶だな

609 :名無しさん@初回限定 :2007/07/22(日) 06:19:06 ID:Uc51VZvx0

タバコがいいかも

    ヽ)/
 ∠´ノノハ`ア
<彡ノク~~ヘリ
∠イi ・o-oノ
  / く|U|>ゝ っ-~
  U__:|-|__|
.   /_/ ヽ.)

勝手に改変すまん>606

610 :名無しさん@初回限定 :2007/07/22(日) 08:57:15 ID:L8onOjOy0

手が離れてる気がしたので半角縮めてみた

    ヽ)/
 ∠´ノノハ`ア
<彡ノク~~ヘリ
∠イi ・o-oノ
  / く|U|>ゝっ-~
  U__:|-|__|
.   /_/ ヽ.)

勝手に改変すまそ>>606>>609

611 :名無しさん@初回限定 :2007/07/22(日) 18:40:06 ID:CgqNge9t0

>>597のふんどしを>>606の足に変えてみた

    ' ⌒ ヽ
   / _ ノノハ
   (6リ`o-oノ  
   oリ)||  ||(リつ  <勇者殿!
   |_ /|i .リ  
    く/_/ ヽ.)

612 :名無しさん@初回限定 :2007/07/22(日) 18:41:12 ID:CgqNge9t0

しまったこれじゃフル○ンだorz

613 :名無しさん@初回限定 :2007/07/22(日) 18:42:16 ID:Wz/2TCep0

点呼ネタだが、>>557の雑魚スピたちに喋って欲しいPCシステムボイスでもいいな。
でも個人的には、せっかく信頼の人が全員エターナル化短編SSを書いたところで、雑魚スピやレスティーナの上位永遠神剣ネタも悪くないかもしれん。
以前にも何度かやったネタだが、今感じている雑魚スピたちへのイメージで改めてってところで。

614 :名無しさん@初回限定 :2007/07/22(日) 21:53:33 ID:jydexytj0

このままじゃソーマ様が風邪引いちまうぞ

615 :名無しさん@初回限定 :2007/07/23(月) 11:21:12 ID:RzV4uFw50

遅ですが…

>>574
承認&モノクロ調サンクスです
今週中に仕事と体力の都合をつけて切りますね


>聖賢【四つの物を、ヒーフーミー……13人で分ければ必ず奪い合うこととなる。それならば汝らは何を手に入れる?】
マスターは相応しい者に譲り、代わりに四つの神剣が持つ知識と経験を手に入れる
上位神剣を無理に使って最大稼働率30%よりも、知識と経験を利用して使い慣れた下位神剣を使いこなした方が効率がいい
渡りの時は力を借りる必要があると思うが、色々な世界を渡り歩いていれば上位神剣と契約する機会もある…はず

まあ、ヒミカあたりが『熱血』を発動させて限界を超えて行きそうな気がする…
「稼働率100%オーバー…私の全力に耐えられる?」

616 :名無しさん@初回限定 :2007/07/24(火) 00:41:21 ID:PUUksdta0

ちょっとまわりを見回してごらん。1人で数本上位神剣持ってる人g(アカクヌレテヨメナイ

617 :名無しさん@初回限定 :2007/07/24(火) 18:15:58 ID:lZNzjAYn0

>聖賢【四つの物を、ヒーフーミー……13人で分ければ必ず奪い合うこととなる。それならば汝らは何を手に入れる?】
ハリオン「分ける事が出来ないならぁ〜増やすしかないですよねぇ〜」
ウルカ「しかし、ここには4本しか上位神剣が無い…」
ユート「という訳で、お友達を紹介してもらいましょう」

ALL「え〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!」

ユート「ノルマは一本あたり2本以上!しかも、ここに居る俺達と合いそうなのを神剣通信で呼んでもらいますっ!」
聖賢「え、ちょっ…」
ユート「では…まず声をあげた聖賢さんからっ!」
聖賢「…致し方あるまい。呼べるような友人となると少ないのだが…三位『悟り』を」
ALL「おお〜〜〜〜〜〜っ!」
ヘリオン「なんだか知的な響きのある神剣の名前ですねっ」
ナナルゥ「どのような形状なのでしょう…非常に興味深いです」
ユート「では…時深さ〜ん、通信中継の方をお願いしま〜す」
時深「は〜い…あっ、突然申し訳ありません。こちら時の迷宮より通信している時詠の時深と申します…」

悟り「おうおう、根暗〜久しぶりじゃの〜…と言うか御主からの通信なんて何百周期ぶりかのぅ〜」
聖賢「五月蠅いぞ、タヌキ野郎!…っと、早速本題なのだが、エターナル候補のためにこちらまで来て欲しいのだが…来てくれるか?」
悟り「ん〜まあ、暇だから行っても良いぞ」
ユート「では…すぐに渡って来てくれるかな?」
悟り「OK〜!」


…続かない?

618 :名無しさん@初回限定 :2007/07/24(火) 18:26:45 ID:lZNzjAYn0

間違えた…『悟り』は二位だった(汗
脳内変換よろ

619 :名無しさん@初回限定 :2007/07/24(火) 19:56:54 ID:RxO5xLDG0

既に契約者がいる神剣引っ張ってきてどうするんだw
それはそうと475KB超えたので、踏んだ>>618スレ建てヨロ。
一応次点として待機中、オーバ。

620 :名無しさん@初回限定 :2007/07/24(火) 20:48:46 ID:5O1N36+H0

http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/erog/1185277607/l50

次スレ

621 :名無しさん@初回限定 :2007/07/24(火) 20:59:34 ID:lZNzjAYn0

永遠のアセリア&雑魚スピ分補充スレッド 27
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/erog/1185277607/

次スレ立てました
人生初スレたてなので不備があったらゴメンナサイです


>既に契約者がいる神剣引っ張ってきてどうするんだw
小五・ロリネタをやりたかっただけなのですが…寝落ちしそうだったので書けませんでした、サーセン

622 :名無しさん@初回限定 :2007/07/30(月) 01:36:55 ID:nGVVY7Bw0

ふと思ったが、親指立てにエスペリアが赤面狼狽するのなら、
親指sageにはどういう意味があるだろうか。

623 :名無しさん@初回限定 :2007/07/30(月) 06:55:21 ID:bTsZsVCu0

>>622
ニムが光陰に向かってやると正しい気がした。

624 :名無しさん@初回限定 :2007/07/30(月) 19:57:12 ID:nGVVY7Bw0

よぉーしっ、良く分かった。考えてみれば簡単な事じゃないか悠人?
求愛の反対ということなんだから、

ニム、さみしいから……コウイン一緒にいてくれなきゃやだ……。な意味なんd(ゲツリンゲツリンゲツリン

625 :紫陽花のように :2007/07/31(火) 12:28:51 ID:vCQKhgxO0


今日も優しい風が吹いている高台。
そこから少し降りた所にある草原。腰を下ろすと、瑞々しい匂い。
青い湖や白い山並みや緑の森。水彩色に囲まれた、とっておきの場所。
ゆるやかに過ぎ去る時を感じ、髪を抑えながら、つまらなそうに呟く。
「……解いちゃおっかなぁ」
本当は、ずっと見て貰いたかった。褒めて貰いたかった、自慢の黒髪。
だが、3度目の偶然は無かった。それでも、習慣のように訪れてしまうこの場所。
何度無駄にしたかもう判らなくなってしまった傍らの大きめな包みをそっと撫で、
そのまま両腕で抱え込んだ膝の間へと顔を埋め、長く細い溜息を漏らす。
「うん、まぁ、判ってはいたんだけど、ね」
相手がどう考えているかは知らないが、好ましく思える、親友とも呼べるあの子。
彼女の想いが成就するのなら嬉しいし、その為になら出来るだけの協力もする。
そう決めたのは、自分。だから、これも自分が引き寄せた運命。
「はは……引き寄せちゃったよ、ユートくん」
俯いた先で皺の走る、一生懸命考えて選んだお気に入りのワンピース。
裾を握る指に力を篭め、自嘲的に微笑む事で泣きそうになるのを何とか抑える。
湖面のように穏かなさざ波が、心の中を静かに揺らしては過ぎ去っていく。
顔を上げれば、変わらず迎え入れてくれる雄大な景色。
≪綺麗だなぁ……≫
≪そうだねぇ……≫
あの日と同じように、空が高い。鳥が1羽、気持ち良さそうに翼を広げ、視界を横切る。
森へと帰る白い姿はどこまでも自由で、それがとても羨ましい。
ぼんやりと眺めていても、想い出ばかりに囚われている自分の今の思考にとっては。
「綺麗だなぁ」
「そうだね……え?」
唐突に声をかけられ、思わず相槌を打ちながら驚き、胸がどくん、と大きく弾む。
まさかと思いながらも、もしかしたらと相反する期待感に、綯交ぜになっていく心。
そうして恐る恐る振り向き、やや影のかかった笑顔を見つけ、息を飲む。

626 :紫陽花のように :2007/07/31(火) 12:30:59 ID:vCQKhgxO0


「……コウイン!?」
「ん? どっかで会ったっけか?」
「あ、いえ、じゃなくて、ううん」
期待感はすぐに失望へと変わり、そしてその失望をじっくり味わう暇も与えられず、
みるみる噴き出して来た焦燥を懸命に内へと仕舞いこんだまま貼り付いた笑顔で取り繕う。
どうしてここに、とか何故よりにもよって彼が、とかは取りあえずどうでも良い。
それよりも今はこの場を何とか切り抜けねばならないと、背中に冷たい汗が流れる。
「あーわたし用事を思い出し」
「ふん、何だ結構有名人なんだな、この国でも。まぁいいか。どっこいせっ……と」
「……」
全く棒読みの社交辞令じみた言い訳が語尾を奪われ、逃げるタイミングを外す。
思わぬ皮肉めいた台詞が立ち上がりかけた足を釘付ける。誤解だと反発しかけ、口を噤む。
エトランジェやスピリットに対しての偏見や歪んだ興味本位の視線は、
事ラキオスに限って言えば今は殆ど払拭されているという手ごたえを感じている。
他ならぬ自分が微力ながらも率先して指導してきたこの施策の成果確認は、
幸か不幸か不定期に繰り返し城下街を視察する事で大まかな推移位なら確認してきた。
ただし、つい最近国籍に加わった新たなエトランジェへの純粋な好奇心までは防げない。
もっともそれはこれまでとは少し異なり、どちらかというと英雄への憧れとか
羨望に近い眼差しが殆どなのだが、こうも平板かつ寂しげに返されては一言も無い。
無遠慮に隣に座ったがっしりとした身体と横顔をそっと伺いながら呟いてみる。

627 :紫陽花のように :2007/07/31(火) 12:32:41 ID:vCQKhgxO0


「……ね、この街、好き?」
「あん? んー、どうだろうな。好き嫌いで選んだ訳じゃないからなぁ」
「そう、だよね……ふふ、ねぇ、いっつもそんな言い回しなの?」
「おかしいか? あ、えっと」
「レムリア。呼び捨てでいいよ。その代わり、わたしもコウインくんって呼ぶから」
「おいおい、随分と一方的な奴だな。まぁ嫌いじゃないが」
「別に、変じゃないと思う。だけどそれじゃ、女の子にはモテないんじゃないかな」
「ぐはっ」
「あははっ! いいの、だってわたしの方がお姉さんだから」
「……それは驚いた」
「ど〜こ〜を〜見〜て〜る〜の〜か〜な〜?」
「そりゃマナの導きが特にあらん処を……痛っ!」
「ふーん。ま、信じてあげるよ」
「げ、現行不一致はいかんぞレムリア」
「嘘って難しいよね。自分で導いたんだから文句も言えないし」
「ちぇ。……ま、嫌いじゃないさ、この街も。とりあえず飯は旨い」
「あ、うん。……ありがと」
彼は今、物凄く正直に話している。切り換しや回転の良さも相変わらず。
そのせいか、不思議と霧が晴れてくるように軽くなっていく心。
ついからかいがちになってしまうのも、ひょっとしたら彼の計算なのだろうかとふと思う。
風に乱れかけた髪をつい押さえてしまうのはさっきと同じ。
それなのに、細めた目の先に映る湖の景色が酷くきらきらと眩しいのは気のせいだろうか。
立ち上がり、うーんと伸びを打つ背中の翳りが、落ち着かせてくれるのは錯覚だろうか。

628 :紫陽花のように :2007/07/31(火) 12:44:30 ID:vCQKhgxO0


「……あの、ね?」
「ん?」
影になったはにかむような笑顔が、どくん、と波のように押し寄せる。
奥が読み辛い。正直、マロリガンから初めて訪れ、謁見した時よりも修正が必要な位には。
「お腹、空いてない?」
「……は? あ、ああ、一応それなりに」
「じゃあ、これ。どうぞ」
ぼかん、と間抜けな程に開いた唇がそんな台詞を溢してしまう。
そして告げてしまってから、しまったと警告を発する心。気を許しすぎてはいないか、と。
お互いの立場が引く境界線を強く再確認するのは、女王としての人格。
しかし、お、そうか?と中途半端に物分りの良い仕草でひょいと取り上げられてはもう手遅れ。
宝物を覗き込む子供のように嬉しそうな顔と彼が手にしたお弁当箱を恨めしく見つめる。
それでもどこか与えられる感想を期待して高鳴るのは、レムリアとしての人格。
「……一生懸命、作ったんだから」
「ん? 何か言ったか?」
「なんでもない。ありがたく思いなさいよね」
「おお、勿論だ。自慢じゃないが、食への感謝は常に心がけているぞ」
「……もう」
そうじゃなくてという言葉を飲み込み、代わりに浮かべる苦笑。
まぁいいか、今はお忍びなんだし、と細かく動く彼の手元に注目する。
「……む」
「え? どうかした? 我慢しなくてもいいんだよ?」
「い、いや……待て、落ち着け。ラキオスも異世界だからな、これ位は不思議でも」
蓋を開いた所で、ぴたりと止まる彼の手。何だか難しい顔をしたまま動かない。
もしかして緊張でもしているのだろうか、柄にも無く。
しばしの沈黙。そういえば、と思い出す。たしかこの間読んだその手の大衆雑誌に。

629 :紫陽花のように :2007/07/31(火) 12:45:34 ID:vCQKhgxO0


「……ふっふ〜ん。なんだ、そうならそうと早く言えばいいのに〜」
「は? お、おい何を」
「やだなぁ、もう。はい、今回だけだよ?」
手元のフォークを手に取り、まだ熱を持っている赤紫色の自信作をそれに刺して差し出す。
恥ずかしがっている彼というのを初めて見たという新鮮さが、悪戯心を刺激する。
「しょうがないからお姉さんが人肌脱いであげる……あ〜ん」
「げ」
「げ?」
「ああ、いや」
「なによ、早くしないと特製のタレが落ちちゃうよ?」
「い、いや、あのな」
彼は面白いほど狼狽し、じりじりと後じさる。脂汗まで判りやすくかいて。
だが、気持ちは判るが、そこまで恥ずかしがられるとこちらまで照れてしまう。
耳が熱くなってくるのを誤魔化す為にも、ここは早急な対策が必要。
「もう、だだを捏ねない」
「御仏よ、これは一体何の試練……グボッ★&%!!」
青緑の液体が零れ落ちる前に前のめりになり、何かを言いかけた口の中へと強引に放り込む。
唐突過ぎたのか、目を白黒させているが、どうやら咀嚼はしているらしい。
髭を生やした顎の動きをじっと見据え、後に続く褒め言葉に期待する。
それが大衆雑誌に書かれていた、普通のデートに相応しい行為だから。
しかし直後彼が起こした行動は、想像を遥かに超えていて。ぱたり。

630 :紫陽花のように :2007/07/31(火) 12:46:46 ID:vCQKhgxO0


「……へ? ちょ、ちょっと?」
いや、ぱたりじゃなくて。こう、白い気体が湧いてくる口元は新手の手品か何かだろうか。
揺すっても反応を示さない。うつ伏せになった背中から、どんどん失われていく体温。
「ね、ねぇ、コウインくん?」
「……ぅ゙」
「あ」
今度は、反応があった。一体何が起きたのだろうか。貧血体質とは聞いていないし。
取りあえずお弁当を避け、背中を擦りながら、一生懸命考える。何か、効果的な呼びかけは。
空を見上げると、いつの間にか雲行きの怪しくなってきた天気に何かを思い出しかける。
自分でも驚くほど冷静になっていく心。女王として帝王学で得た知識を総動員。
湖の向こうでごろごろと響く遠雷に、ああ、にわか雨かぁなどと考察しながら、ぱっと閃いた言葉。
「コウインくん! 起きないと、ハリセンだよっ!」
「う、うわわわっ! ちょ、やめっ!」
「……よかった」
ほっと安堵の溜息を付きながら左手で前髪を抑えてしまったのは、きっとレムリアの心。

「じゃあな」
「ん、ばいばい」
思いの外回復が早かったのは、やはりエトランジェだからなのだろうか。
大きな背中を見送りながら、ぼんやりとそんな事を考える。手にしたお弁当箱が少し重い。
「……ね」
「うん?」
思わず呼び止めてしまった微かな呟きにも、律儀に反応を返し、首だけをこちらに向ける。
そんな不思議そうな顔をされては、何も言えない。続く筈だった言葉をぐっと飲み込む。
「あ……ううん、なんでも。じゃあね!」
「ああ、またな」
「〜〜っっ」

631 :紫陽花のように :2007/07/31(火) 12:56:02 ID:vCQKhgxO0


駆け出す背中に投げかけられる、ただの挨拶。そんなささいな事にも躓きそうになる。
約束は、出来ない。彼は、代わりじゃないから。恥ずかしさで耳まで熱くなっていく。
石畳を走りながら、つい覗き込んでしまう利き腕の小指。ぽつり、と頬に冷たい感触。
「……ああ、降ってきちゃった。まいったなぁ」
ずぶ濡れになる前に帰らなくては、また小言を言われてしまう。
同じように駆け出している子供達を見かけると、いつまでも凹んでもいられない。
この大好きな街を守る、それも願いであり、約束だから。でも。
「……必然だったら、アリだよね」
偶然の運命。3度目なら、必然。そんなものを、また本気で信じたくなる。
雨宿り先に選んだ家の軒先が間深いのは必然。
だから。そこで途方に暮れているような表情を浮かべながら、手を翳し、空を見上げている姿。
特徴的なハリガネ頭にセンスの悪い羽織を背負っている姿などを、見つけてしまうのも必然。
「ね? そうだよね?」
聞こえないように小さく呟き、自分自身を納得させ、脳裏に浮かんだあの子に、今だけだからと謝る。
少しでも目立たないようにと裾を伸ばし、皺を軽くチェックしながら顔を上げるとくすんだ景色。
雨の中だから、目元が濡れていてもきっと誤解してくれる。
そんな計算をどこかでしながら、1歩、また1歩を慎重に進める。
どんな言葉で呼びかけようか、怪訝な顔をされはしないかと迷いそうな決心を叱咤しながら。

 ―――― や、偶然だね、ユートくん

必然は、運命じゃないから。

632 :名無しさん@初回限定 :2007/07/31(火) 12:57:16 ID:vCQKhgxO0

埋め&誘導

全ては、目無し顔グラから始まった。
ネタは生まれ、スレは落ちる。
天位があれば、神剣には運命がある。
炎に追われ、閃光に貫かれ、辿りゆく果てはマグネシウムリボン。
だが、このスレ、求めるべきは何。
目指すべきは何。
打つべきは何。
そして、我にマナをよこせ。

次スレ
永遠のアセリア&雑魚スピ分補充スレッド 27
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/erog/1185277607/

目も眩む補完の中を、クォーリンが走る。

633 :名無しさん@初回限定 :2007/07/31(火) 22:00:30 ID:rf/b/Uk90

>>631
乙です。
レスティーナルートの舞台裏ですね。
無理やり詰め込まれても、吐かずに咀嚼する光陰カコヨスw

とりあえず光陰センサーが反応しなかったということは、つるぺたばでぃが判定基準ではないt(レムリアインパクト

634 :名無しさん@初回限定 :2007/07/31(火) 22:31:28 ID:R5FeOstl0

>>632
乙。
しかし光陰。そこまでハリセン恐怖症に・・・

635 :名無しさん@初回限定 :2007/08/01(水) 00:02:49 ID:GyA4nW9+0

>632
ちょ、センス悪いてあんたの所の公式ユニでしょーがw
しかし光陰は、漢だな。仏の所に召されるのなら本望でしょw


「お帰りなさいませ。コウイン様」
詰所の扉を開いたとほとんど同時に掛けられた丁寧すぎる声。
だが、髪の毛一本にも満たない一瞬のタイムラグを、光陰は悲しいかな読み取れてしまう。
「おう、戻ったぜ」
タオルを受け取ってサンキュの言葉を返しながら、頭をワシワシ擦る。夕食の香ばしい匂いに腹を鳴らしながら、
背中越しに、思い出したように、
「あーそうだ。悠人はもう少ししたら帰宅すると思うぜ。おっと、そう言えばちょっと胃の調子が悪いんだ。薬湯をたのんでいいか?」
さり気ない会話をのこして、光陰は自室へ向かう。
「さーて。クールな二枚目の引いたカードは相も変わらず、か」
ニヒルな自嘲の気遣いは、自らのために受け取ったはずの白濁したバリウムのような薬湯を親友の部屋に人目を避けつつ運び込むのだった。
「……不味そ」

636 :だって女の子なんだもん :2007/08/03(金) 22:25:17 ID:ni9Thg2B0


「敵だ! バカ剣、気を抜くなよっ!」
今日も今日とて響き渡る、元気な悠人の叫び声。
巨大な神剣『求め』を翻し、一度振り返る。
「ネリー、アタッカー頼む! ナナルゥはいつもの!」
「……了解。マナよ疾く進め、破壊となりて彼の者どもを包め……イグニッションッ!!」
直後、巻き起こる轟音。『消沈』の剣先から迸る巨大な炎の嵐が敵の陣営を焼き尽くす。
「ふふん〜♪ 剣の扱いは得意なんだからっ」
衝撃と灼熱を受け、それでも尚辛うじて立っている敵に襲いかかるのは、『静寂』の切っ先。
水のマナが凍てつく刃となり、防御をすり抜け殲滅させる。こうしてまた、拠点は陥落する。
「……ふぅ、お疲れ、二人とも」
ディフェンススキルを使う必要も無かった悠人が満面の笑みで迎え、
「ユートさまぁ、早く次に行こっ」
「お、おいおい。わかったから」
気分爽快なネリーが引っ張るような形で部隊は侵攻を続ける。

「こんなところで命のやり取りか… 馬鹿げてるけど、仕方ない」
そして、立て続けの戦闘。アタックスキルを存分に使い切ったネリーは交替している。
先ほどのように振り返り、悠人が叫ぶ。
「シアー、アタッカー頼む! ナナルゥはいつもの!」
「う、うん……『孤独』よ、お願い……力を!」
「……まとめて、消し飛ばします。アポカリプス!」
イグニッションが尽きてしまったナナルゥの詠唱よりも先に、シアーが飛び込む。
巨大な一撃が吹雪のように吹き荒れ、浮き足立った敵の集団に殺到するのは赤雷の群れ。
全身を痺れさせ、動きの取れなくなった敵部隊はあっけなくシアーによって一掃されてしまう。
「……ふぅ、お疲れ、二人とも」
ディフェンススキルを使う必要も無かった悠人が満面の笑みで迎え、
「えへへへぇ……ユートさまぁ」
「うん、よく頑張ったな、シアー」
とことこと駆け寄り、服の裾を握るシアーを優しく撫でる。それも繰り返される定番。

637 :だって女の子なんだもん :2007/08/03(金) 22:26:38 ID:ni9Thg2B0


「ちっ、切っ先に迷いが出る……いや、今は何も考えるな」
そして、数回目の戦闘。アタックスキルを満足に使いこなしたシアーは交替している。
いつものように振り返り、悠人が叫ぶ。
「セリア、アタッカーを頼む! ナナルゥはいつもの!」
「了解!」
「……」
「ん? ナナルゥ、どうした?」
「……(フルフルフルフル)」
「え、もうないの? "いつもの"」
「……(コクリ)」
「そっか、連戦だからな。じゃあ誰か代わりを――――」
ぎゅっ。
「へ?」
「……」
「あ、えっと……何?」
「……(ボソ)」
「は? アタッカー?……もしかして、やりたいのか?」
「……(コクコクコクコク)」
「いや、でもなぁ。こう言っちゃなんだけど、ナナルゥのアタックスキルって意味がないというか」
「……(プゥッ)」
「あああ悪かった、悪かったから頬を膨らませるな!……じゃ、一回だけだぞ」
「……(♪)」
「じゃ、そういう訳だから、ごめんセリア、サポートに回ってくれないか?」
「え、ええそれは構いませんが……本当にいいのですね?(ボソッ)」
「しょうがないだろ(ボソッ)。それじゃ……いくぞっ!」

638 :だって女の子なんだもん :2007/08/03(金) 22:27:39 ID:ni9Thg2B0


「疾く進め 破壊となりて彼の者どもを包め!」
「効くかどうか賭けになってしまうけど こういう戦い方だってあるのよ!」
「うわぁぁぁしまったぁ〜!」
言い争いを黙って待っていてくれた敵サポーターが放つイグニッションで戦闘は再開され、
直後飛来した炎の弾丸はセリアが唱えたアイスバニッシャーによって打ち落とされる。
ナナルゥはタイミングを見計らい、全力で飛び込む。
初めて剣として振るう『消沈』の標的は、敵ディフェンダー、グリーンスピリット。
「手加減はしません……決めます!」
重量を乗せ、展開されているシールドハイロゥごと斬り伏せる。渾身の一撃、乾坤一擲スイングV。

  ―――― かきん。       [ damage 0 ]

「……」
「……」
「……」
「こ、これは戦争なんです、わたしが悪いんじゃないんですよ!」
「くぅっ! 食らっちまったか。だが、まだまだこれからだ!」
ナナルゥとグリーンスピリットの間に微妙な空気が流れていく間にも、反撃は始まっている。
一方的な敵のターンを受けた悠人は必死になって防戦を繰り返し、辛うじて凌ぐ。
やがて、撤退していく敵部隊。所謂痛み分けになり、戦場は再び静まり返る。
「はぁ、はぁ……危なかった……ん? ナナルゥ?」
それを見送ってようやく一息ついた悠人の前に、しおしおになったナナルゥが帰って来る。
彼女は『消沈』の細い柄を両手でぎゅっと握り締めたまま、やや俯き加減で近づいてきた。
声をかけられた途端、怯えるように一度びくっと肩を震わせ、
恐る恐る上げた眼差しは主人に叱られた仔犬にようで、さらさらの長い髪も不安そうに揺れている。

639 :だって女の子なんだもん :2007/08/03(金) 22:30:10 ID:ni9Thg2B0


「……(ボソ)」
「は? ああいや、大した怪我じゃないよ、こんなの唾付けときゃ治るし。それより、さ」
「……」
「あ、その、なんというか……お疲れ」
「……」
「いや、今回は運が悪かっただけだよ、ほら、なぁ、セリア?」
「え゛? え、ええそうですね。ブラックスピリットとかなら防御も弱いし(何故私に振るのですか?!)」
「……」
「(しょうがないだろっ!)そうそう、レッドスピリットも弱いよな。まぁ大体サポーターにしかいないけど」
「ユート様っ」
「――――あ゛」
「……(ウルッ)」
「わあっ! ごめん、泣くな、泣かないでくれ! あ、そうだ、一度拠点に戻って休もう。スキルを回復して」
「……(フルフルフルフル)」
「え、ヤなの? なんで? そうしたらナナルゥだって い つ も の」
「……(ウルッ!)」
「何故っ?! ちょ、良く判らないけど俺が悪かったからごめんなさい! ってああっ、セリアどこへ?!」
「……知りません。掘った墓穴はご自分でお埋めになって下さい」
「……(ウルウルウルウルウルウルウルウル)」
慌てふためき、どうしていいか判らなくなり、ただおろおろと戸惑うばかりの悠人。
その目の前でただぽつねんと立ち尽くし、つぶらな瞳からだばだばと大粒の涙を流し続けるナナルゥ。
ちょっぴり甘酸っぱい感情というものを初めて知った、ような気がする無口な砲台、Lv.33の春であった。

640 :名無しさん@初回限定 :2007/08/03(金) 22:31:26 ID:ni9Thg2B0

更に埋め&誘導。
ナナルゥの主力部隊アタッカー固定縛りSS狙いは結構シビアで、
「我こそは真のナナルゥ萌え!」という猛者にしか中々お薦め出来ない危険なワークシェアリング(ぇ

>>633さん
吐くことすら叶わなかったのかも知れない罠(ぇ
>>634さん
三つ子の魂百までって奴ですなw
>>635さん
やられた、そのエピソード格好良過ぎw
つかエスペリアさん、ご心情は察して余りあるものがありますが、お手柔らかに。

次スレ
永遠のアセリア&雑魚スピ分補充スレッド 27
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/erog/1185277607/

641 :名無しさん@初回限定 :2007/08/03(金) 22:35:20 ID:ni9Thg2B0

×:恐る恐る上げた眼差しは主人に叱られた仔犬にようで
○:恐る恐る上げた眼差しは主人に叱られた仔犬のようで

           orz

642 :名無しさん@初回限定 :2007/08/04(土) 23:31:47 ID:GEGpe4Gn0

苦しくったって悲しくたってユートの中では兵器なの。
……わたくしたちは戦う為だけの存在です。それは本当なのです……。


今気付いた。アタッカーだから、このタイトルなのか!w
良し! ナナルゥと一緒にバッティングセンターにでも行ってくるぜ。
腰の回転の指導をみっちりと。

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